平成20年9月定例会 第7回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇37番(阿部富雄君) 6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震災害及び7月24日に発生した岩手県沿岸北部を震源とする地震災害の復旧・復興についてお聞きします。
 岩手・宮城内陸地震から4カ月を経過しようとしていますが、一関市においては12世帯が避難勧告により避難生活を余儀なくされています。一日も早くもとの生活に戻れるよう、復旧支援を願うものです。
 祭畤地区においては、国道342号祭畤大橋が落橋し、同地区への交通は板川林道を暫定供用しているものの、仮設道路で幅員も確保できず、救急車など緊急車両の通行が確保できないことから、避難勧告が出されています。祭畤大橋については仮橋を設置し、11月下旬の供用を目標としていますが、これにより避難勧告は解除されるものと思いますが、仮橋の供用はいつになるのか、お聞きします。
 市野々原地区は、住宅の裏山の崩壊などで家屋への危険が危惧されることから避難勧告が出されています。ボーリング調査などを行っていますが、これらの安全の確認はいつごろまでに終え、これに係る治山工事の見通しはどのようになっているのか、避難勧告の解除はどの時期が見込まれるのか、お聞きします。
 住宅への被害が大きく、危険度が高いために避難勧告が出されている世帯もありますが、被災住宅復旧にはどのような支援がなされているのか、当事者の対応もありますが、復旧の見通しはどのようになっているのか、お聞きします。
 今回の地震では、被災者の相談体制、情報提供のあり方などに問題が出ています。被災者の生活再建窓口は市町村が主体となって行うべきものと思います。窓口に持ち込まれる個々の相談が個別の案件として扱われ、その相談内容も記録に残らないことがあったり、被災者が窓口に来るたびに、これまでの相談の経緯を相談員に説明しなければならず、行政も、これまでの経緯がわからないまま対応することが迫られました。その結果、被災者と行政との間の意思疎通がうまくいかず、トラブルのもととなったり、不信感が起きています。加えて、相談内容が市町村の事務にとどまらず県や国に係ることも多く、そして、市町村、県、国は縦割りで行政を行っていますから、窓口をたらい回しにされています。
 こうした問題を解決する手段として、2004年の新潟県中越地震で被害を受けた旧山古志村、2007年3月の能登半島地震で被害を受けた輪島市、穴水町、同年7月の新潟県中越沖地震で被害を受けた柏崎市、刈羽村では、被災者生活再建カルテを活用し、成果を上げています。カルテは、1世帯ごとに、世帯の構成、所得、被災状況、世帯からの相談内容、それに対する行政の対応、支援制度の利用状況などの情報を記載しています。これは、首都直下地震防災・減災特別プロジェクトの広域的危機管理、減災体制の構築に関する研究の成果報告書の中で開発されたものです。カルテは、被災世帯に対する一貫した相談サービスの提供、部署を超えた被災世帯に関する情報共有という点では有効に機能したとされています。今なお被災者は行政の対応は十分と思っていませんから、被災市町村と連携し、被災者生活再建カルテを活用し、復旧に当たるべきですし、今後の地震対策にも活用すべきものと思いますが、対応についてお聞きします。
 9月補正予算で市町村補助金を活用した地震災害による土砂流出等の防災情報システムを整備することとしています。被災者に対する情報提供、収集のあり方についても問題を残しています。
 被災者からは、行政は何をしているのかわからない、わかる情報を出すべきと指摘されています。
 被災の状況、復旧の状況、災害への対応状況など、被災者が必要とする情報が適時的確に伝わっていません。市町村、県、国それぞれ復旧・復興に取り組んでいるものの、被災者にまとまった情報として伝わっておらず、みずからの対応を決めかねています。関係機関が連携して情報提供する、必要であればマスコミの協力も得ながら情報を提供すべきです。また、被災住民、被災地域が混乱し、地域に係る問題にばらばらで対応していることもありましたから、被災者、被災地域の要望把握に努めることも必要です。情報提供・収集についてはどのように対応されてきたのか、関係機関と連携した情報提供のあり方についてどのように行っていくのか、お聞きします。
 一関市から、岩手・宮城内陸地震に係る被災代替家屋など、新築家屋等でありますが、これに係る固定資産税の軽減措置が講じられるよう要望されていますが、その見通しはどうか、お聞きします。
 甚大な被害を受けた国道342号祭畤から須川間までの橋や道路の国の査定が終了し、復旧に向けた取り組みが始まっています。復旧に当たっては地域からも要望が出されています。祭畤大橋の本復旧に関して、取りつけ道路は、市道鬼頭明通線を迂回することなく国道342号を直進し、整備すること。復旧後の祭畤新橋から真湯側のスノーシェルターまでのS字カーブ箇所について、雨雪による車両の事故防止を図るためスノーシェルターを設置することが要望されていますが、どう対応していくのか、お聞きします。
 崩落した祭畤大橋について、このまま残し、地震被害を将来に伝えるべきとの考えも出されています。当該地域は須川観光のルートであり、残存した場合、危険なイメージを与えかねないこと、被災状況の継承は記録保存で対応でき、映像技術が確立していることから、今日の状況を十分後世に伝えることが可能であること、残存することにより二次災害の発生も懸念されること、保存費用がかかることなどから慎重に検討し、早期に判断すべきですが、対応をお聞きします。
 9月補正予算で、国道342号の復旧に当たっては、茂庭沢地区の約1.2キロの区間について、災害復旧費に関連費を加えて改良復旧することとしています。祭畤から須川までの約15キロ区間で24カ所の災害査定が終了しています。この区間は豪雪、急峻でカーブが多く、幅員が狭いことから、拡幅、突角除去、のり面対策、雪崩対策の工事を継続的に行ってきました。災害復旧にあわせ、こうした工事を効果的に組み合わせ、整備することも検討すべきです。今後、災害復旧の測量、設計などを行うことになりますので、施工可能な箇所については、災害復旧に改良費等を加え、あわせて対応すべきですが、どのように考えるのか、お聞きします。
 以上、被災者や復旧に当たる関係者の切なる思いでありますから、県の復旧・復興にかける決意を込めて御答弁いただきたいと思います。
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 阿部富雄議員の御質問にお答え申し上げます。
 岩手・宮城内陸地震及び岩手県沿岸北部を震源とする地震の復旧・復興対策についてでありますが、まず、一般国道342号祭畤大橋の仮橋については、現在、既に工事に着手しており、供用につきましては、本格的な降雪期前の11月末をめどに進めております。
 次に、治山工事の見通しについてでありますが、市野々原地区背後の山腹崩壊により、人家や国道に土砂流出の危険があることから、これらに被害が及ばないよう、まずは、治山ダムの建設を急ぐこととしており、この工事を10月中に発注し、今年度中の完成を目指しております。また、土砂流出の原因となっている崩壊した山腹斜面を安定させる必要があることから、来年度には、のり枠工やアンカー工等の山腹工事を実施することとしておりますが、現在、この山腹工事の工法決定のためボーリング調査を行っており、11月下旬には終了することとしています。この調査結果に基づき、来年度行う山腹工事は、その被害が山腹深層部まで及んでいると見込まれることから、完成するまでにはおおむね3年間を要するものと考えられますが、避難勧告の解除については、治山ダムの整備等を踏まえ一関市が判断するものではありますが、県としては、治山ダムを初めとする治山工事全体の進捗状況について随時情報を提供するなど、綿密な連携を図るとともに、必要に応じ、技術的な助言を行ってまいります。
 次に、被災住宅への支援や復旧の見通しについてでありますが、地震災害により住宅の全壊、全焼または宅地の崩壊等により移転を余儀なくされる5世帯を対象に、被災市が住宅再建のための助成を行う場合、1世帯当たり300万円を上限に補助金を交付することとし、先般、補助金交付要領を被災市に対して発したところであります。また、これらの世帯に対しては義援金も配分されたところでありまして、現在、被災市では県の要領を受けた助成制度の創設や、早期の再建に向けた相談等に当たっているところであります。
 次に、被災者生活支援カルテの活用についてでありますが、新潟県中越沖地震の際は、柏崎市等の市町村において、御指摘の被災者生活支援カルテを作成することで被災者が相談した各セクションの情報が集約されるなど、被災世帯個々の課題の把握と対応に効果的であったと聞いております。県としては、当該カルテの導入は、被災者が多数に及ぶ場合には生活再建の相談サービスの充実に有効であると考えることから、今後、被災市町等と意見交換しながら、その導入について検討してまいりたいと思います。
 次に、被災者に対する情報提供等についてでありますが、今回の2度の地震の際には、被災状況、復旧状況及び災害への対応状況について、被災市町村や関係機関と連携を図りながら情報収集に努めるとともに、発災直後から報道機関に対して関係資料を配布し記者レクを実施したほか、順次、県のホームページに地図情報や写真情報を交えながら情報を掲載するなど、地域住民の皆様への情報提供に努めたところであります。しかしながら、被災者が求めている情報の把握の仕方や防災関係機関相互の連携のもとでの情報提供のあり方など課題もありますことから、今後においては、被災市町村や関係機関等とより連携を図り、被災者が必要な情報を容易に入手できるよう、改善を検討してまいります。
 次に、一関市から要望のあった岩手・宮城内陸地震に係る固定資産税の軽減措置創設の見通しについてでありますが、まず、現在の被災家屋等に対する固定資産税については、一関市税条例に基づき、被害の程度に応じて、固定資産税の全部または一部を減免する措置が既に講じられているところであります。今般の一関市からの要望は、被災家屋の代替家屋を新設した場合等における固定資産税の軽減について、地方税法に特例規定を設けることを趣旨とするものでありましたが、県としては、今後、軽減措置の対象となる新築家屋等の有無や軽減見込み額の状況等を踏まえながら、引き続き一関市と協議の上、適切に対応してまいりたいと考えております。
 次に、一般国道342号祭畤大橋の復旧ルートについてでありますが、災害復旧の原則である原形復旧を基本に、周辺の道路施設を有効に活用する方針のもと、一部市道を取り込むルートで国の災害査定を受け決定されたものです。御指摘のような要望が地域から出されていますことから、その可能性について検討してまいります。
 また、復旧後の祭畤大橋から真湯側スノーシェルターまでのS字カーブについてでありますが、スノーシェルターとかけかえする祭畤大橋との位置関係から、道路の設計上、やむを得ずS字となるものであります。
 交通安全対策に関する地域からの要望につきましては、現地の状況等を踏まえ、必要な措置を検討してまいります。
 次に、崩落した祭畤大橋の保存についてでありますが、一関市では、被災した橋を岩手・宮城内陸地震のシンボルとして次世代に残したいとの考え方もあると聞いておりまして、そのためには、砂防法などの法的な問題、保存するための方法や費用などの課題も少なくないことから、今後、一関市を初め関係機関と協議しながら対応を検討してまいります。
 次に、祭畤から須川までの区間については、観光シーズン等における交通渋滞対策としてすれ違いが特に困難な箇所を中心に、災害復旧とあわせて道路の拡幅工事を実施することとして考えております。
 また、今年度予定していたのり面対策、雪崩対策の事業については、まず、道路の災害復旧工事を最優先で取り組み、災害復旧工事の進捗状況を見きわめつつ実施してまいりたいと思います。
 国道342号を初めとする今回の地震による災害復旧工事については、まだまだこれからという段階でございまして、早期復旧に向けてしっかりと取り組んでまいります。
〇議長(渡辺幸貫君) 以上をもって緊急質問を終結いたします。
   〔「議事進行」と呼ぶ者あり〕

前へ 次へ