平成20年9月定例会 第7回岩手県議会定例会会議録

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〇26番(田村誠君) 政和・社民クラブの田村誠でございます。
 質問の機会を賜りましたので、通告に従い、順次質問を行いますので、当局の誠意ある御答弁をお願いいたします。
 9月の月例経済報告を見ると、景気の基調判断は、このところ弱含んでいると据え置かれているものの、欧米の景気減速、アメリカのリーマン・ブラザーズの経営破たんなど国際金融市場の混乱拡大を踏まえ、世界経済の判断を、減速の動きに広がりが見られると下方修正しております。
 また、02年6月から使用してきた回復の表現は削除し、内閣府は、来年にかけて日本経済が緩やかに回復するとの見通しを、深刻な金融不安というマイナス要素が加わったと述べ、日本経済の回復時期が後ずれする可能性を示唆しております。世界経済の変調は日本企業の投資意欲を冷え込ませ、08年度実質経済成長率を1.3%に下方修正したが、再度の下方修正さえ迫られかねないのではないかと思います。このように、金融不安や世界の同時株安の状況から、経済をめぐる環境は予断を許さず、本県の経済環境も下方に揺れるのではないかと憂慮しております。
 このような状況において、危機を希望に変えるいわて希望創造プランでは、特に岩手の失われた県民所得を危機ととらえ、少なくとも平成12年度レベルまで県民所得を回復させるよう各種取り組みがなされています。平成18年度の県民所得は234万円と若干上向いたものの、平成12年度の260万円にはまだまだ開きがあります。知事は、希望創造プランの着実な推進により県民所得を上向かせていくと決意を述べられておりますが、経済の変動が著しく、必ずしも環境が改善されていない状況で県民所得の回復は可能なのでしょうか。回復への工程について、まず、具体的にお示し願います。
 次に、来年度予算編成についてお伺いいたします。
 平成20年度の予算編成は、人件費を抑制し、公共事業の重点化を図りながら、限られた財源の有効活用を図り、編成されたものと認識しております。しかしながら、6月、7月の予想だにしなかった相次ぐ大地震により、復興対策のための歳出圧力が加わり、さらに経済環境の悪化傾向が顕在化してきているなど、本県の財政は従前にも増して厳しくなってきております。
 このような状況において、果たして来年度の本県の予算は健全化に向けて編成できるのか危惧しております。現在のところなかなか見通すことは困難であるとは存じますが、平成21年度の予算編成に向け、その基本的な考え方や予算規模はどのように考えているのか。また、均衡ある県土の発展や少子・高齢化、地域の活力を高めるなどの県民の期待にこたえるためにどのような予算を編成するつもりか、知事の姿勢についてお伺いいたします。
 次に、新しい総合計画についてお伺いいたします。
 知事は、現在の県総合計画にかわる新しい長期計画を平成21年度中に策定する方針を明らかにしました。今、地球規模での温暖化等環境問題は深刻化し、経済を初めあらゆる分野でのグローバル化、情報化が進む一方で、地域では人口減少や急速な少子・高齢化の進行、地域コミュニティが衰退し、いわゆる限界集落の課題が深刻化し、さらには市町村合併による地方行政の枠組みの変化など、地域の置かれている環境は大きく変わってきているものと思います。このような環境の変化をどのようにとらえ、また、現在の計画をどのように消化し、次計画に反映し、達増カラーをどう打ち出そうとしているのかお伺いいたします。
 現在の総合計画の基本構想では、距離の壁、地形の壁、産業の壁、県境・国境の壁、雪・寒さ・やませの壁、人の壁、意識の壁という課題に対して夢県土創造プロジェクトで新しい時代を拓くとしておりましたが、当時取り上げられたこれらの壁はどのように解消され、どう改善されているのでしょうか。
 また、計画期間をおおむね10年としていますが、いわて希望創造プランを策定し、わずか数カ月後には平泉の世界遺産の登録延期、地震災害など、プランに予定していない課題も出てきております。変化の激しい時代にはそれに応じた期間の設定が必要と考えますが、特にも、知事はみずからの任期を2期8年と限定しており、計画遂行の責任を含めて御所見をお聞かせ願います。
 また、簡素な見直しの手法も盛り込むべきではないでしょうか、あわせてお伺いいたします。
 次に、県北・沿岸振興に関して幾つかお伺いいたします。
 地域の経済の縮小や地域活力の低下が他の圏域以上に懸念されていることから、県北・沿岸圏域として、すぐれた地域資源を最大限に生かしながら産業の振興を図り、雇用を創出していくこととして取りまとめた県北・沿岸圏域における産業振興の基本方向に基づき、地域ごと、市町村ごとに具体的工程表を作成し、各般にわたる施策が遂行されております。この基本方向の策定から間もなく、その成果を示すことは難しいとは思いますが、各工程表に掲げる施策の達成度はどのようになっているのでしょうか。沿岸域に暮らしている者として、県央域との格差解消の実感がなかなか感じられず、むしろ開いているのではないかとも感じております。所得の高低での矮小化した議論ではないにせよ、今後どのような格差解消に向けた取り組みをしていこうとしているのかお伺いいたします。
 県北・沿岸地域の所得の向上につながる製造業の企業誘致状況を見ると、昭和30年度以降、立地件数724件のうち、県北・沿岸地域の立地は141件、19.5%となっており、まだまだシェアが低い状況になっております。工業団地も、やはり県北・沿岸地域には未利用団地や未造成地域が多く残っている状況にあります。1次産業の振興に加えて工業振興を図っていかなければ所得の格差を縮めることは難しいのではないでしょうか。経済環境が低迷に向かう懸念の中で、この地域への企業誘致をいつまで、どのように進めていくのかお伺いいたします。
 次に、私は、質問のたびに浜がよければおかがよいと申し上げ、県民所得向上の原動力としての水産業の振興を一貫して主張してまいりました。
 最初に、漁業協同組合の経営体質の強化についてお伺いいたします。
 漁業の振興を図るためには、基盤となる漁業協同組合の経営体質の強化が必要と考えております。
 平成18年度の沿岸漁業生産額は320億円と、前年に比べて31億円強増加したものの、依然として多くの漁業協同組合が繰り越し損失を抱え、厳しい経営状況にあると伺っております。県は、漁業協同組合の経営状況をどのように認識し、経営体質の強化を進めていくお考えなのか、支援策も含めてお伺いいたします。
 また、漁業協同組合の経営基盤強化には合併が必要と考えますが、合併計画の推進状況はどうなっているか、あわせてお伺いいたします。
 次に、水産物の高付加価値化の取り組みについてお伺いいたします。
 岩手県総合計画実施状況報告書によれば、サケの沿岸漁獲量は、平成19年度に2万6、000トンと17年度に比べて1、000トンの減少、達成度はDとなっており、また、ワカメ生産量は、平成19年度に2万7、000トンと17年度に比べて1、000トンの減少となり、達成度はDとなり、アワビ漁獲量は、平成19年度に521トンと平成17年度に比べ290トンの増加となり、達成度はAとなっております。総じてサケ、ワカメの漁獲量は減少しているものの、単価の増嵩により、生産性、市場性の高い産地形成が進んでいると評価されています。
 私は、水産業の振興のためには、このような漁獲量を安定的に確保しながら産地形成を進める一方で、水産加工技術の向上を一層進める必要があると考えております。水産加工技術を向上させるため、県はどのように進めるお考えなのか、水産物の高付加価値化への取り組みも含めてお伺いいたします。
 次に、燃油価格の高騰に対する取り組みについてお伺いいたします。
 全国的な状況を見ますと、漁業用の燃料であるA重油の価格はこの5年間で約3倍に上昇したとのことで、燃油経費が増大し、このため漁業経営が圧迫され、中には漁業種類の転換や、あるいは休漁せざるを得ない漁業者がいると聞き、このままでは今後の漁船漁業の存続が危惧されることから、漁業に対する燃料価格の高騰対策の実施が急務となっております。
 これに対し国は、平成19年度の補正予算により102億円の基金を創設し、省燃油操業の取り組み等に対し助成するほか、さらに平成20年度の補正予算により漁業用燃油の省エネ促進対策として80億円を追加し、実質的な燃油経費の直接補助を行うなどの取り組みを行っております。
 一方、隣の宮城県では、船籍を問わず、県内の気仙沼や石巻など10カ所の魚市場に水揚げした養殖漁業を除いた漁船に対し、奨励金として水揚げの0.2%相当を支給する水揚げ奨励金制度をこの10月から始める方針を明らかにし、9月定例会に提出する補正予算案として6、000万円を計上したことは、燃油価格の高騰に苦しむ漁業者を間接的に救う措置としては都道府県では初めてと聞いております。燃油価格の高騰対策をめぐる県議会各会派からの水産県としての独自策をとの要望を受けた県は、厳しい財政状況の中、農業、運送業などと不均衡にならないかなどを検討した結果、水揚げ奨励金は燃油代の直接補てんにはならないと判断し、導入を決めたとしております。
 このように国や宮城県において燃油価格の高騰対策がとられているが、水産県である本県においてはどのような取り組みを行おうとしているかお伺いいたします。
 次に、林業振興についてお伺いいたします。
 林業県と言われる岩手として、山づくりにはこれまでも森林税の導入を初めさまざまな事業に積極的に取り組んでおりますが、川上から川下の取り組みの面から見た場合、木材製品の利用をさらに進め、木材産業の振興を図っていく必要があると思います。中国などでの需要の拡大、ロシアの木材輸出規制の動き、原油高や輸送コストの上昇から輸入材から国産材への動きが見えてきており、木材の利用拡大を図っていく機会が訪れている一方で、建築基準法の改正に伴い新設住宅着工戸数が激減するなど経営環境は大幅に改善されず、経営支援をさらに進めていくことが求められております。
 沿岸地域には合板や集成材工場がありますが、今日、減産を余儀なくされる面も見られるところであります。木材・木製品出荷額が伸び悩む中で、森林県岩手として競争力のある木材製品を生産できる地元企業の支援を積極的に行うべきだと思いますが、現状をどのように認識し、どう取り組んでいかれるのかお伺いいたします。
 また、生産した木材製品をきちんと販売するためには販路の拡大が不可欠と考えますが、県は販路の拡大にどのように取り組んでいるのか、あわせてお伺いいたします。
 さらに、2次加工で、例えば木製家具を製造する企業等の誘致を積極的に進めるべきだと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
 次に、防災対策についてお伺いいたします。
 岩手・宮城内陸地震災害では、県も市町村との連携でいち早く復興に取り組み、成果が出てきていることに感謝いたします。しかし、いまだ自宅に戻れず、また、復旧作業の見通しが立たず、将来への不安を抱いている方々がおり、一刻も早い復旧を願うものであります。
 一方、地震による風評被害により宿泊予定者のキャンセルが相次ぎ、ホテルや旅館への経営影響が危惧されるところであります。県はいち早く風評被害への対策として元気です岩手キャンペーンを実施しているところでありますが、風評被害の規模をどのように把握しておられるのでしょうか。また、どのような対策を講じようとしておられるかお伺いいたします。
 2度の大地震に見舞われ、宮城県沖地震の確率が非常に高い状況の中で、津波による災害が懸念されるところであります。この津波対策として湾口防波堤は有効と考えられ、加えて湾口防波堤の整備により湾内の静穏度を高め、安全で快適な利用を進めることが可能となります。公共事業費の縮減が続く中で、湾口防波堤を初め津波対策としての社会資本をどのように整備していくお考えなのか、その進捗状況を含めてお伺いいたします。
 次に、後方支援基地構想については、さきの平沼議員の答弁で大方は理解いたしましたが、遠野市は、老朽化が進む市消防庁舎を、2013年度、同市青笹町の市運動公園隣接地に移転改築する方針で、あわせて国へ備蓄倉庫、指揮本部棟建設などを求め、大型ヘリ10機、中小ヘリ30機の離着陸が可能な同公園を臨時へリポートとする拠点整備を進める考えと聞いております。同市と宮古、陸前高田、盛岡、奥州の各市は半径50キロ以内にあり、県防災ヘリで約15分、昨年9月の県総合防災訓練では津波災害の後方支援を想定した訓練が行われております。会議では、9市町村が連携して同市への震災時活動拠点整備を推進することを確認しておりますが、この9市町村が提案する宮城県沖地震災害の後方支援基地構想について知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、1996年2月16日午後8時10分ごろ、豊浜トンネルの崩落によりトンネル内を走行中だった北海道中央バスの積丹町余別発小樽駅前行き路線バスと後続の乗用車の2台が直撃を受け、20名全員が死亡した事故は記憶にとどまっており、その後、トンネルの総点検が行われ、道路の災害防除事業が進められてきております。
 公共事業が縮小されていく中でも、災害の未然防止や災害時の迂回路等の利用のために、道路災害防除事業は縮小することのできない事業であると認識しております。公共事業の規模が拡大できない中で、今日では、社会資本整備として整備した道路等を長く有効に使用するため、計画的に維持していくことも必要であると思います。本県のトンネルの防災対策はどのようになっているでしょうか。また、橋梁など道路施設の維持管理に関する基本的な方向性をお示し願います。
 次に、災害時において機動的な対応を果たすため建設業との災害時の協定が締結されており、このたびの地震災害でも有効であったと評価しております。建設業は岩手の経済の原動力となってきており、公共事業の縮小など、競争が激化し、先行き厳しい経営が続くことが予想される中、これに従事する労働者も多く、また、関連業者も多いことから、倒産や雇用不安の解消への取り組みも早急にやらなければならないと考えております。この建設業の経営対策をどのように進めていくお考えなのかお伺いいたします。
 次に、雇用対策についてお伺いいたします。
 OECDの対日経済審査報告書2008年版によれば、労働市場の二極化が急速に進んでおり、一つとして、非正規労働者の割合が1994年の20%から2007年には34%に上昇したこと、二つとして、非正規労働者の4分の3を占めるパートタイム労働者の時間当たり賃金はフルタイム労働者のわずか40%にとどまり、一部の社会保険制度からも除外されていること、三つとして、二極化により、労働経験が短く、日本で重要な役割を果たしている企業内訓練が受けられないために能力を高める機会に恵まれない人々が若年層を中心にふえていること、四つ、正規労働者と非正規労働者の賃金格差は生産性の差をはるかに上回っているため、公平性の面でも深刻な問題を提示していること、五つ、両者の間に移動がなく、非正規労働者の大半が低賃金労働から抜け出せない状況がさらに問題を難しくしていることといった指摘があり、こうした労働市場の二極化を反転させるためには、柔軟性の高い正規雇用、臨時雇用者に対する社会保険の適用拡大、研修プログラムの改善による非正規労働者の雇用可能性の改善など、包括的なアプローチが必要とされるとしております。このように、海外の国際機関の目から見ても我が国の雇用環境は異常な状況にあり、また、処方せんも示されているように、取り組むべき道筋は明らかとなっております。
 そこでお伺いいたしますが、我が国では労働者の長時間労働が常態化しており、メンタルヘルス不調や過労死、過労自殺が全国的に増加傾向にあります。この現状をどのように認識しているのでしょうか。
 また、正規雇用労働者の過剰な労働を正常化させるためには、非正規雇用の労働者を正規雇用にかえ、能力を高める訓練をしていく必要があります。官民挙げての支援をしなければ労働環境の改善は進まないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 沿岸、県北の雇用情勢は県内でも厳しく、そうでなくても少ない若者の多くが県外の企業に就職するなどして流出し、働き手がいないので進出する企業も二の足を踏むという悪循環となっています。この悪循環を打開するための取り組みをどのように図っていくのでしょうか、お伺いいたします。
 次に、過疎対策についてお伺いいたします。
 過疎地域は、国土の保全や環境保全といった公益的機能の維持・発展のために必要なだけでなく、豊かな自然環境のもとでゆとりある多様な生活様式を実現できる場であるとともに、都市住民にとっても豊かな生活を実現できる地域であるため、過疎対策は、引き続き国、県、市町村がそれぞれ適切な役割分担のもとに、3者が一体となって総合的、計画的に実施する必要があると考えております。
 しかしながら、過疎地域自立促進特別措置法が平成22年3月で失効するため、新たな過疎対策が必要となるものの、国の動向がまだ定まっておりません。過疎債を中心とするこの過疎対策は本県の過疎地域振興にとって重要な役割を果たしてきており、地域の格差の解消のためにも成果を見てまいりました。現制度の存廃は今後の本県の発展にも大きな影響を与えるものと思われ、その存続を強く国に働きかける必要があると考えております。これまでの過疎対策をどのように評価し、今後この過疎対策をどのように進めるお考えなのかお伺いいたします。
 次に、岩手競馬についてお伺いいたします。
 岩手競馬は、昨年3月、県論を二分する存廃論議の結果、一定のルールのもと経営存続となりましたが、売り上げは低迷、3度にわたるコストカットによって本年の開催にこぎつけました。本年も前年対比10%強ダウンの状況であります。現在の状況ではコストカットの弾力値も限界にあり、このままでは廃止せざるを得ないのではないかと危惧されます。なぜなら、現行コストカット方式の運営の限界は赤字即廃止の1年限り方式であり、また、組合の執行者が行政サイドにあるため、競馬存続、発展の意志よりもルールに従った方向をたどらざるを得ないところにあるからであります。
 幸い競馬法の改正によって包括的民間委託が可能となり、競馬組合議会の勧告もあり、現在、その交渉中と承知しておりますが、民間委託もこのコストカットのルールでの思考で臨むとすれば、よき結果を望むのは難しいものと考えられます。また、限界にある現行方式よりよければ採用するという、いわば入札により仕事をさせるという発注者、受注者の感覚で交渉を進める官的発想ではなく、委託相手をよきパートナーとして迎え、新たな岩手競馬のあり方を共同作業で構築することが必要であると考えます。全国の地方競馬に先駆けた画期的な改革が問われているのが現状であるとの認識が必要であると思います。
 競馬組合議会の勧告により、競馬法改正で道が開かれた包括的民間委託導入に向け懸命な努力のもと進めることを期待し、さきの競馬組合議会において要請文が提出されたと伺っておりますが、知事の御認識をお伺いいたします。
 最後に、地方公共交通対策についてお伺いいたします。
 公共交通は、日常の移動手段として必要不可欠であると同時に、高齢化の進展等により交通弱者が増加すると見込まれる状況にあって、その重要性がますます高まっていると思います。しかしながら、県内の公共交通利用者は減少傾向にあり、昨年の輸送人員は、乗り合いバス事業においては昭和60年度5、884万5、000人が平成18年度には2、324万7、000人、60.5%減、三陸鉄道においては、昭和59年268万9、000人が平成19年度には103万6、000人、61.5%減となっており、利用者の減少に伴い、多くの公共交通機関は補助金によって支えられ、一部は存続の岐路に立たされている現状にあり、また、この利用の減少が続いた場合、補助金を増額しても公共交通を維持することは困難となると思います。
 このような状況において、過疎対策や交通弱者対策、あるいは公共施設間を結ぶ地域の足として重要な役割を果たす公共交通機関を、どのような方向に持っていかれるお考えなのかお伺いいたします。
 これで質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 田村誠議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、県民所得回復への工程についてでありますが、県民所得の目標は、本県の経済成長率を見通すとともに、政策展開による上乗せ効果を加えて設定したところでありますが、今般、公表した県民経済計算によれば、平成18年度の経済成長率は実質で0.8%と政策的な上乗せには達していないものの、見通した成長率の範囲内で推移しているところであります。
 しかしながら、最近の経済情勢は、原油高騰等に伴う中小企業や農林漁業者の経営環境の悪化、アメリカ大手証券会社の経営破綻に伴う金融不安の高まりのほかに、特に、本県においては、地震の風評被害による観光客数の落ち込みなど、厳しい状況となっています。
 こうしたことから、県民所得の目標達成については予断を許さないものと考えておりまして、今後、国の経済対策の動向を踏まえながら、本県においては、自動車や半導体関連産業を中心としたものづくり産業の集積促進や、本県の特性を生かした食産業・観光産業の振興、高品質で安全・安心な農林水産物の産地形成や販路拡大など、いわて希望創造プランに掲げた政策を着実に推進しながら、目標達成に向け最大限の努力をしてまいる決意です。
 次に、来年度の予算編成についてでありますが、平成21年度当初予算は、いわて希望創造プランの策定後、2度目の予算編成となるものであり、1年目の取り組みを土台として、さらに力強く、実効ある形でプランを推進する予算としたいと考えており、県民の皆様の声や政策評価結果等を踏まえ、目標達成や課題解決のために、より効果的な事業を厳選しながら、地域の総力を結集して希望への足取りを確かなものとしてまいりたいです。
 来年度においては、県内経済の活性化や医療・福祉を初め、食の分野も含めた安全・安心の確保、将来を担う人づくり、県北・沿岸地域の振興などに加え、2度の大地震による災害についても、復旧段階から次の復興に向けた取り組みを重点的に進めてまいる考えです。
 これらの施策の積極的な展開のためにも、集中改革プログラムに基づき、厳しい財政状況に的確に対処し、中期的な見通しを持ちながら予算編成を行う必要があると認識しております。
 このため、歳入面では、交付税の増額など、地方税財源の確保に向けた国への働きかけなど財源確保対策にさらに力を入れる一方で、歳出面では、限られた財源を最大限に活用できるよう、政策の優先度や事業の効果、将来見通しなどを十分に吟味し、選択と集中をより徹底して行うなど、歳入・歳出全般にわたる改革に全力で取り組み、困難な経済財政環境の中でも、県民の期待にこたえられる予算に仕上げてまいりたいと思います。
 なお、予算規模については、現時点では具体的な見通しを申し上げることは難しいですが、ことし2月に平成22年度までの収支を試算した中期財政見通しを公表したところであり、この中期財政見通しにおいて想定していた予算規模を目安としつつ、社会経済情勢や地方財源の確保などについての今後の動向を踏まえて、予算編成作業の中で必要な事務事業を盛り込んだ予算となるよう検討してまいりたいです。
 次に、新しい総合計画についてでありますが、環境変化の把握や現計画の評価などにつきましては、議員御指摘のとおり、地域経済や県民生活を取り巻く環境は、計画策定時から大きく変化しており、特にもグローバル化の急速な進展への的確な対応や安全・安心な暮らしの確保、地域コミュニティの維持・再生などが重要な課題と考えております。
 また、現在の総合計画は、自立・参画・創造による持続的な地域づくりを理念として、地域に住む人々を含めた多様な主体が、適切な役割分担のもとに力を合わせ、創造的かつ持続的な地域づくりを進めていくとしたことに特色があり、こうした考えのもと、岩手型ペレットストーブの普及を初めとした地域産業の強化に向けた取り組み、ご近所介護ステーションといった地域力を生かした取り組みなど、民間の活力や地域の潜在力を引き出してきた点を評価しており、このような方向性は、新しい長期計画にも受け継いでいくべきであると考えております。
 私は、このような認識のもと、10年後、さらなるグローバル化の進展が見込まれる中で、世界へ羽ばたく岩手を担い、また地域を支える若者たちに私の思いを伝えるとともに、意見交換を行う場を設けるなど、県民の皆さんの仕事や暮らしの現場の声を広くお聞きしながら、本県の将来像をともに描き、県民の総力を結集した希望ある岩手づくりのための県民計画として策定していく考えです。
 次に、七つの壁の解消、改善についてでありますが、現在の総合計画では、県民一人一人の意欲や地域の元気が生かされる道を妨げる制約を壁ととらえ、それらを乗り越えるための取り組みを、さまざまな壁を乗り越える課題対応プロジェクトと位置づけて施策を進めてきたところです。
 具体的には、移動時間を制約している距離の壁を解消するための新幹線盛岡以北の整備や、沿岸部と内陸部の交通アクセスの改善―早坂トンネル、仙人峠道路の整備、中山間地域の不利な条件のもとになっている地形の壁を乗り越えるための多彩な地域資源を生かした特産品の開発や、グリーンツーリズムによる交流の拡大、個性的で自由な発想を押し込めてしまうような意識の壁を解消するための、それぞれの地域における岩手地元学の実践など、七つの壁を乗り越えるためのさまざまな取り組みを展開し、改善を行ってきたところです。
 しかしながら、これらの壁は、県北・沿岸圏域における産業基盤、高速交通ネットワークや情報通信ネットワーク構築のおくれなどの課題に見られるように、本県に特有の地理的・地形的条件や気候・風土などによるものが多く、依然として対処すべき課題が残されていると考えており、引き続き、その解消に向けた取り組みを進めていく必要があるものと認識しています。
 次に、期間設定、計画遂行の責任などについてでありますが、計画期間については、環境変化が激しく、先を見通しにくい時代であるからこそ、本県の長期的な将来像を県民の皆さんと共有し、その実現に向けて努力することが重要であると考えまして、おおむね10年の長期ビジョンとマニフェスト・サイクルと連動した4年間のアクションプランによる構成としたいと考えているところです。
 また、長期ビジョンについては、県民一人一人が、この岩手の地で将来どういう生活を送りたいか、それぞれの希望を実現するために地域社会がどうあるべきかなどといった観点から、知事がだれであるかといったことにかかわりなく、10年といったわかりやすい時間軸の中で、県民の皆さんとともに描いていきたいと考えているものです。
 その上で、長期ビジョンの実現に向けた具体的な取り組みは、マニフェスト・サイクルと連動したアクションプランにより示すことで、知事の責任を明らかにし、その評価を県民の皆さんにゆだねようとするものであります。
 このアクションプランについては、策定後も、社会経済情勢の変化などを踏まえ、また政策評価システムと連動させながら、必要に応じた見直しも柔軟に行っていく考えです。
 次に、防災対策についてでありますが、遠野市への後方支援拠点施設整備の構想については、9市町村で構成する三陸地域地震災害後方支援拠点施設整備推進協議会から提案をいただいたところです。
 この構想については、さまざま検討を要する点も多いと認識していますが、宮城県沖地震による被害を想定した場合、遠野市は、確かに被災地への支援拠点としての地理的な優位性があると感じているところであり、去年の総合防災訓練でも、この点については再認識いたしました。
 構想の具体化に関しては、施設の具体的な機能・内容や平時における活用のあり方などについての協議・検討状況などを遠野市や関係市町村から教えていただきながら、県としても、関連情報の収集や関係機関との意見交換を進めてまいりたいです。
 次に、岩手競馬についてでありますが、御質問の中で、現行方式に限界を感じるポイントとして、売り上げの減少、それに伴うコストカットの限界、単年度ごとの存廃判断ルールの3点を挙げられ、また、民間委託への期待として、全国に先駆けた画期的な改革と述べられましたが、日本ユニシスからことし3月末に提出された企画提案におきましては、初年度の売り上げについては、さらに大幅に縮小する計画とされており、また、特に賞典費については、現行方式の場合に比べて大幅なコストカットを行い、そして、現行、単年度ごとの存廃判断ルールでありますが、ユニシス案では、半年前の予告で委託を解消できるという条件とされているところであり、また、民間委託への期待として、全国に先駆けた画期的な改革と先ほど御質問の中で述べられましたが、日本ユニシスからの企画提案においては、全国に先駆けた新規施策展開などについては、具体的な内容の提示は盛り込まれていなかったものであります。
 こうした問題が認められたことから、企画提案選定委員会においては、当初想定した日程で最優秀企画提案として選定することができず、再度のプレゼンテーションの中で、具体的な協議の過程を通じて、企画提案の必要な見直しや調整を行うとの説明があったことを受けて、最優秀企画提案に選定されたという経過があります。
 このため、まずは、当初の企画提案の平成21年度の収支見通しや賞典費の大幅な削減などの基本的な問題点について、具体的にどのように見直していくのかを明らかにしていただくことが必要であり、再三その提示をお願いしてきたところであります。
 しかしながら、その後の協議においても、日本ユニシスから具体的な内容が示されず、このままでは10月の最終判断に間に合わなくなることから、具体的な実行プランのうち、少なくとも年間レース数、開催日程などの競走体系や賞金や各種手当の水準など、賞典費の具体的内容、そして、初年度の基本的な収支見通しの3項目については、早急に示していただくよう、管理者である私からも文書で特にお願いしたところであります。
 これら3項目につきましては、地方公共団体としての説明責任や、また、関係者との調整の必要性を考えれば、公開できる情報としていただくことが不可欠でありますが、現時点では、残念ながらいまだにお示しいただいていないところであります。
 岩手競馬については、まず、事業の存続を確かなものとすることが何よりも重要であり、民間委託拡大の検討は、現行方式と比べて、存続にとってよりよいものとなるような新しい事業運営方法を探ろうとしているものでありまして、その具体的な内容や見通しが不明な状況のままで、ましてや、現行方式以上に存続が危ぶまれるような不安を感じながら、民間委託拡大への移行を決断することはできないものであります。
 したがって、スケジュール的には非常に厳しくなっておりますが、早急に賞典費などの3項目を初め、実行プランの具体的な内容を提示いただけるよう協議を進め、10月の最終判断に向け、関係者とも十分に調整の上で、県民や議会の皆様に納得いただける結論をまとめられるかどうかという観点に立って、もうしばらく日本ユニシスとの協議を行ってまいりたいです。
 また、御質問の中で、限界にある現行方式よりよければ採用するという、いわば入札により仕事をさせるという発注者、受注者の感覚で交渉を進める官的発想ではなく、委託相手をよきパートナーとして迎え、新たな岩手競馬のあり方を共同作業していくことで構築することが必要と考えるという御指摘がございましたが、民間委託拡大は、募集要領に示すとおり、民間委託の拡大の可能性について、現行の運営方式と比較考量しながら、具体的な検討を進めようとするものであります。
 現行の運営方式と比べてよりよい方式であると判断される場合、提案内容に沿って、契約内容等の具体的な交渉を進めるものであり、現行の運営方式との比較考量が、民間委託拡大への可能性の検討の不可欠な要素であって、かつ大前提となっているものです。
 現状のように、日本ユニシスから具体的な実行プランの提示がなく、現行の運営方式と比較してよりよいものかどうかを判断できない段階において、日本ユニシスが提示すべき実行プランの一部となるような情報を組合側から提示することは、まだ契約の相手方として決まっていない特定の民間企業の利益に結びつくものであり、今回の企画提案募集の趣旨や募集要領に定めた手続等に反することにもなります。
 また、仮に日本ユニシスを委託先として選定した場合、競馬組合と日本ユニシスとは、競馬事業の運営という面では協力・共同の関係に立ちますが、委託者、受託者といった契約の当事者同士となるわけでありますので、委託条件や委託料などの面においては利害が相対立する関係となります。
 当該委託業務に関し、委託契約前の交渉段階において、競馬組合側から、相手方にとって望ましい条件を提示していくというようなことは、県民の財産を無駄にしないという観点からも好ましくないものと考えられます。
 なお、日本ユニシスに対しては、5月下旬に、具体的な協議に入るに先立ち、売上規模や賞典費の水準など、日本ユニシスの当初の企画提案に対する競馬組合の基本的な考え方を示しているところであり、その上で、どのように企画提案の問題点を見直していくのかという観点から、実行プランの提示を求め、具体的な協議を進めることとしているものであり、基本的な部分が合意可能なものとなった以降については、事業運営の詳細部分について共同で作業していくこととなるものであります。
 その他のお尋ねにつきましては、副知事及び関係部長から答弁させますので、御了承願います。
〇議長(渡辺幸貫君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   〔副知事宮舘壽喜君登壇〕
〇副知事(宮舘壽喜君) 県北・沿岸圏域における産業振興の基本方向に基づく施策の達成度についてでありますが、これまでの主な成果としては、例えば、企業誘致の面では、平成18年度からこれまで、新たな企業立地が11社、企業増設が18社を数え、また、世界的な空気圧機器メーカーの生産拡大による大規模な雇用の創出が期待されているところであります。
 観光の面では、平成19年度は北東北デスティネーション・キャンペーンや仙人峠道路の開通などにより観光客入れ込み数が1、117万8、000人回で、対前年度比4.3%の増となっております。
 水産業では、養殖業の盛んな21漁協がすべて地域営漁計画を策定し、この計画に基づいた担い手の経営規模拡大や大船渡市漁協のカキ養殖施設、吉浜漁協のホタテガイ養殖施設の整備を初めとする漁場の効率的利用の取り組みなどに支援を行っているところであります。
 次に、今後の格差解消に向けた取り組みについてでありますが、まずは、基本方向をもとに策定いたしました、いわて希望創造プランに掲げる各種施策を着実に実施していくことこそが重要であると考え、現在、市町村、産業関係団体、NPO等と一体となって鋭意推進しているところであります。
 具体的には、地域産業を支える農林水産業の振興はもとより、安全・安心で高品質な農林水産物や地域資源を活用した1次産業から3次産業までの連携による食産業、観光産業の展開、さらには、ものづくり産業の集積に引き続き取り組んでまいります。
 特に、観光面では、平泉などを訪れた観光客の県北・沿岸圏域への周遊の促進や三陸鉄道を活用した広域的な観光のさらなる展開を図るとともに、ものづくり産業にあっては、北上川流域の産業集積効果の県北・沿岸圏域への波及に努めてまいります。
 また、県北・沿岸移動県庁の成果を踏まえて、県北圏域と八戸圏域とのより一層の交流、連携の促進や三陸沿岸の海洋資源を生かした海洋関連産業の集積に取り組むことなどにより、今後とも、格差解消に向けた振興施策を一層推進してまいる考えであります。
   〔商工労働観光部長廣田淳君登壇〕
〇商工労働観光部長(廣田淳君) 県北・沿岸地域への企業誘致についてでありますが、まず、これらの地域に既に立地している食品製造や造船、コネクター製造、空気圧機器製造など、地域の核となる企業に対するフォローアップをしっかりと行い、さらなる増設や関連企業の誘致に結びつけていくことが重要と考えております。
 現在、企業立地促進法に基づき、平成23年度または24年度を目標年次として策定された各地域ごとの基本計画に即して、それぞれ企業立地件数、雇用創出人数、製造品出荷額等の目標値を設定し、企業ニーズに対応した人材育成研修や企業誘致アドバイザーの設置などにより、企業誘致の取り組みを強化しているところであります。
 今後とも、特定区域における産業の活性化に関する条例に基づく優遇措置や、県北・沿岸地域において他より高い補助率を設定している企業立地促進奨励事業費補助などを活用しながら積極的に誘致活動を進めてまいりますが、その成果を上げるためには、地元市町村が県と連携をとりながら主体的に取り組んでいくことが大変重要であり、県としても、ともに一丸となって努力してまいる考えであります。
 次に、木製家具等製造企業などの誘致についてでありますが、これまで、宮古・下閉伊地域や気仙地域には、産業用、住宅用の合板製造等の企業が立地し、地域経済の活性化に大きく寄与しているところであり、これらの地域では、企業立地促進法に基づき策定した基本計画においても、木材・木製品製造業が集積を図る重点業種に指定されていることから、今後とも、地元市町村と連携しながら、木材関連企業の誘致に積極的に取り組んでまいる考えであります。
 次に、風評被害についてでありますが、県内の旅館・ホテル業界団体の調査によりますと、7月31日現在で、延べ4万5、000人を超える宿泊予約のキャンセルがあったと聞いており、県ではこれまで、いわて・平泉観光キャンペーンオープニングイベントや旅行会社を対象にした、おでんせ観光王国いわてなど、首都圏において、知事みずから本県への来訪を呼びかけたほか、ホームページや全国規模のイベントなどを通じて正確な情報を発信するとともに、全国紙、ラジオ、首都圏での電車中づりなどによるPRを行い、いわておかみ会など関係団体とともに、集中的に元気な岩手をアピールしてきたところであります。
 こうした結果、つなぎ、鴬宿、花巻の各温泉郷、沿岸地域の宿泊施設を対象に、県で7月末及び9月中旬に行いましたサンプル調査では、8月中の宿泊予約が前年比の7割台でしたが、9月から12月については8割台を見込んでいるところであります。
 今後におきましても、さまざまな媒体を活用して本県の魅力を全国に発信するほか、今月から、岩手県観光協会と県内宿泊施設が共同で実施しております1億円1万人の宿泊割引券プレゼントキャンペーンに要する経費の一部を県が支援するなど、引き続き官民一体となった風評被害の対策に取り組み、本県への誘客を積極的に促進してまいります。
 次に、労働者の長時間労働に対する認識についてでありますが、総務省の労働力調査によりますと、労働時間が週60時間以上の者は、平成5年で雇用者全体の10.6%、平成19年で10.3%と同程度の割合で推移しており、長時間労働が常態化していると考えられます。
 また、近年、心身の不調に係る労災認定件数が増加傾向にありますが、これらは、長時間労働と関連性が強いと言われており、懸念すべき状況にあると認識しております。
 次に、正規雇用にかえる支援についてでありますが、県としましても、正規雇用の拡大は重要な課題と認識しております。
 そのため、知事を先頭として誘致企業への働きかけを行っているほか、経営者協会を初めとした商工関係団体等に対して要請を行うとともに、正規雇用拡大をテーマとしたセミナー等の開催やパンフレットによる広報等を通じて、企業への働きかけを行っているところであります。
 また、ジョブカフェいわて等が県内各地において正社員を採用する企業の会社説明会を開催し、正規雇用を拡大する企業を支援しております。
 さらに、今年度からは、広域振興局等に配置している就業支援員が、管内の各事業所を訪問して、正規雇用拡大の要請を行うとともに、国が新たに開始した契約社員や期間工などの正社員化を促進する中小企業雇用安定化奨励金の周知を図っており、今後におきましても、正規雇用の拡大に向けて積極的に取り組んでまいります。
 次に、沿岸・県北の雇用情勢の改善の打開策についてでありますが、雇用を拡大するためには、農林水産資源を活用した食産業の展開など地元企業の育成強化を図るとともに、コネクター、空気圧、セメントなど、沿岸・県北の各地域で核となっている企業のフォローアップに努め、さらなる増設を促進するとともに、関連企業の誘致や新たな企業の誘致に力を入れていくことが重要であると考えております。
 また、安全・安心で高品質の農林水産物の生産や地域資源を生かした体験型観光の推進など、県北・沿岸地域の特性を生かした産業振興をさらに推進していくことが必要であると考えられ、県としましては、今後も地元市町村と連携しながら、若者が可能な限り地元に就職できるような地域づくりに積極的に取り組んでまいります。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) まず、漁協の経営状況についてでございますが、県内漁協の平成19年度決算を見ますと、2年連続の秋サケの魚価高や経費の削減等によりまして、繰越損失金を抱える漁協の数は、平成16年度決算と比較いたしまして4組合減少するなど、徐々に経営改善が進みつつありますが、全体といたしましては、4割程度の漁協が繰越損失金を抱え、依然として厳しい状況にあると考えております。
 このようなことから、県といたしましては、多額の繰越損失金を抱える漁協に対して利子補給を実施するとともに、経営状況に応じた個別の現地指導を実施し、漁協みずからの経営改善の取り組みを支援しているところでございます。
 また、漁協系統におきましても、平成19年度に関係団体や県で構成する経営指導岩手県委員会を新たに設置し、組織を挙げて漁協の経営改善に向け、指導・助言を強化しているところでございます。
 次に、漁協合併の進捗状況についてでございますが、漁協系統では、平成21年度末までに、漁協の黒字体質への転換と11拠点漁協の実現を目指した先行合併の促進に向けて取り組んでいるところでございまして、このうち、特に山田地区におきましては、平成19年12月に山田湾漁協が民事再生手続の開始を申し立てたことを契機に、現在、早期合併に向けた活発な協議が進められているところでございます。
 県といたしましては、今後とも市町村と連携を図りながら、各地区における合併協議を促進し、漁協系統の主体的な取り組みを積極的に支援してまいります。
 次に、水産物の高付加価値化の取り組みについてでございますが、本県水産業の振興を図るためには、漁業と水産加工業を車の両輪と位置づけ、水産物を安定的に供給できる産地づくりを推進するとともに、加工技術の開発と普及、さらには、新商品の開発やマーケティングの強化などにより、水産物の高付加価値化に取り組んでいくことが重要と考えております。
 このようなことから、秋サケ熟成加工品や冷凍生ワカメ等、前浜資源を活用した加工技術の開発と普及の促進、産学官連携によるイサダの新商品開発や漁協と水産加工業者との連携による生ウニの加工体制の確立、さらには、県の産業創造アドバイザーによる大手量販店への直接販売の支援などに取り組んでいるところでございまして、今後とも漁協や関係団体、市町村、大学等との連携のもと、こうした取り組みを強化し、水産物の高付加価値化に努めてまいります。
 次に、燃油価格の高騰に対する取り組みについてでございますが、本県漁業は小型船が98%を占め、全体としては他県に比べ燃油消費量の多い大型漁船の割合は比較的少ないものの、特にイカ釣り漁業などにおきましては燃油価格の高騰による影響が大きいものと認識しているところでございます。
 このため、本年1月に関係団体と連携した対策会議を設置し、各振興局ごとに相談窓口を開設するとともに、国が制度化いたしました漁業者グループによる輪番休漁活動に対する助成や低燃費エンジンの普及を促進するほか、水産技術センターによる省エネ操業のための漁場情報の提供などに取り組んできたところでございます。また、こうした取り組みとあわせまして、本年5月と7月には、国に対し、燃油価格高騰対策の充実強化等を提案したところでございます。
 今後におきましては、関係団体等との連携のもと、7月に国が新たに創設いたしました燃油価格上昇分の9割を補てんする緊急対策の積極的な活用を促進するとともに、産地と量販店との直接取引の拡大による漁業者所得の向上等を図り、燃油価格高騰による本県漁業経営への影響の緩和に努めてまいります。
 次に、県内の木材関連企業の支援についてでございますが、国内市場での国産材へのニーズの高まりは、本県木材製品の需要拡大の絶好の機会と認識しておりまして、木材産業の振興に向けて競争力の強化と販路の拡大が重要であると考えております。
 このため、県といたしましては、効率的な生産施設の整備による生産コストの低減、高品質な乾燥材等の供給体制の整備や技術指導の充実による建築現場のニーズへの積極的な対応、さらには、中小企業診断士等による経営指導などにより、競争力の強化に努めているところでございます。
 また、販路の面では、製材企業と工務店等との交流会の開催によるマッチングの促進や首都圏での商談会を活用した新たな販路の開拓などに取り組んでいるところでございます。
 今後とも、関係団体や企業との連携を図りながら、競争力の強化と販路拡大に取り組み、本県木材産業の振興に努めてまいります。
   〔県土整備部長佐藤文夫君登壇〕
〇県土整備部長(佐藤文夫君) まず、津波対策の社会資本整備についてでありますが、県ではこれまで、過去の津波高さをもとに定めた計画津波高さを目標として防潮堤などの整備を行ってきております。
 本県の海岸線の延長は約709キロメートルありまして、このうち津波対策が必要な延長は、県全体では約79キロメートルとなっております。平成19年度末現在で約56キロメートルの区間で防潮堤の整備が完了しており、進捗率は延長ベースで71%となっております。また、国が現在、整備を進めている釜石港湾口防波堤は平成20年度末に完成する予定となっております。
 久慈の久慈港湾口防波堤の進捗率は、平成19年度末で事業費ベースで26.1%でありまして、平成40年ごろの完成を目指していると聞いております。
 湾口防波堤を初めとする津波対策の今後の対応についてでありますが、現在、実施している箇所の早期完成に向けて重点的に取り組むとともに、今後、整備が必要な地区については、これらの進捗状況を踏まえながら計画的に取り組んでいくこととしております。
 また、市町村や関係部局との連携を図りながら、地域住民がみずから参加し避難路や避難場所などの検討を行う地域の安全・安心促進基本計画の作成など、ソフト対策を組み合わせた総合的な津波対策に努めてまいることとしております。
 次に、トンネルの防災対策についてでありますが、県では、143カ所のトンネルにつきまして日常の道路パトロールを行い、漏水やコンクリートのひび割れ箇所につきまして必要な補修を行っているところであります。
 また、北海道豊浜トンネル岩盤崩落事故や平成11年6月のJR山陽新幹線福岡トンネル内でコンクリート片が落下した事故を契機としまして緊急点検を行い、対策が必要とされた48カ所のトンネルにつきまして、平成14年度までに修繕工事を行ったところであります。
 今後とも、道路パトロールなどを通じまして適正な維持管理に努めてまいります。
 次に、橋梁など道路施設の維持管理に関する基本的な方向性についてでありますが、これまでの、損傷が深刻化してから大規模な修繕を実施する、いわゆる事後保全的な対応から、定期的な点検を行い、損傷が深刻化する前に修繕を実施する予防保全型に切りかえ、計画的、効率的な維持管理に取り組んでいるところでございます。
 このうち橋梁につきましては、岩手県橋梁長寿命化検討委員会を組織しまして、橋長15メートル以上の長寿命化修繕計画を平成21年度までに策定し、この修繕計画に基づき維持管理を進めていく予定でございます。
 今後とも、道路網の安全性、信頼性を確保するため、予防保全の考え方に基づいた適時適切な維持管理に努めてまいります。
 次に、建設業の経営対策についてでありますが、受注競争が一層激しさを増していることに加え、資材や燃料価格の高騰が企業収益を圧迫し、多くの企業は極めて厳しい経営状況にあるものと受けとめております。このため、本年度は、受注戦略や経営のコストダウン、企業再編をテーマとした講習会を開催するなど、経営力強化に向けた支援に力を入れて取り組んでいるところでございます。
 また、資材などの価格高騰への対応としまして、本年7月1日から県発注工事に単品スライド条項を適用し、さらに先月16日には対象とする品目を拡大するなど、本業における収益向上につながる対策を実施しているところでございます。
 県としては、引き続き、健全な経営体へと転換を図ろうとする企業の取り組みを積極的に支援するとともに、総合評価落札方式の拡充や県営建設工事入札参加資格審査の見直しなどによりまして、技術と経営にすぐれた企業が存続し、成長できる環境整備に努めてまいります。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) まず、これまでの過疎対策の評価についてでありますが、本県におきましては、過疎地域自立促進特別措置法に基づき、基幹道路709億円余や公共下水道187億円余の県代行整備などに取り組むとともに、県独自の支援策として、自治振興基金の貸付条件面での優遇や県道などの整備に対する市町村負担金の免除などによりその振興に努めてきたところでございます。
 その結果、交通通信基盤や上下水道などの生活環境の整備が進むとともに、都市部との交流や定住促進など一定の成果が上がっているものと認識いたしております。しかしながら、依然として本県の過疎地域は、人口減少、若年層の流出、高齢化の進行により地域活力の低下が見られるなど、いまだ地域社会が自立していくためにはさまざまな課題があるものと考えております。
 議員御指摘のように、過疎地域が有している水源の涵養や国土の保全、地球温暖化防止、貴重な文化の継承、都市にはないゆとりある居住環境などの多面的な機能は地域の持続的な発展によってこそ発揮されるものであり、このような機能を引き続き国全体で保全していく必要があります。
 このようなことから、県としては、過疎市町村の財政基盤の充実強化や、新たに県民生活のよりどころである地域コミュニティ対策を盛り込んだ新たな過疎対策法が制定されるべきと考えております。このため、本年7月、国に対し知事が県単独要望を実施したほか、北海道・東北知事会、全国知事会を通じた要望や岩手県市長会、町村会、過疎地域自立促進協議会と合同で県選出国会議員への要望を行ってきたところであります。
 今後とも、市町村等と連携しながら、新たな過疎対策法制定に向け、国への働きかけを行ってまいる考えであります。
 次に、地方公共交通対策についてでありますが、バスなどの公共交通機関は地域社会に不可欠な基盤であり、二酸化炭素排出抑制の観点からも重要なものでありますことから、これまで財政支援等によって支えてきたところであります。しかしながら、人口減少や過疎化等により利用者の減少に歯どめがかからず、また、厳しさを増す財政状況などを踏まえますと、従来の補助金を中心とした支援だけでは地域社会にとって望ましい公共交通を確保することが困難になってきております。
 このようなことから、市町村やNPO等と連携しながら広く公共交通の重要性を訴えつつ、県民と一体となった利用促進運動を展開することにより、県民の意識改革や行動変容を促す一方で、地域の実態に即した公共交通ネットワークの構築などの利用環境整備に努めることが必要であると考えております。
 そのため、昨年、官民による岩手県公共交通利用推進協議会を設立しまして各種施策を実施してきたところでございますけれども、その一環として、例えば本年10月1日からIGR盛岡駅と青山駅間でバスカードが利用できるバス・鉄道乗継円滑化試験調査事業による潜在需要者の掘り起こしや、また、11月には、車利用を減らし、公共交通利用を促す減クルマ・チャレンジウイークを盛岡市で行うなど、利用促進の取り組みを展開してまいります。
 また、利用環境整備の面では、市町村が行うデマンドバスの実験的取り組みや県立病院の再編に伴うバス路線運行への支援など、地域の実態に即した公共交通ネットワークの構築支援を行っているところであります。さらには、三陸鉄道やIGRいわて銀河鉄道につきましては、市町村とともに不断の経営の見直しを促しながら、経営基盤の強化を図り、安全で安定した輸送サービスの維持確保に努めているところであります。
 以上のような取り組みを進めながら、将来にわたって持続的な公共交通体系の構築を図ってまいる考えであります。
〇26番(田村誠君) それぞれ御答弁をいただきまして大変ありがとうございました。
 改めて知事にお伺いさせていただきたいと思いますが、私は、県議会に議席をちょうだいいたしましてから約10年という月日が過ぎたわけでございまして、特にこの間、私は、県土の均衡ある発展、あるいは雇用対策と水産振興、これを中心に、いろいろな機会をとらえて県の取り組みについてただしてきたわけでございますが、おかげさまで道路や港湾整備など社会資本の整備については、まだ道半ばではありますけれども、着実にその姿をあらわし、成果が示されていること、このことにまず感謝を申し上げたいと思います。
 しかしながら、今、しからば地域の格差解消というものはされているのかということを問うてみた場合、私はむしろ拡大の傾向にあるのではないかというふうに心配する面が多いわけであります。達増知事も当選後、このことにいち早く御認識をいただきまして、県北・沿岸地域に直接出向き、関係者の方々といろいろな意見交換、意見を聞く機会を数多く持ってこられて、岩手の発展は県北・沿岸振興にあるとの思いを知事の行動や発言の中で随所にあらわしていただいていることに大いに期待を寄せている一人でもございます。過日、私ども県北・沿岸振興議員連盟の来年度予算に対する要望書の提出のときも、やはり所感の中で同趣旨のお言葉をいただきまして、努力していくというお話をいただいたわけでありますが、大変心強く思ってございます。
 こうした県北、沿岸の実態というものは、知事もおわかりのとおり、若者が職場を求めて圏外―地域外という意味も含めてでございますけれども―に流出をし、高齢化や少子化が進み、独居老人の家庭が非常にふえてきている。そして、農林漁業の後継者なども大変不足してきている。そういういわゆる地域の活力が低下している実態にあると思っております。
 しかし、そんな中でも地域の方々は、自分が生まれた地域に対して非常に大きな誇りを持ちながら、結いといいますか、お互いに助け合って生活をしていこう、そういう思いで一生懸命努力をしていただいているわけであります。その地域の方々が何にも増して一番お願いをしたいのは、家族がそろって同じ屋根の下で苦楽を分かち合いながら暮らしていける環境、これをいち早く早急にぜひ実現をしてほしい、整備をしてほしいというのが特にも県北、沿岸の方々の気持ちだというふうに伺っているわけでございますが、このことに対し、知事はどのような御所見を持っているのか、そしてまた、こうした方々に対する期待に今後どのようにこたえ、そして元気です岩手の実現を図ろうとしているものか、決意を含めて改めてお伺いいたしたいというふうに思います。
〇知事(達増拓也君) 西暦2001年に岩手県の1人当たり県民所得は大きく落ち込みまして、それまでに比べて人口流出もそこからふえ始めたわけであります。2001年の経済の落ち込み以前の岩手の人口流出は、1、000あるいは1、000を切ったこともございました。ところが、2001年の落ち込みから岩手の経済は低迷が続きまして、人口流出は1、000人、2、000人、3、000人、4、000人と毎年1、000人ぐらいずつふえ続け、おととしは6、000人、そして去年は6、800人人口流出。そのほとんどが若者でありますので、大ざっぱに計算しますと、2001年以降、この短期間に2万人。
 一方、東京のほうはこの間にどんどん発展していますから、日本の中における格差の構造がこの短期間に起きて、私は、国に岩手の若い人たちを想定2万人奪われたと思っています。国が地方に来て若者を想定2万人奪っていくというのはアテルイのころとかに行われていたことでありまして、そういうことが現在起きている。これを逆転させるためには国の政策の一大転換が必要であって、生活本位の、生活が第一という観点からの政策に国の政策を一大転換することがまず第一と考えております。
 一方、国のほうのそういった政策転換を指をくわえて待っているだけではだめですので、いわて希望創造プランにおきまして県北・沿岸振興を主要課題の一つとして位置づけ、若年層の定着を図るための企業誘致の推進や地域営漁計画の推進による水産業の担い手の育成など、雇用の場の確保に努めております。
 また、少子・高齢化対策や地域の保健医療の充実など、安心して住み続けられるような定住環境の整備にも鋭意努めているところでありまして、来年度に向けてこのいわて希望創造プランを着実に進めていきながら、また移動県庁でいただいた意見や県北・沿岸振興議員連盟の提言も踏まえて、地域の皆様とともに、希望を持って将来とも安心・安全に住み続けられる地域社会をつくり上げていきたいと思います。

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