平成21年9月定例会 第13回岩手県議会定例会 会議録

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〇43番(渡辺幸貫君) 民主党の渡辺幸貫であります。
 最初に、民主党政権にかかわる知事の所感についてお伺いします。
 日本の政治が二大政党制と、それに伴う健全な政権選択の政治体制を目指してきました。官僚中心の国の制度を変えて、国会議員を各省庁に送り込み、官僚丸投げ政治を、国民本位、生活優先の政治に、今こそ踏み出さなければなりません。
 今まで、政権の改革は、深い洞察力を持たない自由化論議の中で、郵政民営化に見られるように、実態をよく理解せず、痛みを国民に強いるような政策の繰り返しでありました。派遣労働についても、安易な規制緩和が雇用の不安定化を招きました。
 また、我が国の基本的な課題は、人口減少、少子化と、それに伴う高齢化であります。子ども手当から高校教育までの無料化と安定した年金と福祉、後期高齢者医療制度の廃止と医師養成に取り組み、一日も早い医療体制の整備による安心が待たれています。生活保護の母子加算と、父子家庭にも扶養手当を支給する構想を打ち出しました。地方においては、1次産業である農業の戸別所得補償制度に期待が寄せられています。採算がとれない産業に後継者は育たないところです。林業や漁業も同様であります。そして初めて食料自給率が達成されます。
 政治が国民に安心を届けてこそ、内需拡大型経済へ転換できる。これらの政策の実現には、予算編成のあり方を変えて不要な既存事業等を中止し、国直轄事業を初めひもつき補助金など、さまざまな補助事業のあり方も見直さなければなりません。長年にわたる膨大な債務、消えた年金問題の社会保険庁を初め、今後の解決が待たれています。
 新しい政権が選択され誕生を迎えた今、知事はどのように民主党政権をとらえ、どのような期待を抱いておられるか、お伺いします。
 次に、税制のあり方について、消費税と税の偏在性をどう考えておられるか、伺います。
 政権交代をかけた総選挙で、多くの党が地方分権策をマニフェストに掲げました。橋下大阪府知事らが政党に覚悟を問い、それをもとに支持政党を決めると迫ったことで、にわかに知事会に関心が高まりました。
 我が民主党も、中央集権体制を抜本的に改め、市町村に権限と財源を大幅に移し、国からのひもつき補助金を自治体が自由に使える一括交付金に変えるとうたい、自民党は、補助金や交付税、税源配分の見直し、道州制基本法を制定し、2017年までに道州制を導入するなど、全国知事会の要望の丸のみに近いと言われました。医療や介護、子育て支援など、現場がわかる自治体が権限や財源を握ったほうが、実情に合い効率的だと言われています。
 そこで、都道府県が本年度、当初予算に計上した法人二税─法人県民税、法人事業税は全国で41%減となり、トヨタ自動車の愛知県は64.6%減、我が県も45.8%減であります。財源不足を補う地方債は、大幅にふえる見込みです。法人県民税並びに法人市町村民税と法人事業税は地方偏在が激しく、平成19年度で人口1人当たりの税収格差は6.6倍、つまり、税額で比べれば、東京、愛知と地方では雲泥の差があり、偏在性がはっきりする。法人課税ばかりでなく、個人住民税3倍、固定資産税2.2倍、地方税計で3.1倍差があるのは、皆さん承知のとおりであります。所得、地価、法人数、人口、交通アクセス、施設、中央集中効果を初め、大きな差があり、つまり、さまざまな税源を都会が設けることは可能です。
 個人が生活に欠かせない消費税は、人口1人当たりの税収格差は1.8倍ほどで、低成長ではむしろ縮まった。都会人は節約の余地があったが、地方住民は生活に追い詰められ、節約の余地は少ない、その結果ではないでしょうか。他の税に比べ、偏在性がないのは当然であります。岩手などは四国の広さに人口減が進む。つまり、地方消費税を地方の税収の根幹としての地方自治は、どだい無理であります。地方消費税を主体にすれば富の偏在性が増し、社会や経済に悪影響を与えると考えますが、地方分権とその税収はどう考えているか、知事にお伺いします。
 また、市町村税収の個人住民税と固定資産税も大きな問題です。先ごろ地価公示結果が発表されましたが、地方では過去最大の地価下落でありました。市街地はもちろん、農地価格に至ってはただ同然で、固定資産税は大きな重荷であります。しかし、公示価格が大幅に下がっても、3年ごとに見直すはずの固定資産税は準拠しているでしょうか。平成6年以降、20年近くも県内の公示価格が下落傾向のもと、固定資産税額は大きく低下していないのではないでしょうか。
 我が県の農家などは昔の家屋敷の広さそのままで、更地にして販売したら買い手もなく、シャッター通り商店街も、もう住宅にしか使えないのに、路線価、固定資産税で押しつぶされそうです。したがって、家を守った者に、相続評価などでは、都会に出た兄弟から見当違いの談判を強いられると漏れ聞くところです。
 市町村では財政計画が立たないので、長期計画でも、固定資産税はもちろん、人口も大きな減少が確実なのに考慮されていない場合も見受けられます。この矛盾とも思える実態を、知事はどのようにとらえ危惧しておられるか、お伺いします。
 国は、政府と与党の税制調査会が並列していた税決定の仕組みを、政府内に設ける新政府税調に一元化され、国会議員で構成される予定であり、地方分権改革は、地方の首長らが加わる国と地方の協議の場を新設するそうである。民主党政権となり、地方の代弁者として期待されている達増知事に、意見具申の要請が来るのではないでしょうか。地方の実情をぜひ反映されるよう期待するものです。
 次に、いわて花巻空港の運営について伺います。
 日本航空の再建が連日報道され、大きな問題であります。国際的に見て割高な着陸料や航空燃料税などを原資にして日本各地に空港は本当に必要だったのか。これを負担している日本の航空会社は、アジアの航空会社が躍進する中、本当に生き残れるのでしょうか。
 国土交通大臣も、不採算を生む大きな要因の空港特別会計の抜本見直しの方針を明らかにしました。議論が本格化すれば、国の予算編成や地方の空港整備に影響を与え、県負担がふえるのは必至です。花巻空港は4月、ターミナル竣工を祝ったばかりですが、8月末、札幌便3往復に増便、しかし、9月16日には、名古屋便2往復廃止の方向となりました。
 一方、地方空港の国際線誘致は、税金でソウルのハブ空港化を促進するようなものとの論もある。空港収支の情報開示や、効果や必要性の議論が始まっています。国内にひしめき合う過剰な空港は、このままでは共倒れになる。北海道では丘珠空港撤退も浮上し、本県同様の空港整備の最中であり、道議会、札幌市議会で整備のあり方が疑問視されています。我が県も、平泉文化遺産登録を見込む来客増や国際便期待で現在並行誘導路を整備中ですし、今回の補正で3、000万円の国際線カウンター整備調査設計費が計上され、次年度以降の整備費も、緩衝緑地帯も含め14億円も残っています。
 航空政策研究会の調べによれば、平成17年度時点で花巻空港自体7億円ほどの運営費赤字で、旅客数50万人ほどしかなく、平成20年度は36万人で利用率52.5%と、全国の中で最も経営が厳しい空港だ。同研究会によれば、年間200万人の利用が損益分岐点ということであります。この際、予算を凍結しながら、その日ばかりの一喜一憂ではなく、我が県も将来の広域行政をにらみながら、東北ブロック単位の連携や機能の最適化が欠かせないと思うのですが、知事のお考えを伺います。
 次に、基盤整備について伺います。
 賛否両論の高速道路料金1、000円は、お盆やシルバーウィークの交通渋滞を初め交通体系に大きな影響を見せつけ、飛行機、新幹線、フェリー、高速バスなど、公共交通機関に大きな影響をもたらして、CO2排出量や貨物輸送の定時配送に不安の声がわき上がっております。しかし、国土交通省が隠していた無料化試算によれば、2.7兆円プラス効果だそうです。そこで、定時配送を守ろうと、生鮮食品を初めとする荷主のトラックから鉄道への振りかえニーズがふえてきたそうであります。
 JR貨物は、経済不況の中で、2008年度のコンテナ輸送量も07年度比5%減と、4年ぶりに前年を下回ったが、環境重視の流れの中で荷主を掘り起こす実働部隊─ソリューションチームを設置し始めたといいます。年初めは60ほどだった顧客別のチーム数は、本年度内に100を超す勢いなそうです。しかし、本県のトヨタ関連のコンテナ輸送も、東京圏で、従来貨物専用線であったところに旅客用の埼京線を走らせるなどして、東京通過の便が深夜に限られるなど増便が難しいとの声も漏れ聞くが、本当でしょうか。
 JR貨物は、2010年度末までに東京-福岡間で長大な26両編成の貨物列車が走れる線路を整備し、大型トラックの積載量に相当する10トン級の大型コンテナの荷役ができる貨物駅をふやすことなどを目指しています。以前にも質問があった北上・相去貨物ターミナルの本格検討に取り組んでいるか、お尋ねします。
 一方、先般、IGRを視察しましたが、新駅効果は出ているものの、料金はJRに比べ割高だし、黒字化を意識した盛岡周辺往復を強めると、二戸、八戸へのダイヤが減らざるを得ない。路線基盤の維持など、長期展望は開けない。また、青い森鉄道の経営は、IGRよりはるかに厳しい状況であります。
 一方、JR東日本は大幅な黒字を維持し、新幹線は当初予想より大幅な旅客増、JR貨物もJR東日本のあおりを受けながら何とかやっていると聞きますし、旧東北本線のIGRの経営も、新たな視点で見直されるべきと期待するところです。
 長崎新幹線延伸に関しては、対象の在来線地域の反対で、当面、JRが在来線運行を引き受けました。いっそのこと、IGRの運営もJR東日本、JR貨物に再交渉して運営を返還すべきと思いますが、県に再考する考えがあるか、伺います。
 次に港湾ですが、半年ほど前、委員会調査で仙台港を調査しました。私は、これまで、仙台港はやがて手狭になり、大船渡や釜石港から県央の自動車や物品が出ていくと説明を受けて、県内港湾整備に賛成してきました。しかし、どんどん拡張していく仙台港。そのアクセスは、仙台北部道路を通って東北道に結ばれる予定であり、その周辺こそ、セントラル自動車を中心にした一大自動車産業の集積地になると見込まれています。
 宮城県知事は、不況を心配して、トヨタのトップに工場進出について再確認をしていると報道されていました。仙台港は、さらに来年度の国土交通省の予算で、物流インフラ整備や災害対策に重点を置いた整備をするといいます。我が県の港湾は、いつになったら本格的荷役の時代が来るのでしょうか。ますます荷役作業の物流コストの差が開くばかりではないでしょうか、お伺いします。
 あわせて、定時配送のできない工業団地への企業誘致や維持は、さらに厳しい局面にならないか。私は、高速道路料金の無料化の流れの中で本県の輸送体系の将来像を早急に描き、関係方面に働きかけるべきと思うがいかがでしょうか、伺います。
 次に、民主党が時代に合わない国の大型直轄事業は全面的に見直すとしており、その代表的なものがダム事業であります。民主党は、ダムは河川の流れを寸断して自然生態系に悪影響をもたらすとともに、土砂の堆積によって長い年月には利用不可能が危惧されるため、緑のダム構想として森林再生、保水機能で治水政策の転換を掲げております。
 今回見直しされるダム事業の対象は本県四つで、知事は記者会見で、すべて必要なダムと明言されました。胆沢ダム、簗川ダム、遠野第2ダムはかなり工事が進んでいる。そして津付ダムです。ダム建設で得られる洪水防止などの便益を費用で割った費用対効果では、国の直轄ダムのほとんどが、利水、発電を含む八ツ場ダムより下回る予想です。
 前原国土交通大臣は、鳥取県が中止した県営中部ダムを例にするそうです。当時の片山善博知事が事務当局に再計算を求め、ダムをつくらなくても費用の安い河川改修で十分な治水対策を得られるとの結果で、地域振興策とセットで地元を説得したとのことであります。
 そこで、津付ダムは、建設事業に伴うつけかえ道路として、国道397号の改良工事が平成19年度に着手されたばかりです。国道397号の改良については、県央から大船渡への交通アクセスを改善するために必要な事業と認識しております。本音は、ダムのつけかえ道路として改良するほうが、早期に立派な道路ができるとの話がある。津付ダムは、特に見直し対象として問題になっている治水対策のみを目的としたダムであります。気仙川の水源地の稜線の頂上は種山ケ原で、公有地の今は余り使われていない北上山地の山系開発地600ヘクタールに及ぶ広大な牧草地で、住田側は450ヘクタールです。県が森林を伐採しておいてダムが必要とは、私には理解できません。
 ブナ、ミズナラの植林事業の予算を要求し、流域の洪水対策を施して、温暖化防止に貢献する新しい時代の緑のダムの全国の模範とすべきではないか、津付ダム建設事業を見直す考えはないか、所感をお聞かせ願います。
 次に、木造住宅の建築基準について伺います。
 一般的な木造住宅について、新築時は構造計算が不要なのに、増築の際には必要という規制になっていたが、不平等で厳し過ぎるとの批判にこたえる形で、9月から国土交通省が規制緩和を実施しました。これまでの建築基準法の規定では、木造建築を増築する際、耐震性が十分かどうか調べる目的で、複雑な構造計算を設計事務所などに依頼しなければならず、経費と時間がかかっていました。今回の緩和により、1981年以前の旧耐震基準によって建築された建物の増築についても、補強などにより耐震レベルに適合することなどが確認できれば、構造計算が不要になるといいます。
 エコな社会の中で、住宅の長寿命化が叫ばれています。また、近年では、在来工法の壁と柱が呼吸できるものが、耐久性のある住宅として見直されてきています。従来の伝統構法に見られる太い柱、はりとぬきによる構造の建物は地震に弱いのでしょうか。大地震に耐えてきた建物も、京都、奈良を初め多くあります。耐震性のある軸組工法を積極的に採用することのできるよう、国は伝統的な日本家屋の強さについて考え方を見直す必要があるのではないか。
 本県は、かつての林業公社の赤字600億円を超える債務を抱えていますが、全国的にも大きな林業振興の課題は、家屋の建て方、伝統工法の採用などによる木材消費の拡大にかかっています。気仙大工を初め、たくみのわざをぜひ生かしたいものであります。
 木造住宅の建設促進のため、伝統構法にも適用できる設計基準の整備などを強力に国に働きかけるべきと思うのですが、いかがでしょうか。
 あわせて、国体に向けて盛岡に建設予定の屋内体育館施設を木造アリーナで企画するのも岩手らしいと思うのですが、御検討願います。
 次に、農業振興施策について伺います。
 農業者戸別所得補償制度についてでありますが、この制度は、まず米を生産する販売農家を対象に、生産費と販売価格との差額を基本とする交付金を交付するものとして、新政権が提案しているものであります。
 1次産業は、働けど働けどなお我が暮らし楽にならざり、じっと手を見るとつくづく思うところです。多くの地域や農家で、販売価格が生産費を下回り、限界に来ている状況にある。私は、今度の制度は、昔の生産費所得補償方式だと思っています。つまり、生産費のとらえ方が肝心です。
 農林統計岩手の米1俵当たりの生産費の内訳を見ると、種苗費600円や農機具費1、900円など理解できない低さです。そして、1俵1万2、000円の収益、つまり、生産者の販売額です。生産費は1万6、000円なので交付金は4、000円となると思うが、どうか。つまり、逆ザヤから4、000円の労働費のゆとりが見込める。10アール当たり8俵で3万2、000円の生活費が生まれる。これでも壊れかけた水路は直せない。つまり、1ヘクタールで32万円、10ヘクタールで320万円です。最低生活だが、今よりましであります。
 経営体のあり方まで政治が拘束するのはやり過ぎです。規模拡大、経営合理化は農家自身で判断すればいい。コルホーズ、ソホーズ、人民公社、キブツと世界の歴史が経験済みなのに、減反政策、土地改良などにかこつけて、経営の一体化、大規模化を押しつける、田畑を持ち続けるのは農地の値上がり待ちだと非難する論調は、枚挙にいとまがありません。知ったかぶりの政策は、農家として腹立たしい限りです。
 一日も早く民意を反映した政策で、農家として自然にはぐくまれた素朴な暮らしを過ごしたい。今度の農政改革で、我が県は何を実態に合わない政策であったと反省し、どう農業県として主張したいと考えているのでしょうか、伺います。それが無駄を排した戸別所得補償制度なのですから。
 次に、家畜改良関係について伺います。
 先月3日、新聞各紙に報じられたところによれば、農林水産省所管の独立行政法人家畜改良センターが社団法人家畜改良事業団に対し、ブランド肉用牛などの凍結精液をとる種雄牛を独占的に無償で40年以上貸し付けていたそうです。精液の売り上げは2007年度までの5年間だけで、約33億7、000万円に上るという。会計検査院は天下りの多い家畜改良センターに対し、貸し付けの有料化と凍結精液を販売している他の団体も含めて、競争入札で増収を求めたと報じられていました。全国の家畜改良のリード役であった同事業団。もちろん、本県でもかなりの割合で農家に利用されており、厳しい畜産の経営状況からも、信頼していた事業団のぼろもうけと天下りの温床である実態に、農家は裏切られた気持ちであろうと思います。
 もとより、種雄牛の造成は、数年かけて検定を行っても必ずしもよい成績を示すとは限らず、大変なリスクを伴うものであります。最近では、この事業団のほかにも全国的に凍結精液を供給する団体もあり、県有種雄牛との間で販売競争も激しくなっていると思われます。こうした状況の中で、今回の会計検査院の指摘を契機に、本県では、今後、種雄牛の造成事業をどのように進めていこうとしているか、お伺いします。
 最後に、教育施策について伺います。
 8月末に文部科学省は全国学力テストの結果を公表しましたが、どういう環境のもとでどんな勉強をすればよいのか、考えさせられます。
 私も1学年1クラスしか知らない分校の小学校、小規模中学校教育を受けましたが、本県は小学校409校中119校の僻地校を有し、140校で複式学級が行われており、中学校でも、191校中僻地校43校と、ともに4分の1を占め、中学校での複式学級も10校で行われているとのことです。ますます進む少子化の中で小規模化が進んでいます。
 小規模校においては、生徒の社会性、集団の中の切磋琢磨の欠如などの課題が指摘されています。また、小規模校ゆえに、教師に対しストレートに物言いができない父兄もいると思われます。この傾向が強まることを私は危惧しているところです。教育委員会は、このことをどのようにとらえ、各自治体や学校にどう対処されるおつもりか、伺います。
 学校が地域のつながりの原点で、みんなが生まれた地域で住めればいい。しかし、最近は、田舎ほど地域から出て暮らさざるを得ない時代です。
 江刺の種山ケ原のふもとに、宮澤賢治の風の又三郎のモデルになったと言われ、映画のロケにも使われた小さな学校があります。
 どどうどうどう、酸っぱいリンゴを吹き飛ばせ。そう言えば、紅玉のような、甘酸っぱく、かじると汁が飛び散るリンゴに最近出くわさなくなった気がする。そんなリンゴのようなほっぺに出会いたい。
 以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 渡辺幸貫議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新政権に対する期待等についてであります。
 私は、新政権は、先般の本格的政権選択選挙によりまして、この国の大きな変化を求め、また、政治の変革と進化を期待し、そして、新しい政治を切り開いていこうということを決断した、国民の民意によって選択された政権だととらえております。
 また、民主党は、マニフェストにおいて、官僚依存の政治から政治家主導の政治への転換などを基本原則として掲げています。今までの業界ごとに官僚が縦割りで政策を決めていくいわゆる分断の政治が、国民の声を反映して政策が決まっていく、いわゆる熟議の民主主義による政治へと転換されて国民の生活を第一とする、そういう政治を実現していく、国民に開かれた政権になることを期待しています。
 さらに、具体的な政策面について申し上げますと、厳しい経済情勢のもとで、何よりもまず、国民が安心して暮らせる社会の実現に向けたセーフティネットの構築が重要と考えております。国と地方が、対等な立場で適切な役割を担いながら、経済、雇用政策と福祉、社会保障政策を有機的に連携づけて推進していくことで、国民の生活が保障されるということを期待しております。
 次に、地方分権とその税収についてであります。
 地方のことは、地方みずからの責任において、みずからが決定し、実行していけるような地域主権型の行財政システムへの転換を図るために、地方税財政基盤の充実を基本とした分権型の地方税体系の確立が求められています。
 このため、国から地方への税源移譲等により、国と地方の税源配分を1対1にすることを目指して、自主財源である地方税源を充実強化することが重要であり、その際には、偏在性が少なく安定的な地方税体系を構築する必要があります。
 住民が、地方自治体から行政サービスの提供を受けるとともに、そのための経費を住民相互の間で広く負担し合うのが地方自治の本来の姿であり、行政サービスが利用される局面でバランスよく課税する必要があります。所得の分配面で課税する個人住民税を中軸としながら、それを生産面及び支出面における課税である事業税の外形標準課税や地方消費税によって補完していくのが、望ましい地方税体系であると言われております。
 また、今後、地方税源の充実が図られ、歳入における地方税のウエートが拡大していけば、住民の間で、みずからの地方税負担と行政サービスのあり方についての関心が高まり、真の地方自治の定着につながるものと期待しております。
 次に、市町村の固定資産税等についてであります。
 固定資産税については、平成6年度から、宅地について地価公示価格等の7割をめどとして評価を行っています。これに伴い税負担の急激な上昇を抑制するための調整措置が講じられています。
 この結果、地価下落が続く中にあっても、税額の緩やかな上昇が続いている土地もありますが、いずれ負担調整が収れんするにつれて地価水準に応じた課税が実現されるものと見込まれます。
 また、個人住民税については、税収の確保を図るため、担税力の源となる個人所得の増加につながるよう地域経済の発展に努めていくことが重要です。
 これらの税収については、将来の確実な予測は難しい面もありますが、市町村に対して、社会経済の動向を見通した適正な見積もりについて助言してまいりたいと考えております。
 次に、いわて花巻空港の運営についてであります。
 いわて花巻空港は、本県唯一の空の玄関として、産業振興や観光振興、国内外との地域間交流などにおいて極めて重要な役割を担っております。今後も、平泉の世界遺産登録や本格的な国際交流時代の到来などを見据えた施設整備を着実に進めつつ、関係者が一体となって利用の促進に努めてまいります。
 一方で、いわて花巻空港を含む地方空港は、世界的な景気の悪化による航空需要の低迷や、また、それに伴う航空会社の経営状況の悪化により、路線の縮小などが行われ、現在、厳しい状況にあります。
 こうした中で、今後は、地方の航空ネットワークの維持に向けた方策の検討を進めるとともに、複数の空港を組み合わせた広域観光ルートの開発やブロック単位でのPR活動など、他県との広域的な連携を強化してまいります
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔商工労働観光部長廣田淳君登壇〕
〇商工労働観光部長(廣田淳君) まず、北上・相去貨物ターミナルについてでありますが、これまでも、貨物ターミナルの設置に向けてJR貨物と定期的に協議を続けており、設置に当たっては、相当量の貨物量の確保、整備の財源などの課題をクリアすることが必要と考えております。
 貨物量につきましては、きたかみ新貨物駅設置促進協議会と共同で、本年1月から3月までの間、県内を中心に約800事業所を対象とした鉄道輸送を利用可能な貨物がどの程度あるのか把握するためのアンケート調査を実施したところであり、今月27日に開催されます協議会の総会において、その結果を報告することとしております。
 今後とも、きたかみ新貨物駅設置促進協議会と連携して、その調査結果を示しながら、JR貨物に対して粘り強く働きかけてまいります。
 なお、東京を通過する貨物列車は、朝夕の通勤時間帯以外は、貨物列車の増便は可能であると聞いております。
 次に、物流輸送体系の将来像についてでありますが、高速道路料金の無料化に伴い、物流環境にとっては輸送コストの減、渋滞による輸送時間の増等の変化が予想されますものの、企業誘致を含めてどの程度の影響があるのか、現時点では見定めることは困難であり、今後、国が進める高速道路料金の無料化の推移を注視してまいります。
 したがいまして、輸送体系の将来像につきましては、モーダルシフトの推進、二酸化炭素排出量の削減等の政策と相まりまして、国全体の視点からどのように変わっていくかが重要であり、県としましては、国の政策の推移を見ながら対応してまいりたいと考えております。
   〔地域振興部長加藤主税君登壇〕
〇地域振興部長(加藤主税君) IGRの運営についてでありますが、JR東日本に運営を返還することにつきましては、経営分離のこれまでの経緯やJR東日本等関係者の受けとめを考慮すれば、現実には困難ではないかと認識しているところであります。
 しかしながら、並行在来線制度では、JR貨物の運行につきまして、トンネルや橋梁などの既存施設の使用料や固定資産税、資金調達コストが線路使用料に算入されていないことにより、鉄路を維持する地方の超過負担が生じていることなど、不合理な点が多々ございます。
 現在、北陸など整備新幹線の建設が進められている地域においては、並行在来線の経営分離について根本的な議論も巻き起こっているところでございます。
 こうした動きを制度の改善を図る好機ととらえ、関係道県と連携して、国に対して、並行在来線のあるべき姿について提言し、不合理を是正してまいりたいと考えております。これらの取り組みによりまして、IGRの経営安定化につなげてまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長佐藤文夫君登壇〕
〇県土整備部長(佐藤文夫君) まず、県内の港湾についてでありますが、県内企業の物流支援のため、東北横断自動車道釜石秋田線の整備など物流ネットワークの構築を推進しているほか、完成自動車などを運搬する道路ルートの良好な維持を図るため、企業や道路管理者等から成る連絡協議会の設置やコンテナヤードの機能強化など、ハード、ソフト両面での質の高いサービスを提供し、港湾の利活用に積極的に取り組んでいるところでございます。
 特に、自動車関連産業については、東北一円を自動車関連産業の一大集積拠点とするよう東北各県が共同で取り組んでいる中で、完成自動車の物流に当たっては、釜石港が、直接外国へ輸出可能な大型自動車運搬船が接岸できる公共埠頭を有していることから、その優位性を今後も強くアピールし、取り扱いの拡大に結びつけてまいりたいと考えております。
 また、コンテナ貨物につきましては、宮古港、大船渡港に続き、釜石港でも第三セクターの釜石港物流振興株式会社が、ことし9月にジブクレーンを搬入し、コンテナ定期航路を開設する予定でありまして、県内の企業の方々への利便性の向上がより一層図られるものと期待しているところであります。加えまして、県内の港湾を利用した場合に、陸送する所要時間、距離が短くなること、それに伴い省エネの推進にも貢献することなどのメリットを認識していただくよう、県、市及び荷役業者が連携して取り組んでいるポートセールス等を通じまして、より一層県内の企業に働きかけてまいりたいと考えております。
 次に、津付ダム流域における植林による洪水対策についてでありますが、森林は、水源涵養機能、山地災害防止機能、生活環境保全機能など、さまざまな公益的機能を持っており、森林を適切に保全、管理し、これらの機能の向上を図ることは、重要なことと考えております。
 しかし、洪水対策の対象となるような大雨の際には、ある程度の降雨量に達しますと、森林土壌が雨で飽和され、森林域からも降雨はほとんど流出することから、森林の保水機能は限定的であると言われております。
 なお、洪水対策を検討する際には、流域内の森林の保水機能を前提に計画しているところでございます。
 次に、津付ダム建設事業についてでございますが、治水対策の手法には、御案内のとおり、河川改修やダム、あるいは遊水地による洪水調節施設を設置するなど、さまざまな方法があり、社会的、経済的な影響などを勘案しながら、それぞれの河川の特性に応じて最適な手法を選択し、進めてきたところでございます。
 気仙川の河川整備基本方針では、流域面積の大きさ、洪水はんらん想定区域内の人口や資産の規模、また、県内の主要河川の治水安全度が降雨確率規模で50分の1から150分の1となっていることなどを勘案しまして、治水安全度を70分の1としているところです。
 また、治水対策の手法は、ダムと河川改修を組み合わせて行うことが社会的にも経済的にも最適であると判断しているところでございます。
 治水対策の進め方でございますが、気仙川は、現況の治水安全度が20分の1程度の能力しかなく、70分の1まで段階的に治水安全度を引き上げることとし、まずは、津付ダムを先行して整備することによりまして、ダムの下流全川にわたり、おおむね30分の1程度まで治水安全度を引き上げるとともに、並行しまして河川改修を進めていこうとしているものでございます。
 事業を進めるに当たりまして、政策等の評価に関する条例に基づきまして平成16年度に再評価を実施し、大規模事業評価専門委員会におきまして、事業継続とした県の評価は妥当であるとの答申をいただいて進めているところでございます。
 前回評価から5年が経過したことから、今年度、大規模事業評価専門委員会で再度審議中でございまして、その答申結果を踏まえて、今後の県としての対応を決めていくこととしております。
 次に、木造住宅の建築基準についてでございますが、伝統的構法による木造住宅は、地域の技能を継承するとともに、地域の魅力を形づくっております。
 また、木材消費の拡大を図るためには、住宅資材での利用拡大も重要でありまして、環境に配慮しつつ、地域の森林資源を活用した木造住宅の建設促進が効果的であると考えております。
 こうした中、木造住宅の増築時における基準の緩和が行われたことは、増改築の促進につながっていくものと期待しているところでございます。しかし、昔ながらの伝統的構法による木造住宅につきましては、依然として、建築するために構造計算が必要となっております。
 地域のニーズに対応するため、こうした伝統構法を生かした住宅の建築が容易に可能となるよう、伝統的木造軸組構法の構造的な安全の検証が求められている状況でございます。このため、国土交通省において、昨年度から来年度までの3年間で、伝統的木造軸組構法による住宅の性能検証実験及び設計法の検討が進められているところでございます。
 県におきましても、気仙大工などの伝統的技能と実績を有しておりますことから、伝統的構法による木造住宅が円滑に建築することのできる環境の整備が進むよう、設計基準の整備等について、国や関係機関に対して働きかけてまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長瀬川純君登壇〕
〇農林水産部長(瀬川純君) まず、農業者戸別所得補償制度についてでありますが、これまでの水田農業政策は、より消費者や市場を重視した考え方に立ち、需要に即応した米づくりの推進と食料自給率の向上に向けた麦、大豆の生産拡大を通じて、水田農業経営の安定と発展を図ることを目標としておりますが、一方、生産者の側に立って見れば、生産費の変動が収入減少時の補てん等に必ずしも反映されがたい制度となっています。
 このため、国に対し、米価を初め、農産物価格の低迷や生産資材の高騰など、農業を取り巻く情勢が厳しさを増す中で、再生産可能な収入額が確保されるよう、セーフティネットの充実について、さまざまな機会をとらえて要望してきたところであります。
 現在のところ、農業者戸別所得補償制度は、その詳細が示されておりませんが、米や麦、大豆等の生産数量目標に即して生産を行った販売農業者等を対象に、生産費と販売価格との差額を基本とする交付金を交付するものと承知しており、新たな制度の創設により、農産物価格の低落や生産資材の高騰時にあっても、農業者の経営の安定が確保されるものとなるよう期待しております。
 県としては、今後、十分な議論が尽くされ、農業経営の持続的な発展につながる制度となるよう、農業者等の意向を十分に反映し、わかりやすい制度にすること、経営規模の拡大など、農業者の経営改善努力が反映されること、現行の水田農業に係る各種助成水準を下回らないようにすることなど、本県の実情やこれまでの取り組みを踏まえながら、国に対して提案してまいります。
 次に、今後の種雄牛の造成事業についてでありますが、肉用牛生産者の所得向上を図り、主産地としての地位を確立するためには、肉質にすぐれ、増体能力も兼ね備えた本県オリジナルの種雄牛を造成することが、極めて重要であると考えております。
 県では、これまでに41頭の種雄牛を造成してきたところであり、県内で利用される凍結精液に占めるシェアは近年増加し、平成20年度で34%となっております。
 一方、社団法人家畜改良事業団は、独立行政法人家畜改良センターなどとの連携により、全国規模で種雄牛の造成と凍結精液の販売を行うなど、家畜改良を進める上で一定の機能を果たしており、本県においても、種雄牛の造成に向けた計画的な交配において、事業団の凍結精液を活用しております。
 今後におきましても、多様な遺伝子源を有する家畜改良事業団との連携を進めるとともに、遺伝子情報など先端技術の活用を図り、優秀な種雄牛の効率的な造成に取り組んでまいります。
   〔教育長法貴敬君登壇〕
〇教育長(法貴敬君) 小規模校についてでありますが、小規模校は、教師と児童生徒の人間的な触れ合いが深まり、一人一人に目が行き届きやすいなどのメリットがある反面で、固定化された集団のために、児童生徒の社会性、集団の中の切磋琢磨の欠如などの課題も指摘されております。
 学校教育では、家庭から一歩進んだ第二次社会集団として多様な人間関係の中で自主性をはぐくむ教育活動が求められており、統合再編が行われたことにより、社会性の育成や、お互いから学び合う機会による学習意欲や自主性が向上しているなどの報告がなされております。
 したがいまして、小・中学校の小規模校の統合再編につきましては、現在、通学距離、通学時間の増加等が児童生徒の心身に与える影響などについて、各地域においてさまざまな議論が進められておりますので、今後、各市町村と十分連携しながら、学校のあるべき姿を検討してまいりたいと考えております。
〇議長(佐々木一榮君) 次に、樋下正信君。
   〔35番樋下正信君登壇〕(拍手)

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