平成21年2月定例会 第10回岩手県議会定例会 会議録

前へ 次へ

〇38番(斉藤信君) ただいま提出されました議案第79号、第80号、来年度の補正予算について質疑をいたします。
 知事に質問いたします。
 今回の予算委員会のさなかでの来年度の一般会計、県立病院等会計の補正予算の提出は、まさに異例な事態であります。直接のきっかけは、平成21年度岩手県一般会計予算及び平成21年度岩手県立病院等事業会計予算の編成替えを求める動議が採択されたことに対する県の新たな対応という形で提案されました。動議で一番求められたのは、この間の論議からも明らかになったように、県立病院、診療所の4月からの無床化実施は延期を検討し、それに必要な具体的な予算措置を講ずることを求めたものでありました。4月からの無床化実施の延期をどう検討したのか、この間の問題点について知事はどう受けとめているのか、まずお聞きいたします。
 11月17日に提案された県立病院の新しい経営計画案は、4カ月後には、県立沼宮内病院と五つの診療所の無床化を強行するという、内容的にも異常な内容でありました。その後、パブリックコメント、2度にわたる地域での説明会、懇談会が行われましたが、地域住民の理解と納得は残念ながら得られませんでした。それどころか、地域にとって必要な入院できるベッドを守ってほしいという住民の熱意と運動は、10万人を超える署名に示されるように、大きく広がったのでございます。しかし、こうした説明会、パブリックコメント、署名に示された住民の声は残念ながら全く計画には反映されませんでした。されないどころか、2月19日に決定した計画は、わずか1カ月後には強行実施すると。内容の点でも、進め方の点でも、これは極めて異常なものでありました。
 私は、今の医師不足、地域医療の危機的な状況については認識を共有するものであります。しかし、医療というものは、提供する医師だけではなく、受けられる県民にとっても重要な課題であります。本来、県民にとっての医療であるべきであります。しかし、残念ながら、知事が危機から希望へと言っていることには反して、危機から我慢の押しつけ、危機から医療の切捨てという中身になっていることは極めて残念であります。
 東北大学の伊藤先生も、こうした提起の仕方に瑕疵がある、4月実施を前提にした問題の提起は問題だと。さまざまな医療の専門家からも、岩手県の計画の異常さが指摘されています。
 私は、地域医療を守るためには、今の地域医療の危機的な状況を地域住民・県民が共有し、ともに力を合わせて地域医療を守り抜く協力と協働の構築こそ、今、最も大事な課題だと考えるものであります。
 もし、この4月無床化実施が強行されるなら、こうした協力・協働を県がみずから崩してしまう、壊してしまうことになるのではないか。こういう立場から、県議会では、計画の撤回ではなく、一時凍結して地域住民との協議を求めたのでございます。残念ながら、最後までこの無床化実施の延期、一時凍結は受け入れられませんでしたが、これまでの地域住民の声や運動、県議会で多数派がこのことを強く求めてきた経緯を知事はどういうふうに受けとめているのか。そして、地域医療を守る医師と住民との協働をどう構築していくのか、私は、このことを改めてお聞きしたいと思います。
 県議会の多数が最後までこの問題について懸念を持って議論してまいりました。しかし、一方で医療局の人事も発表される、こういう重大な局面で、出口は限られてきたというのも事実であります。
 最後に、私は、知事に対して、今回のような県が出口を決めるような計画を決め、そして、その計画を、県民の声も聞かずに直ちに強行するという県政運営は、民主主義の点からいっても、県政運営からいっても、私は間違ったやり方だと。この反省の上に立って、今後、県政運営を進めるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。答弁によっては再質問いたします。
〇知事(達増拓也君) 3月16日に可決された平成21年度岩手県一般会計予算及び平成21年度岩手県立病院等事業会計予算の編成替え等を求める動議の中で、4月からの無床化実施の延期の検討について、どう検討したのかという御質問でありましたけれども、予算特別委員会の場で知事発言として申し述べさせていただきました岩手県立病院等の新しい経営計画につきましては、現在、県立病院における医師不足が危機的な状況となっており、これまでと同様の機能や規模を維持していくことは困難であり、本県の医療提供体制の崩壊を招きかねないことから、やむを得ず本年4月から現在の地域診療センターの病床休止とさせていただきたいと考えておりますので、何とぞ御理解くださいますようお願いいたしますというこの内容については、けさ、庁議を開いて、それも含めて、改めて執行部内で検討をさせていただいた、そういう経緯の結果として、先ほど予算特別委員会で発言をさせていただいたものでございます。
 地域の声の受けとめ方、そして、ともに力を合わせて地域医療を守る体制の構築についてでありますが、医療を受ける側が大事であるというのは、本当にそのとおりであると思います。診療所、その地域の皆さんに対する説明会、懇談会などを通じまして、個別具体的な心配や不安を解消できるように、医療を受ける側に立った取り組みを医療局のほうでさせていただいたと思いますけれども、そうした中からいただきました声をもとに、8項目の修正を岩手県立病院等の新しい経営計画にさせていただいたところでありますが、今後も、ただいま提出させていただいた補正予算も活用しながら、地域との対話・協議を続けさせていただいて、医療を受ける側の立場に立った岩手の地域医療というものをきちんとつくっていきたいと思いますし、また、医療をする側も、受ける側も、病気やけがと闘い、また、これを克服するという意味では、同じ側に立つものだと思います。そして、県、市町村、地域、また、さまざまな企業、団体、個人、岩手県民がみんなで力を合わせて地域医療を守っていく体制を県としてもしっかり構築していきたいと思っておりまして、先ほど提案をさせていただいた補正予算も、その方向で活用をさせていただければと思っております。
 また、平成21年4月1日からの5カ年計画ということで、4月1日からの県立病院体制をどのようにしていくかという計画を立てる、その立て方についてでございますけれども、地域住民の皆様に心配、御不安をおかけしたことについては本当に申しわけなく思っております。全国的な医療崩壊が叫ばれる中で、岩手の地域医療をしっかり守っていくための意思決定というものについて、今度、さまざまな協議の場、対話の場が地域の中にも設けられてまいりますので、ぜひ、今回の反省すべき点を生かしながら、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。
〇38番(斉藤信君) 今度の県立病院の新しい経営計画、無床化の問題というのは、文字通り、その地域の医療がどうなるかという問題です。この地域の医療の問題というのは、地域住民にとって、そして当該自治体にとって最も重大な課題なのです。県立病院だから、県立の診療所だから、県が計画を決めて強行するという、私は、そういう性格の問題ではないだろうと。住民と自治体にとって最も重大な問題であるためには、やっぱり対等の立場に立ってそのあり方を検討する、これが計画を進める大前提だったと私は思います。ところが、今回はそれがなかった。一方的に県が説明する。意見を聞いても反映しない。私は、やっぱりこういう地域医療にかかわる重大な問題については、住民や当該自治体と対等の立場で話し合って、解決策を見出していくという本来の県のあり方に立ち戻るべきではないか、これが第1点です。
 第2点は、今回の計画の出し方は、最初からもう結論ありきでした。1月末のいわば当初予算知事査定で、無床化したら介護施設に転用する予算がもう計上されているんですよ。無床化を前提にして、計画が決まる前からもうコンクリートされていた。そして、重大なことは、その無床化を前提にした予算が、最終的には3月25日に決まるのです。3月25日に決まる予算が、4月から無床化されるというような、こういう進め方はあり得ないと私は思うのです。計画が決まる前から、予算が決まる前から準備しなかったらできないんです、このやり方は。今まで県立病院のいろんな計画がありました。しかし、計画を立ててから1年後、2年後、そこまで引き続き住民と協議をしながら進めてきた。今回はそれがないのですよ。3月25日にこの県議会で最終的に予算を決めてから、7日後にはもう無床化が実施される、同時並行だった。私は、こういう点でも無理のあった計画ではなかったかと。
 そして、三つ目の問題。実は重大な問題がみんな後回しされているんです。今、入院している患者は、この間の予算審議では、急性の患者は基幹病院で受けるが、慢性の患者は別の病院だと。行き先がないのですよ。介護施設に入所している方々が、20分も30分もかけて別の病院に行くといったら、その途中でぐあいがもっと悪くなるかもしれない、亡くなるかもしれない、本当に命がかかった問題ですよね。私は、こういう問題を後回しにして無床化だけを強行するというやり方は、やっぱり間違いではないかと。そういう点で、最後に改めてこのことを聞いて、終わります。
〇知事(達増拓也君) 県のさまざまな計画と予算の決定のあり方については、いろいろな例もございますので、意思決定の仕方として、より幅広い理解をいただきながら、しっかり決定できるような工夫を、この医療の分野についてもしていきたいと思います。
 そして、今回のこの予算の提案は、3月16日の動議への対応という形で出させていただきますので、動議に込められました地域における住民の皆さんの声の反映、地域の市町村を初め主体と県との連携、それについては、今回提案させていただいた予算の事業を通じてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。
〇医療局長(田村均次君) 入所している入院患者さんの行き場がなくなるというお話でございましたけれども、いずれ、基幹病院と関連する県立病院全体で、そして、地域によっては民間病院も含めてきちっと対応するということで今やっておりますし、現場のほうにもそういう指示をしておりますので、そういうことで御理解いただきたいと思います。
〇議長(渡辺幸貫君) これをもって質疑を終結いたします。
 ただいま議題となっております議案第79号及び議案第80号は、お手元に配付いたしてあります委員会付託区分表のとおり、それぞれ所管の常任委員会に付託いたします。
〔参照〕
委員会付託区分表
(第10回県議会定例会 平成21年3月19日)
総務委員会
1 議案第79号中
   第1条第1項
   第1条第2項第1表中
    歳入 
環境福祉委員会
1 議案第79号中
   第1条第2項第1表中
    歳出
2 議案第80号
〇議長(渡辺幸貫君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時11分 散 会

前へ 次へ