平成18年2月定例会 第18回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(増田寛也君) 本日、ここに第18回県議会定例会が開催されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
 昨年末から国内は、日本海側を中心に、記録的な大雪や寒波に見舞われ、家屋の倒壊や脱線事故などの深刻な被害が発生いたしました。
 昨年8月には、宮城県沖を震源とする地震により、岩手県内でも大きな被害が出たことは記憶に新しいところです。これらの災害により被害に遭われた方々には、心からお見舞いを申し上げます。
 世界に目を転じても、アメリカ南部を襲った超大型ハリケーンやパキスタン北東部での大地震など、一昨年のスマトラ島沖大規模地震による津波災害にとどまらず、大きな自然災害が後を絶ちません。
 私は、改めて自然の猛威を思い知らされるとともに、本県においても、今後予想されている宮城県沖地震への対策を進めるなど、自然災害に対する備えを充実させていく必要性を強く感じています。
 さて、最近の世界の経済情勢を見ますと、国際原油市場における原油価格の高騰がやまず、今後も高どまりで推移することが予想されていますが、アメリカの堅調な景気維持に加え、特に、中国を初めとするアジア地域での9%台の高い経済成長もあって、世界経済は、本年も前年に引き続き3%程度の成長を維持するものと見込まれています。
 国内では、国の月例経済報告などから緩やかな景気の回復基調が継続していることがうかがえますが、関東・東海地域などに比べ、北日本や四国、九州などでの景気回復についてはややおくれが見られます。
 本県においても、自動車や半導体の関連産業の好調などにより有効求人倍率が上昇している地域もありますが、一方では、まだ好転の兆しが弱い地域もあり、引き続き厳しい状況が続いています。今後は、ものづくり産業の新たな展開などの好材料を基軸に、民需を中心とした景気回復の動きが全県においても実感されていくよう強く期待をするところです。
 昨年は、郵政民営化改革、政府系金融機関の改革などの行財政構造改革が進み、地方分権改革も、国から地方へ3兆円の税源移譲が行われることで三位一体改革に一応の決着を見たところですが、さらに、地方が思い描く真の意味での地方分権に向けた改革が進むよう取り組みを継続していかなければならないものと認識しています。
 このような動きの中、平成18年度における地方財政計画の中の地方一般財源総額については、辛うじて前年度の水準が確保されたものの、平成19年度以降においては、地方財政制度全般にわたる一層厳しい見直しも予想されるところであり、今後に向けては、より着実な財政運営が求められるものと考えております。
 また、いよいよ我が国は、従前の予測よりも早く、昨年を境に人口が減少する社会へと突入していく見込みとなりましたが、このような社会経済環境が激変する時代を迎える中で、夢県土いわての確かな実現のために、私は、今後とも全力をもって県政の運営に取り組んでいかなければならないものと決意を新たにしています。
 近年、岩手県の人口は、昭和60年を一つの峠として漸減漸増した後、平成9年から再び減少へと転じ、一昨年には140万人を割りました。平成16年の本県の合計特殊出生率は、1.43と前年の1.45を下回っています。このような人口の減少やそれに伴う高齢化は、今後、地域活力の低下や社会保障面での負担の増加などの要因となり、経済や財政へ少なからずマイナスの影響を与えることが懸念されています。
 過去には、国において、景気浮揚のため債務を負ってでも事業を前倒しするなど拡大基調の経済対策がとられ、地方においてもこれに協力したところですが、私たちは、右肩上がりの経済成長はもはや過去のものであるという認識のもと、これからは、人口減少という避けては通れない課題に真正面から向き合い、地域社会が活力を維持し、さらには発展できるように努力をしていく必要があります。
 そのためには、本県において、これまで定着していた仕組みやその前提となっていた価値観などを根本から変えていかなければなりません。
 現在、小泉政権は、小さくて効率的な政府の実現を標榜し、歳出の削減により政府規模の縮小を目指しています。地方においても、今までの地方行政の仕組みなどで不合理な面についてはもちろん大胆に見直していかなければなりませんが、国の言う小さな政府という方針だけでは血の通った地方自治は実現しません。
 私は、総人件費の抑制など、必要な見直しは行いながら、少人数学級実現のための教職員の確保、治安維持向上のための警察官の増員など、地域生活に身近なところ、効率性だけで推し進められないところについては必要な体制を確保していかなければならないと考えています。
 これまでの画一的な中央集権的行政システムと決別し、地方としてみずからの権限と責任において政策を選択するとともに、コミュニティーの結束力や解決力といった岩手ならではのすぐれた能力を結集し、官民が協働で支えるセーフティネットを構築しながら、社会的に弱い立場にある方々に光が当たるような質の高い福祉社会の実現を目指していきたいと考えています。
 また、新幹線や高速道路、県立大学や美術館、図書館といった公共資本については、歴代知事が先行的に取り組んできた結果、整備が進みつつあるものと考えています。
 今後の社会資本整備においては、必要ならつくるという従来の考え方だけに固執することなく、ハード整備の重点化とあわせて、例えば、がけ地などの危険な場所から安全な場所への移転を支援することで安全性の確保を早めていくような新しい仕組みを創設するなどの総合的な施策や、これまでに整備してきた社会資本の適正な維持管理に力点を移し、長く有効に利活用できるような、知恵と工夫による取り組みを進めていく必要があります。
 また、生産年齢人口の減少に対応するため、産業の高度化、生産性の向上を図っていくことはもちろんのこと、女性の就労と子育ての両立が図られる体制を整えていくことや、定年を迎える団塊の世代が持つ潜在力を十分に活用していくことなど、活力ある新しい形の就労環境の整備にも努めていかなければなりません。
 さて、平成18年度までの三位一体改革が一応の決着を見たことは前に述べたとおりです。その結果は、建設国債の対象となる施設整備費の一部が税源移譲されたことなど、一定の評価ができるものの、単に国の負担を地方に転嫁する手法がとられたことなど、まだまだ地方の自由度や裁量の拡大につながらない部分が多々あり、不満が残る内容となっています。しかしながら、これまで遅々として進まなかった地方分権改革の長い道のりを顧みれば、我々地方側から声を上げ、国と対峙しながら、国と地方の協議の場において双方が議論を積み重ね、たどり着いた政策決定であり、本格的な分権改革の第一歩が記されたという事実として意味を持つものであると考えています。
 しかし、人口減少や高齢化が進む今後の地域社会において、住民サービスの質をより高めていくためには、地域がみずからの権限と責任により、創意と工夫を凝らしていけるよう、さらなる国から地方への権限や税源の移譲と地方団体の安定的な財源の確保を実現していくことが必要不可欠です。
 そのためにも、平成19年度以降も分権改革を継続していくことが重要であり、地方6団体で分権改革についての十分な意識の共有を図りながら国に強く働きかけていくとともに、地方みずからの責任も増していくことを自覚し、県はもとより、市町村、住民やNPO、経済団体などとも一体となって分権型社会の構築を進めていく所存です。
 来週20日には奥州市が、来月6日には久慈市が誕生し、本県における市町村合併は一つの山を越えつつあります。
 私は、これからの地方自治は、一人一人の問題は個人や家族で解決をし、それを超えた問題はコミュニティーの結束により解決を図り、さらに、それをも超える問題については基礎自治体としての市町村が担う、また、市町村が単独では解決できない問題については県などの広域行政が担うという、最も住民に近いところを起点として展開する、いわゆる近接・補完性の原理を基本として、市町村が中心となる仕組みに変わっていくべきものであると考えます。
 県は、今後とも、本県の市町村が、合併による行財政基盤の強化に果敢に取り組んでいくよう支援してまいりますが、新たに誕生する市町村は、当然ながらその行政能力を強化することにより、これまで県が行ってきた行政サービスのうち、実際に住民に身近なものについては積極的に県から譲り受け、より地域に密着した質の高いサービスを展開していくことが求められます。
 そして、県は、国が全国一律的に国の地方機関を通じて行っているような事務の中で、本来、地方の裁量にゆだねられるべきものを地方の行う広域的行政事務として譲り受けるとともに、これまでの県の業務範囲を縮小しながら、市町村の枠組みを超えた産業の振興や雇用対策、社会資本の整備や環境対策といった広域的・専門的行政サービスを新たに担える体制へと変わっていく必要があります。
 そのようなこれからの地方分権の進展を見据え、県と市町村が協働関係を一層強化しながら地域の経済的自立を図り、公共サービスの全体の質を高めていくためには、地域経済の基盤となる産業のいま一層の振興を図っていくことが最大の課題です。
 今後の地域経済は、人口減少や高齢化などに起因して停滞することも懸念されることから、私は、これまでに県内に蓄積された社会資本や情報基盤が果たしている機能を最大限に活用することや共通の地域資源を有機的に融合することなどにより、より一層広域的な視点での産業振興戦略の立案が可能となるよう、これまでの九つの広域生活圏を見直し、新たな四つの広域振興圏を設定することで各地域の産業振興の強化に本格的に取り組んでまいります。
 一関市、花巻市、奥州市など、県南圏域では大規模な市町村合併が進みました。また、半導体などの先端技術に加え、近年は自動車関連産業の集積が進み、市町村と活力ある企業とが一体となって地域振興に取り組める条件が整いつつあるため、本年4月から、広域振興局としての体制を整備し、産業振興に関する重要業務を本庁から移管するなどの機能強化を行い、圏域一体としての地域振興に取り組みます。
 一方、県北・沿岸圏域については、企業生産や投資が上向き基調にはあるものの、まだ県南圏域に比べて産業が力強いものとなっていません。したがって、まず、この両圏域のそれぞれの地域で既に地域経済に寄与している産業はもとより、造船業、食産業など、ひなどりとしてこれから飛躍する可能性を持った産業の育成強化を図ることとし、地域経営の戦略拠点である地方振興局と、先月立ち上げた県北・沿岸振興本部が連携して総合的な支援を行うことにより、県央、県南の圏域や八戸経済圏とも連動し、ともに成長していけるよう、強力に地域の振興を推進します。
 また、大学や試験研究機関などの学術研究機能が集積する県央圏域は、本県全体の産業活性化を支援する重要な役割りを担っており、県北・沿岸圏域への大きな波及効果も期待されることから、産学官連携の強化による工業製品等の高付加価値化や新産業創出などを強く支援してまいります。
 一方、国際社会では、EU圏や東南アジア圏などにおける経済のグローバル化が今後もさらに進展していくことが予想されます。
 私たちが活力を保持し、経済的な自立を進めていくためには、このような国際競争の中において、また、日本の中でも、しっかりと市場経済の一端を担っていく必要があります。
 しかし、これから人口減少が進み、地域において高い経済成長が期待できない状況のもとで、岩手が国内や国際経済の中で生き抜いていこうとする場合には、当然、競争原理に基づいた独自の取り組みも必要ですが、これまでの右肩上がりの時代のように、岩手のみの視点で戦略を展開する手法にはおのずから限界があるものと言わざるを得ません。
 そこで私は、平成9年の北東北知事サミットを契機に、青森県、秋田県、さらには北海道との県境を越えた広域連携に取り組んできましたが、このことは全国的にも高い関心を集め、環境対策や観光振興などにおいて、大きな効果をもたらしてきたものと考えています。
 このように、全国に先駆けて行った北海道・北東北3県連携の実績をさらに積み重ねながら、今後は、自動車関連産業を核とした宮城県や山形県などとの連携にも積極的に取り組むとともに、単なる県同士の連携ということにとどまらず、国内や国際市場の中で、多様な社会資本や地域資源を保持する県境を越えた一つの顔を持った広域圏として認知され、共同で大きな成果を生み出していけるよう、例えば、国の第28次地方制度調査会が検討している道州制といった新しい広域自治制度などを意識した取り組みへと発展させていきたいと考えています。
 私は、3期目の知事選に際して、マニフェストを県民の皆様に提示しました。これは、私の3期目に実行する政策についての県民の皆様との約束です。そして、この任期を自立を進める4年間として位置づけるとともに、マニフェストの内容を踏まえ、県の総合計画の中で特に緊急かつ重点的に取り組むべきものを誇れるいわて40の政策として政策化し、今、その確実な達成に向けて鋭意取り組みを進めているところです。
 この40の政策については、平成16年度までの進捗状況を政策評価の中で示していますが、スローライフを基調とした「食」と「森」先進県、行政システムの進化の各施策は順調に進んでいるものの、その他の分野はおくれています。
 私は、このような状況を真摯に受けとめるとともに、今後の中期的な政策の展開方向も見据えながら、平成18年度においては、ものづくり産業や農林水産業の振興、人づくりや地域力の発揮といった政策分野に特に力を入れ、最重要課題として取り組むこととしたところであり、このたびの予算編成に十二分に反映させ、目標の達成に向け全力を傾注していく覚悟です。
 また、40の政策を着実に成し遂げ、また、その達成が次の時代へ大きく飛躍していくための確かな血肉となるためには、これまでの県の行財政システムを根本的に見直すことが必要欠くべからざる急務であったことから、私は、岩手県行財政構造改革プログラムを策定し、政策課題解決のための予算確保や公共施設の管理運営などの外部委託、県出資法人などの見直し、市町村の自立支援や地方振興局の再編・機能強化など、県行財政全般にわたるシステム改革を進めてまいりました。
 特に、新規の県債発行額が当年度の県債元金償還額を上回ることのないようにする、いわゆるプライマリーバランスの均衡を早期に達成するため、県の中期財政見通しを示し、投資的経費の見直しや重点化による歳出規模の適正化を進めるなど安定的な財政基盤の構築に向けて取り組んできた結果、今回の予算編成においてこのプライマリーバランスの均衡を達成するとともに県債の残高を減少に転じさせたところであり、今後ともこれらを堅持していきたいと考えています。
 しかし、さきに述べたとおり、平成19年度以降の地方財政を取り巻く環境は、地方交付税の見直しなどにより一層厳しさを増すことが予想されることから、これからの県財政は、国の財政支出の多寡により右往左往することのない自立した運営がなされていくよう見直していかなければなりません。
 そこで、県の歳入規模に見合った歳出構造を目指した場合に一つの目安となる予算規模や、県がこれから担うべき行政サービスに応じた職員数を勘案した結果、私は、現時点で、県の予算規模についてはおよそ7、000億円程度、そして、職員数は、知事部局においておよそ4、000人程度の規模にしていく必要があると考えています。現在の行財政構造改革プログラムに続く平成19年度以降の次期改革プログラムの検討に既に着手したところですが、今後も大胆な構造改革を継続し、安定感のある持続可能な行財政構造への進化を着実に遂げていきたいと考えています。
 また、私は、行政主体の取り組みだけで、40の政策や行財政構造改革を実現することは困難であると考えています。県財政の厳しさとは一体どの程度か、その中で今やらなければならないことはどのようなことか、また、県ができることとできないこと、市町村や県民の皆様にも協力や負担をいただかなければならないことは何か、そのようなことについて、互いの顔と顔を向き合わせながら十分に話し合い、情報の共有を図っていくことが非常に大切なことであると考えています。私たちは、大都市圏のような、お互いの顔が見えにくく、公助を担う制度のみに支えられている社会ではなく、もともと自助、互助、共助というすぐれた相互支援の理念を持ち合わせている地域に暮らしています。私は、むしろ、このような都会にはない本県の優位性を生かした岩手の地域力の底上げ、地域力の発揮が地域の自立を実現するために必要であることから、県民の皆様と手を携えて県政が直面しているさまざまな障壁を乗り越えていきたいと考えています。
 さきに、国の平成18年度の地方財政対策において、地方交付税と臨時財政対策債とをあわせた実質的な地方交付税総額については本年度を上回る減少率が示されたように、地方財政は引き続き厳しい運営が迫られます。
 平成18年度予算については、限りある財源の中で、効果が最大限に発揮されるよう重点化を図り、創意・工夫を凝らした結果、一般会計の歳入歳出予算規模は、前年度を3.6%下回る総額7、398億6、200万円となりました。
 重点的に取り組む施策の第1は、産業の振興です。
 ものづくり基盤を拡充するため、県南の北上川流域を中心とした自動車関連産業を核として、県内企業の関連産業への参入促進、名古屋への専任コーディネーターの配置による企業誘致や県内企業の取引拡大の支援強化、宮城県、山形県との県境を越えた産学官でのネットワークづくりや関連技術展示商談会の共同開催などを進め、広く厚みのある自動車関連の一大産業集積地域の形成を目指していきます。
 また、自動車関連産業のみならず、新たに地域産業の核となるような企業や工場の進出を促進するため、大型補助や融資、課税免除などによる強力な支援が行えるように制度を整備してまいります。
 また、農林水産業から食品製造業や外食産業、観光産業などの関連産業までを一つの食産業としてとらえ、これらに携わる中核企業や農林水産事業者が全体としてレベルアップしていくよう、大学、行政、民間、金融機関が一体となった戦略的な食産業振興支援の仕組みを構築していきます。
 さらに、木質バイオマスエネルギーの利用拡大を促進するための木質ペレットの需要拡大に向けた支援の強化や、新たに創設するいわての森林づくり県民税を活用した森林環境の保全に向けた取り組みなど、新たな施策を展開してまいります。
 観光については、経済波及効果が高く、地域経済の活性化につながる重要な産業であるという認識のもと、本県の豊かな地域資源を生かしたグリーンツーリズムの取り組みを拡充するほか、新たに、地場産業などと連携して、地域のさまざまな魅力を一体として提供できるような地域ぐるみの観光の振興に取り組むこととし、特に、本県が全国に誇る自然のスケールや山海の特産物を有する三陸地域において、多様な観光資源を融合した新しい三陸縦断観光ルートの形成に着手し、沿岸地域全体の観光振興を推進していきます。
 さらに、世界遺産登録に向けた取り組みとも連動して、岩手の貴重な財産である平泉の文化遺産を東北の歴史文化の核としての観光資源にまで高め、力強く国内外へ情報発信してまいります。
 雇用対策については、若年者の就業支援のため、セミナーやカウンセリングなどの就職支援を行うジョブカフェいわて及び県内各地に設置したサテライトセンターにおいて企業との連携を一層強化するとともに、地域ごとに専門コーディネーターを配置して若年者の職場定着支援などを進めていきます。
 県北・沿岸圏域の産業振興については、食産業やものづくり産業などに重点化を図りながら産業基盤の強化に取り組むとともに、この圏域を対象とした中小企業振興のための新たな特別融資制度を設けるなど、県北・沿岸振興本部を中心とした全庁及び地方振興局の連携体制のもと、強力に支援を行っていきます。
 第2は、地域を支える人づくりです。
 本県における製造業の発展の基盤となるすぐれた人材を継続的に育成するため、小学生から若年層、中堅技術者、経営者など各ステージに応じた総合的な取り組みを推進していきます。
 また、北上川流域の産学官による新しい人材育成の仕組みである地域ものづくりネットワークを新たに立ち上げるとともに、すぐれた技術・技能を有した人材をものづくりの匠として登録し、県内の工業高校の生徒への技術指導を行ってまいります。
 ものづくり産業を支える次代のエキスパートの育成については、工業高校や産業技術短期大学校への専攻科の設置に着手するとともに、本年4月から岩手大学大学院に開設される金型・鋳造専攻での技術研さんを行う中小企業への支援などを通じて、県内企業人材の技術力向上を促進していきます。
 本県の基幹産業である農林水産業の担い手の確保については、集落営農の組織化を支援するコーディネーターの配置やアドバイザーの派遣、集落組織に対する運転資金の融通などの新たな取り組みや農業者ビジネスカレッジによる経営感覚にすぐれた人材を育成する取り組みなど、効率的、安定的な個別経営体や集落経営体の育成を図ってまいります。
 林業については、森林経営意識改革セミナーの開催などにより地域の森林を管理できる林業経営体を育成するとともに、水産業については、漁業担い手育成ビジョンに基づき、意欲と能力のある担い手への漁場集積や漁業生産物の付加価値向上などの取り組みを進めていきます。
 また、将来的にも、このような県産業を支える人材の育成が着実かつ効果的になされていくよう、小学校、中学校、高等学校での各段階に応じ、児童生徒が自分自身の勤労観や職業観などを身につけられるような、いわゆるキャリア教育のカリキュラムの開発に取り組んでまいります。
 これから県を担っていく子供たちの学力向上など学校教育の充実を図っていくため、35人学級を小学校1年生に導入し、順次2年生への拡充についても検討していくとともに、すこやかサポート非常勤講師の複式学級における配置を拡大してまいります。
 また、児童生徒の学習の定着状況を把握するため行っている学習定着度状況調査の対象を高等学校1年生まで広げ、各教科の授業改善に活用し、教員の指導力の向上を図るなど、児童生徒にわかりやすい教育を推進していきます。
 特に、学力の向上については、本県において専門職として不足している医師、弁護士などの育成や、県北・沿岸地域を担う人材の育成のため、大学進学を希望する生徒を対象にして進路指導を行う学校への支援に取り組んでまいります。
 質の高い地域医療を提供するための医師の確保対策については、医師確保対策アクションプランの着実な推進に加え、女性医師の育児支援や離職した女性医師の職場復帰支援、県内外就業医師とのネットワークの構築などにより、県が医師を募集・採用し、地域からの派遣要請に対応するドクターバンク推進事業など新たな取り組みを推進していきます。
 第3は、人口減少社会への対応です。
 少子化対策として、県内どこでも安心して子供を産み育てられるよう、男性の育児参加を促進する新たな事業に取り組むほか、中小企業団体などと連携を図りながら、民間企業における次世代育成支援対策推進のための事業主行動計画の策定など、仕事と子育てが調和する雇用環境づくりに積極的に取り組んでまいります。
 児童福祉については、保育所への入所待機児童の解消と保育サービスの充実を図るため、既存の空き店舗などを活用した保育所の分園の設置を新たに支援してまいります。
 また、既存の社会資本を長く効率的に利活用していくためのストックマネジメントに取り組むとともに、道路や河川を常に良好な環境に保っていくための清掃や美化などについても、住民、NPO、企業などとの積極的な連携や協働が進むよう、地域コミュニティーの強化などを進めていきます。
 今後、社会資本の維持管理に公共投資の重点が移っていく中で、建設業界が公共事業に過度に依存することなく健全な経営を行っていけるよう、建設業の異業種進出や業種転換などを全庁を挙げて支援し、建設業界が有する経営資源が新たな分野に再配分されることにより、建設業を初めとする県内産業の振興と雇用の安定が確保されるよう努めてまいります。
 また、人口減少社会で縮小していく生産世代を新たな視点から活性化させるために、来年から順次退職していく団塊の世代の豊富な職業経験とバイタリティーに着目し、これまで培ってきた個人の知恵や技能を次世代へ円滑にバトンタッチする仕組みづくりや団塊の世代の新たな活動領域開拓などへの支援を行っていきます。
 第4は、地域力の発揮です。
 盛岡駅西口地区にオープンするいわて県民情報交流センターにNPO活動交流センターや環境学習交流センターなどの県民交流・活動拠点を集約し、多様な主体による協働や住民主体の自立した地域づくりが進むよう取り組んでまいります。
 高齢者などの介護についても、介護老人福祉施設の整備を計画的に進めるほか、民家などの改修によるご近所介護ステーションの設置や低廉な家賃で入居できる高齢者共同賃貸住宅モデルの普及を促進するなど、地域力を生かした在宅介護の仕組みづくりの充実を図っていきます。
 また、県民の皆様が治安の悪化を体感しつつあることにかんがみ、パトロール強化と空き交番対策、各種相談への適切な対応のため、交番相談員と警察安全相談員の拡充を図るとともに、住民参加・体験型の防犯教室の開催、大学生ボランティアによる非行少年のよりどころの確保など、新たな取り組みにより地域やボランティア団体との協働を推進し、地域における多様な防犯ニーズに対応してまいります。
 また、配偶者からの暴力被害者を対象とした相談体制の整備や自立支援対策の充実などDV防止の取り組みを進めるほか、弁護士不在地域を中心に、無料消費生活相談の仕組みを整備するなど消費者被害の未然防止に努め、安全・安心な社会の実現に向けて取り組んでいきます。
 また、同時に、岩手競馬の運営や、肉牛生産公社、林業公社、住宅供給公社などの経営に関する重要な課題についても、将来に先送りすることなく、現時点において解決の道筋をつけるべく、全力を挙げて取り組んでまいります。
 現行憲法のもと、地方自治制度を定める地方自治法が施行されてから半世紀を超える歳月が過ぎましたが、特に最近の10年余りの間に地方分権推進法や地方分権一括法が施行され、また、地方自治の本旨などをめぐる憲法改正論議が活発化しており、地方自治をより住民に身近な場面に引き寄せる流れが加速しております。
 また、今、本当に地域に必要なこと、地域の住民に重要なことを地域の判断と責任で行っていこう、そこに住んでいる住民の意思をすべての基軸にしていこうというような、真の分権型社会の実現に向かう大きな力が地方において台頭しつつあります。
 私は、岩手県においても、この広大な県土に満ちあふれている特色のある資源や、豊かな感性と非凡な才知を持った人材を多元的に結びつけ、岩手の地域力を一層高めることで、真の地域の自立をこの岩手の地から実現していこうとする鼓動を実感しています。
 本県出身の後藤新平は、大正11年に少年団日本連盟初代総裁に就任し、自治こそは人間生活の根本であり、信と愛の奉仕こそは社会生活の源泉であるとして、「人のお世話にならぬよう 人のお世話をするよう そしてむくいを求めぬよう」と自治三訣を唱えました。これは、まさに、今の地方分権、地方の自立を実現する時代になくてはならない信念であるものと思います。
 私は、この先達の気概を大いなる範とし、岩手県民が誇ってはばかることのない、環境を大切に思う意識、助け合う結いの優しさ、おもてなしの心、受け継がれる知恵と工夫やものづくりの力、自立自尊の高潔な精神など、イーハトーブの宝を結集し、新しい岩手の創造に向けて全力で取り組んでいく所存です。
 議員の皆様、県民の皆様にも、ともに御協力いただくようにお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。ありがとうございました。
   
日程第11 議案第 1 号平成18年度岩手県一般会計予算から日程第77 報告第 4 号県行政に関する基本的な計画の変更に係る報告についてまで
〇議長(伊藤勢至君) 次に、日程第11、議案第1号から日程第77、報告第4号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。時澤総務部長。
   〔総務部長時澤忠君登壇〕
〇総務部長(時澤忠君) 本日提案いたしました各案件について御説明いたします。
 議案第1号は、平成18年度岩手県一般会計予算であります。
 この予算の編成に当たりましては、極めて厳しい財政環境下において、主要3基金に係る所要の残高確保及びプライマリーバランスの均衡を図りつつ、限られた財源の重点的、効率的な活用に努めたところであります。
 また、予算の内容につきましては、政策評価結果等に基づくより一層の選択と集中により、40の政策に配意しながら、産業振興や人づくりなど、地域の自立に向けた基盤を強化するための政策に特に重点的に取り組むこととしたところであります。
 以下、その概要について御説明いたします。
 第1条は、歳入歳出予算の総額をそれぞれ7、398億6、228万9、000円と定めるものであります。これを前年度当初予算と比較いたしますと3.6%の減となっております。
 次に、歳入の主なものについて御説明いたします。
 第1款県税につきましては1、103億1、100万円を計上しており、前年度当初予算と比較いたしますと21億800万円の増となっております。
 第5款地方交付税につきましては2、340億5、900万円余を計上しており、前年度に比較して27億7、400万円余の減となっております。
 第9款国庫支出金につきましては896億8、600万円余を計上しており、前年度に比較して274億8、100万円余の減となっております。
 第12款繰入金は337億2、100万円余を計上しておりますが、これは、自治振興基金、県債管理基金、地域振興基金等から繰り入れを行うものであり、前年度に比較して149億8、000万円余の増となっております。
 第15款県債につきましては1、219億4、500万円を計上しておりますが、前年度に比較して150億7、800万円の減となっております。
 次に、歳出の主なものについて御説明いたします。
 第2款総務費につきましては307億円余を計上しておりますが、その主なものは、いわて県民情報交流センター管理運営費8億2、400万円余、合併市町村自立支援交付金14億3、000万円等であります。
 第3款民生費につきましては535億9、200万円余を計上しておりますが、その主なものは、重度心身障害者医療助成費13億4、300万円余、介護給付費等負担金118億7、100万円余、国民健康保険事業安定化推進費104億8、100万円余等であります。
 第6款農林水産業費につきましては775億5、700万円余を計上しておりますが、その主なものは、経営体育成基盤整備事業費81億3、000万円余、治山事業費26億400万円余、広域漁港整備事業費20億400万円余等であります。
 第8款土木費につきましては802億3、500万円余を計上しておりますが、その主なものは、道路改築事業費73億9、000万円、砂防事業費8億8、900万円余、港湾改修事業費10億8、000万円余等であります。
 第10款教育費につきましては1、628億3、400万円余を計上しておりますが、その主なものは、すこやかサポート推進事業費3億4、500万円余、公立大学法人岩手県立大学運営費交付金45億6、100万円余、私立学校運営費補助48億9、700万円余等であります。
 第12款公債費につきましては1、596億8、400万円余を計上しております。
 第13款諸支出金につきましては557億3、200万円余を計上しておりますが、その主な内容は、公営企業負担金179億6、900万円余、地方消費税交付金133億3、800万円余等であります。
 第2条債務負担行為は、岩手県火災共済協同組合が行う火災共済契約の履行に関する損失補償ほか40件について債務を負担しようとするものであります。
 第3条地方債は、次世代衛星系通信施設整備ほか53件について、限度額、起債の方法、利率及び償還の方法を定めようとするものであります。
 第4条一時借入金及び第5条歳出予算の流用は、それぞれ所要の措置を講じようとするものであります。
 議案第2号から議案第11号までは、平成18年度岩手県母子寡婦福祉資金特別会計予算ほか9件の特別会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画等に基づき、その所要額を計上したものであります。
 議案第12号から議案第14号までは、平成18年度岩手県立病院等事業会計予算ほか2件の公営企業会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画に基づき、収益的収支及び資本的収支の所要額を計上したものであります。
 議案第15号から議案第21号までの7件は、建設事業等に要する経費の一部を受益市町村に負担させることに関しそれぞれ議決を求めようとするものであります。
 議案第22号から議案第57号までの36件は条例議案でありますが、これは、岩手県障害者介護給付費等不服審査会条例、特定区域における産業の活性化に関する条例等を新たに制定するとともに、岩手県県民ゴルフ場事業特別会計条例等を廃止するほか、岩手県公告式条例、一般職の職員の給与に関する条例等の一部を改正しようとするものであります。
 議案第58号は、財産の譲渡に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第59号は、権利の放棄に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第60号は、全国自治宝くじ事務協議会への堺市の加入及びこれに伴う同協議会規約の変更協議に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第61号は、包括外部監査契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第62号は、地方独立行政法人法の規定に基づき、地方独立行政法人岩手県工業技術センターに係る中期目標を定めることに関し議決を求めようとするものであります。
 議案第63号は、公平委員会の事務の受託の協議に関し議決を求めようとするものであります。
 報告第1号及び報告第2号は、職員による自動車事故及び道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分についてそれぞれ報告するものであります。
 報告第3号は、国民保護法の規定に基づき、岩手県国民保護計画の策定について報告するものであります。
 報告第4号は、県行政に関する基本的な計画の議決に関する条例の規定に基づき、岩手県保健福祉計画の変更について報告するものであります。
 以上のとおりでありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださいますようお願いいたします。
   
〇議長(伊藤勢至君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後 2 時 2 分 散 会

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