平成20年9月定例会 第7回岩手県議会定例会会議録

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〇34番(平沼健君) 自由民主クラブの平沼健でございます。
 通告に従いまして、順次お尋ねしてまいります。
 最初に、本県の財政運営について伺います。
 先般、地方公共団体財政健全化法に基づいて、地方自治体の財政悪化をチェックするため公表が義務づけられた平成19年度決算に係る財政指標が明らかになりました。平成20年度からは、これらの指標に基づく健全化度の判定がスタートいたします。健全化法の規定では、地方公共団体は、四つの財政指標のうち、一つでも基準を超えると早期健全化団体とされ、さらに悪化すると財政再生団体として国等の関与により確実な再生が必要となります。
 本県は、一般会計などに占める赤字割合を示す実質赤字比率や公営企業会計を加えた連結実質赤字比率は黒字のため算定されませんでしたが、将来負担比率は307.7%と、早期健全化基準値の400%を下回ったとはいえ、高い値を示しております。また、標準的な収入に対する借金返済額を示す実質公債費比率は健全化基準値の25%を下回り、15.3%になっております。これらの数値からは本県の財政は健全だと言えそうですが、果たしてそうでしょうか。一つの事業の改廃によっては指標の数値が大きく変化することも考えられますし、これら財政指標はあくまでも国の主導で定められたものであります。
 本県は、財政健全化のためプライマリーバランスの黒字化を掲げておりますが、実際に黒字となったのは平成18年度のみであり、平成19年度、20年度ともに黒字化を見込めない状況にあります。こうした中で、本県の財政健全化の目標として、何を指標に、どのように進めていこうとしているのでしょうか、お示し願います。
 また、本県の中期財政見通しは、平成20年度から22年度までの実質2年半の見通しとなっております。県民の県財政への信頼度醸成のためにも五、六年先までの財政見通しを示すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 また、主要3基金の残高は平成20年度末で150億円となる見込みですが、財源対策として平成21、22年度で99億円取り崩す計画となっており、平成22年度末には51億円を残すのみとなります。この残高で、緊急時の対応や平成23年度以降に単年度収支ギャップが発生したときの対応ができるのでしょうか。さらに、財源対策として、県税、交付税等の増額期待として2年間で60億円が見込まれておりますが、これを財源対策と言えるのでしょうか、あわせて伺います。
 また、同様に地方公共団体財政健全化法に基づく財政4指標を踏まえて、県内市町村の状況をどのように認識されているか伺います。
 次に、地方分権改革と広域振興局体制について伺います。
 地方分権改革は、だれもが住みなれた地域で生き生きと暮らし続けていける社会の構築を目指すものであります。すなわち、地域の人々により近い基礎自治体にできる限りの権限と財源を集め、人々の知恵と工夫と参加によって、その地域に最もふさわしい公共サービスが多様な姿で展開されるよう、我が国全体の形を変えることであります。国、地方を問わない財政状況の悪化、急速な少子・高齢化がもたらす人口減少、地域間格差の拡大や限界集落の存在など困難な課題が山積する中で、地方分権改革は、地域が真に必要とする施策展開を可能にし、住民福祉の向上と地域社会の再生、活性化を図り、国と地方の閉塞感を打開するための抜本的な方策であり、喫緊の国家的課題であると認識いたしております。
 地方分権改革を進める上で重要なことは、基礎自治体である市町村が、単に国や県に従属するのではなく、みずから考え、みずから判断する主体となることであり、このため県は、市町村への義務づけや関与を可能な限り廃止、縮小する方向で検討し、二重行政につながる無駄をなくすべきものと思われます。地方分権に対する県並びに市町村職員の意識改革はもとより、職員の資質を向上させ、地方政府を担い得る人材を育成することが急務であります。こうした中で、特にも基礎自治体である市町村職員の人材育成、すなわち分権時代に対応できる職員づくりをどのように考え、支援していくお考えか伺います。
 県は、現在までに事務事業に関する権限、延べ1万69件を市町村に移譲したところであります。
 市町村の側は、必ずしも希望しない事務であっても、地域住民サービスの向上に少しでも役立てたいという思いと、近接補完性の原則に基づいて、自己完結性を高めるために努力していると承知しております。
 県は、市町村への権限移譲と同時に財源の移譲や人員の応援まで実施しております。この権限、財源等の移譲は、県財政にはプラスに働いていると思いますが、逆に受け手の市町村の負担増になっていることはないでしょうか。市町村間には温度差が大きいように感じられますが、権限移譲について市町村から多くの要望が寄せられているのでしょうか。また、今後の権限移譲をどのように進めていかれるお考えかお尋ねします。
 次に、広域振興局体制についてであります。
 県は、現在の県南広域振興局と6地方振興局の体制を平成22年度から四つの広域振興局に再編する方向で作業を進められております。そのこと自体に異議を唱えるものではありませんが、この再編が屋上屋を架すような行政、あるいは住民から見てわかりにくい行政をもたらすものであるならば問題があります。広域振興局のあり方については、県南広域振興局体制の2年間を検証し、県内12カ所で説明会を実施したほか、パブリックコメントを行って県民に理解していただいたとのことであり、民間団体や市町村長からの意見聴取も行われたようですが、サービスを受ける側、すなわち地域住民の声を十分聞き取れているのか危惧しているところであります。広域振興局のあり方について、地域住民はどのような意見を述べているのでしょうか。また、住民の意見は十分に聞くことができたとお考えでしょうか。
 また、県南広域振興局の検証を行う中で、管内市町村長や住民等からどのような指摘がなされ、それを今後どう改善していくのでしょうか、あわせて伺います。
 広域振興局体制の整備の基本的な考え方の留意事項には、県と市町村の二重行政の解消、すなわち住民サービスの向上が掲げられておりますことから、よもやそのようなことはないと確信しておりますが、広域振興局が単なる進達機関であれば、広域振興局から遠く離れた市町村にとってはかえって協議等に要する時間が増加し、行政の停滞を招くこととなります。広域振興局、行政センターの自己完結性を高めるため、県組織の内部での権限委譲をどのように進めていくお考えでしょうか、伺います。
 広域振興局体制は、地域資源を広域的に活用できる点では確かに一定の効果があると思いますが、反面、本局集約による近接性の低下に伴って、例えば農業普及員や水産業普及指導員が地域で担ってきた県民サービスが低下したり、地域経済に影響が生ずることは避けられないのではないかと思いますが、この点はどのように分析されているのでしょうか。
 次に、さきの県民意識調査で、40項目中、県民重要度が一番高い結果とされた適切な医療体制の構築について伺います。
 過日、いわて希望創造プランの取り組みと成果が発表されましたが、医師確保と地域医療の確保については、地域に必要な医師が確保され、専門的な医療を担う地域の拠点病院等による医療連携体制の構築が進み、県民が必要な医療を適切に受けることができる体制づくりが進んでいる。
 そして、人口10万人当たりの医師数は、平成18年度で186.8人と基準値の179.1人を7.7人上回っており、達成度はAランクであったとのことであります。即戦力となる医師8人の招聘、子育て等で離職した女性医師の職場復帰支援で5人、そして奨学金等による医師養成で15人と、県も大変な努力をされていることに異論はありませんが、この人口10万人当たりの医師数の増加と達成度Aは県民の実感と乖離しているのではないでしょうか。医師の招聘や職場復帰による成果があったことが事実としても、人口10万人当たりの医師数の増加は、計算の分母となる本県の人口減少が作用したためではないでしょうか。医師の偏在が依然としてとまらない中で、達成度Aの評価とは逆に、特にも県央部以外の地域に住む県民にとっては地域医療への危機感が増大していると思いますが、御所見を伺います。
 県は、県立病院改革実施計画において、二次医療圏ごとに広域基幹病院を指定するなど、確かに専門的な医療を担う地域拠点病院の体制づくりは形としては存在しておりますが、その核となるべき専門医は本当に充足されているのでしょうか。医師や医療器械などの医療資源を重点配置し、救急医療や専門医療機能を充実することとしている広域基幹病院における例えば循環器科や脳神経外科などの専門医師数の実態はどのようになっているのでしょうか。
 また、国内全域で医師が不足する中で、地域遍在の解消と地域開業医との連携をどのように進めていこうとしているのか伺います。
 岩手医科大学の定員は、平成21年度から国の緊急医師確保対策に基づく地域枠と、いわゆる骨太方針2008を踏まえた増員により20人増の110人とする方針が示されましたが、学生が医師となって活躍できるまでには10年以上の時間がかかると言われており、それまでの間、どのように県民医療、特に県北・沿岸部の地域医療を守っていくかが問われております。
 地域によって専門医が偏在したり、せっかくの基幹病院でありながら、診療科によっては専門医が確保できず、適正な医師数に達していないために他地域の病院に救急搬送される患者数が依然として高い数字となっております。
 県内12消防本部が救急搬送した患者のうち、管轄区域外に搬送した患者数は、平成17年には4万1、438人中3、203人、平成18年は4万1、215人中2、921人、平成19年には4万1、143人中3、264人となっており、7ないし8%の救急患者が管轄区域外の医療施設に搬送されております。また、防災ヘリによる緊急出動は、傷病者の救急搬送と医師の搬送、転院搬送を合算すると、平成17年に15件、平成18年に21件、平成19年に38件と、年々出動回数が増加しております。県は、救急搬送の実態をどのように分析し、今後も専門医の急速な増加が期待できない状態で、どのように県民の命を守ろうとしているのか伺います。
 広大な面積の本県では、大学病院などの基幹病院のある都市への患者の搬送に2時間以上を要する地域が多く、高規格道路の整備もおくれております。このように年間3、000人以上の患者が長時間かけて救急車で管轄区域外の医療施設に搬送されている実態を踏まえ、救命率を向上させるためには、ぜひドクターヘリを導入すべきではないでしょうか。
 この件につきましては、これまでに多くの議員の皆様からも導入の必要性が訴えられてきました。
 ヘリポートの位置や専従の医師、スタッフの確保、年間1億5、000万円以上と言われる経費など、さまざまな課題があるものと伺っておりますが、命の格差の拡大を食いとめる手段として、早急にドクターヘリによる遠距離救急救命体制の構築に取り組む必要があります。県も種々検討されているようですが、ドクターヘリの導入について、検討の状況と導入に向けた今後の見通しを伺います。
 次に、産業振興と雇用対策について伺います。
 岩手労働局が9月30日に公表した岩手県内の8月の有効求人倍率は、0.56倍と前月より0.03ポイント下回り、7カ月連続の減少となりました。特に県北・沿岸部ではさらに厳しい状況が続いております。新規求人数を見ましても、6、869人と前年同月比19.2%、1、629人も減少しております。
 前年同月比で減少幅が大きいのは、サービス業の42.9%減、製造業の27.7%減などであります。サービス業は、製造業に対する派遣労働者の求人が大幅に減少していること、また製造業は、原材料の高騰に加え、円高や海外の景気変動に起因する衣服、その他の繊維製品製造業や情報通信機器、電子部品、デバイス製造業等の求人が伸び悩んだと分析されております。国内外の経済情勢を見ても、今後さらに求人が悪化することが危惧されます。特に本県は、岩手・宮城内陸地震や沿岸北部地震の発生により、消費への影響や観光面でも厳しい状況が続いております。
 県は、新しい地域経営の計画において、1人当たりの県民所得を平成22年までに260万円まで引き上げるとの目標を示し、昨年来、産業振興施策を積極的に推進して、人材の育成、雇用の場の創出に取り組んでおり、県南部においては成果があらわれております。
 一方、県は、県北・沿岸地域の特性を生かした産業振興にも鋭意取り組んできておりますが、なかなか成果に結びついているように感じられないのはまことに残念であります。その原因は、地域の熱意が不足しているためでしょうか、人材不足でしょうか、交通体系の問題でしょうか、具体的に何が問題となっているのでしょうか。
 県内各自治体間の競争もますます激化しており、施策推進には一層のスピード感が求められておりますし、ここは県北・沿岸振興施策として大きな財源を投入し、各自治体に目玉となる事業を一つでも打ち出し、それを呼び水に施策展開を図るべきではないでしょうか。県北・沿岸地域における産業振興と雇用対策の課題、問題点をどのように分析されているのか、その分析をもとに、今後どのような支援が必要となっているとお考えなのか、県北・沿岸振興本部長であり、実際に県北・沿岸地域に勤務した経験をお持ちの宮舘副知事に伺います。
 また、県初め各市町村は、企業誘致を通じて雇用確保を図ることを期待しておりますが、基本は、地元の企業、産業界を月1回でも年1回でも訪問し、その企業の実態、内容、将来への考え方を直接聞いて歩くことではないでしょうか。地元企業の生産実態を詳しく理解して初めて付加価値をつけるための2次・3次加工や他産業との連携について指導助言ができると思います。現実に企業を経営しているトップ、特に中小企業のトップが今、何に悩み、将来をどのように分析しているかを聞くことが行政として最も不足しているものと思われますが、いかがでしょうか。
 次に、防災、減災対策について伺います。
 本年6月14日、震度6強の岩手・宮城内陸地震が、そして7月24日には沿岸北部地震が発生し、それぞれ大きな被害に見舞われ、いまだに自宅に戻れずに仮住まいを余儀なくされている14世帯39人の御家族のためにも復旧作業が急がれております。
 岩手・宮城内陸地震では、孤立した住民を避難させるため、発生当日だけで五十数機のヘリコプターが活躍しましたが、離着陸場が少ないため、空中からロープによって救出されている映像に、多くの県民は手に汗を握り、祈るような思いだったに違いありません。また、多くの消防関係者やDMATが災害医療面で活躍されましたが、特にDMATの実際の活動では、情報伝達を含め多くの課題が指摘されております。医療と消防等との連携を中心とした災害医療の仕組みを今後具体的にどのように整備しようとしているのか伺います。
 去る48年前の昭和35年5月24日、チリ地震津波が本県沿岸部を襲い、大きな被害をもたらしました。今、沿岸地域住民の最大の懸念は宮城県沖地震対策であります。防波堤の建設などハード面の施設整備も進められておりますが、いまだ十分ではなく、自主防災組織率は改善されてきておりますが、さらなる啓蒙活動が必要と思われます。
 万一の場合は自治体相互のアクセスも寸断され、沿岸部が互いに支援することは不可能に近いと想定されます。こうしたことを踏まえ、沿岸部の各市町村と遠野市は、沿岸部等の災害時に備える後方支援拠点施設を遠野市に構築するよう求めております。災害発生後の救命救急医療体制を含め、迅速な救援、情報収集はもちろん、被災地を統括する指令機能、物資、資材の備蓄等、支援機関の中継基地の役割を果たすためには、沿岸と内陸の中間に位置し、しかも地盤が強固な遠野市に拠点施設を設置すれば県内各地の災害時の後方支援活動に適していると考えるものです。
 今年度から国、県、関係機関への提案活動を本格化させておりますが、岩手県としてこの後方支援拠点施設整備構想を国に働きかけ、早期に実現すべきと考えますが、御所見を伺います。
 また県は、相次いだ大地震を教訓に、9月、10月を耐震改修促進月間と位置づけ、住民や市町村への意識啓発に力を入れております。特に、小・中・高等学校や保育所、幼稚園のように日中子供たちが大勢集まる施設の耐震化が急がれますが、文部科学省調査によると、本年4月1日現在、本県の公立小・中学校の耐震化率は62.8%と発表されております。また、公立小・中学校の149棟の施設が危険性が高いと指摘されており、早急に改修しなければなりませんが、県立高校や公立小・中学校の耐震診断結果をどうとらえ、今後どのように耐震化を進めていかれるお考えでしょうか、お示しください。
 次に、県漁業担い手育成ビジョンの取り組みについて伺います。
 県の試算では、現在の漁業者数は高齢化と後継者難で10年後には半減し、漁村は危機的な状況に陥り、漁村社会が継続できなくなるおそれが想定されると伺っております。こうした危機感を踏まえ、一昨年から特に養殖業の生産力回復に向けて各漁協の地域営漁計画の取り組みが動き出しており、平成19年度までに、県内27漁協のうち、養殖業が盛んな21漁協すべてが地域営漁計画を策定して取り組まれていると伺っております。
 この取り組みは、漁協みずからが具体的な取り組み事項と目標を掲げ、一つに、漁場の生産性の回復、二つに、担い手対策、三つに、水産物の付加価値向上と販売対策の3項目について進めるものと伺っております。県は、利用されていない漁場を解消するため、養殖施設の整備等の支援を行うこととなっていますが、現在までの各漁協における地域営漁計画の取り組み状況と、これまでに明らかになった課題があればお示しください。
 また、水産物においては、小売価格に占める生産者の受け取り割合は24%にすぎず、農産物の平均44%より大幅に低くなっております。水産物は、その流通が多段階に分かれてコストがかさんでいると言われており、流通対策は漁業者の収入確保に直結する切実な問題と分析されておりますが、県は、県内漁協が地域営漁計画に定める水産物の付加価値向上と販売対策と流通対策をどのように結びつけようとしているのか伺います。
 漁業者の高齢化が進み、60歳以上の男子就業者が45%を超え、体力的に養殖業に取り組める人が少なくなってきております。こうした中で、県漁業担い手育成ビジョンは、強い担い手の育成と若者の就業意欲や機会の拡大を目指しており、その実現には漁業者の意識改革も求められます。
 また県は、各地域で経営規模の拡大や協業化を進め、平成15年に沿岸漁家1経営体当たり378万円だった年間生産額を平成22年には660万円に引き上げる目標設定で取り組まれております。そのためには、行政、漁協、漁業者の連携とコンセンサスが必要ですが、燃油高騰、高齢化など厳しい状況の中、目標達成の見通しと今後の課題をどのようにとらえておられるか伺います。
 以上で私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 平沼健議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、財政健全化の指標についてでありますが、本県の財政運営に当たっては、財政健全化法によって導入された4指標も重要でありますが、将来の財政負担を抑え、安定的に持続できる財政運営を行っていく観点から、県債残高の規模を現状以上に増加させないことが特に重要であると考えております。
 そのため、近年、プライマリーバランスの均衡を目指した取り組みを行っており、平成6年度の約6、000億円から、10年後の平成15年度には約1兆4、000億円まで急増した県債残高が、その後の5年間においてはおおむね同規模で推移しているところであります。
 この県債残高については、災害復旧のための県債増発が必要となる場合や、国の予算や地方財政対策の結果として、交付税の身がわりとなる県債の増発を余儀なくされる場合などにおいては、その増加分について、単純に投資的経費を抑制することによって、無理に短期的なプライマリーバランスの均衡を保とうとすることは、県の予算編成のあり方として適当ではないケースもあり得ることから、そうした状況の変化には慎重かつ柔軟に対応しながら、中期的に1兆4、000億円程度という県債残高の規模を増大させないことを基本的な方針としていきたいと考えておりまして、その意味で、プライマリーバランスを今後とも重視していきたいと思います。
 次に、中期財政見通しについてでありますが、本県の財政は、4、400億円規模の一般財源のうち、地方交付税が2、300億円を占めているなど、国の予算や地方財政制度改革の動向の影響を極めて大きく受ける構造となっておりますことから、特に、歳入面について確たる見通しを示すことには一定の困難が伴うものであり、2月に公表した中期財政見通しにおいても、平成20年度の仕組みを横置きしつつ歳入を試算したものであります。
 来年度の地方交付税について見ても、現時点での総務省の仮試算では対前年約6、000億円の減となっていることに対し、全国知事会等で地方交付税の復元・増額に向けた国への働きかけが展開されているなど、流動的な状況であり、さらに、平成22年度以降については具体的な予測が困難な状況であります。
 このように国の地方財政対策に係る今後の見通しが極めて不透明であることや、県内経済の動向とそれに伴う税収の動きについても長期にわたる具体的な見通しを立てることには限界があること、さらには、歳出面でも、社会保障制度の今後の動向など多くの変動要因があり得ることなどから、現状においては、より長期の財政見通しを具体的に示すことは難しいのですけれども、国への必要な働きかけや状況変化への適切な対応を怠りなく行いながら、中長期的に持続可能な財政運営を進めてまいりたいと考えます。
 次に、広域振興局のあり方に対する地域住民の意見についてでありますが、これまでパブリックコメントなどでいただいた400件余りの御意見のうち、その主なものとしましては、広域振興局体制移行後における県北・沿岸振興については、重点的な予算配分や人員配置を行うべき。行政センター化された場合、住民サービスの利便性が低下しないようにすべき。地域で果たす役割が大きい保健所や農業改良普及センターは維持すべきといったことでありました。
 広域振興局の移行に当たっては、これら意見を踏まえて検討を続けてまいりますが、今後とも広く県民から御意見をちょうだいし、検討に生かしてまいりたいと思います。
 次に、県南広域振興局の検証への指摘についてでありますが、管内市町長や住民の方々からは、権限移譲などにより市町の行財政基盤が強化されたことや県南圏域の産業振興戦略が策定され、意欲的に事業を推進しているとの評価をいただく一方、広域振興局の本局、総合支局、行政センターの役割・業務分担がわかりにくく、また、市町との事務手続が繁雑となっているといった御意見をいただいたところであります。
 このようなことから、今後、例えば総合支局を行政センター化して組織を簡素化し、原則として本局に業務を集約する一方、県民に身近な業務は行政センターが担うこととし、地域経営の重要なパートナーである市町村との連携についても強化するなど、改善してまいりたいと思います。
 次に、地域医療への危機感についてでありますが、私は、知事就任以来、本県の地域医療を取り巻く現状は非常に深刻な問題と痛感し、いわて希望創造プランの重点目標として地域医療の確保を位置づけ、各般の取り組みを進めてきたところであります。
 こうした中、これまでの医師確保対策アクションプランに基づく取り組み等が一定の成果につながり、県内の医師数が、平成16年2、499人から平成18年2、569人と70人増加し、人口10万人当たりの医師数の達成度に前進を見たところではありますが、一方において、県央部以外の地域については十分に改善されていないところもあり、本県の地域医療の現状は、依然として厳しい状況にあるものと認識しております。
 このため、引き続き希望創造プランに基づく取り組みをより強力に推し進め、臨床研修医の受け入れ拡大と定着、即戦力医師の招聘、岩手医科大学医学部の定員増に対応した地域枠の拡大などの取り組みにより、医師の絶対数をふやすとともに、医療計画に基づき、各疾病に対応した医療機関の機能分担とネットワーク化を進め、地域医療体制の確保に努めてまいりたいと考えます。
 次に、県立病院の広域基幹病院における専門医の実態についてでありますが、宮古病院などの9広域基幹病院のうち、循環器科では7病院に3人から5人、合計24人が配置されていますが、宮古病院や花巻厚生病院では不在となっています。
 また、脳神経外科では8病院に2人から4人、合計で23人が配置されていますが、北上病院では不在の状況にございます。
 そのように、一部の広域基幹病院においては、循環器科や脳神経外科等の専門の医師が十分確保できていない状況にあると認識しております。
 次に、医師の地域遍在の解消と地域開業医との連携についてでありますが、このような医師不足や医師の地域遍在に対応するため、センター病院である中央病院を中心に、1カ月以上の単位で交代で異動させる広域人事異動システムの活用や、病院間の診療応援の充実などに取り組んでいます。
 また、すべての県立病院に地域医療福祉連携室を設置して、紹介患者の受け入れと患者の逆紹介を推進していますほか、必要に応じて地域の開業医等から診療応援を受けるなど、県立病院と開業医との役割分担と連携を積極的に推進しております。
 今後も関係大学に強く働きかけるなど医師の確保に努めるとともに、地域の開業医とも連携しながら、地域における医師の確保に一層努めてまいりたいと考えます。
 次に、救急搬送の実態についてでありますが、消防の管轄区域外への救急搬送については、県内3カ所の救命救急センターへ重症者を搬送する場合がありますことから、一定程度生じるものと認識しております。
 管轄区域外への搬送の割合を全国と比較しますと、平成18年度の本県の割合が7.1%であるのに対し、全国平均は15.8%となっており、本県では、地域医療を取り巻く厳しい環境の中でも、医療と消防の連携によって、二次救急医療が二次医療圏域内でほぼ完結されているものと考えています。
 なお、防災ヘリの救急出動件数の増加は、山岳地帯での事故や病院間での患者転送等への防災ヘリの要請が増加したことによるものでございます。
 今後とも、引き続き、中核的な病院への専門医の集約などにより、二次、三次救急医療体制の確保に努めながら、医療と消防の一層の連携による救急搬送体制を確保してまいりたいと考えます。
 次に、ドクターヘリの導入についてでありますが、これまでもヘリポートの整備や専任スタッフの確保等の課題について検討してきたところでありますが、今年度は、さらに、本県への導入可能性を精査するため調査を実施しているところです。
 本年度は、これまでに先進地の調査を行い、患者搬送先として救急現場近隣の二次・三次救急医療機関との連携体制が重要であることや、山間部などで舗装されたヘリポートが地元市町村によって整備されており、ドクターヘリの機動的、効率的な運航に極めて有効であることなど、本県へのドクターヘリ導入可能性の検討に有用な情報を収集できたところです。
 また、防災ヘリを用いて模擬飛行調査を実施し、救急現場での治療開始までの時間、現地から救急医療機関への搬送時間の短縮効果を確認したところであり、今後さらに、消防機関の救急搬送情報も得て、時間短縮効果をさらに検証することとしています。
 今後、これまで課題とされてきたヘリポートの整備や専任スタッフの確保なども含め、さまざまなケースを想定しながら、ドクターヘリの導入可能性の調査に引き続き取り組んでまいりたいと考えます。
 その他のお尋ねにつきましては、副知事及び関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔副知事宮舘壽喜君登壇〕
〇副知事(宮舘壽喜君) 県北・沿岸地域における産業振興と雇用対策の課題、問題点についてでありますが、県北・沿岸圏域は、他圏域に比べて雇用吸収力の高い製造業の集積度合いが少なく、求人が不足している状況にあり、また、すぐれた農林水産物や観光資源を有しているものの、これらの地域資源を生かした取り組みが必ずしも十分でなかったものと考えております。
 こうしたことから、平成18年度に県北・沿岸圏域の産業振興の基本方向を策定し、鋭意、県北・沿岸振興に取り組んできておりますが、最近では、例えば、地域の若者が生産者と一体となってITを活用し、三陸のとれたての水産物の販路開拓に取り組むなど、新たな動きも見られるところであります。
 しかし、一方で、施策を推進していく上で顕在化してきた課題もありまして、ものづくり産業にあっては、働き手として期待される若年層が流出していること、観光にあっては、圏域や県境を超えた広域的な観光の展開や、ことしの場合は、特に地震による風評被害からの早急なる回復が必要なこと、三陸沿岸に立地している海洋関係研究機関の連携強化や水産加工物の高付加価値化のため、より一層の産学官の連携が必要なことなどが挙げられると考えております。
 これらの課題に対しまして、ものづくり産業にあっては、県北・沿岸圏域において他の圏域より高い補助率を設定している企業立地促進奨励事業費補助などの活用による企業誘致や企業の事業拡大への支援に加えて、キャリア教育などによる産業人材の育成を図ること。観光にあっては、この7月に新たに設置いたしました、いわて沿岸広域観光推進会議などによる八戸圏域や県内陸部との連携による広域的な観光の展開や、官民一体となった首都圏での誘客活動による風評被害対策の実施。また、三陸沿岸の豊富な資源を生かし、海洋関連産業の集積を図るための関係研究機関ネットワークの構築や、この5月に新たに設置いたしました、いわて海洋バイオテクノロジー研究会などによる調査研究の推進など、新たな振興施策も展開しながら、県北・沿岸圏域の産業振興、雇用の創出に努めてまいる考えであります。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) まず、財源対策についてでございますが、主要3基金につきましては、平成22年度までの中期財政見通しにおきまして、財源対策として計画的に活用させていただく考えでございまして、このことにより今後の財政運営を進める上での備えがその分弱くならざるを得ないという点については、否めないものであると存じます。
 また、今後、災害等の不測の事態が生じた場合などにおきましては、国からの財政支援や災害復旧事業債などの財政措置を最大限活用するなど、あらゆる手だてを講じて対処してまいりたいと考えておりまして、また、単年度の収支ギャップが見込まれる場合には、中期的な財政見通しに立ちながら、年度ごとの予算編成や執行過程におきまして、適切に財源対策及び節減対策を講じてまいりたいと存じます。
 なお、本県のみならず、地方のほとんどの団体で基金が枯渇する状況にあるところでございまして、これは、地方交付税などによる国の地方財政対策が十分に行われていないためであると考えられますことから、今後、地方交付税等が増額確保され、基金の取り崩しや起債に頼ることのない財政運営が可能となるよう、強く国に訴えていく考えであります。
 このような全国知事会などとも連携した国に対する働きかけもありまして、平成20年度の地方財政対策におきましては、地方再生対策費の創設などによりまして、数年ぶりに地方交付税総額が前年度よりも増額となったところであり、こうした制度改善への取り組みにつきましては、財源対策の観点からも、各年度において今後も必要であり、また実現させねばならないものと考えているところであります。その意味で、中期財政見通しにおきましては、平成21年度以降の各年度に、制度改正による期待する効果額として20億円ずつを盛り込んでいるものでございます。
 これに向けて鋭意努力してまいりたいと存じます。
 次に、後方支援拠点施設整備構想についてでありますが、先般、三陸地域地震災害後方支援拠点施設整備推進協議会から、遠野市への後方支援拠点施設整備構想について提案をいただいたところであります。
 この提案に関しては、当面、国が自治体に2分の1を補助する地域防災拠点施設整備モデル事業の仕組みの中で、後方支援拠点施設というカテゴリーを追加することが可能か、その可能性を問い合わせる等の対応を行っているところでございます。
 今後の具体化に向けましては、施設の機能・内容などに加え、平時の用途や活用主体のあり方、さらには、一定の地元負担が見込まれることにどう対応していくのかなど、検討を要する点も多いと認識しておりますことから、引き続き、地元市町村から構想の具体化に向けたアイデアや協議・検討状況などを教えていただきながら、その進捗に応じて、国との連絡調整を進めてまいりたいと存じます。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) まず、県内市町村の財政状況についてでありますが、健全化判断比率四つの指標につきましては、いずれの市町村も早期健全化基準を下回る算定結果となり、各市町村における行財政改革への取り組みやプライマリーバランスを考慮した財政運営などの努力が反映されたものと考えております。
 しかしながら、最近の財政状況を見ますと、地方交付税が年々減少する中で、扶助費、公債費等の義務的経費、公営企業への繰出金等が増加した結果、基金残高が平成19年度末で716億円と、ピーク時、これは平成5年度に1、166億円ほどございましたけれども、その約6割の水準まで落ち込むなど、依然として基金の取り崩しに依存した極めて厳しい財政状況にあるものと認識いたしております。
 県としては、これら健全化判断比率も活用しながら、今後、他県の市町村との比較・分析も行うなど、市町村財政の見える化、健全化が一層推進されるよう、市町村行財政ドック等を通じて必要な助言を行ってまいる考えであります。
 次に、分権時代に対応できる市町村職員の人材育成についてでありますが、分権時代において、市町村が住民に身近な基礎自治体として、自己決定・自己責任の原則のもと、真に自立した行政運営を行うことができるためには、職員一人一人がみずからの使命をしっかりと自覚して、その責任を十分果たし得るよう、より一層の資質の向上を図る必要があり、市町村は、首長のリーダーシップのもと、人材育成へのビジョンを持ち、みずから積極的に研修の充実などを図る必要があります。
 県としては、市町村職員の資質の向上に向けた取り組みに対する支援の一環として、市町村の職員がみずから所属する市町村を、より広い視野で客観視することができるよう、県と市町村との間での職員の人事交流をより積極的に行ってまいりたいと考えております。
 また、移行後の広域局体制におきましては、本局への業務集約により確保した職員を市町村支援の強化のために重点配置するとともに、県と市町村の職員が、職務を通じて互いに資質を高めていけるような仕組みづくりについても検討してまいりたいと考えております。
 次に、権限移譲についてでありますが、権限移譲に伴う事務処理に要する経費につきましては、地方財政法第28条の規定により、市町村事務処理交付金として、事務処理の実績に応じて所要額を全額措置しているところであります。
 具体的には、県における標準的な処理状況を踏まえまして、個別事務ごとに、地方交付税の基準財政需要算定額による職員単価に基づく人件費、消耗品や通信運搬費などの事務費、新たに移譲する1法令ごとに事前準備経費として交付する初年度調整費により算定しておりまして、平成19年度実績では5、200万円余りを交付しているところであります。
 市町村からの要望につきましては、職員体制に応じた移譲や移譲後のフォロー体制など、受け入れ側の体制に応じた支援などの要請があるところでございます。
 このため、この3月に策定いたしました岩手県権限移譲等推進計画に基づき、移譲を希望する事務権限や移譲年度、研修の方法などにつきまして、具体的に協議を行いまして、市町村の実情を踏まえた権限移譲推進プログラムの策定を進めているところであります。
 今後とも、住民本位の行政サービスが提供できるよう、市町村との適切な役割分担のもと、市町村行政の総合性を高める権限移譲に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、広域振興局、行政センターへの権限移譲についてでありますが、平成18年4月に県南広域振興局が発足した際に本庁から移管した事務に加え、県民や市町村の利便性等を勘案し、できるだけ広域振興局の業務の完結性を高めるため、現場主義や業務に応じた専門性・効率性の確保といった視点も踏まえつつ、本庁から一層業務を移管する方向で検討を進めているところであります。
 一方で、全県的統一性や本庁機能の一層の強化の要請などにも配慮しながら、広域局から本庁への業務の集約もあわせて実施することとしております。
 広域振興局に移管することが適当な業務や権限につきましては、これまでの全庁的な業務仕分けに加え、さらに振興局や市町村との意見交換も行っておりまして、その結果を踏まえ、本庁、広域振興局の本局、行政センターの間で適切な配分となるよう取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、広域振興局本局への集約による影響についてでありますが、この業務の集約によって行政センター化される地域は、人的体制の見直しなどによりまして、市町村長や住民の間で県民サービスの低下や地域経済への影響を懸念する声があることは認識いたしているところでありますが、これまで地方振興局等が担ってきた役割にかんがみ、サービスの受け手に近いところで実施することが効果的なものは行政センターで行うなど、地域特性にも配慮しながら、地域への行政サービスを極力維持できるよう努めていく考えであります。
 特にも、御指摘のあった農業普及員や水産業普及指導員につきましては、農業者や水産業者に直接接しながら普及業務を行っておりますが、今後も、1次産業の振興を図る上で、地域の大きな期待が寄せられているものと認識しております。このため、広域振興局体制のもとでも、引き続き現場に密着した普及業務が効果的・効率的に展開できるような体制を確保できるよう検討してまいります。
 また、広域振興局体制への移行に伴う地域経済への影響につきましては、できるだけ最小限にとどめるよう配慮するとともに、広域振興圏全体の地域振興策を展開する中で対処する方向で検討してまいる考えであります。
   〔商工労働観光部長廣田淳君登壇〕
〇商工労働観光部長(廣田淳君) 地元企業の実態の理解についてでありますが、産業を振興していく上で最も基本となることは、企業の現場に赴き、直接経営者の方の話に耳を傾け、抱えている課題を実感した上で、それが解決できるような施策に取り組んでいくことであると考えております。
 県としましては、これまで、商工会議所や商工会と知事との懇談会での意見交換や各振興局におけるものづくりネットワークでの各企業との情報交換を初め、私以下職員も、可能な限り県内の商工団体や企業等を訪問するなど、さまざまな機会を通じて、直接企業の声を聞き、その実態の把握に努めてきたところであります。
 今後におきましても、引き続き、本庁、振興局、市町村が一体となり、各種経営相談や各企業への訪問など、あらゆる機会を通じて個別の企業や地域の産業界の実情を把握し、必要な施策に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔保健福祉部長岩渕良昭君登壇〕
〇保健福祉部長(岩渕良昭君) DMATを初めとした医療と消防等との連携についてでありますが、災害医療体制の充実を図るため、本年7月に、災害拠点病院及び消防、警察等の関係機関で構成する岩手県災害拠点病院連絡協議会を設置し、具体的な仕組みづくりに着手したところであります。
 現在、協議会に専門部会を設置して、県災害対策本部のDMATに対する指揮命令及び統制のあり方や災害現場におけるDMATと市町村災害対策本部、消防、警察等との情報共有及び連携のあり方、さらには広域搬送体制の構築のほか、DMATが災害拠点病院等で活動する場合の当該病院との役割分担などについて、詳細な検討を行っているところであります。
 県といたしましては、今後さらに検討を重ね、今年度中にDMATの運営要綱等を策定し、災害医療体制の仕組みを構築してまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) まず、地域営漁計画の取り組み状況についてでございますが、地域営漁計画を策定した21の漁協では、現在、この計画に基づき、県単事業を活用した養殖漁場の再編整備や早採りワカメの産地づくり、ワカメ養殖の協業化や経営規模拡大、さらには、国の交付金事業を活用した加工施設の整備やミニホタテガイの量販店への販路拡大などに取り組んでいるところでございます。
 こうした地域営漁計画の実行をさらに促進していくためには、漁業者の意欲の醸成とともに所得の向上を図ることが課題であると考えており、今後とも、漁協や市町村と連携を図りながら、現地での研修会の開催などにより、漁業者の意識啓発に努めるとともに、生産体制の整備や水産物の高付加価値化に向けた取り組みを積極的に支援してまいりたいと考えております。
 次に、水産物の流通対策についてでございますが、漁業者の所得向上を図るためには、生産対策とあわせて、水産物の高付加価値化や販路開拓に積極的に取り組むことが重要であると考えております。
 このようなことから、県内各漁協が策定した地域営漁計画におきましては、漁協の流通加工施設の整備や漁業者による朝市等の開催、さらには量販店との直接取引など、生産と加工流通の連携強化を掲げているところでございます。
 県といたしましては、今後とも、地域営漁計画に基づき取り組まれる国の交付金事業等を活用した流通加工施設の整備、漁協と水産加工業者等とのマッチング、ワカメなどの契約栽培の促進、さらには産学官連携による新商品の開発などを積極的に支援することにより、水産物の高付加価値化と販路拡大を図り、漁業者の所得向上に努めてまいります。
 次に、漁業担い手育成ビジョンの目標達成についてでございますが、最近の国際的な水産物の需要拡大等を背景とした秋サケや養殖ワカメの価格上昇などもございまして、平成18年度の沿岸漁家1経営体当たりの生産額は420万円と、ビジョンの基準年の平成15年に比べ約1割増加しているところでございます。
 一方、漁業を取り巻く環境は、担い手の高齢化と減少、さらには最近の燃油価格の高騰など依然として厳しい状況が続いており、ビジョンの実現に向けては、今後とも担い手の経営規模の拡大や産地の販売力の強化が重要であると考えております。
 このため、今後は、引き続き市町村との連携のもと、漁協の地域営漁計画の実行を積極的に支援し、担い手の確保・育成を図るとともに、水産加工業者等との連携強化による水産物の高付加価値化やマーケティングの強化などに取り組み、ビジョンの目標達成に努めてまいります。
   〔教育長法貴敬君登壇〕
〇教育長(法貴敬君) 県立学校や公立小・中学校の耐震化についてでありますが、公立学校施設は児童生徒が1日の大半を過ごす活動の場であるとともに、災害発生時においては地域住民の応急避難場所になるなど地域の防災拠点としても大事な役割を担っており、その安全性の確保は極めて重要であると考えております。
 平成20年6月20日に文部科学省において公表した本年4月1日現在の耐震化の状況等によりますと、県内の公立の高校や小・中学校の建物のうち、耐震性のない建物が738棟で、このうち、第2次診断等の結果、大規模な地震により倒壊し、または崩壊の危険性が高いとされるIs値―構造耐震指数0.3未満の建物が66棟となっており、早期に耐震化を図る必要があります。
 また、第2次診断を要する建物があるなど、早期の対応が求められております。
 国では、本年6月、地震防災対策特別措置法の一部を改正し、国庫補助率のかさ上げなどの特例措置を講ずるとともに、今国会に提案されている平成20年度政府補正予算案に学校の耐震化のための経費を盛り込むなど、公立学校施設の耐震化を一層進めることとしていることから、本県においても、これまで以上に耐震化の促進に取り組み、学校施設の安全化に努めてまいりたいと考えております。
〇副議長(佐々木大和君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時52分 休憩
出席議員(45名)
1  番 木 村 幸 弘 君
2  番 久 保 孝 喜 君
3  番 小 西 和 子 君
4  番 工 藤 勝 博 君
5  番 岩 渕   誠 君
6  番 郷右近   浩 君
7  番 高 橋   元 君
8  番 喜 多 正 敏 君
9  番 高 橋 昌 造 君
10  番 菅 原 一 敏 君
11  番 小野寺 有 一 君
12  番 熊 谷   泉 君
14  番 高 橋 博 之 君
15  番 亀卦川 富 夫 君
16  番 中 平   均 君
17  番 五日市   王 君
18  番 関 根 敏 伸 君
19  番 三 浦 陽 子 君
20  番 小田島 峰 雄 君
21  番 高 橋 比奈子 君
22  番 高 橋 雪 文 君
23  番 嵯 峨 壱 朗 君
25  番 飯 澤   匡 君
26  番 田 村   誠 君
27  番 大 宮 惇 幸 君
28  番 千 葉 康一郎 君
29  番 新居田 弘 文 君
30  番 工 藤 大 輔 君
31  番 佐々木 順 一 君
32  番 佐々木   博 君
33  番 工 藤 勝 子 君
34  番 平 沼   健 君
35  番 樋 下 正 信 君
36  番 柳 村 岩 見 君
37  番 阿 部 富 雄 君
38  番 斉 藤   信 君
39  番 吉 田 洋 治 君
40  番 及 川 幸 子 君
41  番 佐々木 一 榮 君
42  番 伊 藤 勢 至 君
43  番 渡 辺 幸 貫 君
44  番 小野寺 研 一 君
46  番 佐々木 大 和 君
47  番 菊 池   勲 君
48  番 小野寺   好 君
欠席議員(2名)
24  番 及 川 あつし 君
45  番 千 葉   伝 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後4時9分 再開
〇議長(渡辺幸貫君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。田村誠君。
   〔26番田村誠君登壇〕(拍手)

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