平成20年9月定例会 第7回岩手県議会定例会会議録

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〇9番(高橋昌造君) 民主・県民会議の高橋昌造でございます。
 渡辺議長を初め議員各位の御配慮により、登壇の機会をいただきましたことに心から感謝申し上げます。
 それでは、通告に従いまして順次質問をさせていただきます。
 質問の第1点目は、広域連携の推進についてお伺いいたします。
 平成11年3月に3、232あった市町村が、市町村合併によりまして、ことしの3月、1、793市町村になりました。この結果、市町村の平均人口は3万6、387人から6万6、524人に増加、平均面積も114.8平方キロメートルから207.1平方キロメートルに拡大されました。また、市町村合併が進んだ背景には、地方分権の進展、そして厳しい財政事情、少子・高齢化、人口減少社会の到来、そして日常生活圏の拡大等の要因が挙げられるわけですが、過日、岩手県立大学総合政策学部と岩手日報社論説委員会による共同研究の結果が報告され、その内容は、合併後の状況や財政について厳しい評価が多く、住民レベルでは、合併効果・恩恵の浸透は不十分なことが裏づけられました。単独を選択した町も将来的な合併は避けられないとの住民意識がうかがわれたとのことですが、このことにつきまして、私は、広域合併のメリット、デメリットを明らかにし、地域の実情を踏まえ、住民が納得できるものにするため、合併の是非について十分議論を尽くす必要があると考えるものですが、去る8月の新聞報道によりますと、議論の場である合併協議会の設置を促したとされておりますが、知事はどのように認識されているのか。また、県内で合併議論が高まる中で、北東北の拠点としての機能を担わなければならない盛岡広域の将来像を含めた広域連携、そして広域合併について、知事はどのようにお考えになられているのか、その認識をお示し願います。
 ことしの3月24日、道州制ビジョン懇談会の中間報告では、10年後の平成30年度までに道州制に完全移行すべきであるとしております。道州及び市町村の2層制の構造にするためにも、市町村合併の次は都道府県の改革が必要であるとの議論が盛んに行われております中で、全国知事会でも道州制に関する議論が活発化しておりますが、知事は、道州制の導入の意義、課題、そして今後の展望についてどのように認識され、今後、道州制の導入にどのように対応されるお考えなのか、お伺いします。また、既存の北東北広域連携の中で、道州制の制度設計について前向きに検討されるお考えがあるのか、お伺いします。
 次に、保健・医療・福祉施策についてお伺いいたします。
 肝炎対策については、ウイルス検査の実施、岩手県肝炎対策協議会の設置、肝疾患連携拠点病院の指定、肝炎医療費助成制度の創設など、知事には、懸案事項を一つ一つ前向きに、そして着実に実施いただいておりますことに心から感謝申し上げます。
 そこで、さらに肝炎対策を推進するために、肝炎対策の一環として、C型肝炎ウイルス検査の検診率の目標値を定めるとともに、受診率の目標達成のために、県を初め市町村、事業所が一体となって、未受診者に対する普及啓発や受診勧奨を行うなど、未受診者をなくすことに重点を置いた、より効率的な対策を講ずるお考えがあるのか。また、9月からスタートいたしました医療機関での肝炎ウイルスの無料検査を来年度以降も継続するお考えがあるのか、知事にお伺いします。
 国においては、平成12年の21世紀における国民健康づくり運動の策定などを通じて健康づくりの普及啓発などを進められてきたところですが、本県でも、壮年期の死亡の減少、健康寿命の延伸、生活の質や人生の質の向上を目指し、健康いわて21プランを策定したところであり、このプランにおいては、平成13年度の策定時には113の健康指標を設けておりますが、それぞれの指標ごとの達成度はどのようになっているのか。また、目指す姿とのギャップがあるとすれば、今後どのように対応してまいるお考えなのか、お伺いします。
 難病は、経済的な負担のみならず介護等の負担が重く、精神的にも負担の大きい疾病であります。
 各保健所では、保健・医療・福祉の連携により、患者及びその家族の難病に対する不安や疑問に適切に対応するための相談支援体制及び生活支援について、具体的にどのような取り組みをしているのか、その実態をお示し願います。また、在宅療養時における難病患者への生活支援の一環として、経管栄養の注入などをホームヘルパー等介護者で行うことができるように、国へ強く働きかけるお考えがあるのか、知事にお伺いします。
 ことし4月から始まった後期高齢者医療制度は、保険料を年金から天引きする一方、高齢者が安心して医療を受けられる内容になっていないことや、たび重なる制度の場当たり的な見直しで、広域連合そして県内市町村では対応に苦慮されておりますが、県のこの制度に対する考え方をお伺いします。また、年齢で差別するこの制度を廃止し、新たに公平な医療を実現できる仕組みを国に求めるお考えがあるのか、知事にお伺いします。
 第4期介護保険事業支援計画の策定に当たり、療養病床の再編成を円滑に進めるため、地域ケア体制整備構想や医療費適正化計画等、それぞれの計画との整合性を図らなければならないわけですが、医療機関に対する転換意向調査の実施結果、そして療養病床から介護保険施設等への転換をどのように支援計画に位置づけていくお考えなのか、お伺いします。また、これ以外に、前期計画との比較において大きな変更点があれば、具体的にお示し願います。
 介護サービスの質の維持向上を図るためには、介護労働者の確保、そして育成が不可欠であります。介護福祉士の資格取得を目指す学生を養成する全国の大学や専修学校などで入学者の定員割れが深刻化し、平成20年度の入学者は定員全体に占める割合が45.8%でありますが、県内での平成20年度の充足率は幾らであるか、そして、卒業者の県内定着率がどのような状況下であるのか、お示し願います。
 また、介護労働者の実態は、仕事の内容の割に賃金水準が低く、そして、汚い、きつい、暗いの、よく言われる3K職場であり、処遇の改善が求められておりますが、県として、このことについてどのように認識されているのか。また、介護人材確保の観点からも、介護労働者の待遇改善及び賃金の引き上げについて、国にどのような働きかけを行っているのか、お伺いします。
 次に、産業振興についてお伺いします。
 先月8日に、宮舘副知事を本部長とする庁内横断組織岩手県自動車関連産業振興本部を立ち上げたわけですが、県は、岩手県自動車関連産業成長戦略で、平成27年度までに自動車関連企業数を現在より46社増の220社に、輸送用機械出荷額を1、578億円増の5、700億円とする目標を掲げておりますが、その考え方についてお伺いします。また、今後の振興本部の取り組みについて、あわせてお伺いします。
 企業誘致の基本は、やはり地域の特性を生かすことにあると考えますが、盛岡地域は、大学等の高等教育機関や研究機関が集積するという特性をとらえ、昨年8月、教育機関、研究・支援機関、民間団体、市町村、県などからなる盛岡広域地域産業活性化協議会を設置して、企業立地促進法に基づき、IT・組み込みシステム関連産業の集積に取り組んでいると伺っております。同協議会設立から1年を経過したところですが、その取り組み状況をどのように評価し、今後どのように推進していくのか、お伺いします。
 次に、観光振興についてお伺いします。
 ことしは、6月14日の岩手・宮城内陸地震、7月24日の岩手県沿岸北部を震源とする地震により、県南、県北の両地域が甚大な被害に見舞われ、県内全域に深刻な風評被害をもたらしております。岩手県が誇る平泉を中心とした歴史文化遺産等の観光資源はもとよりでありますが、かの宮澤賢治がイーハトーブと名づけて愛した岩手県全域は、日本を代表する国立公園であります十和田八幡平、陸中海岸の両国立公園、そして、岩手山を初め県内の山々の随所にわき出るすぐれた天然自噴温泉群など、地球の恵みそのものと言える自然環境資源群を擁しており、全国に誇るべき健康的かつ心身に、いわゆる人の体に優しい、いやしをもたらす極めてすぐれた自然環境資源であり、また、昨今、温暖化問題で揺れる地球環境保護の啓蒙や教育の場としても極めてすぐれたフィールドであると申せます。
 しかし、この岩手県の観光資源の目玉であります自然環境を中心とする観光は、今回の地震以前から、長引く不況やガソリン価格の高騰、そして今夏―ことしの夏は低温で、県内の主要海水浴場が軒並み客数がダウン、一時は隆盛を極めたアウトドアブームの沈静化、若者のウインタースポーツ離れによるスキー場の凋落傾向化等構造的な理由により、岩手県全域の自然公園観光及び環境観光はかなり弱体化していた事実があります。特に、冬季観光においては、各所でスキー場が閉鎖されるなど、大変憂慮される状況下にあります。
 以上のことから、単に一時的な風評被害対策に限定して終わることなく、岩手の観光振興につなげるためにも、効果的な対策を今後どのように講じられるのか、また、これを契機として観光立県につなげる施策をお示し願います。
 次に、農林業の振興についてお伺いします。
 環境省では、地球温暖化が国内の食料生産や自然生態系に与える影響と、今後、そのことにどう適応していくのかの具体的な方策を示す報告書がまとめられました。それによれば、我が国でも既に気候変動の影響があらわれている。特に、今世紀に入って以降、影響は急速にあらわれつつあるとし、今後、国民生活に関係する広い分野で一層大きな影響が予想されるとしております。
 農業では、これまでに予測された影響として、高温による米の白未熟粒や胴割れの発生と品質及び食味の低下、麦の幼穂形成が早まったことによる凍霜害の増加及び登熟期間短縮による減収、果樹では、品質及び貯蔵性の低下が認められ、また、将来予想される影響として、米の品質低下が甚大化するほか、水稲栽培適期が二極分化する可能性と、これに伴う全国平均収量の減少、そして、高温による麦や大豆の減収、果樹の栽培適地の移動等も予測されております。また、病害虫の増加や雑草の繁茂により、防除に対する労働力の増加が考えられるとしております。
   〔副議長退席、議長着席〕
 このように、地球温暖化が農業に及ぼす影響が明らかになってきておりますが、本県では農業にどのような影響が見られているのか、また、地球温暖化に対応した技術対策をどのように進めていくのか、お伺いします。
 本県では、平成18年2月に岩手県食育推進基本計画を策定し、食に関する知識と食を選択する力を習得、健全な食生活を実践することのできる人間を育てるさまざまな取り組み、例えば農林水産物の生産や食文化等にかかわる技術・知識を子供たちに伝えることができる農林水産業関係者を食育パートナーとして登録し、教育機関等に派遣して出前授業等、または学校給食等への地元食材の提供、農業体験機会の提供などの取り組みが行われているものと承知しております。
 一方、新聞報道によれば、県内35市町村のうち、食育推進計画を作成したのは8市町村とのことで、食育への取り組みが進んでいない状況もうかがわれますが、こうした中で、今年度から新たに子ども農山漁村交流プロジェクトが開始されました。この取り組みは食育の推進にも大きな効果が期待されると考えますが、このプロジェクトについて、県は今後どのように取り組んでいくのか、お伺いします。
 9月に明らかになった三笠フーズなどによる残留農薬やカビ毒に汚染された事故米の食用の不正流通問題は、消費者の食の安全・安心への信頼を根底から揺るがすものであります。本県でも、県学校給食会によれば、この事故米が給食向けの卵焼きなどに混入されていたことを明らかにし、県内小・中学校などの給食で、20市町村で217校、16万9、000食分が使われたということであります。また、このような事故米が病院や高齢者、学校給食等の広範囲に及んでいたことは驚くべきことであり、今後ますます地産地消の取り組みが重要になるものと思われますが、県は、今回の事故米の不正流通の問題を踏まえ、本県の農業振興に向けた地産地消の推進にどのように取り組んでいくのか、お伺いします。
 7月に公表された平成20年産米の作付面積の中間報告では、全国で157万ヘクタールの見通しで、2万9、000ヘクタールが過剰作付となる見込みのようです。昨年、米の過剰作付により米価が暴落し、米緊急対策が実施されたところでありますが、米価の安定には、生産調整目標面積の確実な達成が重要であります。世界的な穀物価格の高騰を受けて食料品の価格が上昇し、消費者の米回帰が起こっているとのことです。一方で、現場では、米の生産調整には限界感が広がっているとのことでありますが、水田を水田として利用することができれば、耕作放棄地を解消し、食料自給率の向上に大きく寄与すると考えられます。すなわち、米粉用や飼料用米の生産が経営的に可能となれば生産調整への取り組みが容易になり、水田の有効利用につながるものと思われますが、米粉用や飼料用など、主食用以外の他用途品種の開発状況がどうなっているのか、また、米粉用や飼料用として販売する場合、主食用より価格が安いために再生産可能な所得を確保することが課題と考えますが、このための低コスト生産や支援体制などをどのように構築していくのか、お伺いします。
 また、先日の新聞報道によれば、食味がよくて栽培がしやすい半もち短稈ヒエの3品種が新たに開発されたとのことですが、大変喜ばしいことであり、一日も早く農家が栽培できるように期待しているところであります。このような水田栽培ができる雑穀ヒエの生産拡大は生産調整にとっても重要な施策であり、大いに作付をふやしたいと考えるものですが、県としてどのように支援していくお考えなのか、お伺いします。
 我が国の食料自給率は40%であり、先進国の中では最低水準で、食料の6割は海外に頼っている状況であり、面積換算では、国内農地465万ヘクタールの約2.7倍、1、245万ヘクタールに相当すると言われております。また、我が国の耕作放棄地は、平成17年農林業センサスで38万6、000ヘクタールに達し、耕作面積に占める割合は約1割に上っております。農林水産省は、食料自給率の目標を現行の45%から50%以上に引き上げる方針を決め、そのための工程表を策定することとしております。ちなみに、本県の食料自給率は105%と100%を超えておりますが、北海道195%、秋田県174%、山形県132%、青森県118%に次いで第5位になっております。食料自給率を引き上げるためには、優良農地や担い手の確保が重要でありますが、本県における耕作放棄地の解消や担い手の確保対策を今後どのように進めていくお考えなのか、お伺いします。
 原油や穀物価格の高騰は、畜産経営コストを押し上げ、畜産経営を危機的な状況に陥れています。
 我が国の畜産は、平成19年度の純国内産飼料自給率が25%であり、極めて脆弱な飼料基盤の上になっているのが現状であります。畜産の経営体質を強化するためには飼料自給率を引き上げること、すなわち、飼料基盤の整備が喫緊の課題になっていると思われますが、県では、危機的な状況である畜産経営を立て直すために、飼料基盤の確保などを今後どのように進めていくお考えなのか、お伺いします。
 最近は価格が低下してきているものの、燃油価格は相変わらず高値が続いております。また、肥料価格も高騰しております。全国農業協同組合連合会は、全国の農協に卸す化学肥料の今年度の販売価格を、前年度に比べて平均60%程度引き上げたようでございます。この理由として、原料の燐酸などの国際価格が、前年度の2倍から3倍に急騰しているためとしております。肥料価格の高騰は、農家経営を直撃しております。岩手の事例ですと、中央農業総合研究センターの農業経営研究チームの試算では、経費に占める肥料費の割合が高いほど、所得の減少は深刻とのことであります。肥料費を削減するためには、土壌診断に基づいた適正な施肥が重要と思われますが、農林水産省の調査によれば、全国の作付面積に対する診断件数が、野菜で2.3ヘクタールに1件、米で33ヘクタールに1件にとどまるなど、診断が普及していない状況とのことであります。農家の収益性を向上させるためにも、肥料費などの生産コストを大幅に削減することが必要でありますが、農家が土壌診断をきめ細かく実施できるように診断体制をどのように構築していくお考えなのか、お伺いします。
 原油や穀物価格の高騰は生活必需品の物価を押し上げ、個人消費に影を落としております。農業経営でも、原油や飼料価格の高騰によって収益が悪化し、このままでは、経営の維持が難しい状況になってきております。農林水産省の集落営農活動実態調査によれば、集落営農の設立によって、構成農家1戸当たりの生産費が減少したと答えた組織は37%にとどまり、変化なしが48%で最も多くなっています。また、集落営農組織はメリットを実感している組織がある一方で、設立後間もないために、収益確保までに至らない組織も多く見られているようです。
 農林水産省の調査では、平成19年度の決算では、黒字を確保した組織が5割にとどまっているとのことでありますが、加えて、原油や資材の高騰は集落営農組織の経営を直撃しているものと思われますが、本県における集落営農組織の活動実態や経営状況はどうなっているのか。また、原油や資材が高騰している中で、法人化に向けて集落営農組織をどのように育成しているか、お伺いします。
 シイタケや木炭などの特用林産物の生産は、本県の豊かな森林資源を活用して農山村地域における貴重な収入源として、また、就労機会の創出など大きな役割を果たしてまいりました。しかしながら、平成18年の生産量を見ますと、干しシイタケは251トンと3年前の315トンから20%、生シイタケは4、066トンと3年前の4、797トンから15%、木炭は4、511トンと3年前の5、070トンから11%、それぞれ減少しております。一方で、消費者の食品等に対する志向として安全・安心へのこだわりが高まっており、本県の特用林産物もこうした需要動向にしっかり対応し、生産振興を図ることが肝要であります。こうした中、シイタケや木炭の生産者から、広葉樹チップの需要増に伴い原木の確保が難しくなったと聞いておりますが、シイタケや木炭の原木の安定確保に向けた対策について県はどのように取り組んでいるのか、また、原木シイタケの生産振興を図るために、生産者の栽培技術の向上に向けた支援などの生産対策や品質のすぐれた本県の原木シイタケの販売戦略を今後どのように展開しようとしているのか、お伺いします。
 以上をもちまして私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋昌造議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、市町村合併等についてでありますが、平成22年3月末の合併新法の期限を踏まえれば、市町村は合併推進構想をもとに、住民が的確に判断できる材料を早急に提供し、合併協議会などオープンな場での議論を積極的に進めていただきたいと考えているところであり、県としては、市町村と連携しながら、住民へ判断材料を提供するなどして地域の議論を積極的に促してまいります。
 盛岡広域の広域連携と広域合併については、県都盛岡市は、盛岡圏域のみならず岩手県全体を牽引する立場であり、将来的には北東北の拠点都市として、さらには仙台に次ぐ東北第2の都市として発展を遂げ、全国的にも国際的にも確固たる地位を占めることが期待されますことから、県としては、合併推進構想を念頭に置きつつ、いわゆる50万人都市構想の実現に向けた取り組みに対して、十分な支援を行ってまいりたいと考えております。
 盛岡広域8市町村は、これまでにも広域的な事務処理を行っていますが、本年4月には、8市町村の首長で構成する盛岡広域市町村長懇談会を設立し、諸証明の広域交付、職員の人材育成、観光振興、企業誘致など、広域的な諸課題についてのさらなる取り組みを始めたと伺っておりまして、さまざまな分野において、一層の連携が深まることを期待しております。
 次に、道州制についてでありますが、私は、国と地方との役割分担を再構築することにより、中央集権体制から地方分権型の地方自治への転換を図ろうという方向性、また、グローバル化への対応や県境を越えた連携による産業振興、社会資本の効率的な整備と活用などの広域的連携という視点から、道州制が議論されることには意義があると考えております。
 一方で、私は、そもそも地方自治が地域のことをみずから考え、みずからの責任で行動することを基本としている中で、道州を自治体とした場合に、そこに暮らす住民にとって広大なエリア全体を把握した上での意思決定が可能かどうか、地域の一体感を醸成できるのかなど住民自治の面での懸念を感じておりまして、また、現在の議論が、国民目線での盛り上がりに欠けた国レベルでの上からの議論が中心となっている状況に危惧の念を抱いております。したがって、私としては、十分な権限、財源が移譲され、地域の特性を生かした施策を地域の責任において決定できる、真の地方分権の実現に向けた取り組みを進めることが、まずもって必要であると考えておりまして、現在、国において行われている地方分権改革への取り組みが、地方の立場に立った改革として確実に進展するよう、全国知事会とも連携しながら積極的に取り組んでまいります。
 また、北東北連携との関係においても、地方分権が進み、住民サイドから団体自治のあり方として道州制の議論が広がっていくことが前提となるべきであり、そうした機運が醸成されるまでの間は、相互に連携できる取り組みを着実に積み重ねていくことが重要であると考えています。
 次に、肝炎対策についてでありますが、C型肝炎は感染を放置すると重篤な病態を招く疾患であるため、県民の健康を守る観点からその対策は極めて重要であり、検査により感染の有無を早期に発見することは、適切な治療や病気の進行予防に効果的でありますことから、できるだけ多くの方が受診すべきものと考えております。この検査について、市町村は健康増進法に基づいて、原則40歳の住民対象として実施することとなっており、今年度から受診率の目標の設定に努めることとされ、現在、35市町村のうち15市町村が定めているところです。今後、県としては、他の市町村にも目標設定の働きかけをするとともに、市町村によって異なる受診対象者や目標設定の考え方を統一して、県として目標値を設定できるよう検討してまいります。
 また、市町村や事業所、医療機関等と連携し、C型肝炎についての正しい知識や検査の重要性について、ポスター、リーフレット、県広報媒体などを活用した普及啓発を行い、受診率が高まるよう取り組みを進めてまいります。
 来年度以降の無料検査の継続についてでありますが、国では、国庫補助について平成21年度予算の概算要求事業として公表しておりまして、今後、国の動向も見ながら、継続することについて検討していきたいと思います。
 次に、難病患者への支援についてでありますが、まず、保健所における支援の取り組み内容については、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症―ALSなどの原因不明で治療方法が確立していない難病の患者に対して多様な支援が必要なことから、県内10カ所の保健所で医療相談会や訪問相談・指導を行い、福祉サービスや療養上のアドバイス等を行っているところです。
 また、介護保険等の対象とならない在宅の重症難病患者に対しては療養支援計画を策定し、訪問看護や訪問介護などの必要なサービスの調整を実施しているところです。その支援に当たっては、在宅療養計画策定評価委員会を設置して、市町村や医療機関、サービス提供事業者との連携を図っておりまして、引き続き難病患者、家族の療養支援の充実に努めてまいります。
 また、県は、難病相談支援センターをふれあいランド内に設置し、岩手県難病・疾病団体連絡協議会に運営を委託し、他の障害者団体等との共用の事務室で、日常生活の悩みなど年間2、000件を超える相談に対応していますが、専用の相談室が確保されていませんことから、相談者のプライバシー確保などの相談環境の整備が必要と考えているところであります。このようなことから、ふれあいランド岩手内の旧喫煙室を改修整備し、独立した相談室としたいと考えております。
 次に、ホームヘルパーが経管栄養の注入を行うことについてでありますが、在宅で療養している難病患者のうち、胃ろうによる経管栄養を実施している方は40人ほどでありますが、医師法などにより、経管栄養の注入を医療資格を有しないホームヘルパー等が行うことができないことから、家族介護者が対応しているわけでございます。ホームヘルパー等の経管栄養の注入が医師法上の行為に当たるか否かについて、現在、国で検討していると伺っていますが、県としても、家族介護者の負担の実態を国に伝えてまいります。
 次に、後期高齢者医療制度についてでありますが、本制度については、本年4月に制度が施行された際、75歳以上を対象に独立した医療制度としたことや、保険料の負担のあり方等にさまざまな意見が寄せられまして、こうした状況を受け、国において制度の運用改善に取り組んだことは、国民の声が国を動かしつつあるものと認識しております。依然として残る国民の不安を解消するためには、社会保障の制度設計に責務を有する国において、より一層、適切に対応することが求められていると考えております。
 新たに公平な医療を実現できる仕組みを国に要望することについては、国において、今後進められる見直し議論を見守りつつ、これまでの制度運営における課題や要望を十分踏まえ、国民が安心できる医療制度となるよう、知事会などを通じて国に要望してまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので御了承をお願いします。
   〔保健福祉部長岩渕良昭君登壇〕
〇保健福祉部長(岩渕良昭君) まず、平成13年度から24年度までの計画であります健康いわて21プランに掲げる指標の達成度についてでありますが、平成19年3月に、113の指標と、これを11の領域に区分して中間評価を実施したところであります。この時点で評価可能であった68指標の到達度評価でありますが、達成に向けて順調に進んでいるものは、65歳以上で20本以上の歯がある人や成人の禁煙者の増加などの26指標であり、やや前進または停滞しているものは、成人の肥満者が横ばいであるなどの25指標、後退しているものは、成人1日当たりの野菜平均摂取量の減少や最近1カ月にストレスを感じた人の増加などの17指標でありました。
 また、領域ごとの到達度評価については、口腔保健領域において、8020運動が成果を上げているなどにより順調に進んでおりますが、こころの領域は、ストレスを感じている人、悩みを相談する場所等を知らない人、眠る際に睡眠薬やアルコールを使うことがある人の増加などにより、後退している状況にありました。
 評価を踏まえた今後の対応についてでありますが、後退していると評価されたこころの領域については、ストレスの軽減の取り組みに関する意識啓発や相談体制の充実を図るとともに、やや前進または停滞と評価されている栄養の偏りや肥満に代表される栄養や身体活動領域については、メタボリックシンドロームの予防に重点を置いた取り組みを推進しながら、指標の改善に努めてまいります。
 次に、今年度中に策定する平成21年度から23年度までを計画期間とする第4期岩手県介護保険事業支援計画についてでありますが、本年2月に策定した岩手県地域ケア体制整備構想においては、平成23年度末までに1、097床の療養病床が介護保険施設等に転換する計画でありますが、5月に実施した転換意向等アンケート調査の結果では、約1、150床と若干増加をしており
 ます。現在、県、市町村医療機関において、転換する年度等の具体的な内容について調整しているところであり、その結果を第4期介護保険事業支援計画へ的確に盛り込むこととしており、療養病床の転換により、行き場のない入院患者が生じないよう十分配慮しながら、介護保険施設等、その受け皿となる介護サービス基盤の整備を促進してまいりたいと考えております。
 なお、療養病床の再編成に係る事項を除いては、前期計画との大きな変更点はないものの、県といたしましては、現行計画の実績について十分に評価分析を行い、国の基本方針を踏まえながらも、地域の実情に配慮した実効性のある計画とすることを基本とし、住まいとサービス拠点が一体となった新しい生活空間づくり、既存遊休施設の活用、将来を見据えた計画的な施設整備などに配慮する旨等を定めた計画策定指針を、市町村に示しているところであります。
 次に、介護福祉士を養成する学校の入学者の充足率等についてでありますが、県内に介護福祉士を養成する専修学校は5校あり、平成20年度の入学者は、定員292人に対して170人であり、充足率58.2%と全国よりは高い状況となっております。また、平成20年3月に卒業した225人のうち、77.3%に当たる174人が県内の介護関係の事業所に就職しております。
 次に、介護労働者の待遇改善についてでありますが、国等の調査では、介護労働者の賃金は他の産業と比べて低位にあり、また、働く上での悩み、不満等については業務に対する社会的評価が低い、健康面での不安がある、休暇や休憩がとりにくいとの結果が報告されており、県といたしましても、介護労働者の待遇の改善は喫緊の課題であると認識しております。
 本年5月、介護従事者等の処遇改善に関する関係法律が施行されたことに伴い、国では、平成21年4月1日までに、介護労働者の待遇改善のために必要な措置を講ずることとされ現在検討されているところでありますが、県といたしましては、本年5月に、介護従事者等の待遇改善に確実に反映されるような介護報酬の改善を、国に要望しているところであります。
   〔商工労働観光部長廣田淳君登壇〕
〇商工労働観光部長(廣田淳君) 岩手県自動車関連産業成長戦略の目標などについてでありますが、岩手県自動車関連産業成長戦略においては、将来の東北全体での自動車生産を、現在の30万台から平成27年度の100万台を目標に設定しており、このうち自動車関連企業数は、平成20年現在174社に対し、過去の実績をベースに毎年6社ずつの増加を見込んで、くくって46社増の220社としたものであります。また、輸送用機械出荷額は平成16年度実績値4、000億円をベースに、生産台数の増加を加味して約4割増の5、700億円と見込んだもので、いずれも期待を込めた目標値でありますが、その達成に向けて努力してまいる考えであります。
 今後の振興本部の取り組みとしては、副知事を本部長とします部局横断的支援体制のもと、自動車関連企業に対する総合窓口を設置し、企業誘致や人材確保、インフラ整備、地場企業の参入促進など、自動車関連産業の集積促進に向けた取り組みを強力に展開することとしております。
 次に、盛岡広域地域産業活性化協議会の取り組み状況等についてでありますが、近年、中京圏、首都圏のソフトウエア開発技術者の人材不足を背景に、地方への拠点設置を検討する企業が増加しており、岩手県立大学ソフトウェア情報学部を初め、岩手大学、岩手医科大学、県立産業技術短期大学校といった高等教育機関が集積しております盛岡広域地域が、全国的にも注目を集めております。このような中で、盛岡広域地域では、企業立地促進法に基づき策定した基本計画において、組み込みソフトとIT・システム関連産業を重点業種に指定し、その集積に積極的に取り組んでおり、平成19年度の関連企業の立地件数は5件、今年度はこれまで1件の立地件数となっております。
 現在、盛岡広域地方活性化協議会では、IT・システム技術者養成講座、組み込み技術研修会などの人材養成等に力を入れており、地域の特性を生かした取り組みに大いに期待しているところであります。県としましても、本年7月に、組み込みソフトウエア産業の競争力強化を図るため、企業6社、教育機関、行政等13団体により、いわて組み込みシステムコンソーシアムを立ち上げたところであり、今後とも、各市町村と連携のもと、豊富で優秀な人材が供給できることを最大の強みとし、この地域がIT・システム関連産業の一大拠点となるよう、協議会の取り組みと連動しながら、企業誘致や地元企業との取引拡大等に努めてまいる考えであります。
 次に、観光振興についてでありますが、近年の旅行形態を見ますと、団体旅行型から個人・小グループ型旅行へ、名所旧跡を駆け足で見物する画一化した旅行から、テーマ性の高い旅行や体験交流を楽しむ滞在型の旅行へと観光ニーズの変化が進んでおります。サッパ船を初めとしましたエコツーリズムを展開する田野畑村や、山村生活体験を求めて多くの学生が訪れる久慈市山形町などの例は、このような変化のあらわれでありますことから、県としましては、自然や食、祭り、さらには地域の歴史や文化、ありのままの暮らしなど、本県が有する魅力的な観光資源をお客様に堪能いただき、本県への誘客を促進するため、創る、育てる、来ていただくという三つの取り組みを進めております。
 具体的には、第1に、地域の企画力や情報発信力を強化し、観光商品を創るためそれぞれの地域の関係者をまとめ、着地型の旅行プランを提案する地域コーディネーターの育成や、ホームページの充実について昨年から着手しております。
 また、第2に、観光客に満足していただく観光人材を育てるため、観光客一人一人のニーズに対応したホスピタリティーを提供するいわて観光おもてなしマイスターや、外国人観光客に対応した地域限定通訳案内士を昨年から養成しているほか、観光ボランティアガイドの育成やネットワーク化を進めておりますし、第3に、民間主体の受け入れ態勢を整備し、お客様に来ていただくため、観光施設への経営改善アドバイザーの派遣や体験型教育旅行を受け入れる農林漁家の拡大支援などに取り組んでいるところであります。
 今後におきましても、このような取り組みの充実強化を図り、国内外の観光客が地域住民とともに楽しみ、体験する地域回遊交流型観光の実現により、地域経済の活性化に取り組んでまいります。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) まず、地球温暖化による本県農業への影響についてでございますが、本県におきましては、今のところ顕著な影響は見られませんが、リンゴの着色不良、斑点米カメムシの被害の増加、ホウレンソウの生育停滞など、一部に高温の影響が見られつつあるところでございます。しかしながら、今後の温暖化の進行により本県農業生産への影響が懸念されますことから、本年6月、農業研究センターに地球温暖化検討チームを設置いたしまして、水稲の高温耐性品種の育成、リンドウやリンゴなどの高温対策や高温性病害虫の効果的な防除方法の開発、さらには、温暖化を逆手にとった水稲の直播栽培や、南東北で栽培されている作物の導入などに取り組んでいるところでございます。今後とも、国の試験研究機関等と連携を図りながら、地球温暖化に対応した技術の開発と普及に取り組んでまいります。
 次に、子ども農山漁村交流プロジェクトについてでございますが、このプロジェクトは、本年1月に策定いたしましたいわて希望創造プランに盛り込まれております食や農山漁村での暮らしを学ぶ体験型教育旅行の推進と軌を一にするものでございまして、農山漁村の活性化や食育の推進といった観点からも大きな効果が期待されますことから、県といたしましても積極的に取り組むこととしているところでございます。このため、本年6月、庁内関係部局で構成する推進協議会を設置し、年内をめどに体験型教育旅行の基本的な考え方と具体的な取り組み内容等を定めた推進計画を策定することとしているところでございます。今後は、この推進計画に基づき、地域の受け入れ体制の整備を促進するとともに、県内全域での受け入れ農林漁家の拡大、体験メニューの開発支援、さらには県内外への情報発信などに取り組み、豊かな自然にはぐくまれた豊富な食材の生産現場が身近にあるという本県の特徴を最大限に生かし、学校や市町村との連携を図りながら、岩手らしいプロジェクトとして展開してまいります。
 次に、事故米を受けての地産地消の取り組みについてでございますが、今回の一連の食品事件を通じて、県民に対して安全・安心な県産食材を安定的に供給することの重要性を再認識するとともに、これを契機として、消費者にとっては、高品質で安全・安心な食材による豊かな食生活が、生産者にとっては、県内需要の増加による生産拡大が期待できる地産地消の取り組みを一層推進すべきと考えているところでございます。このため、生産・加工面では、環境保全型農業の推進や、県産食材を活用した加工食品の開発と販路拡大、流通・販売面では、産直施設のネットワーク形成による品ぞろえの充実と安定供給体制の確保、給食事業や観光産業等への県産食材供給ルートの拡充などに取り組むことにより、さらに地産地消の運動の輪を広げ、岩手らしい安全・安心な農産物の供給体制を構築してまいります。
 次に、米粉用・飼料用米の品種開発と支援体制等についてでございますが、まず、非主食用米の品種開発につきましては、10アール当たり800キログラムの収量が期待できる本県オリジナル品種の岩南29号と岩手85号を開発し、現在、県内4カ所で、種子の確保も兼ねて実証栽培を実施しているところでございまして、来年度には約120ヘクタールで栽培が可能となる種子を供給できる見込みとなっております。
 また、非主食用米につきましては、これまでも関係機関・団体と連携を図りながら生産振興に努めてきたところでございますが、近年、世界的に穀物需給が逼迫する中で食料自給率の向上が求められており、加えて、本県の農業振興上も、この取り組みは水田の有効利用や自給飼料の確保といった観点から重要な課題でありますことから、本年7月、新たに農業関係団体も参画した米粉用・飼料用米のプロジェクトチームを設置し、現在、このプロジェクトチームが中心となって、低コスト生産や需要の拡大に向けて取り組んでいるところでございます。
 具体的に申し上げますと、生産コストの低減に向けて、スケールメリットを発揮させるための団地化の促進や、本県が独自に開発した湛水直播栽培技術の普及などを推進するとともに、需要の拡大に向けて、畜産農家や食品製造企業等の実需者とのマッチングや、米粉食品の一層のPRな
 どに取り組んでいるところでございます。今後におきましては、こうした取り組みをさらに強化するとともに、産地づくり交付金など国の支援措置の効果的な活用を促進し、非主食用米の生産振興に努めてまいります。
 次に、半もち短稈ヒエの生産拡大についてでございますが、今般開発いたしました3品種は、いずれもうるちともちの中間の性質を持ち、粘りが強く食味がよい上、加工適性が高く、また、草丈が低いため水稲用コンバインの利用が可能で、専用機械が不要であるなど、これまでの栽培品種にはないすぐれた特性を有しておりますことから、生産者のみならず実需者からも大きな期待が寄せられているところでございます。このため、県といたしましては、11月に品種名を公募いたしまして、本年度中に品種登録を出願するとともに、来年度、産地での種子生産体制を整備し、平成22年から本格的な栽培を開始することといたしております。また、こうした生産面での取り組みとあわせまして、大口需要者との契約取引の拡大や、品種特性を生かした加工品やオリジナル料理の開発など、流通・加工関連産業等との連携による販路拡大に努め、日本一の雑穀ブランド産地としての地位を一層強固なものにしてまいります。
 次に、耕作放棄地の解消と担い手の確保対策についてでございますが、現在、市町村及び農業委員会におきまして耕作放棄地の実態調査を行っているところでございまして、この結果を踏まえ、年度内に市町村協議会を設置し、耕作放棄地の活用の方向性を定めた計画を市町村ごとに策定することとしているところでございます。今後は、この計画に基づきまして、市町村協議会が地域内での土地利用調整活動や再利用のための整備等に取り組むこととしているところでございます。県といたしましては、この協議会に参画いたしまして活動を支援するとともに、市町村の範囲を越えた広域的な利用調整や、農外からの参入も含めた多様な担い手の掘り起こしなどにより、耕作放棄地を解消する担い手の確保を図ることとしております。また、中山間地域等直接支払交付金や、新たに国が来年度からの実施を検討いたしております交付金の活用に、土壌改良などの再生利用のための活動を支援し、耕作放棄地の解消に努めてまいります。
 次に、飼料高騰等による畜産経営危機への対応についてでございますが、飼料価格の高騰等による生産コストの上昇で本県畜産経営が厳しさを増している中で、経営の安定を図るためには、国の畜産・酪農緊急対策を最大限に活用するとともに、本県の豊富な草資源を生かした自給飼料の増産などにより、生産コストの低減を図ることが重要と考えております。このため、引き続き、国の補助事業の活用などによる自給飼料基盤の整備や、公共牧場の放牧、採草機能の強化を計画的に推進するとともに、本県が新たに開発いたしました播種作業を大幅に省力化する技術を活用した飼料用トウモロコシの生産拡大や、既存草地の簡易更新等による生産性の向上、さらには、水田を活用した稲発酵粗飼料、飼料用米の生産拡大などを支援いたしまして、自給飼料基盤に立脚した体質の強い畜産経営の確立に努めてまいります。
 次に、土壌診断の実施体制についてでございますが、生産コストの低減を図るためには、土壌診断に基づく肥料費の低減が極めて有効でありますことから、簡易に診断できるシステムの開発と普及、関係団体との連携による土壌診断体制の構築、肥料費低減に取り組む農家への支援などに重点的に取り組む必要があると考えております。このため、農業研究センターと県内ベンチャー企業による、従来の10分の1の時間とコストで土壌分析が可能なシステムの共同開発を促進し、その普及を図るとともに、普及センターと農協との適切な役割分担のもと、国が新たに講じる土壌診断経費の助成措置を活用し、農家が気軽に土壌診断できる体制を整備することとしているところでございます。
 こうした取り組みとあわせまして、地域の土壌の実態を踏まえた施肥体系の見直しや部分施肥技術の普及、さらには燐酸等を減じた安価な配合肥料や発酵鶏ふんの利用促進などにより、肥料コストの削減に取り組んでまいります。
 次に、集落営農組織の状況と育成方策についてでございますが、昨年7月のアンケート調査によりますと、すべての集落営農組織で生産資材を共同で購入しておりますものの、約7割の組織で水稲の基幹作業が従来どおり個別農家ごとに行われている実態となってございます。また、本年6月の県内組織のサンプル調査によりますと、機械を共有し、財務諸表を作成しているのは約2割で、そのうちの約8割が黒字決算となってており、赤字の組織につきましても、国の収入減少影響緩和交付金を加えますと、すべての組織で黒字となっております。
 一方、全体の8割を占めます機械を個別に所有している組織につきましては、機械の共同利用や農地利用集積などによる組織化の効果が得られていないほか、経理面でも現金出納のみにとどまるなど、経営管理が不十分な状況にございます。このように、集落営農組織の多くは経営発展の初期段階にとどまっておりまして、今後、農作業の合理化や経営管理手法の習得など、経営のレベルアップを図っていくことが課題となっております。
 このようなことから、年内に県内全組織を対象としたアンケート調査を実施いたしまして、発展段階に応じた集落営農組織の分類を行った上で、構成員が個別に農作業をしている組織に対しましては、過剰な機械の整理合理化に向けた合意形成や作業受委託の促進、機械を共有し、担い手への農地集積が始まっている組織に対しましては、余剰労働力を活用した新規作目の導入、法人化された組織に対しましては、経営診断の実施や所得確保に向けたアグリビジネスへの進出など、それぞれの発展段階に応じたきめ細やかな支援により、集落営農組織の経営体質の強化を促進し、厳しい経営環境にも対応できる集落営農組織の育成に努めてまいります。
 次に、特用林産物の振興についてでございますが、シイタケや木炭など本県のすぐれた特用林産物を安定的に生産するためには、原木の安定確保が重要であると考えております。原木需要に対する供給は、県全体ではおおむね確保されておりますものの、チップ向けの広葉樹需要の高まり、品質や価格面でのミスマッチ、需要に即応できない供給体制などから、一部の地域では円滑な調達が難しくなるケースがあると認識しているところでございます。このため、県では、原木を供給する森林組合への県単運転資金の貸し付けによる計画的な供給の促進、地域ごとの原木需給懇談会の開催による生産者と供給者のマッチング、さらには原木の早期注文による適期の調達や、現地渡しによるコストの削減などに取り組んでいるところでございます。
 また、原木シイタケの振興を図るためには、高品質のシイタケを安定的に生産できる体制の構築と、販路拡大のための県産ブランドの確立が重要と考えております。このため、生産面では、生産施設整備への支援による生産体制の強化、基本技術研修会の開催による新規参入者の技術力向上に加え、新たにハウス等の施設を活用した栽培研修による増産技術の向上により生産力の強化を図るとともに、販売面では、栽培履歴の記帳によるトレーサビリティーシステムの確立、有利販売のための選別技術指導の徹底、流通関係者等への岩手県産表示の働きかけによるブランド化に取り組んでいるところであり、今後とも消費者ニーズにこたえる高品質で安全・安心な本県特用林産物の生産振興に努めてまいります。
〇9番(高橋昌造君) 知事を初め関係部長の皆様方には、前向きな、そして誠実な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。
 私は、1点だけお伺いいたします。
 廣田商工労働観光部長にお伺いしますが、観光振興の答弁をお聞きしまして、大変失礼な言い方ですが、言葉の羅列だけで、岩手に行ってみたいな、これから岩手も紅葉の時期がもう始まっておるわけですが、何か、もう少し夢のあるお話、施策を示していただくことができるのかなと。
 そして、特にも岩手県だけじゃなく、北東北3県とか東北6県での広域観光とか、それから、県内には35の市町村があるわけですが、そこにはそれぞれ観光協会もあるわけです。そういったところと一体となって、そこにはいろんな歴史、文化、風土があるわけですから、そういうようなものの掘り起こしをして、そして、今度の9月定例会にはいわゆる補正予算も計上されておるわけです。特にも、風評被害対策で計上された予算を使い切って終われたと。いわゆるわっぱが仕事ではなく、次の施策にぜひつなげていただきたいということで、できればここで廣田商工労働観光部長に、岩手の観光振興についての夢の一端で結構ですから、お聞かせ願えればということで、終わらせていただきます。
〇商工労働観光部長(廣田淳君) 9月には、関西、東京ということで、私ども、知事を先頭に、岩手のPRをしてまいりました。主に向こうのエージェントの方々が集まったイベントでございましたけれども、皆さんからは、岩手あるいは東北に対して非常に熱い思いを聞かせていただきました。それは、やはりすばらしい自然、食、環境、伝統、それから人柄といいますか、そういったすべて、今、全国で国民が、特に団塊世代の皆さんが求めているものが岩手、東北にあるよ、大いにPRをして発信したほうがいいよというようなお話をいただきまして、私も非常に心強い思いをして、その辺をどんどんPRしていかなければならないと思ったところでございますし、また、今、議員から御指摘があった、我々行政だけではこれは実現できませんので、市町村、観光団体と一緒になって、ぜひ、息の長い観光振興ができるように取り進めてまいりたいと思います。
〇議長(渡辺幸貫君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
 この際、お諮りいたします。
 岩手・宮城内陸地震災害及び岩手県沿岸北部を震源とする地震災害の復旧・復興について、阿部富雄君から緊急質問の通告があります。阿部富雄君の緊急質問に同意の上、この際、日程に追加し、発言を許すことに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(渡辺幸貫君) 御異議なしと認めます。よって、阿部富雄君の緊急質問に同意の上、この際、日程に追加し、発言を許すことに決定いたしました。阿部富雄君。
   〔37番阿部富雄君登壇〕

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