平成20年9月定例会 第7回岩手県議会定例会会議録

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〇3番(小西和子君) 政和・社民クラブの小西和子でございます。
 今議会におきまして登壇の機会を与えてくださいました先輩議員、同僚議員に感謝を申し上げます。
 それでは、通告に従いまして順次質問を行います。
 初めに、子育て環境の整備についてお伺いいたします。
 厚生労働省が調べた2007年の合計特殊出生率、つまり女性一人が生涯に産む子供の推定人数は、本県は1.39で全国平均を上回ったものの、前年と同率で、過去最低でした。2005年の結婚と出産に関する全国調査では、理想的な子供の数が2.48人であるのに対して、実際にもつつもりの子供の数は2.11人となっています。理想の子供の数をもたない理由としては、子育てや教育にお金がかかること、心理的、身体的負担などが挙げられています。
 世界を見渡すと、保育所整備や育児休業普及に力を入れている国ほど出生率が高くなっています。
 日本も仕事と子育てが両立できる社会づくりが急務です。安心して出産するには、まず、家庭の経済基盤が大切になります。低賃金で苦しむフリーターは全国で181万人と言われます。共働き家庭の子育て支援もますます重要となります。保育所に入り切れず待機する子供は全国で1万9、550人、本県は75人を数えます。国は、保育士や看護師の資格を持つ方が自宅で乳幼児をお世話する保育ママの普及を図っており、本県も早急に実施することで、働く母親の心強い支えとなると考えます。
 男性の育児休業には社会の理解が以前よりは進んできました。厚生労働省は、働く母親よりも育児不安が強いと言われる専業主婦の夫も育児休業がとれるよう法改正を目指すとしております。
 本県の子の看護休暇取得者の割合は、女性の81.2%に対し、男性は18.8%となっています。
 長時間労働を解消するなど課題を解決し、男性の育児参加の加速に期待したいものです。
 地域で子育て家庭を支える動きも芽生えています。釜石市は子育て応援カード事業を6月からスタートさせました。妊婦や18歳以下の子供がいる世帯が対象で、協賛店で買い物をすると割引などのサービスが受けられます。親子が健やかに暮らせる社会は、多くの市民が安心して生活できる社会でもあるはずです。
 近年、県内において児童虐待相談は増加傾向にあり、不幸なことに虐待死亡事例も発生しています。どこの施設でも課題になるのは、虐待を受けた子供のケアについてです。臨床心理士や家庭支援専門相談員、個別対応職員という専門職がいますが、抜本的な解決には至らないということです。心のケアを必要とする子供に対して、個別にケアをしたくてもできないのが現状と訴えています。また、精神疾患を抱える保護者がふえており、経済的に苦しい家庭がほとんどということです。生活苦が背景にあっての虐待が多いので、今後も相談件数はなかなか減らないのではないかと危惧しています。また、虐待を受けた子供は発達障害と同じような行動をとることが報告されており、学校でなかなか人間関係をつくれずにいるのが現状ということです。児童養護施設を抱える学校には、虐待を受けた子供をケアできる加配教員の配置を望みます。
 子育てには必ずと言ってよいほど不安や悩みがつきものです。そこでお伺いしますが、子育て支援のためのネットワークを立ち上げているのでしょうか。さらに、手軽に使えるハンドブックやホームページでの情報提供があると子育てサポートになると考えますが、いかがでしょうか。
 次に、児童虐待根絶を目指し、ことし4月に発表された児童虐待防止アクションプランについてお伺いいたします。現場からは、相談件数の増加に対応が追いつかず、根絶は大変困難であるという声がありますが、この6カ月間の取り組みの状況と課題についてお伺いいたします。
 次に、豊かな教育の実現についてお伺いいたします。
 まず、少人数教育についてですが、昨年12月議会で、教育条件整備を急ぐべきとの質問に、中1ギャップや学年進行に伴う学力のばらつきの解消などを視野に入れて、県の財政制約も考慮しつつ、少人数教育のあり方など方向づけを行っていきたいとの答弁をいただきました。2008年度は35人以下学級の小学校3年生への拡大など少人数教育の前進はなく、大変残念に思っております。岩手県の子供たちにも豊かな教育を実現させたいと願っております。2009年度こそ少人数教育のあり方の方向づけを行っていただきたいのですが、少人数教育について知事に御所見をお伺いいたします。
 次に、教材費及び学校図書館図書関係予算の措置状況と、知事の目指す教育立県についてお伺いいたします。
 さきの報道によりますと、理科の実験器材や音楽の楽器、体育用具など公立小・中学校の教材を充実させるために、2006年度に本県地方交付税の基準財政需要額として算定された額、約12億9、500万円と比較して、実際に教材の購入費に充てられたのは25.4%の3億2、800万円にとどまることが文部科学省の調査でわかったというものです。その4分の3が目的外に使われ、本県の予算化率は全国最低と報道されました。文部科学省は、子供の教育に必要だと考える教材の費用を積み上げ、交付税額を算定している。それを理解し、本来の目的どおりに使ってほしいとしています。
 また、公立小・中学校の学校図書館図書関係予算について同様の報道もありました。その内容は、学校図書館を充実させるため、2007年度に交付税の基準財政需要額として本県に算定された図書購入費約1億6、900万円と比較して、実際に本の購入のために予算化された割合は全体で56.7%にとどまり、43.3%はほかの目的に使われたとし、全国でも低い措置率と指摘しています。
 子供にとって読書は創造力や考える習慣を身につけ、感性や情操をはぐくむ上で大変大切です。
 中には図書費を保護者から集めている学校もあります。その分、保護者負担がふえていることになります。このように、岩手の子供たちは教育環境が十分でない中で学習に励んでおります。これこそ教育格差と言えるのではないでしょうか。市町村財政が大変厳しい状況にあるとはいえ、教材費、図書費の予算措置率が全国最下位クラスであるということは、教育は二の次であることを示しているのではないでしょうか。
 そこで、知事にお伺いします。教材費、図書費関係の予算措置は市町村の財政運営であり、直接知事が言及できることではないかとは思いますが、岩手の教育を進める上で、市町村と一体となった教育施策を進める必要があると考えますが、知事の目指す教育立県とどのように整合させていくのか、お伺いいたします。また、教育予算の拡充を図って子供たちの学習環境の充実を進め、豊かな教育を実現されることを切に願うところですが、この点についても知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、インクルーシブ教育を展望した特別支援教育のあり方についてお尋ねいたします。
 近年、特別支援教育をめぐるさまざまな情勢は目まぐるしいものがあります。2007年4月から施行された改正学校教育法によって、すべての学校において特別な支援を必要とする子供たちへの教育的対応が明記され、制度的にも特別支援教育がスタートしました。さらに、国連において障害者の権利条約も発効するなど、世界的な潮流は、ともに学び、ともに育つ教育、すなわちインクルーシブな教育へと向かっています。このことは、単なる制度やシステムの変更のみならず、これまでの障がいのとらえ方や場の教育などの考え方を根本から変える必要性を示唆しています。
 先ごろ、岩手県における今後の特別支援教育の在り方中間報告が公表されました。その中に示されているものは、一人一人の子供がかけがえのない存在として尊重され、さまざまな立場や違いを認め合いながら、互いに助け合い、ともに生きていく共生社会の実現に結びつくものであり、世界的な潮流であるインクルーシブな教育を展望したものと考えております。県内各地で開催された説明会においても、大きな期待を寄せる発言が相次いだと聞いておりますが、その一方で、施設設備や人的配置などに対する不安の声も少なくなかったと聞いております。
 我が国ではこれまで、いわゆる重い障がいのある子は盲・聾・養護学校、軽い障がいのある子は特殊学級、それ以外の子は通常学級という場の教育を行ってきました。ですから、中間報告に示された目指すべき方向性などに対する県民への理解を図り、具現化していくためには、本県のすべての行政機関が同様の認識に立ち、その上で関係施策を推進していくことが求められると考えますが、この点について知事の御所見をお伺いいたします。
 また、近々、最終報告が公表されるとのことですが、目指すべき方向性に基づく具体的提言の実現のためには、行政機関による具体的なプランの策定が必要と思われます。その予定についてと、インクルーシブ教育を展望した特別支援教育の推進・充実に向けた御所見をお伺いいたします。
 現在、県立特別支援学校再編整備計画に基づき再編整備が進められておりますが、再編整備計画でありながらも、学校施設の狭隘化、教室不足が深刻となっている既存の学校に対する手だてが不十分であることや、統合等によって2校舎制を強いられることとなる学校の校舎新築の見通しが示されていないことなど、ハード面の整備のおくれが大きな課題となっています。特別教室を普通教室にしても足りず、カーテンなどで仕切って授業をしたり、特別教室がないために普通教室で作業学習に取り組んだりせざるを得ないなど、その教育環境はとても望ましいものとは思われません。
 県はこれまで、高校再編等に伴う校舎新築などの施設整備を中心に行ってきたと認識していますが、同じ県立学校でありながら、こうした特別支援学校の現状をどう認識しているのでしょうか。
 早期にこれらの問題を解決するための方向性を打ち出す必要があると考えますが、御見解をお聞かせください。
 次に、学校施設の耐震化についてお伺いいたします。
 7月24日の岩手県沿岸北部を震源とする地震では、一般家庭の全半壊がなかった一方で、小・中学校の校舎や体育館の窓ガラスや天井が落下するなどの被害が目立ちました。子供たちの安全を守るためには、学校の耐震化を進めるとともに、建物本体の耐震強度に直接影響することのない部材の落下対策も急ぐ必要があります。震度6強の揺れを観測した洋野町大野地区、町立大野第一中学校の被害は、割れたガラスが12枚、はがれ落ちた外壁のボードが20枚、校舎外の給水管が破裂し、貯水槽からの水漏れも確認されました。生徒がいない時間帯でよかったと胸をなでおろしたと聞いております。数年前に耐震補強工事を実施したばかりの大野小学校も天井やガラスが破損しました。町内では、大野第一中学校とともに地震に強い学校と見られていただけに、衝撃は大きいものでした。窓ガラスや天井、照明器具などの非構造部材の落下や不具合は2004年の中越地震でも相次ぎ、校舎や体育館が避難場所に使えない学校が続出しました。
 総務省消防庁の調べでは、防災拠点となる公共施設のうち、学校施設が6割を占めます。岩手・宮城内陸地震でも、本寺小学校が、孤立した集落の住民の避難場所となりました。学校は、子供たちが日常生活を送る場であるとともに、震災時には避難場所として使われる例も多く、特に高い耐震性が求められます。文部科学省によると、本年4月1日現在で、岩手県の公立小・中学校の耐震化率は62.8%で、耐震診断実施率は91.3%、大地震で倒壊の危険性が高いと推計される棟数が149棟、県立学校では14棟が、2次診断の結果、危険性が高いとされております。
 学校施設の耐震化に対する基本的な取り組みについての御所見をお伺いいたします。
 次に、食の安全・安心についてお伺いいたします。
 9月22日に、事故米を使った可能性がある卵焼きが県内の学校でも給食に使われていたことが明らかになり、大変衝撃を受けました。その後、9月26日の県内の学校給食に事故米混合の可能性17万食の発表には憤りを禁じ得ませんでした。育ち盛りの小学生、中学生に安全・安心な給食を提供するには、再発防止のための食材のチェックシステムの構築が急がれますが、今後の対策についてお伺いいたします。
 減反の必要性が叫ばれながら、年間77万トンの米がアメリカや中国などから輸入されています。
 国内農業の保護政策と引きかえに日本が受け入れたミニマムアクセスがあるからです。いま一度農政を見直し、自給率向上に向けた取り組みが急務です。今回の事故米やメラミン混入、全国的な食品の不正表示や無登録農薬の使用の問題点などをきっかけとした食品の安全・安心に県民の意識が一層高まっています。こんなときこそ、日本の食を守る食料供給基地岩手を内外にアピールし、県内農林水産物の安全性をより高めることに取り組むべきと考えます。さらに、地産地消の取り組みは、生産者と消費者とのつながりが深まることによるパイプの広がりや、少量多品目の地域食材や規格外品等の流通ルートが確保できるといった経済効果に加えて、やりがいや生きがいが生まれてくるのではないでしょうか。
 一方、消費者にとっては新鮮でおいしい多くの地域食材が手軽に入手できることや、安全・安心を感じることができるという利点があります。また、地産地消は、農業が営まれることで保全されてきた景観や、伝統的な食文化などの地域の財産を再認識することに加え、食習慣の乱れが目立つ子供たちを初め生活習慣病の予備群がふえつつある県民が、新鮮で栄養価の高い旬の地域食材を多く活用することによって、食生活の改善による健康づくりにつながると考えます。さらに、地産地消の取り組みを総合的に組み合わせることによって、中山間地域を初めとする町、村の地域づくりや、豊かな自然と岩手の食を組み合わせた魅力ある岩手づくりにも有効な手段になると考えます。
 そこで、本県の第1次産業の振興に向け、地産地消の取り組みなどを生かした本県の安全・安心な食の提供と消費者等へのPRをどのように進めていくのか、知事の御見解を伺います。
 また、食の安全・安心の問題は、このように県民の健康の確保、食育、食品の適正表示、信頼性の高い農林水産物の生産、さらには地域の振興にも及ぶ広範囲な課題であると同時に、消費者である県民の関心の高い分野であります。食の安全・安心の確保に関する県のこれまでの取り組み状況と今後の対策について、知事のお考えを伺います。
 次に、雇用環境についてお伺いいたします。
 非正規労働者の増加がもたらしたものは、自立して生きるためには長時間働くしかないという矛盾した貧困労働の広がりです。個人の生活と未来だけではなく、年金など社会保障の基盤や、国、自治体の財政基盤も崩しかねない社会全体の問題です。非正規労働者は正規労働者に比べ収入が少なく、採用状況も不安定です。ボーナスや有給休暇もない企業もあります。厚生労働省が二十から34歳の若年者を対象に行った追跡調査によると、2002年10月から2005年11月までの間に、正規労働者の男性が結婚した割合が15%に対し、非正規労働者は6%にとどまっていたということです。将来に不安を持ち、自分の暮らしに精いっぱいの若者が、どうして結婚や子供をもつことを考えられるでしょうか。フリーターはみずから望んでそうなったのではなく、市場原理、競争主義に基づく利益追求優先の企業の要請によりつくり出されたものではないでしょうか。未来を担う若者たちに安定した雇用と人間らしく働ける労働条件の確保が急がれます。
 本県の非正規労働者の2007年度の全体の割合は約32%、二十から24歳では約40%となっています。性別で見ると、女性の約50%が非正規労働者であるのに対して、男性は約20%となっています。
 そこでお伺いいたしますが、いわて希望創造プランの雇用の場の創出では、有効求人数が1割以上減少したと報告されていますが、県内雇用拡大のための今後の見通しと取り組みをお示しください。
 次に、いわて希望創造プランの公正な雇用の確保では、非正規雇用の正規雇用化に向け、どのような取り組みを行うのか、お伺いいたします。
 最後に、少子化が急速に進み、高校生の就職、進学による県外流出にも歯どめがかからない状況でありますが、その影響は、県税収入の減少のみならず経済活動の停滞、将来への不安、さらには急速な高齢化をもたらしており、大きな問題であると認識しています。とりわけ、商工業を中心とする本県地域産業への影響は大きいと思いますが、対応も含め、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、原油高騰への緊急対策についてお伺いいたします。
 総務省が9月26日に発表した8月の全国の消費者物価指数は102.6となり、前年同月比2.4%上昇しました。上昇は11カ月連続で、上昇率は約16年ぶりの高水準となり、原油・穀物高騰に伴う価格転嫁が広がっていることを示しました。賃金抑制が続く中での物価高は家計を圧迫し、個人消費を一段と冷え込ませる懸念があります。さらに、10月に小麦の価格が再値上げされるなど、生活必需品への価格転嫁の動きは今後も続く見通しです。問題は、生活必需品値上げの影響は低所得層ほど大きいことです。食料品など生活必需品の値上げは低所得層の暮らしを苦しくする一方となり、実質的な所得格差を拡大させているという指摘もあります。
 原油価格の高騰で昨年の冬は政府が緊急対策を打ち出し、県内でも高齢者や障がい者、母子世帯などに灯油の購入費を補助する福祉灯油が全市町村で実施されました。ことしの冬は、昨年の冬以上に福祉灯油の要望が高まることが予想されます。学校などの暖房費を含めて予算を確保しておく必要があります。7月には全国の漁業団体の漁船が一斉休業に踏み切り、燃油高騰で苦しむ漁民の窮状を訴えました。施設園芸、漁業はもとより、運輸業や原材料費が高騰している中小零細企業など、原油や穀物の高騰はあらゆる分野に影響を及ぼしています。
 そこでお伺いしますが、ことしの冬も福祉灯油拡充のための助成金をふやすなどの予算措置があるのでしょうか。また、低所得層に対する補助金制度の創設等についてお考えでしょうか、お伺いいたします。燃油への依存度が高い施設園芸や漁業、運輸業、中小零細企業への有効な緊急支援対策もあわせてお示しください。
 最後に、障がい者の自立支援についてお伺いいたします。
 障がいのある方や児童が、地域で家族や地域の人々と生活し、自立することは障がい者の権利であり、ノーマライゼーションの社会を実現させる第一歩と考えます。しかし、現在の障害者自立支援法や、それを取り巻く状況には多くの課題と問題が山積しています。
 そこで、障害者自立支援法施行後における県内の利用者、事業者の実態と今後の対応についてお伺いいたします。新体系移行によって、利用者や事業者への大きな影響があると見聞きしています。利用者への負担導入による影響と、少人数で個々の障がいに合わせた支援を行ってきた地域活動支援センターの経営の実態、そのようなセンターへの県や市町村の支援状況についてお伺いいたします。
 次に、施設生活から地域生活へ移行を可能にするためには、県や市町村の地域生活基盤や環境整備が重要と考えます。市町村における自立支援協議会の設置状況と、地域移行に伴う問題点についてお伺いいたします。また、県及び市町村とも十分にその役割を担っているのかについても、あわせてお伺いいたします。
 さらに、サービス事業者の人員の確保、運営費の改善などを県として積極的に国へ要請するとともに、地域移行、地域生活を可能にするサービス体系の構築と運営水準の確保に向け、取り組みが必要と考えますが、いかがでしょうか。
 最後に、障がい児施設の入所を措置とするか、契約とするかの判断は、都道府県によって差が生じているとの指摘があります。本県における措置は3.4%、契約は96.6%です。契約制度になったことによる問題点、措置と契約の判断基準と今後の方向性についてお示しください。
 これで私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 小西和子議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、少人数教育についてでありますが、社会の急激な変化を背景とし、子供たちの多様性が増している中で、一人一人の子供たちをきめ細かく指導することが必要となってきている現在、少人数教育は重要な位置づけになると考えております。したがいまして、本県の少人数教育のあり方については、35人学級といった少人数学級、あるいはチームティーチングや習熟の程度に応じた少人数指導など、さまざまな選択肢が考えられます。現在、市町村教育委員会等の意見を聞きながら、そのあるべき姿を検討しているところであり、今後、限りある教育資源を有効に活用するという観点を含めて、さまざまな意見を集約し、年内にはその方向性を示してまいります。
 次に、私の目指す教育立県についてでありますが、私は、県民総参加の教育立県を基本理念として、自立した岩手を担う人材育成のための教育に取り組み、ふるさとづくりを、その基本である人づくりから始めていきたいと考えております。本県には、昭和40年から実施してきた教育振興運動を初め、地域を挙げて教育課題の解決に取り組んできた歴史と実績がありますが、こうした県民総参加による岩手の教育の実現に向けた取り組みこそ、私の目指す教育立県の姿であり、学校と家庭、地域との連携によるいわて型コミュニティスクールの取り組みを引き続き推進していくほか、市町村や県民の皆さんとも、こうした理念を共有していきたいと考えます。
 教材費や図書費については、市町村において、その需要に応じて措置されているものと伺っているところでありますが、岩手の教育の実現のためには、学習環境の充実を図ることが重要であると認識しておりまして、県民総参加の教育立県の理念のもと、市町村ともども、最大限の努力をしてまいりたいと思います。
 次に、インクルーシブ教育を展望した特別支援教育のあり方についてですが、私がいわて希望創造プランに位置づけておりますように、障がいのある、なしにかかわらず、地域でともに生活する社会を形成していくためにも、児童生徒一人一人を大切にする学校教育の役割は重要であると考えます。したがいまして、岩手県の今後の特別支援教育のあり方に示された、共に学び、共に育つ教育の実現に向けて、教育はもちろん、福祉、労働、医療等の関係機関が理念を理解、共有し、一体となって施策を進めていくことが重要と考えております。
 次に、安全・安心な食の提供についてでありますが、消費者の食に対する信頼を揺るがす事件が相次ぐ中、私は、本県の安全・安心を基本的価値に据えた、品質の高い農林水産物を安定的に供給できる産地づくりを加速し、これを消費者に積極的にアピールしていくことが重要であると考えます。このため、農産物の生産工程管理の普及やトレーサビリティーシステムの導入拡大などにより、安全・安心な食材の供給体制を整備するとともに、民間ノウハウの活用や民間企業との連携による情報発信を強化し、販路の拡大に努めてきたところであります。また、いわて食財の日の設定や学校給食での県産食材の利用拡大などを柱とした地産地消運動を、全国に先駆けて展開してきたところであります。
 今後は、こうした取り組みに加え、現在御提案申し上げている補正予算案に盛り込んだいわて農商工連携ファンドなどを活用し、安全・安心な本県食材を利用した商品開発や販路開拓を支援するとともに、県内産直施設のネットワーク化等を促進し、生産のみならず、流通加工部門とも連携した、生産から食卓までの岩手らしい安全・安心な食品の供給体制を確立してまいりたいと思います。
 また、勤勉で誠実な生産者が丹精込めてつくり上げた県産農林水産物を県内外に広くPRするため、私みずからが出向いてのセールスや生産者の対面販売の強化等により、消費者との顔の見える信頼関係を構築し、買うなら岩手のものという安全・安心のトップブランドの確立に努めてまいります。
 次に、食の安全・安心の確保についてでありますが、平成13年9月の国内初のBSE発生を契機に、県民が安全で安心な食生活を送るために、生産から流通、販売までの各段階において、消費者の視点に立った徹底した取り組みが重要であることから、平成15年8月に岩手県食の安全・安心に関する基本方針を策定し、平成16年2月には、この基本方針に基づいた県の行動計画、岩手県食の安全・安心アクションプランを策定しました。この中で、トレーサビリティーシステムの拡大やエコファーマー数の増加、衛生管理の徹底や食品表示の適正化などを推進する一方、監視指導を強化するため、残留農薬の高度検査機器の導入や食品衛生推進員、食品表示専門員の配置など、総合的な施策を展開してきたところであります。さらに、平成19年3月に、第2次食の安全・安心アクションプランを策定し、これまでの取り組みを拡充し、農薬の使用管理や衛生管理のさらなる徹底などを図るとともに、食に対する理解を深めるため、県民がみずから安全・安心な食品を選択する力をはぐくむ普及啓発に努めています。
 今後においては、最近の食をめぐるさまざまな問題も踏まえ、食の大切さ、安全・安心な食を生産することの大切さについて普及啓発を徹底するとともに、食品表示の適正化、食育や地産地消の推進など消費者に軸足を置いた施策の充実を図ることにより、消費者の安心感の醸成や消費者ニーズへの対応などに一層努めてまいりたいと思います。
 次に、少子化等に伴う商工業等への影響についてでありますが、人口減少社会においては、中山間地域を中心に地域コミュニティの維持に困難が生じるなど、負の影響が懸念されます。特に、商工業分野においては、労働力人口や消費人口の減少に伴い、地域経済の規模が縮小して個人消費支出が落ち込み、一層、地域経済が冷え込むという悪循環が生じるおそれがあります。岩手県におきましては、地域経済の低迷等による若年層を中心とした社会減が拡大していますので、自動車や半導体などものづくり産業の集積促進のほか、地域資源を生かした食産業や体験型観光の推進など、それぞれの地域の特性を生かした産業振興を着実に推進し、雇用の拡大を図っているところです。また、若年者に対して県内中小企業の魅力をアピールする場を設定し、県内中小企業の採用力の強化や、高校生の県内企業への早期就職内定を支援しているところであり、本県産業の担い手である若年層の県内定着が図られるよう、今後も粘り強く取り組んでまいりたいと思います。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので御了承をお願いします。
   〔保健福祉部長岩渕良昭君登壇〕
〇保健福祉部長(岩渕良昭君) まず、子育て支援のためのネットワークについてでありますが、いわて希望創造プランにおいては、重要な政策の一つとして子育て環境の整備を位置づけ、地域力を生かした子育て支援等に取り組むこととしております。県といたしましては、子育て家庭の不安や悩みの軽減を図るため、県内各地域で子育て支援のネットワークを構築していくことが極めて重要であると考えておりますが、現時点では、13市町村で18の子育て支援団体が組織されているところであります。今後、全市町村で支援団体が組織されるよう、ネットワーク立ち上げのための研修会や情報交換会を開催するなどにより、支援してまいりたいと考えております。
 また、子育て家庭に必要な情報につきましては、県のホームページや県が運営を委託しているアイーナにある子育てサポートセンターで、県内68カ所の地域子育て支援センターの活動内容やさまざまな相談機関一覧等を情報誌等で発信しておりますが、今後とも、市町村や関係機関等と連携し、子育てに役立つ情報提供の充実に努めてまいります。
 次に、平成20年度から22年度までの計画である児童虐待防止アクションプランの取り組み状況と課題についてでありますが、平成19年度の県全体の児童虐待相談件数は、前年度より83件、12.3%増加しており、その防止対策の強化は喫緊の課題であると考えております。
 アクションプランの今年度上期の取り組み状況でありますが、市町村における虐待相談の判断や適切な対応に活用するための問答集の作成や、学校、保育所、医療機関等の関係職員が早期に発見し対応等を円滑に行うための研修、虐待のあった家族の再統合のためのグループ療法などを実施してきたところであります。
 今後も、プランに沿ってさまざまな取り組みを実施することとしておりますが、虐待防止には地域における早期発見、早期対応が最も重要であることから、関係機関のネットワークの拡充や市町村の相談対応力の強化を中心に取り組んでまいります。
 次に、福祉灯油の助成等についてでありますが、国は昨年度と同様、地方公共団体が生活困窮者に対する灯油等の購入費を助成する場合に地方交付税による財政支援を行うこととしており、また、灯油価格も昨年を上回って推移していることから、今年度についても市町村の意向を確認しながら、福祉灯油への助成を実施したいと考えております。
 また、低所得層への生活支援については、岩手県社会福祉協議会が実施している生活福祉資金貸付制度の活用のほか、生活保護の受給者に対しては、冬期間の特別な需要に対応し冬期加算が支給されているところでありますが、さらなる上積みについて、国において検討されるべきものと考えております。
 次に、障がい者の自立支援についてであります。
 まず、利用者負担の導入による影響についてでありますが、負担増を理由にサービス利用を中止された方は、平成18年度は、利用者約4、000人に対し43人であったのに対して、平成19年度には、国の特別対策としての利用者負担軽減策により17人と減少しております。
 次に、地域活動支援センターの経営実態等についてでありますが、地域活動支援センターは平成20年9月末現在58カ所あり、障がい者への創作的活動、生産活動の機会の提供等日中活動支援を行っており、1カ所当たりの運営費は平均すると約612万2、000円であり、おおむね安定的な運営を行っております。
 また、地域活動支援センターの運営は市町村が行うこととされており、地方交付税交付金及び国庫補助事業によって国及び県がその運営を支援しているところであります。
 次に、施設生活から地域生活への移行状況等についてでありますが、平成19年2月に策定した岩手県障がい者プランにおいて、平成23年度までに1、069人の障がい者を地域移行させることを目標としておりますが、移行に当たり、中核的な役割を果たす地域自立支援協議会は県内35市町村すべてに設置されており、平成19年度までに262人が地域に移行したところであります。しかしながら、地域移行に伴う課題も少なからずあり、障がい者の地域における住まいとなるグループホーム等の社会資源が不足していることや、地域移行を支援するための地域移行推進員などが不足していること、また、地域移行に対する地域住民等の理解が十分でないことなどが岩手県障がい者自立支援協議会で指摘を受けております。これらの課題の解決のため、地域自立支援協議会の場において、個別事例を検討・協議しながら不足する社会資源の整備等を進めているところであり、県といたしましては、地域自立支援協議会が十分に機能するよう、特別アドバイザーを派遣して必要な指導を行うほか、障がい者の自立についての理解が得られるよう、啓発イベントの開催等による県民への周知など、必要な支援に努めてまいります。
 次に、地域移行、地域生活を可能にする取り組み等についてでありますが、障がい福祉サービス事業者の人員の確保、運営費の改善などに向け、事業者に支払われる報酬額の見直しや事業者の安定的な財源の確保等について、これまで全国知事会や北海道・東北7県保健福祉主管部長会議等を通じて、国に要望を行ってきたところであります。
 また、地域生活移行を可能にするサービス体系の構築等についてでありますが、障がい者が地域で安心して生活していくためには、それぞれの地域において、必要なサービスの種類、量が確実に確保されることが何よりも重要と考えております。このため、今年度、県及び市町村において見直しを進めている障がい者福祉計画において必要なサービスが確保されるよう、障がい者のニーズの把握を初め、過去の給付実績の分析など市町村への支援を行うとともに、事業者が適切に運営できるよう、指導の徹底に努めてまいります。
 次に、障がい児施設における措置と契約についてでありますが、平成18年度から施行された障害者自立支援法においては、ノーマライゼーションの理念のもと、サービスの利用についても障がい者の自己決定を尊重することとされ、障がい児施設の利用についても原則として契約によることとなったことから、本県においてもおおむね契約による利用に移行しているところであります。ただし、国の通知に基づき、保護者の虐待や保護者の不在等、契約による利用が適切でない場合は引き続き措置としております。しかしながら、全国的に見ると、措置件数が多く契約への移行が少ない県があるなど、都道府県によって運用が大きく異なっているなどの問題が生じており、国もこれを問題視し、措置と契約の判断基準を作成すると聞いており、県としては、その動向を注視しながら、今後とも適切に対応してまいります。
   〔商工労働観光部長廣田淳君登壇〕
〇商工労働観光部長(廣田淳君) まず、雇用拡大のための今後の見通しと取り組みについてでありますが、有効求人数の推移は景気の動向と密接に関連するため、国内外の景気の先行きが懸念される中、今後も予断を許さない状況が続くものと見込まれます。雇用拡大には民間の企業活動の活性化が一番重要でありますが、県としましても、新事業の創出や地場産業の経営支援、企業誘致、農林水産業の振興など、さまざまな産業施策を推進することによりまして、平成22年度までに5、000人以上の正規雇用を創出するよう取り組みを進めており、今年度は1、391人という計画を立て、達成に向けて鋭意努力しております。
 次に、正規雇用の拡大についてでありますが、県では、経営者協会を初めとする商工関係団体に対する要請や広域振興局等に配置しております就業支援員による管内事業所への要請により、正規雇用の拡大について企業に働きかけを行っているほか、国が今年度から開始した非正社員の正社員化を促進する中小企業雇用安定化奨励金の周知や、若年者を対象とした座学と企業実習を組み合わせた職業訓練の実施により、正規雇用への転換を促進しているところであります。
 また、派遣労働者においては、極めて短期の雇用である日雇い派遣等の問題が生じているため、労働者派遣制度の規制強化を進めるよう全国知事会等を通じて国に要請したところであり、今後におきましても、正規雇用の拡大に向けて積極的に取り組んでまいります。
 次に、運輸業、中小零細企業への緊急支援対策についてでありますが、国におきましては、トラック、タクシーなどの運輸業についてセーフティネット保証の対象業種に指定しているほか、このうちトラック業界に対しては、燃料価格の上昇、下落によるコストの増減分を別立て運賃として設定する、燃料サーチャージ制の導入を促進しているところであります。また、中小零細企業も含めた中小企業金融対策としては、10月1日から政府系金融機関の償還期間の延長、別枠、倍増の特例措置の1年間延長などのセーフティネット貸し付けの拡充や、セーフティネット保証対象の170業種に15業種の追加を行ったところであり、さらに現在、原材料価格高騰対応等緊急保証の導入を検討しているところであります。
 県におきましては、昨年12月から相談窓口の設置、融資制度の拡充などの中小企業金融対策を講じているところでありますが、今後においても、商工関係団体などと連携しながら、中小零細企業者の相談にきめ細かく対応するとともに、国の動向等を踏まえ、今後どのような追加支援が可能かどうか、関係機関と協議しながら検討してまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) 施設園芸や漁業への緊急支援対策についてでございますが、県といたしましては、本県農林水産業への影響を緩和するため、本年1月に関係団体と連携した対策会議を設置し、各振興局に相談窓口を開設するとともに、施設園芸の省エネ技術の普及や省エネ施設等の導入を支援するほか、漁業者グループによる輪番休漁活動に対する助成や、省エネ操業のための漁場情報の提供などに取り組んできたところでございます。また、こうした取り組みとあわせまして、国に対し、本年5月から7月にかけて、燃油価格高騰対策の充実強化等を提案したところでございます。
 今後は、関係団体等との連携のもと、施設園芸におきましては、先月、県が独自に策定をいたしました資材費節減マニュアルによる低コスト技術等の一層の普及や、国の補正予算に盛り込まれております燃油価格上昇分の7割を補てんする緊急対策等を積極的に活用いたしますとともに、漁業につきましては、7月に国が新たに創設した漁船の燃油価格上昇分の9割を補てんする緊急対策の積極的な活用を促進し、燃油価格高騰による施設園芸や漁業経営への影響緩和に努めてまいります。
   〔教育長法貴敬君登壇〕
〇教育長(法貴敬君) 特別支援教育の推進・充実等についてでありますが、まず、具体的プランの策定については、最終報告の答申を受け次第、具体的な実行計画となるプランの策定作業を進め、今年度中に取りまとめる予定であります。
 次に、インクルーシブ教育を展望した特別支援教育の推進・充実についてでありますが、児童生徒の個々がどのような教育的ニーズを持っているか、それに対してどのような教育を提供していくことが必要かということの意味をしっかりと見据えながら、可能なことから段階的に進めていくことが必要であり、一方、保護者のみならず、県民の理解に向けた普及啓発活動を進めるとともに、教員の意識改革を進めていくことが必要であると考えております。そのためには、教員の専門性の向上をより一層進めながら、受け入れる教育環境の整備を行い、答申の理念である共に学び、共に育つ教育の充実に努めてまいります。
 次に、特別支援学校の現状の認識についてでありますが、特別支援学校の校舎・寄宿舎の老朽化、教室不足の状況は認識しておりますが、これまでの特別支援学校設置の経緯から、病院や施設等との関係調整を必要とする状況もありますので、関係機関と十分協議しながら整備・充実に努めてまいるとともに、現在進行中であります平成22年度までの県立特別支援学校再編整備計画については、着実に進めてまいりたいと考えております。
 次に、学校施設の耐震化に関する基本的な取り組みについてでありますが、議員御指摘のとおり、公立学校施設は、児童生徒が一日の大半を過ごす活動の場であると同時に、非常災害時においては地域の防災拠点としても活用され、その安全性の確保は極めて重要であります。県では、平成19年1月、岩手県耐震改修促進計画を公表し、計画的に建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図っているところであります。この中で、公立学校施設については、耐震化率の目標を平成27年度までに県立学校は100%に、市町村立学校は75%とすることとしております。
 今後におきましては、県立学校については計画的に耐震化を進めるとともに、市町村立学校については、本年6月に改正された地震防災対策特別措置法による特例措置や、今国会において審議中の平成20年度政府補正予算などを活用しながら、これまで以上に耐震化が促進されるよう市町村教育委員会と連携し、学校施設の安全化に取り組んでまいります。
 次に、学校給食用食材のチェックシステムについてでありますが、学校給食は、文部科学省で定めている学校給食衛生管理の基準に基づき実施されており、食材の選定については安全性や価格などを総合的に勘案しながら、専門家であります栄養教諭等が十分協議の上で選定しているところであります。
 今回の事故米の混入の事案は、初期の流通過程で不正が行われたことによるものであり、学校現場等では防止が極めて困難なケースでありますが、今後については、なお一層、微生物及び理化学検査の結果や生産履歴などにより品質が証明された食品を選定するとともに、納入時の品質・鮮度などの点検を厳格に行うなど安全対策を一層徹底するとともに、できる限り、新鮮で安全な地元食材の利用促進を図るよう、市町村教育委員会に対し要請してまいりたいと考えています。
〇3番(小西和子君) 御答弁、大変ありがとうございました。1点、豊かな教育の実現について再質問をさせていただきます。
 おわかりのこととは思いますけれども、秋田県の小学校1年生、2年生に対する30人程度の少人数学級というのは、2001年に導入されております。それから、中学校1年生には2002年に導入されております。ですから既に8年目、それから中学校のほうは7年目になっております。
 それに引きかえ、岩手県は東北では一番遅く、2006年度から小学校1年生に35人学級、2007年度には小学校2年生に拡充されましたが、今年度は少人数学級というものの前進は全くなく、大変残念に思っております。小学校1年生で比べると、秋田県とは5年間の開きがあるわけです。
 財政難ということがあれば、東北のほかの県も大体同じではないでしょうか。
 山形県は、2002年に少人数学級編制というのを小学校全学年に導入いたしました。そのときの_橋和雄知事だったと思うんですけれども、今はこういう時代に来ている。子供のことは急がなければならない。子供たちが今抱えている問題を急いで解決していかなければならない。だから、全学年に少人数学級を導入するのだとコメントしたと聞いております。
 今、学校現場の教職員は悲鳴を上げております。一人一人の子供と向き合う時間がない、指導ができないと訴えております。30人前後の学級編制にすると、教職員が、一人一人の子供の願いとか、不満とか、不安をしっかりと受けとめることができるようになると報告されております。
 一人一人へのきめ細かな指導、学級や子供の落ちつき、学力向上、問題行動の減少など、教育効果のある少人数学級を2009年度こそ、小学校3年生、小学校4年生にも充実させることをお考えいただきたいと思います。
 さらには、小学校6年生から中学校1年生に進学しますと、不登校の数が急激にふえることを中1ギャップと言うのですが、この割合が4.7倍から3.9倍に減ったということは、対策の効果があらわれているのだなと思いますけれども、まだまだ高い率を示しております。中1ギャップ対策のためにも、早期に少人数教育というものを実現すべきだと考えます。岩手県に生まれ育ったために十分な教育が受けられなかったということのないように、さすが教育立県岩手だなと言われるような教育をぜひ実現させていただきたいと思いますけれども、再度知事の御見解をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 岩手の教育の伝統は大変すばらしいものがあり、学芸学部、今の岩手大学教育学部の師範学校以来の伝統、そして、そこを出た先生を中心に、また、ほかの大学を出た先生もなんですけれども、この岩手の子供たちをとにかく立派に育て上げようという伝統の積み重ねの最先端に、今、我々がいるんだと思っております。
 そういう中で、少人数学級という点について、岩手がいま一つほかより進んでないような格好になっているかもしれないんですけれども、一つには、変える以上は本当に変えるということで、今までのよかったところを失うことがないようにというところで、ちょっと慎重になっているというところがございます。
 そして、もう一つは、一方では人口減少地域、過疎地域を中心に、もう35人学級どころではなく、学校全体で35人とか、そういう学校がふえているということもございます。そうした中で、岩手の教育のあるべき姿は、市町村教育委員会等現場の声を聞きますと、少人数学級にせよという声は必ずしも強くないと理解しておりまして、ただ、チームティーチングなど、あるいは少人数指導など少人数教育的な方向性については大体共通性が出ている。そこの最後の詰めのところを、本当に学級としても35人学級にしたほうがいいのか、あるいは学級としては40人であっても、実質的な指導の場で少人数指導として行われればいいのか。あとは、小学校1・2年の次にまず小学校3・4年をやるべきか、あるいは中学校1年生をやるべきかの選択の問題もございます。
 全国学力テストの結果などから、中学生での数学、国語の勉強については、一工夫というか、過去の岩手の子供の学力から大きく落ち込んでいるというよりは、今の全国の中で45番目とか、そういう位置にあるということだと思うんですけれども、それが、さまざまな自由意思の選択の結果としてそうなっているのか、それぞれの努力の結果としてそうなっているのかということは注意して見ていかなければなりませんけれども、大きい全体からすれば、やはり結果として高い順位をとれるような教育であることが望ましいということは一般論的には言えるのだと思います。その場合に、中学校1年生段階でのケアが優先されるのか、それとも小・中学校の有機的な連携の中で、まず小学校の段階で、中学校に進んでから花開くような体制をつくるのがいいのか、そういったことを、年内にはその方向性を示していけるようにしていきたいと思います。
   〔「議事進行」と呼ぶ者あり〕

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