平成18年2月定例会 第18回岩手県議会定例会会議録

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〇43番(高橋賢輔君) 民主・県民会議の高橋賢輔でございます。
 質問に先立ち、数十年ぶりの大雪により、家屋の倒壊を初め、農業施設などへの甚大な被害を受けられました県民の皆様に対して、心からお見舞い申し上げますとともに、不幸にしてお亡くなりになられました方々に対しても、謹んでお悔やみ申し上げ、御冥福をお祈り申し上げます。
 さて、本県は昨年、人口が140万人を割ることとなり、人口の減少時代に入りました。さらには高齢化も進み、これからの県土づくりや地域づくりが問われるところであります。
 増田県政が誕生して今年が3期目最後の仕上げの年となるわけでありますが、知事は、地方分権という大きなうねりの中で県政のかじ取り役を担い、自立をキーワードに改革を進めてきたわけでありますが、実際、足元の県政は、難問が山積しているのが実情であります。知事の言う自立は、この1年で何を果たせるのでしょうか。
 大分前のことになりますが、ある新聞報道で知事のことを、官僚からすぐ知事になったことへの弱点に触れていたことが今思い出されます。ある関係者が、増田さんはなかなか言葉が華麗だ、言葉の使い方にすぐれているとも話しているのを耳にしたことがあります。知事の場合、耳当たりはよいが、具体的に裏づけるものが見えてこないというのがもっぱらの評価であります。
 残りの任期の間にやり遂げなければならないことがたくさんあるように思いますが、どのように進めてまいられるのか、真意のほどをお伺いいたします。
 次に、平成18年度予算についてお伺いいたします。
 県の2006年の当初予算案は、前年度当初を3.6%下回る7、398億6、228万円余となりました。歳出は、義務的経費がついに50%を超え窮屈な編成になっております。今さら申し上げるまでもなく、県民の生活を守るためには、今後、歳入増にもっと知恵を絞ることが求められてまいります。
 前年度比マイナスの予算編成は、これで5年連続になります。このままでいくと2007年度以降は毎年600億円弱の財源不足が見込まれます。ここ数年は、予算も現場主義を掲げてまいりましたが、部局主体の予算編成も一考を要するものと思われます。
 今後も縮小が想定される県予算は、今が転換する時期と思いますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 当初予算案は、基盤強化策として、産業振興、人づくり、人口減少社会への対応、地域力の発揮が明記されております。ここで重要なのは、本県の特性を生かした産業振興にあると思います。その中に、新規事業の特定区域産業活性化奨励事業費補助として予算5億円が見込まれておりますが、産業振興で所得増を図る最大の効果を上げることを期待します。
 また、新年度からは現行の9広域生活圏が、県北、県央、県南、沿岸の4広域振興圏に編成され、これに伴う新たな産業育成策も注目されますが、県は、企業誘致促進のためにどのような施策をお考えか、お伺いいたします。
 次に、雇用対策についてお伺いいたします。
 知事3期目のマニフェストに基づく40の政策の中に緊急に盛り込まれたのが雇用対策でありました。知事の直属組織として平成15年6月に総合雇用対策局が発足しました。期限つきだと記憶しておりますが、その後は期間を延長したようであります。
 その取り組みの成果はいかがだったのか、お尋ねいたします。
 ある県立高校が、雇用に関して卒業生300人に調査したところ、3カ月足らずで30人近くが離職したということです。問題なのは、就職内定率が改善されている一方で、離職率の高さが目立つということです。最近の高卒就職者の入社3年以内の離職者は平均で50%台を示しており、半数がやめているのが実情であります。1年目で離職する理由の大半は理想と現実のギャップにあるようでありますが、言うまでもなく、生徒の意識とともに、指導する側の力量が問われることも見逃せない事実であります。
 申し上げるまでもなく、雇用対策は産業政策と切り離せない問題であります。県は、自動車産業を中心としたものづくり産業の育成に力を入れ、雇用も徐々に改善してきたように思われますが、現実には、約5万人と言われる県内のフリーターは減っていないと考えられます。
 若者の職場定着に向け、平成18年度県予算においてはどのような対策があるのかお伺いいたします。
 次に、第三セクターの債務超過についてお伺いいたします。
 県内市町村が出資する第三セクターは、2004年度末で175法人あり、そのうち監査委員の監査が必要な市町村が25%以上出資する第三セクターは139法人あり、全体の79.4%を占めていますが、2004年度末で11法人が債務超過になると発表され、それによりますと、超過額が16億7、243万円にもなることが判明しております。
 中には増資や補助金で債務超過を解消しようとしているところもあるようですが、第三セクターの問題がさまざまな形で注目されている中で、今、市町村合併が急速に進められておりますが、これが合併に与える影響はないものか、はなはだ疑問であります。
 社会情勢が変化していく昨今において、第三セクターの事業を改めて見直していく時期が来ているように思いますが、当局の指導案についてもお考えをお示しください。
 次に、花巻空港整備の計画変更についてお伺いいたします。
 県は先ごろ、今年に予定していた花巻空港新ターミナルの着工を2年間延長することを決めました。これは、厳しい財政状況を踏まえての判断なようでありますが、これまでの流れから5年も先送りされる格好であります。
 これから、ビルの規模や経費を大幅縮小することを前提に検討することとしていますが、花巻空港ターミナルビル建設は、国際チャーター便強化などを主眼に利便性向上を図る計画だっただけに、今後のさまざまな分野への影響が心配されます。特に、空港整備促進に力を入れてきました産業界や観光や産業集積への影響を懸念しており、インランドデポ、内陸通関施設の設置促進を進めている中で空港充実が叫ばれていただけに、関係者をがっかりさせております。
 ターミナル地域は、既に整地や舗装など74.2%が終了しており、あとは建物を建てるだけという段階でという感じを強く抱くものでありますが、ここでの計画変更は、県の見通しの甘さと知事の責任が問われるものであります。知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、自動車産業支援についてお伺いいたします。
 本県の製造業の中で自動車産業の出荷額のウエートが年々高まっております。この背景には、金ケ崎町に立地するトヨタグループの関東自動車岩手工場が、東北地域初の組立工場として1993年に操業を始めたことがあり、これに伴う自動車部品メーカーが、北上市など周辺の工場団地に進出したことが挙げられます。
 同岩手工場は、今年に入って第2生産ラインが竣工、小型車の年産25万台体制が整いました。今後、同工場は、さらに年間生産能力を30万台に拡大する見通しが立ち、自動車産業は、本県の中核産業として一層の発展が期待されます。
 特に、地場産業においては、自動車産業に求められる高い技術水準や品質管理に対応できる企業が少ないことから、この産業の集積率を高めるための受け皿となる企業や人材の育成が不可欠であります。
 本県におきましても、県が岩手自動車産業集積プロジェクトを立ち上げ、地場産業の参入促進や高度技術者の養成に向けてさまざまな取り組みを開始していると聞いており、また、夏には宮城、山形を加えた3県から成る産学官連携組織の設立が予定されているやにも聞き及びますが、ぜひ、取り組みの強化によりこの産業が本県の主要産業として発展されますことを念ずるものであります。
 また、これらの輸送体制としてアクセスが取りざたされております。かつて国鉄の貨物の拠点として活躍した北上操車場を生かしてみるのも得策かと思います。そこで、自動車産業支援を進めるに当たり課題となるのは何か、支援策としてどのような対策をお考えなのか、お伺いいたします。
 次に、農業問題について何点かお伺いいたします。
 冒頭にも触れましたが、今冬の大雪による農業関係の被害状況は県内15市町村に及び、被害合計は1月26日現在で3億6、700万円となり、農業施設だけの被害を見ましても、昭和59年の被害額を上回り過去最大となりました。被災農家への対策として、農業共済金の早期支払いなどの支援策の状況とその進捗状況について、まずもってお尋ねいたします。
 昨年、国が、一定規模以上の農家に助成を集中する品目横断的な経営安定対策大綱を決定したことを受け、県や関係機関は、この制度の助成対象となる担い手の認定農業者や集落営農組織の育成強化に向けて動き出しております。
 大綱では、担い手の基準規定は、原則として認定農業者を柱とした、個別経営で4ヘクタール以上、集落営農組織は経理などの一元化を条件に20ヘクタール以上ですが、県内で営農耕地面積4ヘクタール以上の農家は2000年現在で4、600戸、全農家の6%ほど、経理を一元化した集落営農組織は現時点で24団体にしかすぎません。地域事情を考慮に入れ基準面積を5割の範囲内で引き下げられる特例を盛り込んでいるとは申せ、この制度には課題が多すぎるような気がしてなりません。来年度からこの制度が導入されますが、果たして国のねらいどおりに進むのか、はなはだ疑問であります。
 私の住む北上市でも、年明け後、行政区ごとの集落営農推進委員が中心となり座談会やアンケート調査などの動きがありますが、農家自体、この制度に対する理解に乏しく、当の認定農業者も、制度的には理解できても、あるいは集落営農組織が組織化されたとしても、現有の農業機械は既に古く、さりとて更新にはかなりの資金を必要とし、米価が低迷する現状では、課題が大きいと考えられます。そして、目先の助成だけにとらわれ、担い手の明確化や農業集落など突っ込んだ議論をするには、時間がなさ過ぎるとも聞いております。
 担い手となる新規就農者は減少を続けており、これからの10年、20年後を見据えれば、今ほど、かつての結いのような集落の支え合いが求められる時代はないと思います。例えば、今回農作業を請け負う受託組織も、一定条件を備えれば担い手となる道も開かれると聞いております。意欲のある担い手を育てていくための振興策について、お尋ねいたします。
 次に、岩手競馬の再建についてお伺いいたします。
 岩手競馬はこの1年、肥大化した組織や施設の縮小という方向で一定の成果を見ておりますが、当初予定していた2005年度の全日程を終了し、売り上げは286億5、400万円と前年比7.9%減、計画比4.3%減にとどまりました。
 県競馬組合は、特別競馬の追加開催により売上目標をほぼ達成するとされています。再建初年度として注目を集めました2005年度でしたが、売り上げの減少に歯どめがきかない結果だったのではないでしょうか。窮余の策として、今後、追加開催も予定されているようでありますが、果たして売り上げの減少傾向に歯どめがかかるか、注目されるところであります。
 入場者数は全体で前年比3.8%減、一方、各種イベント開催が功を奏し、盛岡競馬場は2%増、水沢は10%上回るなど健闘したようであります。しかし、2005年度は前年度より開催が6日多いと聞いておりますが、1日平均の売り上げは前年に比し12.3%減とさらに減少しそうな気配であり、今後において議論を呼びそうです。
 そこで組合は、前回に引き続き、今回も構成団体から37億円にも上る融資を求める旨の説明がありました。先行き不透明な時点でのこの融資は、組合の経営にどのような効果をもたらすとお考えでしょうか。今後の見通しを含めてお伺いいたします。
 次に、教育の充実についてお伺いいたします。
 県は、新年度予算案に小学校1年の35人以下学級の予算を盛り込みました。既に、少人数学級は生活面での効果が実証されておりますが、それに加え、個別に教える時間がふえた、授業に集中するようになったと、学習指導面、学力向上でも高い評価を得ております。
 県予算の中で教育が占める予算額は約1、527億6、500万円─教育委員会所管分─であり、前年度比で1.5%減っておりますが、県の一般会計に占める割合は20.6%で、前年度に比べてわずかではあるがふえております。
 来年度の教育予算のもう一つの柱となっているのが、高等学校教育への支援であります。県内の11の高等学校へ3、300万円を措置するというものであります。これは、医学部などの難関大学や専門知識を習得する大学への進学支援がねらいでありますが、各高等学校では、予備校のサテライト授業、情報通信技術を活用した遠隔授業の受信体制整備や教員の指導力向上などに取り組むとのことであります。
 ここで言う進学援助の目的については、議会で話し合われてきた経緯もありますが、将来の地域を担う医師や弁護士確保のための人材育成となり得るか、注目が集まるところであります。申し上げるまでもなく、緊縮財政の中、少人数学級導入を決断されました県の姿勢は高く評価するところでありますが、進学校だけに対する学力向上支援には、疑問が残るところであります。
 本県の高等学校における学力向上や人材育成について、将来を展望した基本的考え方をお示しください。
 次に、地震対策、防災対策についてお伺いいたします。
 阪神・淡路大震災から11年が経過しました。昨年、降ってわいたような耐震強度偽造事件が発生し、大きな社会問題となり、今、国全体、県民挙げての防災対策に対する関心がいや応なしに高まっています。
 先ごろ公表されました北海道から東北沖の太平洋を震源とする8種類の大規模地震を対象にした中央防災会議の被害想定では、明治三陸地震と同様の地震が起きたケースで、北海道から福島県沖の沿岸を最大で20メートル超の津波が襲い、本県を中心に9、400棟の建物が全壊、死者は2、700人に上ると想定、地震発生から津波到達まで30分を超える地域が多いことから、この間に迅速に避難する体制づくり、被害を受ける漁村などの孤立対策の充実とあわせ、冬場の積雪時の対策充実についても強く打ち出しております。一方、今後30年以内の発生確率が99%とされる宮城県沖地震と、本県で過去に被害甚大だった明治三陸、昭和三陸の三つの地震について津波シミュレーションを行い、それぞれ死者数や被害の規模を想定しています。
 明治29年の三陸地震、マグニチュード8.5では、発生から30分後に三陸沿岸を中心に約200キロの範囲で大津波が押し寄せ、大船渡で38.2メートルの最大津波を観測、本県の死者は1万8、158人、流失家屋5、527戸、流失・破壊船舶は5、456隻にも及んだと言います。こうした数字を見るにつけ、待ったなしの対策構築が必要と思われますが、予算措置とあわせてお尋ねいたします。
 関連して、自主防災組織についてお尋ねいたします。
 昨年秋に、両磐地区の消防組織が行った地震防災に関するアンケート調査の結果が公表されました。平成14年の調査に比べ、発生が確実視される宮城沖地震への不安が高まる一方で、家庭での具体的対策のおくれが浮き彫りになりました。総じて不安や関心を持つ人が増加傾向にある反面、備えが不十分とする回答が87%を占め、万が一を想定すれば、大きな不安が残ります。
 阪神・淡路大震災を契機に、県内でも地域コミュニティー単位で結成されている自主防災組織については、79%の人が必要と感じていますが、県内の平成17年初頭の平均組織率は59.6%で、全国平均を4.9%下回っています。県は、平成22年度までに全県の組織率を75%にすることを目標としていますが、組織率の低い自治体に対し、自主的な結成を図るよう指導を強化すべきと考えますが、知事のお考えをお伺いいたします。
 次に、中心市街地の活性化対策についてお伺いいたします。
 各地の商店街を車で通りかかりますと、以前にも増してシャッターで閉ざされた店舗が見受けられるような気がいたします。町並みの衰退がさらに進んでいるのです。
 昨年12月に県の中心市街地活性化研究会が行った生活者アンケートの結果が公表されました。アンケートでは、30ないし40代世代の実に77%が、現状の中心市街地について、魅力がないと指摘しています。また、買い物をする店については、中心商店街の一般商店の利用は、82.8%がほとんど利用しないと回答し、その理由として、買いたいものがない、入りにくい、値段が高いとしています。魅力がないから行かない、だから商店街は廃れる。この調査の結果は、重視しなければなりません。しかし、中心市街地に対する不満は大きいものの、町のあり方については、中心部のにぎわいを維持し、取り戻すべきだと54.3%と半数以上の人が答えています。中心市街地の活性化への期待は、やはり大きいと思うのであります。
 国は、市町村が大型店の新規立地等に伴う都市計画決定を行う際、都道府県知事が、広域調整の観点から周辺市町村の意見を聞き判断する制度を盛り込んだ都市計画法の改正案を通常国会に提出しています。
 中心市街地を再生するために進めてきたまちづくり三法の見直しの一環としてのことであり、延べ床面積1万平方メートルを超える大型店の郊外立地に対する規制が強化される見込みとなりました。立地は、原則として商業、近隣商業、準工業の3地域に限定されますが、限定されれば、岩手県において大型店が立地できる面積は、都市計画区域全体の約70%から2%に減るということであります。これにより郊外への大規模集客施設の出店に歯どめがかかるものと期待されるものであります。
 知恵を出し合い、先進事例に学び、昔のようなにぎわいの空間を呼び戻せたとするなら、どんなにかすばらしいことではないでしょうか。まちづくり三法見直し、遅きの感もありますが、知事の中心市街地活性化に対する御所見をお伺いいたします。
 次に、観光振興についてお伺いいたします。
 本県は、観光資源が豊富で、その資源の有効活用を図るべく、あるいは新たな観光資源の掘り起こしを進めるなど、官民挙げて県外からの誘客に努めているところでありますが、本県を訪れる国内観光客は、1996年をピークに伸び悩んでいるのが実態であります。
 一方、外国人観光客は増加傾向にあり、2004年には7万8、000人と10年前に比べて約3倍に増大しております。その内訳は、台湾など東アジアからの観光客が全体の85%と大多数を占めています。こうした背景には、東アジア諸国の所得水準が上昇し海外旅行者が増加していることに加え、国が、観光立国を目指し、外国人観光客の誘致を積極的に推進し、各県ともアジア地域からの誘客を活発化させていることなどがあるものと思われます。
 昨年5月から、本県でも、大連市に経済事務所を開設したのにあわせ、初めての相互チャーター便が運航されました。巨大市場中国の潜在需要に大いに期待が持てると思います。
 よく言われることでありますが、本県は、外国人旅行客にとって魅力となる観光資源を豊富に有していながら、訪日外国人旅行者調査による訪問率は他県に比べて低くなっており、その要因は、知名度不足のほか、外国人観光客に対する受け入れ態勢が十分でないからだとも言われます。今後は、青森、秋田両県や観光団体との連携をさらに強め、現地の旅行業者、マスコミなどへのPR活動をより積極的に行い、知名度の浸透を図る必要があると思います。
 また、観光客案内板への外国語表記や通訳ガイドの育成など、受け入れ態勢の整備促進を図るとともに、駅、空港など交通拠点からの二次交通の拡充といったインフラ整備が急務と思われます。
 今後大いに期待が持てる観光産業にあって、どう振興策に取り組んでいかれるのか、また、海外事務所をどう活用していくのか、あわせてお伺いいたします。
 終わります。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 高橋賢輔議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、任期最終年度における県政課題についてでございますが、私の役割は、自立に向けた政策を力強く推進できるように、過度に国に依存することのないしっかりとした行財政基盤をつくり上げるとともに、総合計画を推進するため、重点的に取り組んでまいりました40の政策の目標達成に向けて施策のより一層の選択と集中を進め、その総仕上げに全力を傾注することである、このように認識しております。
 自立した地域社会を実現するためには、確かな産業経済基盤を構築することが最も重要である、このように考えておりまして、4広域振興圏のスタートを契機として、自動車関連産業を核としたものづくり産業の集積の促進、産学官連携による新産業の創出、農林水産物のブランド強化、さらには滞在型観光の振興など、各地域が持つさまざまな資源を生かしながら、力強い地域産業の振興に取り組んでまいります。
 また、地域づくりは人づくりであるとの認識のもと、産学官のネットワークによるものづくり人材の育成や農林水産業の担い手の育成など、本県の産業経済を担う人づくりを進めるとともに、教員の指導力の向上や少人数教育の推進など学校教育の充実を図るほか、地域医療を担う医療系人材の確保・育成に向けた取り組みを強化いたします。
 こうしたこととあわせ、地域課題の解決のため、地域コミュニティーの力などを生かしたご近所介護ステーションの運営や、地域資源を生かした環境に優しい岩手型ペレットストーブの普及など、いわゆる地域力を最大限に生かした岩手ならではの取り組みが各地域で展開をされ、地域の誇りとして実を結ぶよう積極的に支援をしてまいります。
 同時に、岩手競馬の運営や肉牛生産公社、林業公社の経営など、顕在化している県政の重要課題についても、現時点で解決への確かな道筋をつけるべく、全力で取り組んでいく決意であります。
 次に、部局主体の予算編成の転換についてでございます。
 現在の政策的経費に係る予算調整方式は、財源を部局ごとに枠配分した上で、各部局内における優先順位を基本に予算化を図っておりまして、現場における迅速な対応が可能なシステムとなっております。一方で、部局での優先順位が県の施策全体としての優先順位と整合し切れていないこと、また、配分できる財源の制約が厳しく、部局枠の一律削減では対処し切れないことなどの課題がございまして、また、現在の評価システムについては、施策や事業の改善・改良を主眼とした手法となっていることから、評価結果が事業効果の薄い事業などのスクラップにつながりにくいこと、県政全般にわたる分野を越えての事業効果の高い施策・事業をこれまで以上に厳選していく必要があることなどの見直しに向けた課題がある、このように考えております。
 したがって、19年度以降の予算編成に当たっては、これらの課題を克服していくために部局枠配分方式を見直し、政策的経費に係る財源について、全庁的な優先度に基づき配分をする政策優先配分方式への転換や、事業などの改善・改良を指向した評価システムから、事業スクラップも見据えた評価システムへの移行といった予算編成手法の転換について、今後、見直しを行ってまいります。
 次に、企業誘致の促進についてでありますが、近年、半導体や自動車関連産業などを中心に、国内における設備投資が活発化してきており、これに呼応して工業団地や交通インフラなどの整備に加えて、大型の補助制度や新たな税の減免制度を創設し、これらを誘致促進のためのインセンティブとする自治体が増加するなど、活発な地域間競争が展開をされております。
 本県においても、こうした全国的な地域間競争に対応して、特色ある誘致施策を積極的に講じていく必要があると考えていることから、地域の中核となり得る企業や大型の工場の進出及び関連産業の集積を一層促進するため、今般、特定区域における産業の活性化に関する条例案を提出したところでございます。本条例におきましては、これまでに県内に蓄積された社会資本や各地域の特色ある産業集積などを最大限に活用しながら、県及び市町村の協働関係のもとに、県税及び市町村税の減免や大型企業立地に対応した新たな助成や融資の拡充強化に加えて、一連の行政手続の迅速な処理など、ワンストップ・サービス体制の整備充実に努めることなど、総合的な優遇措置を講ずることといたしております。今後、本制度の周知を広く図りながら、各広域振興圏において中核となる企業の誘致を一層促進してまいります。
 次に、総合雇用対策局の成果についてであります。この組織は、短期間で緊急的課題に対応するため、17年3月を期限に設置した経緯がございますが、総合雇用対策の確実な推進と、若年者の雇用環境が深刻な状況にあり、その就業支援に一層強化して取り組む必要があったことから、継続設置をしているものでございます。その結果、県総合雇用対策については、昨年末現在で雇用創出目標に対し93.2%を達成するなど、おおむね順調に推移をし、ジョブカフェモデル事業は、オープン以来、約6万7、000人の若者が利用し、うち約2、000人が就職に結びつくなど着実に成果をおさめており、18年度は新たに二戸地域にサテライト設置を計画するなど、地域の若者が気軽に相談できる環境づくりに努めてまいります。
 次に、若者の職場定着対策、いわゆる早期離職の問題は、若者自身のキャリア形成、企業の人材確保、あるいは産業人材育成の面からも好ましくないと認識をしておりまして、40の政策に早期離職率抑制の数値目標を掲げ、関係機関が連携して取り組んでいるところでございます。
 本県高卒者の就職後3年以内の離職率を見ますと、平成13年の3月卒業生は49.1%と減少傾向にございますが、就職1年目に離職する若者が多く、仕事が自分に合わないという就職のミスマッチの問題、仕事がつまらない、勤務条件、人間関係などが離職理由とされております。このように早期離職の問題は、若者自身の勤労意欲や職業意識のみに原因を求めるべきではなくて、学校における就職指導の問題や、企業における労務管理の問題などの要因が重なり合っておりまして、この対策には地域が一体となって若者を育てていく姿勢が重要でございます。このため、18年度におきましては、新たに小中高キャリア教育地域ぐるみ推進事業としてキャリア教育の充実を図りますほか、就職支援教員などの配置、さらにはジョブカフェと連携した就職内定者に対する社会人マナー習得やコミュニケーションスキルアップのための講座などを計画しておりまして、一人でも多くの若者の職場定着が図られ、地域の産業人材として定着するよう重点的に取り組んでまいります。
 次に、市町村の第三セクターについてでございます。県では、市町村が社会経済情勢の変化に対応した第三セクターや公的施設の使命・役割を改めて点検をいたしますとともに、財政運営に与える影響などを十分見極めながら、自主的・主体的な判断のもとに、第三セクター自体の廃止も含めた適切な対応を行うよう、情報提供や助言に努めてきたところでございます。特に、本年度におきましては、市町村において総務省の行政改革に関する新たな指針を踏まえて、統廃合、民間譲渡、完全民営化を含めた既存の第三セクターの見直しや、わかりやすい情報公開の積極的な実施などを盛り込んだ集中改革プランを策定・公表するよう助言を行っているところでございます。
 次に、いわて花巻空港整備の計画変更についてでございます。
 いわて花巻空港は、平成10年度から冬季就航率の向上などの機能強化を図るための整備を進めておりまして、昨年3月に2、500メートルに延長した滑走路を供用開始し、現在、滑走路の東側におきまして駐機場などのターミナル地域の整備を進めているところでございます。この新ターミナルは、ターミナル地域と一体で機能するものでございますが、基本的には県、関係市、航空会社などが出資をしております岩手県空港ターミナルビル株式会社が主体となって整備、運営していく施設でございますことから、整備に当たっては、将来にわたってビル会社の自立的な経営が見通せる計画であることが必要である、このように考えております。このため、空港の利用者数が伸び悩んでいる中で、県の財政が厳しい現状にあることや、昨年11月の大規模事業評価専門委員会の答申における岩手県空港ターミナルビル会社に対する県からの貸し付けのあり方については慎重に検討することといった附帯意見などを踏まえ、建設事業費の縮減や財源など整備計画を見直す必要があることから、整備時期を延期することとしたものでございます。
 次に、自動車産業支援における課題と支援策についてでございますが、現在、関東自動車工業岩手工場における東北域内からの部品調達率は4割程度にとどまっており、今後、調達率を向上させ、関連産業の集積を進めるためには、有力サプライヤーの誘致の推進及び地場企業の参入の一層の促進が大きな課題である、このように認識をしております。これらの諸課題に的確に対応するため、新たな取り組みとして、進出企業への大型補助金の導入や県税などの減免のほか、名古屋地区へコーディネーターを配置するなど、誘致活動を積極的に展開することとしております。また、生産工程の改善指導の拡充や北上の工業技術集積支援センターのスタッフの増員、サプライヤー企業から技術指導者の派遣を受け入れる場合の補助制度の創設など、地場企業の育成支援策を強化してまいります。さらに、地域ものづくりネットワークを立ち上げ、企業、学校、行政が一体となって、自動車関連産業などのニーズを踏まえたすぐれた人材を育成してまいります。
 なお、輸送面での北上操車場跡地の利用につきましては、現在、JR貨物と共同で、今後見込める貨物量などのアンケート調査を行っているところであり、今後、この結果を踏まえて貨物駅設置の可能性などを検討してまいります。
 次に、大雪による被災農家への支援策と進捗状況についてでございますが、農業共済金につきましては、現地確認が行われ、2月上旬から順次被災農家へ支払われているところでございます。また、春からの本格的な農作業に影響を来すことのないように、県単事業によるパイプハウス設置等への支援や、農地農業用施設災害復旧事業による農業用水路の復旧等については、年度内に着手をしてまいります。
 次に、担い手の育成についてでございますが、本県の農業は、先人からの知恵や技、結いの心を連綿と受け継ぎながら維持・発展をしておりまして、こうした地域力を基盤とした担い手の育成が何にも増して重要と考えております。このため、主業型農家の育成のみならず、集落での話し合いをもとに、小規模・兼業農家も役割を担う集落経営体の育成に精力的に取り組んでいるところであります。集落営農の組織化につきましては、制度への理解や集落における合意形成等が重要となりますので、新たに、これらを支援するコーディネーターの配置やアドバイザーの派遣などの支援体制を整備することとしております。私は、農業こそ最も岩手らしさや地域力を発揮できる産業、このように考えておりまして、これらをてこにして意欲と能力のある経営体を一つでも多く育成をしてまいります。
 次に、岩手県競馬組合についてであります。この岩手県競馬組合について、構成団体融資が経営にどのような効果をもたらすかについてでございますが、競馬組合がみずからを抜本的に改革し、岩手競馬の再生を目指す岩手県競馬組合改革改訂実行計画を策定し、改革に取り組んでいること、また、過年度の収支不足から一時借入金が増加し、16年度には金融機関から運営資金調達が困難となったことなどから、改訂実行計画を実現していくために必要な資金として、構成団体である県、当時の水沢市及び盛岡市が合わせて37億円の融資を行っているものでございます。この構成団体からの融資は、競馬組合が競馬事業を継続していくために必要不可欠な運営資金として活用されており、県としても18年度も継続して融資し、岩手競馬の再生を目指していきたいと考えております。
 また、今後の見通しについてでありますが、17年度で計画した資産処分、コスト削減、売り上げ達成が計画どおり達成できない状況であることや、18年度に向けた取り組みの準備状況も踏まえながら、改訂実行計画で18年度に計画した内容について、修正すべきは修正をし、18年度計画を立案したところでございます。18年度は、新たに取り組むインターネット発売の導入、新たなかけ式の追加、広域場外発売の拡大などを含め計画を確実に実行し、岩手競馬の再生の道筋がつけられるよう最善の努力を尽くしていく考えであります。
 一方、さきの競馬組合議会で改訂実行計画を見直すべきなどの御意見があり、また、計画と実績にずれが生じてきている部分もありますことから、競馬組合に対し、改訂実行計画の見直しの必要性について、構成団体も含めて議論を始めるよう指示をしたところでございます。18年度は岩手競馬の将来に向けた確固たる基盤をつくり上げる年と認識をしておりますので、計画の推進に万全を期し、岩手競馬の再生を図っていく考えであります。
 次に、学力向上や人材育成の基本的な考え方についてでございますが、私は、岩手に生まれ、そして育った人には、いつも大きな夢を持ち、どんな環境・状況にあっても強い信念と気概を持って、その夢の実現に向け粘り強くチャレンジし、新たな道を切り開いていく、そのような人物になることを期待しております。また、その岩手を担う子供たちを、そのようなたくましい人に育てることが私たちの最も重要な責務であり、そして郷土の発展に向けた基盤づくりであると考えます。そのためには、基礎・基本の確実な定着を図り、個性や能力を伸ばし、みずから進んで学び、考える確かな学力をしっかり身につけさせるとともに豊かな人間性をはぐくむなど、心身ともにバランスのとれた子供たちの育成に向けた教育の充実に努めることが最も重要であると考えております。今後、学力向上など学校教育の一層の充実を図り、次の世代を担う子供たちが、学校で培った学力を基礎として、みずから課題を見つけ、主体的に判断し、社会の形成者としての資質を磨き、力強い行動力で我が郷土岩手の発展に貢献できるよう、岩手の人づくりにしっかりと取り組んでまいります。
 次に、地震防災対策の構築と予算措置についてでございますが、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災の推進に関する法律、いわゆる日本海溝特別措置法が昨年9月施行され、先般、県内14市町村が法に定める防災推進地域として指定をされました。県では、今後、国の定める防災基本計画に即して防災推進計画を作成するとともに、当該市町村が定める防災推進計画の作成を支援していくこととしております。
 また、県では、自主防災組織の育成・強化、職員の危機管理能力の向上、情報通信機能の向上、市町村のほか消防、警察、自衛隊等防災関係機関との連携強化などに取り組んでおります。さらに、昨年度からは宮城県沖地震・津波を想定した地震・津波シミュレーション及び被害想定調査を行い、市町村の防災対策の支援を行うとともに、津波防災対策に対する意識啓発や災害対応プログラムの作成に努めてきたところでございます。18年度におきましては、これまでの総合防災訓練や防災ヘリコプターの運航管理費のほかに、衛星系の防災行政無線の機能充実と映像のデジタル化のほか、図上訓練などの津波防災対策の推進費、さらには自主防災組織等の育成強化費を予算案に計上し、地震・津波防災対策に万全を期してまいります。
 次に、自主防災組織の結成を図るための指導強化についてでありますが、これまで市町村を通じて組織化を働きかけてきたところでありますが、18年度においては、市町村のみならず消防団や地域に対しても直接働きかけることとしております。また、これまで結成されている自主防災組織の体制や活動状況などの調査・検証をつぶさに行うなどして、その結果をさらなる育成強化に反映をさせ、災害発生時において、その機能が十二分に発揮できる組織の育成を図ってまいります。
 次に、中心市街地活性化対策でありますが、平成10年に制定をされましたいわゆるまちづくり三法により、各自治体等がさまざまな中心市街地活性化の取り組みを行ってまいりました。しかし、依然として中心市街地の空洞化に歯どめがかからないことから、より実効性の高い対策を講ずる必要があるとして、この法律の改正案が今国会に提出をされたもの、このように考えております。この中心市街地問題は、郊外居住の進展や車の普及によるライフスタイルの変化などに起因する中心市街地の空洞化や、さまざまな都市機能が予想を超えて郊外部に立地したことなどによるものと考えております。また、この問題は中心商店街と郊外の大型店に限った問題ではなく、まさに中心部と郊外部の都市構造の問題であるとも考えております。こうしたことから、中心市街地活性化対策は、これからの人口減少・高齢社会にふさわしいまちづくりや、岩手の地域力の発揮と質の高い福祉社会の実現のためにも喫緊に取り組むべき課題と認識をしております。
 県では、将来の都市のあるべき姿というものを見据え、市町村との連携をさらに深めながら、都市計画法による大規模集客施設の適正立地のための広域調整や、公共公益施設などを中心市街地へ集約誘導する国のさまざまな支援措置を有効に活用するなど、積極的にその役割と責務を果たしてまいります。
 最後に、国際観光の推進についてでございますが、本県の海外における知名度を高めるために、北海道・北東北3県あるいは宮城県との共同で、これまで、ソウル、シンガポール、大連に海外事務所を設置し、海外旅行会社の招請事業、商談会の開催のほか、国際旅行博覧会への出展などを実施してきたところでございます。今後は、海外事務所を活用した誘客宣伝活動を一層強化するとともに、海外メディアへの積極的な働きかけや、本県への関心が高い海外旅行会社に対し、重点的に旅行商品の造成を支援するなど、知名度の向上対策に積極的に取り組んでまいります。
 また、受け入れ態勢の整備につきましては、平成11年度から本年度にかけ、主要観光地に外国語を併記した総合観光案内板の整備を計画的に進めるとともに、16年度から本年度にかけて英語、中国語及び韓国語の通訳ガイドの養成などに努めてきたところでございます。平成20年の平泉文化遺産の世界遺産登録を契機として、本県への外国人観光客は今後さらに増加するものと見込まれますことから、外国人観光客の受け入れ態勢の整備等についてのアクションプランを来年度の早期に策定をし、外国人観光客が訪れやすい環境づくりを着実に進めてまいります。
〇議長(伊藤勢至君) 次に、小野寺研一君。
   〔35番小野寺研一君登壇〕(拍手)

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