平成20年9月定例会 第7回岩手県議会定例会会議録

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〇42番(伊藤勢至君) 民主・県民会議の伊藤勢至です。会派を代表して、発議案第5号について御説明申し上げます。
 地球は、生命をはぐくむ水を有する太陽系唯一の惑星であります。その水の97%は海として存在し、太古の昔から、地球上の多様な生物の進化と繁栄を支えてきました。四方を海に囲まれた我が国においては、海は特にも身近な存在であり、海の幸である水産物が我が国の特色ある食生活を支えております。このことは、漁業活動の恩恵によるものであり、さらには、漁村に暮らす人々の活動を通じ、防災や国境の監視、伝統文化の伝承、沿岸域の環境保全や海難救助への貢献など、まさに多面的な機能を有しております。
 一方で、世界の水産物需要は拡大を続け、2003年には1億254万トンを超えていますが、海外の需要の増大によって、我が国は水産物の需要を海外に頼らざるを得ない状況にあるものの、需要量を確保できない状況が生じております。
 我が国の漁業経営体は平成18年で12万1、000経営体と、10年前と比較して約4分の3まで減少し、男子就業者に占める65歳以上の割合は平成19年で37%と、10年前から10ポイント上昇して高齢化が進み、平成18年の漁業生産量は565万トン、10年前と比較して160万トン、22%も減少するなど、世界では漁業が大きく成長している中で、我が国の漁業は急激に衰退しております。
 我が国の国土面積は約38万キロ平米しかございませんが、排他的経済水域、いわゆるEEZは447万キロ平米と世界でも6番目に広く、この水域の活用こそが今後の我が国の成長に必要不可欠であると思います。海洋における活動の基本となる国際的な取り決めは、海洋の利用に関する技術が急速に進み、先進国による資源獲得競争が激化した20世紀に入り、狭い領海、広い公海を前提とする従来の国際慣習を全面的に見直す動きが生じ、1982年―昭和57年に、国連海洋法条約が採択されることとなり、EEZや大陸棚等の利用目的に応じた管理制度が導入されることとなりました。
 我が国では、国連海洋法条約制定後11年を経過した平成8年にこれを批准し、EEZの設定及び水産資源の永続的な利用を図るTAC制度―これは、イワシ、サバ、サンマ、アジ、ズワイガニ、スケトウダラ、スルメイカの7魚種でありますけれども―を発足させたところであります。
 しかしながら、我が国のこうしたEEZやTAC制度の制定は、海外の海洋政策や推進体制が我が国に押しつけられた結果であり、これは、水産資源はもとより、海洋資源全般にわたる総合的な戦略を国が描いてこなかったことに起因するものであり、ひいては、漁業生産の不振や担い手不足など、漁業の衰退にも大きな影響を及ぼしているものと感じるものであります。このような中で、水産業の健全な発展と水産物の安定的な供給を図るためには、やはり水産資源を持続的に活用していくことが重要であり、そのためには、資源を適切に管理し枯渇させることなく、有効に利用していくことが必要であります。
 また、燃油高騰の状況を考えると、経済成長の著しい中国など、新興国における燃料需要の拡大や投機資金の流入等により、原油価格は、本年7月中旬にはWTI、ニューヨークマーカンタイル取引所の先物相場で一時、1バレル147ドルを超えました。本県における漁業用A重油の価格は、平成16年に比べこの4年間で約3倍となっており、この1年間においても約2倍に急上昇し、特にも、イカ釣り漁業や沖合底びき網漁業などの漁船漁業は、支出に占める燃料費の割合がおおむね3割から4割を超えており、急激な漁業用燃油価格の高騰は、漁業経営の持続性に甚大な影響を与えております。このままの状況が続けば、出漁を控える漁業者の増加や廃業、転業に迫られるおそれも生じ、地域社会への水産食料の円滑な供給もできなくなります。漁獲の水揚げが減少すれば、水産加工業者へも深刻な影響を及ぼすことが容易に想像され、まさに地域経済に与える深刻な影響、さらには、地域社会の存在を脅かす重要な問題へと発展するは必定であります。こうしたことから、漁業分野においては資源管理の取り組みが今後ますます重要であり、漁業者を積極的に資源管理に向かわせる仕組みや、継続的に漁業が営まれる仕組みを構築していくことが大切なことであると同時に、経営安定のための補償制度を創設するなどの施策を展開すべきと考えます。
 以上、発議案第5号の提案説明といたします。議員各位の御賛同をいただきますよう、お願いを申し上げます。(拍手)
〇議長(渡辺幸貫君) これより質疑に入るのでありますが、通告がありませんので、質疑なしと認め、質疑を終結いたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております発議案第5号漁業所得補償制度の創設等を求める意見書は、会議規則第34条第3項の規定により、委員会の付託を省略いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(渡辺幸貫君) 御異議なしと認めます。よって、発議案第5号漁業所得補償制度の創設等を求める意見書は、委員会の付託を省略することに決定いたしました。
 これより討論に入るのでありますが、通告がありませんので、討論なしと認め、討論を終結いたします。
 これより、発議案第5号漁業所得補償制度の創設等を求める意見書を採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(渡辺幸貫君) 起立多数であります。よって、発議案第5号漁業所得補償制度の創設等を求める意見書は、原案のとおり可決されました。
   日程第38 発議案第6号原油価格高騰に関する総合的な経済対策の早急な実施を求める意見書
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、日程第38、発議案第6号原油価格高騰に関する総合的な経済対策の早急な実施を求める意見書を議題といたします。
 提出者の説明を求めます。新居田弘文君。
   〔29番新居田弘文君登壇〕

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