平成21年6月定例会 第12回岩手県議会定例会 会議録

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〇10番(菅原一敏君) 民主党の菅原一敏でございます。
 このたび、3度目の一般質問の機会をいただきましたことに感謝を申し上げます。
 通告に従いまして順次質問をさせていただきますので、県当局におかれましては、答弁を通じて、何事にも前向きに取り組む姿勢を県民に示していただきたいと思います。また、一般質問3日目の登壇でありますので、一部、これまでの質問と内容が重複するかもしれませんが、御了承を願います。
 それでは、岩手県議会基本条例第13条第3項に基づき、分割方式により質問いたします。
 最初に、県政推進の基本姿勢についてお伺いします。
 知事は、去る4月29日に就任満2年となり、1期目の任期の折り返し地点を迎えられました。知事がこの岩手県政を増田前知事から引き継いだ時点で、巨額の融資を行った岩手競馬、国に対する返還金が大きな負担となっている森のトレー問題、対応を放置してきた医師不足対策と県立病院改革、1兆4、000億円を超える県債残高、さらには国庫補助金に係る不適切な経理問題など、多くの負の遺産を引き継がざるを得なかったという事情に加え、昨年の岩手・宮城内陸地震、岩手北部内陸地震と2度にわたる大地震による大きな被害、そして、昨年夏以降の世界同時不況に伴う県内経済の落ち込みなど、知事自身にとって、まさに逆風が吹き荒れる中でのこれまでの2年間であったと思われます。
 知事は、この2年間を振り返って、県民との関係、県職員との関係、県議会との関係について、それぞれどのように感じ、どのような感慨をお持ちになっておられるでしょうかお伺いします。あわせて、特に印象に残っていることなどについて率直にお聞かせいただきたいと思います。
 今年度予算は、平成13年度以来、8年ぶりに前年度当初予算を上回る積極予算として編成をされました。知事はこの予算を逆風立ち向かい予算と名づけ、県民の暮らしと雇用を守るため、県民が力を合わせて逆風に立ち向かっていくその先頭に立つ意気込みを県民へのメッセージとして発信したものであり、高く評価されるべきものと思っております。しかしながら、今、県政は人口減少に歯どめがかからず、所得も低迷する中で、地域医療は崩壊の危機にあり、三位一体の改革が地方いじめにつながったことなどに伴って財政環境も悪化し、まさにこれ以上ないほど厳しい状況のもとに置かれております。
 このような状況を踏まえて、県においては集中改革プログラムなどに基づいたさまざまな改革を実行中でありますが、しかしながら、このことが、県立病院の病床削減と地域診療センターの無床化、振興局の行政センター化、あるいは県立高等学校の再編整備など、県民に対するサービスの低下や負担増を伴う結果となっているところであります。改革に痛みが伴うことは理解できますが、県民が一体となってこの難局を乗り切っていくためには、改革の先に見えるもの、すなわち夢と希望、そしてゴールがいつか、これを県民に対して明確に示すことが必要と思いますが、知事は、次の2年間、これからの2年間をどのような基本姿勢で県政を推進していくお考えなのかお伺いします。
 次に、財政運営についてお伺いします。
 最初に、県財政の現状についてお尋ねします。
 政府は、6月17日に発表した6月の月例経済報告において、景気の基調判断を、厳しい状況にあるものの一部に持ち直しの動きが見られるとして、5月に引き続き2カ月連続で上方修正し、景気の底打ちを宣言しました。また、日銀盛岡事務所においても、厳しい状況が続いているが、このところ悪化のテンポは緩やかになっていると本県の金融経済状況を発表しました。いずれにしても、さらなる悪化に下げどまり感が出てきたという程度であって、本県経済が好況に転じるのはまだまだ先であることは疑いようがないと思います。こうした中で、当然、税収は減る一方であり、税収不足を財政対策債でカバーするという綱渡りの財政運営が続いていますが、県は、県財政の現状についてどのように認識されているのかお伺いします。
 次に、集中改革プログラムについてお尋ねします。
 総務省が平成17年3月に示した地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針、いわゆる新地方行革指針などに基づいて、本県においても岩手県集中改革プログラムを策定し、平成19年度から取り組みを進めておりますが、集中改革プログラムに明示した数値目標の達成状況はどのようになっているのでしょうか。また、実施状況についての点検をどのように行っているのかお伺いします。
 次に、地方公共団体の財政の健全化に関する法律への対応についてお尋ねします。
 本年4月1日から地方公共団体財政健全化法が全面的に施行され、平成20年度決算から適用されることとなりますが、本県における健全化判断比率、4指標の状況はどのようになっているのかお伺いします。また、この地方公共団体財政健全化法では、これら数値を公表することとされておりますが、県において、公表に当たってそれぞれの比率の持つ意味など、県民にわかりやすく説明することが求められると思いますが、数値の公表に当たっての工夫など、どのような取り組みを考えているのかお伺いします。
 次に、地方債の発行についてお尋ねします。
 国の平成21年度補正予算に追加計上された公共投資を円滑に実施するため、去る6月15日付で平成21年度地方債計画の改定も行われました。地方債は、その起債の目的ごとに財政融資資金などの公的資金あるいは民間等資金のいずれかが充当されることとなっており、このうち市場公募債が、改定後の地方債計画上、民間等資金の43.5%を占めておりますが、本県における市場公募債の導入状況について、以下、2点をお尋ねいたします。
 まず、銀行、証券会社などがシンジケート団を編成して地方債を引き受け、全国規模で資金調達を行う全国型市場公募債は、今年度において全国46団体が発行しているとお聞きしておりますが、本県の全国型市場公募債の導入についてどのように認識をされているのかお伺いします。
 次に、募集対象を地域住民等に限定した住民参加型市場公募債については、青森、秋田、岩手3県が共同発行する北東北みらい債が、平成15年度から毎年度1県当たり20億円、3県全体で60億円が発行され、本県においては、交流ネットワーク道路整備事業として県際道路等の整備に充当されています。この住民参加型市場公募債は、地域住民の行政参加意識の高揚、地方債の個人消費の促進、資金調達手段の多様化などの長所がありますが、県として、今後、新たな市場公募債の導入を行う考えはないのかお伺いいたします。
 登壇しての質問は以上で終わります。ここまでの質問に答弁をいただきたいと思います。
   〔10番菅原一敏君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 菅原一敏議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、知事就任2年間の総括についてでありますが、県民の皆さんとの関係については、知事就任以来、県内各地を訪問し、多くの県民の方々と直接語り合うことを通じまして課題を共有することができたほか、各地域において熱心に活動を実践されている姿を拝見し、県民のたくましさ、力強さを肌で実感することができました。今後、岩手の未来を切り開いていくためには県民の皆さんとの協働が不可欠であり、行政とともに地域づくりを担うパートナーとしての役割を期待するところであります。
 職員については、ともに仕事に取り組む中で、その潜在能力や意識の高さを感じているところでありますが、岩手がさまざまな課題に直面する今、職員にはその課題の本質を理解したうえで、さらに強い使命感と果敢に挑戦する気持ちを持って立ち向かっていくことを期待しています。
 県議会については、岩手県議会基本条例の制定を初め、県民目線で議会改革を推進している全国でも有数の先進的な議会であると承知しており、今後ともさまざまな県政の重要課題について熱心に議論をいただきたいと考えております。
 また、特に印象に残っていることとしては、やはり昨年の岩手・宮城内陸地震であり、被災者支援や災害復旧、風評被害対策など苦労はありましたが、逆にそこから立ち直ろうとする県民の皆さんや職員一丸となった頑張りに、岩手県民の底力を強く感じたところであります。
 次に、今後2年間の県政運営の基本姿勢についてでありますが、まずは、さらに厳しさを増している雇用の維持、創出や、医師確保を初めとした地域医療の確保など、県民の仕事や暮らしの現場を脅かしている喫緊の課題について、しっかりと対応していかなければならないと考えております。
 一方で、今般公表しました新しい長期計画の素案に掲げた人づくりや、人と人、人と地域、地域と世界などさまざまなつながりづくり、さらには、経済的な豊かさと岩手の歴史、文化に培われた豊かさが調和した真の豊かさづくりなどは、長期的な視点で取り組むことが必要であると考えております。このように、喫緊の課題への対応と同時に、長期的な視点に立った取り組みを着実に進めることによりまして、子供たちなど、次の世代も含めた県民一人一人がみずからの希望に向かって生き生きと働き、地域社会の中でともに支え合いながら、ふるさと岩手で安心して暮らし、喜びを感じるような社会を実現していくことができると考えております。このため、本年12月を目途に新しい長期計画を策定し、その考えや内容を県民の皆さんと共有するとともに、県民、企業、NPO、行政など地域社会のあらゆる構成主体の総力を結集しながら、県民一人一人が希望を持てる岩手の実現を目指して全力を傾注してまいります。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔総務部長菅野洋樹君登壇〕
〇総務部長(菅野洋樹君) まず、県財政の現状についてでございますが、本県では、県債の償還など義務的経費の支出割合が高い水準にある中、地方税、地方交付税が減少し、県債に大きく依存した財政運営を強いられており、極めて厳しい財政状況にございます。これに加え、現下の深刻な社会経済情勢を考えますと、県税収入の動向も不透明であり、今後さらに厳しい状況になることも予想されるところでございます。このような中にあっても、将来に向けて安定的で持続できる財政運営を行っていく観点から、地方税財政制度改革を引き続き国に強く働きかけると同時に、今後とも歳入歳出全般にわたる行財政改革の取り組みを一層進めていく必要があるものと認識いたしております。
 次に、集中改革プログラムの数値目標等の達成状況についてでございますが、このプログラムにおきましては、平成23年4月現在の知事部局の職員数を4、000人程度とするなどの目標を定めております。平成21年4月現在の職員数は4、162人となっており、おおむね計画どおりに進んでいるものと考えております。また、実施状況の点検につきましては、プログラムの工程表に基づき、毎年度、その取り組み状況の確認を行うとともに、諸情勢の変化に的確に対応するため、必要な見直しにも取り組んできているところでございます。
 次に、健全化判断比率、4指標の状況についてでございますが、平成20年度末の健全化判断比率は、平成20年度の決算等に基づき算出するものでありますことから、現在、その作業を行っております。平成19年度の4指標の状況を申し上げますと、実質赤字比率及び連結実質赤字比率、この両者は決算が黒字でございますので該当数値はございません。実質公債費比率は15.3%、将来負担比率は307.7%となっております。平成20年度においても特段大きな変動はないものと見込まれますので、したがって、早期健全化団体、財政再生団体いずれにも該当しない見込みでございます。いずれにいたしましても、依然として厳しい財政状況にあることには変わりなく、今後とも健全な財政運営に向けて努力してまいりたいと考えております。
 また、公表方法についてでございますが、これらの指標につきましては、専門的な分析数値でもあり、わかりにくい点は御指摘のとおりでございますので、そのため、公表に当たっては、単に最終的な数字だけでなく、その指標の持つ意味、算定方法をお示しするなど、本県の財政状況をわかりやすくお示しできるよう検討してまいりたいと存じております。
 次に、全国型市場公募債の発行についてでございますが、本県におきましては、民間資金の調達方法として、県内外の金融機関からの借り入れ及び北東北みらい債の発行により調達しているところでございます。全国型市場公募債につきましては、これを導入した場合の金利や手数料が現在の調達方法と比較してどのようになるか、市場の評価等を見きわめながら考えていく必要がございます。こうした点を総合的に勘案しつつ、安定的な資金調達が図られるよう、その導入について研究を続けてまいりたいと考えております。
 住民参加型市場公募債は、御指摘のとおり、県民の方々の行政参加意識の高揚等の長所がある一方で、調達額を多額に設定いたしますと、全国的には売れ残りが生じる例なども見られているところでございます。このような一定のリスクもありますことから、新たな住民参加型市場公募債の導入に当たっては、こうした点を踏まえつつ、本県にとって最も有利な資金調達は何かという観点から慎重に検討してまいりたいと存じております。
〇10番(菅原一敏君) 御答弁ありがとうございました。
 非常に苦労をされながらの2年間であったのだろうというふうに私も思います。知事がこの2年間を振り返って、県民との関係、それから県職員との関係、さらには県議会との関係についてそれぞれどのように感じておられるのか非常に大きな関心を持って私もお聞きしたわけでございますが、それぞれ県民との間では協働のパートナーとしての関係、県職員については、使命感を持って働いてくれることへの期待感、県議会については、それぞれ切磋琢磨をして県政のためにという良好な関係をそれぞれ保たれながらこられたのだなというふうに受けとめたところでございますが、今後2年間、一層頑張っていただきたい、そういうふうに思う次第でございます。
 1点、再質問をさせていただきますが、住民参加型の市場公募債についてでありますけれども、平成20年度発行の分についてその応募状況はどうであったのか。それから、購入者の内訳がもしおわかりになるのであれば、個人、団体、法人等どのような状況であったのかお聞きしたいと思いますし、それから端的に言って、これは人気があるのかどうなのか。金額の多寡によってはという御答弁でありましたけれども、では、どのぐらいまでが発行の限度であるのか、その点をお聞きしたいと思いますし、さらにもう一点、今は北東北3県の組み合わせでの発行になっているわけですが、これを例えば宮城県と共同で、岩手、宮城の県際地域の、例えば三陸縦貫自動車道の整備に対する負担金、これに充てるとか、そのようなことをしながらおくれている県境地域の整備促進を図るとか、そのような考えはないものかどうかお伺いしたいと思います。
〇総務部長(菅野洋樹君) いわゆる既存の市場公募債、本県の状況でございますが、幸い県民の方々の御理解をいただきまして、これまですべて完売させていただいております。そういった意味で大変ありがたいと存じております。ただ、その購入の内訳は、恐縮でございますが、そこまでは把握できてございません。
 ただ一方、他県においては、先ほど申しましたとおり売れ残りが出ているという実態もございますので、その辺は慎重に見きわめてまいりたいと存じてございます。
 それから、御提言のございましたいわゆる新たな市場公募債の発行、ミニ公募債の発行でございますが、県が行う事業に県債を充てる場合、その事業の内容によりましては財政融資等の国の公的資金を活用できる場合がございます。これが現状におきましては県として最も有利に資金調達ができる方法でございます。いわゆる道路事業─これは補助、直轄ともでございますが─これについては住民参加型市場公募債を充てることもできる一方で、いわゆる公的資金も充てることが制度上可能とされてございます。したがいまして、この両者のメリット、デメリットを総合的に勘案いたしまして、円滑な資金調達手段について検討してまいりたいと思ってございます。いずれにいたしましても、三陸縦貫道を初めとするそういった建設の促進に全力を尽くしつつ、その資金調達のあり方について慎重に検討してまいりたいと考えております。
〇10番(菅原一敏君) ありがとうございました。
 資金調達上のメリット、デメリット、それは理解できますけれども、それにまさる県民の行政への参加意識の醸成などという金額にはあらわれない効果もあるわけでございますので、前向きな御検討をお願いしたいというふうに思います。
 次に進ませていただきます。
 県政の大きな課題の一つであります県北・沿岸振興についてお伺いします。
 最初に、県北・沿岸振興本部についてお尋ねいたします。
 副知事を本部長とする県北・沿岸振興本部が平成18年1月に設置されておりますが、昨日も議論があったわけでございますけれども、本部としての活動の重点はどのようなことであったのか、その成果は上がったのかお伺いします。
 また、昨年の12月定例会におきまして、私の質問に対して副知事からは、平成21年度の予算編成に当たっては、県北・沿岸地域の実情に応じた取り組みを優先度の高い施策として最大限予算化できるよう努めると答弁されておりますけれども、今年度における具体的な取り組み状況と期待される効果についてあわせてお伺いいたします。
 次に、知事と地域住民との対話の場の設定についてお尋ねいたします。
 知事が県北・沿岸圏域にみずから出向いて住民との意見交換を行う移動県庁や出前授業、あるいは県北・沿岸振興本部会議などへの出席が実施されております。多忙な知事日程の中で制約が多いことは理解できます。また、知事の大変意欲的な取り組みは評価できるわけでございますけれども、実態は、時間的な制約がある上に課題も絞り込まれているということもありまして、私も参加させていただいておりますが、地域住民の満足度は必ずしも高くはないというふうに感じているところでございます。
 また、県政懇談会では対象を絞って、岩手フロンティア懇談会、草の根地域懇談会などがそれぞれ開催されておりますが、例えば県北・沿岸地域の振興について、より多くの地域住民を対象に、ある程度の時間をとって、参加しただれもが知事と対話のできるような場の設定を行う必要があると思いますが、今後どう取り組んでいくお考えなのかお伺いをしたいと思います。
 次に、県境地域の振興についてお尋ねいたします。
 県境地域については、隣接する県同士が歴史的にも文化的にも、そして経済的にも深いつながりを持ち、さまざまな面で互いに連携、交流を進めてきております。4広域振興局体制下で県は、県境に位置する地域をフロンティアと位置づけ振興を図ることとしており、今後の取り組みとしては、隣県との協力関係や社会基盤の整備、利活用、消防、防災、防犯、交通安全、観光等さまざまな機能の相互補完などが考えられますが、具体的にどのような取り組みが行われているのか、また、今後の取り組み方針をどのように考えているのかお伺いいたします。
 次に、広域振興局体制に伴う組織の見直し及び地域振興支援室の拡充強化についてお尋ねいたします。
 県では、広域振興局体制への移行は現行の仕組みを大きく改めるものであるとしており、県と市町村との関係、本庁と振興局との関係、人事、予算、権限などさまざまな分野での見直しが必要になると思いますが、本庁も含めた県全体の組織機構の見直しをどのような考え方で進めるのかお伺いいたします。
 また、本庁の組織体制の見直しに当たっては、県北・沿岸振興を担当する地域振興支援室の拡充強化が必要であると思いますが、どのように考えているのかお伺いいたします。
 次に、三陸沿岸海洋産業振興指針の策定についてお尋ねいたします。
 国の海洋基本計画を受けて、三陸沿岸海洋産業振興指針の策定が本年12月下旬をめどに予定されているとのことでありますが、内陸部との格差を是正し、沿岸振興を図る上で、三陸の豊かな海と海洋資源を活用した取り組みに大いに期待が持たれます。
 先般の陸前高田市で開催された県北・沿岸振興本部会議において、社団法人海洋産業研究会の常務理事である中原裕幸氏の講演が行われ、拝聴させていただきました。海洋産業は、政府の試算によりますと、2010年には市場規模約7兆円、雇用規模80万人と予測されており、今後の成長産業15分野の一つでもあるとのことでありましたが、これは、達増知事もかねてから提唱している海洋版シリコンバレーの考え方にも合致するものであると思われます。
 この計画を実効性のある指針とするために、その推進に向けての体制づくりが必要と考えますが、推進体制がどうなるのか、具体的なプロジェクトはどうなるのか、地域の活性化と雇用の場の拡充にも資するような大型の計画とされるよう期待しますが、現時点の考え方と方向性についてお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 地域住民との対話の場の設定についてでありますが、県北・沿岸振興をテーマにいたしまして、昨年度から移動県庁というものを実施しております。今年度は極力県職員同士の会議の時間を減らして、地域コミュニティ活動や食産業の振興に取り組んでいる皆さんとの意見交換、北里大学でのキャンパストークなど、さまざまな分野の方々との意見交換、また交流に重点を置いたところであります。改めてそれぞれの地域が有する宝を再認識するとともに、そうした資源を活用した地域振興の方向性を皆さんと共有できたと考えております。
 議員からの御提言については、どのような形で地域住民との対話を充実させていくのが望ましいか検討させていただきたいと思います。
 今後とも、移動県庁を初めとする各種の取り組みを通じて、地域の皆さんやNPO、市町村とともに力を合わせて県北・沿岸振興に取り組んでまいります。
〇副知事(宮舘壽喜君) 県北・沿岸振興本部についてでありますが、これまで、本庁関係部、関係地方振興局が連携いたしまして、産学官連携や企業支援などのコーディネーターの設置や、地域との協働による産業ネットワークの構築、企業誘致を初めとする各種優遇制度の創設などによりまして、県北・沿岸圏域の産業振興に重点的に取り組んできたところであります。その結果、新たな企業誘致や既存企業の増設を初め、食産業、観光産業、農林水産業におきましてもそれぞれ一定の成果が出てきているものと認識しております。
 今年度におきましても、引き続き、食産業では、農商工連携、いわゆる6次産業化による新商品の開発や高付加価値化の一層の促進、新たな販路の開拓、ものづくり産業では、人材の育成や北上川流域などの企業との取引の拡大、観光産業では、県境や圏域を越えた広域観光や地域資源を生かした体験型観光の一層の展開などについて重点的に取り組んでいくこととしております。
 特に本年度は、先ほどお話がありましたように、海洋資源を生かした総合的な産業振興に向けまして、三陸沿岸海洋産業振興指針─これは仮称でございますが─これの策定に取り組んでいるところであります。また、産業振興を支える道路や港湾の整備、農林水産業生産基盤などの基盤整備につきましては、県北・沿岸圏域に配慮した予算配分を行ったところであります。
 今後とも、地域の方々や産業関係団体、市町村などと一体となりまして、これまでの成果をさらに発展させ、地域の所得向上や雇用の創出に向けて全力を尽くしてまいります。
〇地域振興部長(加藤主税君) まず、県境地域の振興についてでありますが、県南地域では、例えば宮城県との間で県際連絡会議の開催による観光、農林水産業振興に係る意見交換ですとか公共事業に係る調整、市町災害時相互応援協定の締結、県際花めぐり紀行スタンプラリーなど、多彩な取り組みが実施されているところでございます。また、県北地域では、八戸圏域との間で産業経済活性化などの意見交換を行うとともに、広域観光推進のためのモニターツアー等を実施しているところでございます。こういった取り組みを通じまして、県境を越えた広域的連携や地域の活性化が図られていると認識しております。
 こうしたことから、新しい長期計画の素案におきましては、県の区域を越えた広域的な連携の強化を位置づけておりまして、これまでの協力関係や機能の相互補完などをさらに発展させるよう取り組みを強化してまいりたいと考えております。
 次に、地域振興支援室の拡充強化についてでございますが、県北・沿岸振興につきましては、広域振興局体制の整備にあわせて、より機動的、総合的な振興施策を推進するため、現在、地域振興支援室が有している機能の一部を、より現場に近い県北・沿岸の広域振興局に移管したいと考えております。一方、県北・沿岸振興本部は継続して本庁に置きまして、本庁と広域振興局が一体となって県北・沿岸振興に取り組む体制を確保してまいりたいと考えております。こうした基本的な考え方に立ちまして、具体の体制強化につきましては引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、三陸沿岸海洋産業振興指針の策定についてでございますが、海洋産業の振興は、県北・沿岸圏域はもとより、県全体として取り組む必要があることから、三陸の海の持つ多彩な資源を生かした包括的な産業振興施策の方向性を明らかにするため、今般、指針を策定することとしたものでございます。
 指針に盛り込む海洋産業の基本的な視点でございますが、今後詰めていくことでございますが、現在までのところを申し上げますと、地域に根差した産業集積の基盤となる産学官のネットワーク活動の拡大、三陸の海の資源を活用した新規ビジネス創出支援のための仕組み、インキュベート機能等の構築、中長期的な観点に立った技術開発や海洋研究のプロジェクトの導入、また、漁業の6次産業化、水商工連携などの加速化、こういったことにつきまして取り組んでいくこと、これが重要であると考えております。
 こうした指針を策定いたしまして、その後の推進に当たりましては、来年度スタートとなります広域振興局に関係者一丸となって海洋産業の振興を図るための組織体制を整備いたしまして、県北・沿岸振興本部を中心に全庁的に取り組んでまいる所存でございます。
〇総務部長(菅野洋樹君) 次に、組織機構の見直しについてでございますが、広域振興局体制への移行に当たりましては、その実効性を高めていくためには、本庁の組織体制についても新たな広域振興局体制と高い整合性を持ち、効果的な体制を構築するという観点から検討を進めておるところでございます。
 具体的には、部局横断的な総合力や機動力の発揮、市町村優先の行政システムの確立など広域振興局の担う役割を積極的に支援するため、全県的統一性を確保しながら、より一層効率的かつ効果的な施策の展開が図られるよう、企画調整、総務部門を中心とする本庁の機能強化について検討しているところでございます。本庁と広域振興局の間で最適な役割分担を行いながら、現在策定中の新しい長期計画に基づく施策を着実に推進できるよう努めてまいりたいと考えております。
〇10番(菅原一敏君) ありがとうございました。
 再質問させていただきますが、県境地域の振興については、これは市町村レベルのことを申し上げますと、30年以上も前から岩手、宮城の例では、隣接する市町村同士が協議会等をつくりましてさまざまな取り組みを行っているという歴史もあるわけでございます。県におきましても、それぞれ岩手、宮城両県に出先機関があるわけでございますから、これらを通じて、継続的に、あるいは重点的に接触し、情報交換、あるいはその基盤整備に向けた取り組みなどをされるように希望したいというふうに思います。
 お尋ねしますけれども、地域振興支援室の拡充強化についてでありますが、ただいまの部長の答弁ですとこの支援室の機能の一部を現場に移すというお考えのようですが、そうすれば、この本庁に残る地域振興支援室分は弱体化されるのではないかというふうに危惧されますけれども、この辺はどうなのか再度お尋ねしたいと思いますし、それから、この支援室の支援という漢字言葉といいますか、これは何かひっかかるんですけれども。というのは、だれかほかの人がやるものを支援するというような、言葉じりをとらえるようですが、そういうふうにも受けとめられるわけですから、地域振興推進室とか対策室とか、みずから取り組むということを組織の名前にも冠していただきたい、そういうふうに思います。
 それから、きのう五日市議員と副知事との間でやりとりがあったわけですが、県北、沿岸にそれぞれ振興本部を設置すべしと。非常にすばらしいアイデアだというふうに感じましたけれども、副知事は、振興本部は本庁にあって全庁的な取り組みを行うというふうなお考えのようでございますが、ならば、県北、沿岸にそれぞれ振興本部の支部でも置いたらいかがなものでしょうか、御見解をお伺いします。
〇地域振興部長(加藤主税君) 地域振興支援室の拡充強化につきましてのお尋ねでございます。
 県北・沿岸の振興につきましての考え方でございますが、直接の所管、担当につきましては、広域振興局体制の整備にあわせまして、現場で機動的、総合的に対処できるようにということで地域経営の拠点である広域振興局に移管し、その上で、総合調整機能を有します本庁の県北・沿岸振興本部と連携の上で一体的に業務運営に当たりたいと考えております。このことによりまして現体制以上の機能が発揮できるように努めてまいりたいと考えております。
 また、地域振興支援室、この名前ですね、支援という言葉につきまして御指摘ございました。これは広域振興局体制移行に当たりまして、本庁の組織全体をどうするかという中で、また本庁の中の組織体制についても検討していくわけでございますが、その際に当たりましては、御指摘の趣旨も踏まえまして検討、考えさせていただきたいと思っております。
 また、支部の御提言がございました。それにつきましても、この移管の問題とあわせまして、全体的にどういうふうなものがいいか、また具体的な細部につきましては検討する必要があろうかと思いますので、その中で御指摘の趣旨を踏まえまして検討、考えさせていただきたいと思っております。
〇10番(菅原一敏君) ありがとうございました。
 次に進みます。
 企業誘致についてお伺いします。
 企業誘致は、外部資本の導入による地域振興策の切り札として、これまで雇用の場の拡充、若者の地元就職の促進などに大きな役割を果たしており、本県経済を活性化させるためにも引き続き新規企業の誘致を行っていくことが必要であると考えます。そして、これからの企業誘致は、地域の長期的なビジョンに基づいて、地域の特性に応じた取り組みを行っていくことが不可欠であると思います。
 そこでお伺いいたします。
 本県においては、今後どのような戦略を持って、どのような考えで企業誘致に取り組んでいくのか、近年の企業誘致の実績とあわせてお伺いいたします。
 また、新規の企業誘致に加えて、既立地企業に対するきめ細かいフォローアップが求められるわけですが、そうした意味で経済産業省が行っている都道府県の企業立地満足度調査の結果が注目されるわけですが、昨年7月に発表されたこのアンケート調査の結果を県はどう受けとめ、そしてこの結果を今後の企業誘致にどう活用していくお考えかお伺いします。
 さらに県は、立地企業の満足度を高めるためにニーズをどのように把握し、また、今後の支援策をどう講じようとしているのかお伺いいたします。
〇商工労働観光部長(廣田淳君) まず、企業誘致の取り組み方向についてでありますが、近年の誘致実績は、平成17年度以降、平成19年度までは県外からの新規立地が20件前後で推移してきましたが、世界同時不況の影響によりまして、平成20年度の立地件数は13件にとどまったところであります。
 今後の企業誘致戦略につきましては、現在のところ、県内誘致企業の事業の継続、雇用の維持、確保を最優先の課題として、そのフォローアップを進めているところであります。
 新規の誘致につきましては、県内各地域において、企業立地促進法に基づき策定いたしました基本計画に沿って取り組んでおり、最近では、県北・沿岸地域に水産加工業や食料品製造業の立地が見られたところであります。
 今後とも、県南地域においては、自動車関連企業や半導体関連企業、盛岡広域地域においては、組み込みソフトを中心としたITシステム関連企業、県北・沿岸地域においては、豊かな自然環境や農林水産資源を生かした食品関連企業など、地域特性を生かした誘致活動を展開してまいる考えであります。
 次に、企業立地満足度調査についてでありますが、調査結果によりますと、本県は総合評価で全国第2位という評価を受けたところでありますが、県、市町村のワンストップでの窓口対応を初め、地域に根差した人材育成の取り組みや優遇措置、行政手続への対応など、立地時ばかりでなく、操業後における企業ニーズに対する的確かつ迅速な対応が高く評価されたものと認識しております。こうした企業からの評価は本県の大きな強みであり、これまでも知事のトップセールスや日ごろの誘致折衝の場において有力なセールスポイントとなっているところであります。
 今後とも、この結果に満足することなく、高い評価を得た人材育成の取り組みなどを一層強化しながら既立地企業へのきめ細かなフォローアップを行うとともに、新規の企業に対しましては、ワンストップで迅速な対応ができるよう努めながら強力に誘致活動を行ってまいります。
 次に、立地企業の満足度についてでありますが、県では、日ごろから地方振興局や市町村と密接な連携を図りながら、必要に応じて合同で企業訪問を行い、各企業の個別具体的な課題や要望の把握に努めているところであり、これまでもこうした企業からの要望を踏まえ、新たな投資に対する優遇措置の制度化、ワンストップサービスによります迅速な対応に努めてきたところであります。
 今後とも、できる限り企業ニーズの把握に努めながら、現場の声を適時的確に県の施策に反映させるなど、積極的なフォローアップを通じて企業の満足度を高め、本県への誘致や立地企業の業務拡大を促進してまいる考えであります。
〇10番(菅原一敏君) ありがとうございました。
 全国第2位の満足度という結果、大変すばらしい結果だったというふうに思います。今後ともぜひとも結果を残せるように頑張ってほしいというふうに思います。
 1点だけお伺いいたしたいと思います。
 企業誘致についてなんですが、内陸部には自動車産業があり、それらとの連携を考えた場合、沿岸部についてどのような戦略、考え方で企業誘致すればいいのか。商工労働観光部長は3年前までは大船渡の振興局長でおられましてポートセールスの先頭に立っておられたわけでございますけれども、大船渡港湾をどのように活用して、そして気仙地域の企業誘致、工場誘致、地域活性化に結びつけていけばいいのか、その辺についての御見解をお伺いしたいと思います。
〇商工労働観光部長(廣田淳君) 大船渡港を活用した企業誘致についてでありますが、気仙地域におきましては、企業立地促進法に基づく基本計画におきまして、食料品製造業、木材・木製品製造業、港湾活用関連産業を重点業種として企業誘致に努めることとしており、ことしの3月には、大船渡港に隣接する工業用地に水産加工業の立地が決定したところであります。今後とも、豊富な水産資源や国際貿易コンテナ定期航路などの立地条件を十分に生かしながら、永浜・山口地区の工業用地等に食産業等を中心に誘致を進めていきたいと考えております。
〇10番(菅原一敏君) ありがとうございました。
 次に進みます。地域診療センターの無床化に伴う諸課題についてお伺いいたします。
 最初に、地域診療センター等懇談会についてお尋ねいたします。昨日まで、あるいは先ほどまで多くの方から御質問がありまして、議論がなされているところでございますが、重複を承知の上でお尋ねしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 無床化された県立地域診療センターの五つの地域の住民と県医療局との意見交換を行う地域診療センター等懇談会が、去る5月28日の住田町での開催を最後に一巡し、終了いたしました。知事が初めてこの問題について地元住民とひざを交えて話し合った5地区での懇談会において、県の進める県立病院改革についての住民理解は得られたと受けとめているのでしょうか、お伺いします。また、この懇談会の開催によって、住民の不安や心配が解消されたと思っているのでしょうか、あわせてお伺いいたします。
 次に、地域診療センターの無床化に伴う取り組みについてお尋ねいたします。
 県医療局は、地域診療センターの病床休止に伴う八つの取り組み項目を掲げていますが、このうち、4月1日から直ちに取り組まなければならなかった入院が必要な患者の受け入れ先確保及び交通アクセスの確保について、これまで3カ月間の取り組み状況と、患者並びに関係住民の利用状況はどのようになっているのでしょうか、6月分までわかれば、含めてお知らせいただきたいと思います。また、課題は何であるのか、今後改善の必要はないのかお伺いいたします。
 次に、医師の定年延長についてお尋ねいたします。地域では70歳を過ぎてなお現役で診療活動を行っている開業医の方も少なくありません。現行65歳となっている県立病院の医師の定年を10年ほど延長して医師確保の一助としてはどうかと考えますが、御見解をお伺いします。
 次に、県立病院等の今後のあり方についてお尋ねします。絶対的な医師不足と赤字経営が続く中で、21県立病院と5地域診療センターの経営体制を今後どうするのか、地域診療センターの経営を将来とも県が担っていけるのか、県と市町村、そして何よりも県民との問題意識の共有と課題解決に向けての連携した取り組みが求められますが、最後に医療局長の御見解をお伺いいたします。
〇医療局長(田村均次君) まず、地域診療センター等懇談会についてでありますが、懇談会におきましては、地域の皆様に、深刻な医師不足や医師の過酷な勤務環境、患者数の減少、経営収支の悪化などにより、やむにやまれず病床休止せざるを得なかったことや、病床休止後の八つの取り組み事項などについて説明を行ったところでございます。深刻な医師不足や、それに伴う医師の厳しい勤務環境については、住民の方々に一定程度の御認識をいただいたものと認識しております。この懇談会を通じましてさらに意見交換を行い、今後の地域診療センターの円滑な運営と施設の有効活用について、地元市町村と協議しながら取り組んでいく考えであります。
 次に、地域診療センターの病床休止に伴う入院患者さんの受け入れと交通アクセスの確保についてでございますが、まず、入院が必要な患者さんの受け入れ先の確保につきましては、地域診療センターからの紹介で入院した患者さんは、4月~5月実績で47名、入院先の内訳としましては、県立の基幹病院等に38名、連携している民間病院等に9名で、県立病院を中心に確保いたしております。受け入れ先の病院につきましては、若干地域によって差はありますものの、おおむね受け入れ先が固まりつつあると考えております。
 一方で、これまで連携してきました地元の介護施設から、要介護者の容態悪化時の対応について課題提起をいただいております。今後、施設側あるいは関係市町村と相談しながら、個別に対応するとしております。
 また、患者さんと家族の無料送迎についてでございますが、各診療センターと基幹病院等を結ぶ路線を確保しているところでございますけれども、5月までの利用状況は、5地域診療センターで患者さんが11名、家族が73名、延べで84名の利用でございます。1センター当たり、1日当たり0.3人というような状況になっております。このような状況を踏まえ、今後、現在の運行ルート以外の─運行ルートに乗っかっていない入院患者さんへの対応、公共交通機関の活用など、地域の実情や要望を踏まえ、地元への周知方法も含めまして、関係市町村と相談して見直しをすることとしております。なお、6月分のデータについてはまだ集計しておりませんので、御容赦をいただきたいと思います。
 次に、医師の定年の延長についてでございますが、現在、お医者さんの定年年齢は65歳となっておりますが、勤務延長制度というものがございまして、最大3年間勤務延長できるということで、68歳までの勤務が可能となっておりまして、この制度をできるだけ活用して県立病院にとどまってもらうように現在も取り組んでいるところでございます。勤務医の課題の一つといたしまして、議員御指摘のように、60歳代以降も医師として働く意欲がある中で、勤務医としてどのように処遇していくかというのが課題であると考えておりまして、現在、さらに長い期間の勤務が可能となるように、現在の勤務延長のほかに、例えば最長5年間の勤務が可能である任期つき職員としての任用ということができないものかどうか、70歳代でも常勤医として活躍していただく方途について研究を進めているところでございます。
 次に、県立病院等の今後のあり方についてでございますが、新しい経営計画では、各二次保健医療圏の状況を踏まえ、病院ごとに基本的な役割、機能を定め、適切な病床規模により運営を行い、圏域全体でプライマリーケアから高度専門医療、救急医療まで地域に必要な医療を確保することとしており、二次保健医療圏ごとに地域全体として必要な医療を提供していく体制をできる限り維持していくように努めていきたいと考えております。
 地域診療センターにつきましては、現下の医療を取り巻く厳しい環境の中、医師の確保、定着に努めていくことが課題でありますが、昨年度から大学医学部の定員の増加が図られたとはいうものの、勤務医師数が増加するには今後10年程度は時間がかかることから、二次保健医療圏の基幹病院や県立病院ネットワークの中で診療応援をしながら、外来診療中心の運営をすることで、何とか県営として維持していきたいと考えております。
 それから、県、市町村、県民との連携についてでありますが、今年度、二次保健医療圏ごとに開催しております地域医療に関する懇談会において広域的な課題について意見交換を行うとともに、一方で、地域診療センターの地元で開催しております地域診療センター等懇談会において、地域診療センターの円滑な運営や利活用について意見交換を行っているところであります。また、それぞれの県立病院の現状やあるいは課題の情報共有の場として、病院ごとに地域懇談会を継続開催するということにしております。さらには、市町村との連絡会議を開催するというようなことを考えておりまして、こうした意見交換の場を通じまして、地域や市町村と課題解決に向けた連携をさらに進めてまいたいと考えております。
〇10番(菅原一敏君) ありがとうございました。医師の定年延長については勤務延長等で対応しているということでありますが、勤務時間の設定でありますとか、あるいは例えば総合医として勤務していただくというようなことであれば、70歳を過ぎても、個人差はあるでしょうけれども、十分協力していただけるのではないかと考えられますので、そういう点についての御検討も引き続きあればいいのかなと思います。
 それから、一つお伺いしたいんですが、入院患者の転院先として二次医療圏の外に、例えば住田であれば遠野にというようなケースが結構あるかと思うんですが、そういうようなケースがどの程度あるのか。そして、そういう方々には、例えば無料送迎サービスというものはどういうふうに対応されているのか、これをお伺いしたいと思います。
〇医療局長(田村均次君) 4月~5月の実績で言いますと、基幹病院等を中心に運行しているわけですが、その運行ルートから外れている入院患者さんがいらっしゃいますけれども、紫波では2名、大迫で5名、花泉が3名、住田が3名となっております。これは、医療圏を越えているものもございますし、医療圏内の中でルートがえの方もいらっしゃいます。合計で13名となっております。この無料送迎につきましては、できるだけ早く見直しをするということでやってまいりました。その中で、今、御指摘のようなルートがえの方々に対して、今のままでは、県としてこういった送迎手段は何もやってあげてないわけでございますので、その不公平があるということもございますし、一方で、むしろ公共バスの乗車券をいただいたほうが住民の方々はずっと使いやすいんだというような御意見もいただいているところでございますので、そういった点をできるだけ早く、それぞれの地域事情、交通事情が全然違いますので、そういったことをよく分析して、地元の市町村等とよく相談して、あるいはそれぞれの地域懇談会の中で御意見を聞きながら、早急に見直しをしたいと考えております。
〇10番(菅原一敏君) 見直しに当たりましては、ぜひともバスの乗車券あるいはタクシー券等の配慮をお願いしたいと思います。
 次に進ませていただきます。水産業の振興についてお伺いいたします。
 本県の水産業は、流通、観光産業などにも関連するすそ野の広い産業であり、とりわけ沿岸地域の経済を支える基幹産業として極めて重要な産業であります。しかしながら、近年の水産業を取り巻く環境は、担い手の減少や高齢化が進み、厳しい状況に直面しております。現在、各漁協では、平成17年度に県が策定した岩手県漁業担い手育成ビジョンに基づき、平成18年度及び平成19年度に地域営漁計画を策定し、漁場の効率的利用、担い手の育成確保、水産物の販路拡大などを推進しております。私は、本県の水産業が発展していくためには、地域営漁計画の着実な実行が不可欠と考えております。
 そこでお尋ねいたします。地域営漁計画のこれまでの実施状況はどのようになっているのでしょうか。また、平成18年度に地域営漁計画を策定した漁協においては、今年度が計画の最終年度となっておりますが、地域営漁計画の今後の展開をどのように考えているのかお伺いいたします。
 次に、水産物の販路拡大についてお尋ねいたします。地域営漁計画の柱にもなっている水産物の付加価値向上と販路拡大は、生産者の収益を増加するために極めて重要な取り組みであります。とりわけ近年は6次産業化と称して生産者が付加価値をつけて販売していく取り組みが進められております。生産者が販売まで取り組むためには、消費者ニーズの把握やコスト感覚を持つことが必要であり、経営意識の向上にも結びつく有意義な取り組みであると思います。漁協あるいは漁業者が水産物を販売する取り組みの現状はどのようになっているのでしょうか。また、今後どのように推進していくのかお伺いいたします。
〇農林水産部長(瀬川純君) まず、地域営漁計画についてでございますが、これまで21の漁協が計画を策定しております。ワカメ養殖協業体の規模の拡大、マツモなど新規養殖種目の導入、ホタテガイの量販店への直売や水産物の朝市の開催といったようなことで、各地で意欲的な取り組みが始まり、この結果、生産額が順調に伸びるなど、浜に活気も見られるところであります。
 一方、各漁協は、漁業者の高齢化と減少などの課題を抱えておりますことから、計画策定した漁協は、3年間で取り組みを終えるのではなく、これまでの実績と課題を踏まえて計画を更新し、新規養殖種目の生産拡大や意欲ある経営体の規模拡大などに取り組むこととしており、県といたしましても、市町村と連携して、引き続き生産体制の整備や水産物の高付加価値化などへの支援に取り組んでまいります。
 次に、水産物の販売についてでありますが、漁業者の所得向上を図る上で、産地直売などにより水産物を直接販売していく新たな取り組みが今後とも重要になると考えております。このため、漁協や漁業者においては、朝市等の産地直売や宅配便等による産地直送、漁業者が消費地に出向いて販売する実演販売などに積極的に取り組んでおり、県といたしましても、こうした取り組みを支援し、漁協や漁業者と一体となって推進してきたところであります。その結果、平成20年度の直売等の販売額は平成16年度の4倍に達するなど着実に成果が見えており、漁業者の販売への意欲が年々高まってきているところでございます。今後は、こうした取り組みをさらに拡大させるため、浜の6次産業化支援事業や国等の新規補助事業の利用促進により、水産物の販路拡大を推進してまいります。
〇10番(菅原一敏君) ありがとうございました。今後とも漁業者あるいは漁協の取り組みの支援をされるようにお願い申し上げたいと思います。
 次に進みます。最後に、今後の県立高校のあり方についてお伺いいたします。
 まず、県立高等学校新整備計画後期計画についてお尋ねいたします。県教育委員会は、平成22年度の高校再編計画を見据えて、現在、第2次県立高等学校長期構想を策定のため有識者による検討委員会を開催しており、先般、検討委員会の中間まとめが報告されました。今後の高等学校の再編を考える上で重要なことは、今年度が最終年度となっている現行の県立高等学校新整備計画後期計画の検証を行うことであると思います。
 そこでお尋ねいたしますが、現計画の実施状況とその成果をどう把握されているのでしょうか。また、課題は何かお伺いいたします。
 次に、今後の県立高校の学級規模についてお尋ねいたします。現在の学級規模は、1学級40人として1学年4ないし8学級を原則としておりますが、県北・沿岸地域は人口が少なく、今後、少子化が進むにつれて、この原則を守っていくと、多くの学校の統廃合が進むことが予想されます。県北・沿岸地域の教育レベルの維持と豊かな人間の育成を図る上でも、今後の県立高校は、現在の1学級40人、1学年4ないし8学級にとらわれず、各地域の実情に応じた柔軟な対応が必要と考えますが、教育長の御所見をお伺いいたします。
 次に、学力向上対策及びキャリア教育についてお尋ねいたします。現在、我が国の高等学校への進学率は97.8%を超えており、本県においても、昨春の高校進学率は98.7%に達し、全国をも上回る水準にあります。こうした現状を踏まえると、生徒の能力、適性、興味、関心、進路等の多様化に対応した特色ある学校づくりを行うことが求められており、このような要請にこたえることが県立学校としての役割であると思います。県教育委員会は、普通校における学力向上対策及び専門校におけるキャリア教育について、どのような考え方のもとに実施し、また、その効果はどうなっているのでしょうかお伺いいたします。
 最後に、地域の課題についてお尋ねいたします。県立高田高校は、平成20年に旧広田水産高校の水産学科を統合し、かわりに情報処理科を大船渡東高校に移譲した形で新生高田高校としてスタートいたしました。海洋システム科の実習授業には旧広田水産高校の施設を利用していますが、高田高校から離れた場所にあるため、生徒、教員ともに毎日1時間かけて往復し、大きな負担となっております。また、実習に使用している面積は全体のごく一部であり、広大な校地とグラウンド、校舎の大部分が遊休施設となっているとともに、老朽化に伴って修繕等の経費や日常の維持管理も大変なものがあります。財政事情も理解はできますが、生徒に落ち着いて授業を受けさせ、そして地域産業を支える人材育成を推進するためにも、コンパクトな実習施設を徒歩で移動できる近場の海岸部に整備する必要があると思いますが、教育長の考えをお伺いします。また、実習施設が整備されれば、学校としては不要となる旧広田水産高校の跡地活用について、地元との協議を早急に始めるべきと思いますが、その考えはないのかお伺いいたします。
〇教育長(法貴敬君) まず、県立高等学校新整備計画後期計画の検証についてでありますけれども、現行の県立高等学校新整備計画後期計画では、生徒の多様化及び個性化への対応と、少子化による生徒減少への対応という二つの課題に対応するために、特色ある学校・学科の設置及び適正規模の学校の配置を中心として進めてまいってきたところであります。
 生徒の多様化、個性化への対応については、総合学科高校や総合的な専門高校、中高一貫教育校、多部制・単位制高校の導入など新しいタイプの高校の設置を推進してきたところであり、少子化による生徒減少への対応については、1学級40人を標準とし、望ましい学校規模を1学年4から8学級程度として、計画的な高校再編整備を進めてきたところであります。第2次県立高等学校長期構想検討委員会においても現計画の検証がなされており、中間取りまとめ段階においては、新しいタイプの学校を設置することにより、生徒の興味・関心、進路、希望などに応じてさまざまなタイプの学校を選択できるようになり、生徒や保護者から一定の満足度が示されているとともに、計画的な統合を進めることにより、中学校卒業者数が大きく減少している中で、県立高校の適正な学校規模がおおむね維持されてきており、現計画における一定の成果が認められると評価されております。
 一方、課題については、統合や新しいタイプの学校の設置などについて、より効果のあるものとして定着させるために、今後ともそれぞれの課題を検証しながら、各高校の設置目的に沿った学校運営や教育内容の充実を図っていく必要性、あるいは今後のさらなる生徒減少に対応するために、本県の高校教育のあり方について議論を尽くしながら、今後も高校再編について検討を進めていく必要性についてお示しいただいているところであります。
 次に、今後の県立高等学校の学級規模についてでありますが、先日もお話ししたとおり、県立高校のあり方については、現在、第2次県立高等学校長期構想検討委員会において検討していただいており、中間まとめをお示しいただいたところでありますけれども、学級定員や学校規模については、学級定員は現行40人定員が現実的である、学校規模は1学年4から6学級が望ましいとされているところであります。学級定員や学校規模を含めた県立高校のあり方については、検討委員会の最終的な取りまとめを待って県教育委員会として検討を進め、地域の皆様から御意見、御提言をいただきながら、今年度末には成案をお示ししたいと考えているところであります。
 次に、学力向上対策とキャリア教育についてでありますけれども、普通高校、専門高校にかかわらず、各学校においては、基礎、基本の定着による学力向上を学校経営計画の中心的課題として位置づけまして、教員一人一人の授業力の向上と生徒の学力向上などに取り組んでおります。学力・授業力向上担当の新設あるいは指導主事の学校訪問による授業力の向上を図るとともに、進学支援ネットワーク事業あるいはいわて未来創造人サポート事業などで各学校の取り組みを支援しております。高校間の垣根を越えた進学のための合同企画事業や、岩手の産業、文化を支える人材の育成をねらった企画においては、参加者から、異なる学校の生徒が切磋琢磨できるよい機会となったとか、生徒の意欲の向上につながっているというふうな成果を見ているところであります。
 また、キャリア教育につきましては、生徒に望ましい勤労観、職業観を育成し、主体的に進路を選択する能力や態度をはぐくむことを目的として、高等学校では教科指導を初めとする教育活動全般において取り組んでおりますが、その成果については、地域産業の担い手育成プロジェクトにおける企業へのアンケート調査によれば、専門高校にあっては、生徒の職業や仕事への理解が深まり、職業観、勤労観の育成につながっているとの評価を得ているところであります。学力・授業力向上対策を初めキャリア教育につきましては、小・中・高の連携を図りながら、今後も一層推進してまいります。
 次に、県立高田高校の実習施設と旧広田水産高校の跡地利用についてでありますが、県立高田高校海洋システム科の実習授業については、旧広田水産高校の洋上での各種実習に用いる実習艇などを格納する艇庫や、缶詰などの製造実習を行う食品製造実習室など水産にかかわる実習施設で実習を行っており、これらの施設は整備後まだ間もないこともあり、十分活用できることから、今後も利用する予定としております。また、実習の際には、生徒が旧広田水産高校まで移動しておりますが、生徒・教員の負担を軽減することができるよう、生徒移動用のバスを特別に配置して円滑な移動を図るとともに、水産及び家庭の実習を集中させた時間割りを編成するなど、カリキュラム編成を工夫して授業を行っているところであります。議員御案内の生徒への負荷についても、なお一層負担の軽減が図られるよう、現場の意見を十分聞きながら工夫してまいりたいと考えております。
〇10番(菅原一敏君) ありがとうございました。残念ですけれども、時間が参りましたので、以上で私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇副議長(小野寺研一君) 以上をもって菅原一敏君の一般質問を終結いたします。
〇副議長(小野寺研一君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時32分 休 憩
出席議員(47名)
1  番 木 村 幸 弘 君
2  番 久 保 孝 喜 君
3  番 小 西 和 子 君
4  番 工 藤 勝 博 君
5  番 岩 渕   誠 君
6  番 郷右近   浩 君
7  番 高 橋   元 君
8  番 喜 多 正 敏 君
9  番 高 橋 昌 造 君
10  番 菅 原 一 敏 君
11  番 小野寺 有 一 君
12  番 熊 谷   泉 君
14  番 高 橋 博 之 君
15  番 亀卦川 富 夫 君
16  番 中 平   均 君
17  番 五日市   王 君
18  番 関 根 敏 伸 君
19  番 三 浦 陽 子 君
20  番 小田島 峰 雄 君
21  番 高 橋 比奈子 君
22  番 高 橋 雪 文 君
23  番 嵯 峨 壱 朗 君
24  番 及 川 あつし 君
25  番 飯 澤   匡 君
26  番 田 村   誠 君
27  番 大 宮 惇 幸 君
28  番 千 葉 康一郎 君
29  番 新居田 弘 文 君
30  番 工 藤 大 輔 君
31  番 佐々木 順 一 君
32  番 佐々木   博 君
33  番 工 藤 勝 子 君
34  番 平 沼   健 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 吉 田 洋 治 君
40  番 及 川 幸 子 君
41  番 佐々木 一 榮 君
42  番 伊 藤 勢 至 君
43  番 渡 辺 幸 貫 君
44  番 小野寺 研 一 君
45  番 千 葉   伝 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(なし)
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時49分 再開
〇議長(佐々木一榮君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。高橋昌造君。
   〔9番高橋昌造君登壇〕(拍手)

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