平成18年9月定例会 第21回岩手県議会定例会会議録

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〇11番(嵯峨壱朗君) 自民クラブの嵯峨壱朗でございます。
 私は、平成15年当選以来、今回で4回目の一般質問となりますが、この3年半の間に、岩手県政を取り巻く環境は随分と厳しく変わってまいりました。今さら指摘するまでもないわけでありますが、岩手県だけではなく、多くの地方自治体に共通する課題、岩手県のような特に自主財源の乏しい自治体に共通する問題、そして、岩手県に固有の課題、それぞれがクローズアップされ、どれもが早急、適正な待ったなしの対処が必要となってまいりました。
 増田知事が当選した平成7年には、既にバブル経済が崩壊しておりました。しかしながら、バブル経済のころに作成された計画が生きており、増田知事が、それをどうしても実行せざるを得なかったのかどうかわりませんが、現在、私が負の遺産的なものと考える財政上の負担となっております県立大学、アイーナ、そして今話題となっておりますオーロパークなど、賢明なる増田知事が、なぜそうした計画の見直しをしなかったのか、不思議でなりません。
 また、私は以前質問で、地方分権、三位一体の改革を先導する増田知事に、地方交付税頼み、国頼みの岩手県は本当に大丈夫か、最も影響を受けるのではないかと注意を促したことがございます。懸念したとおりになったと思っております。
 県北、沿岸と県南、県央との格差拡大は、既に格差という言葉では表現し切れず、二極化と言うべきだとの指摘もしてまいりました。結果として、感謝しておりますが、県北・沿岸振興本部も立ち上げ、県政上の重要課題として認識することになったと思っております。
 競馬問題もしかり、出資法人の問題もしかり、私は、増田県政の、増田知事の先送り体質と申しましょうか、見通しの甘さとでも言いましょうか、いずれ種々の課題に適切・迅速な対処をせず、対応が後手後手に回ったことにより、問題がより深刻化したのではないかと思っているところでございます。といえば身もふたもございませんが、私も増田知事の地方分権、こういった流れの中で、地方の声を中央に強く伝える、そして、福島県、岐阜県のような不祥事を起こさないような透明性の確立など、そういった姿勢については高く評価しているところでございます。今こそ、そういった前提を踏まえて、増田知事の真の政治家としてのあり方を私は問われていると考えております。
 強い決断力とリーダーシップ、そして重い責任意識を持った言葉を、言動を、改めて強く期待するところでございます。
 質問に入らせていただきます。
 初めに、山積する県政諸課題を前に、今、待ったなしの政治的判断が求められる増田知事は、みずからの県政運営、政治的スタンス等を顧みて、みずからを官僚的知事と見ているのか、それとも政治家的知事ととらえているのか、その自己認識をお示し願いたい。
 次に、曲がりなりにも日本で初めてマニフェスト選挙をしたとされる増田知事は、3年半を経過し、いよいよみずからその評価をしなければならず、それをもとに新たなマニフェストをつくるといった、いわゆるマニフェストサイクルを確立せんとするものと考えるわけでありますが、みずからの姿勢として、どのように認識し、どのように考えているのか、お尋ねいたします。
 次に、岩手県の財政的課題、そして、新たな公会計制度の導入についてお尋ねいたします。
 社団法人地方行財政調査会の平成17年度都道府県税決算見込額調べによれば、平成17年度の都道府県税徴収実績を調定額で見ると、全体としては対前年比5.1%の伸びを示しているが、岩手県を含む北海道、熊本の3道県以外の44都府県が増収となっております。収入額においては、対前年を下回っているのは、全都道府県の中で岩手県のみでございます。私は、大変深刻な事態だと受けとめているところであります。青森県の地方紙は、原燃の立地交付金を含めずとも、10数年ぶりに岩手県に勝ったという記事を載せているほどショッキングな出来事でありました。
 青森県等に比しても、大型企業、大型工場の立地が進んでいるように見える岩手県の平成17年度の県税収入が、なぜ他県に比してここまで伸び悩んでいるのか、その理由をお示しいただきたい。
 また、本年度の税収の現状と傾向、そして増加策をどのように考えているのか、お尋ねいたします。
 次に、夕張市の財政破綻を受けて、総務省は、新しい地方財政再生制度研究会で再生型破綻法制を検討しております。その過程において、地方自治体の財政の実態をより正確に把握するために、公営企業や第三セクター、出資法人も含めた実質的な債務に着目する新指標を整備し、資金繰りの指標とあわせて把握するといった新たな公会計制度のあり方を検討しております。
 岩手県は、既に、踏み込んだバランスシート会計を公表しておりますが、厳しい財政状況の本県にとっては、より重要な意義を持つこうした新たな公会計制度の導入の見通しと、導入された場合の岩手県の財政状況の見通しはどのようになると想定されているのか、お示しいただきたいと思います。
 また、市町村への導入の見通しと、その場合の財政状況をどのように予想しているのでしょうか。
 次に、合併市町への県の支援策と権限移譲についてお伺いいたします。
 平成13年11月の大船渡市と三陸町の合併を皮切りに、本年3月の久慈市と山形村の合併まで、平成17年度末期限を迎えた、いわゆる合併旧法のもとで進められた市町村合併によって、12の新市町が誕生し、県内の市町村は59から35市町村に再編されたところであります。
 平成の合併は、明治、昭和の大合併に続く半世紀に一度の地方自治におけるエポックメーキングな出来事であり、この間、県内各地においては、将来の市町村のあり方について真摯な議論が行われたところであります。そして、各市町村の首長を初めとする関係各位の自主的な取り組みとたゆまぬ努力によって、さまざまな困難を乗り越え、県内の市町村合併は、相当の進展を見せたところでございます。
 こうして幾多の産みの苦しみを経て誕生した県内12団体は、合併したとはいえ、少子・高齢化や国、地方の財政状況、経済社会情勢の変化に直面していることは、合併しなかった市町村も同じでしょうが、新たな枠組みの中で、合併しなかった市町村にはない課題を抱えているものと考えます。このように、合併市町にとって、ここ数年は、新しい自治体としての経営を軌道に乗せ、行財政基盤の充実強化を図る非常に重要な時期であると考えます。
 そこでお尋ねしますが、県は、現在新市町が抱える課題をどのようにとらえているのでしょうか。また、それらの課題に対してどのように支援していくのか、その考えをお伺いいたします。
 次に、権限移譲についてですが、本日の朝刊に、私が質問通告している内容にほぼ類似する記事が掲載されておりましたが、通告しているにもかかわらず、報道機関に説明する、しかも質問当日新聞に掲載されるといった事実を前にして、私は、当局の姿勢に、私をばかにしているのかわかりませんが、議会軽視の側面があると理解せざるを得ないと思っております。したがって、質問を取りやめようかと思いましたが、議会で正確に説明されるのが本筋であろうと考え、通告どおり質問することといたしました。
 市町村において、地方分権を具体的に実現する手段として、県から市町村への権限移譲は必要不可欠な要素であります。そこで、県は、市町村への権限移譲を着実に進めるために、どのようなスタンスで進めようとしているのか、お示しいただきたい。
 次に、市町村に権限移譲を行う際には、市町村側の不安や負担を軽減させることが重要であり、特に大きな責任を伴うような許認可権限については、経験やノウハウを持つ県職員の派遣が有効であると考えます。
 県では、既に、権限、財源、県職員を一括して移譲する一括権限移譲方式を活用し、県道の改築や維持管理を市町村に移譲しているわけですが、こうした一括方式を広く活用し権限移譲すべきと考えるところでありますが、いかがでしょうか。
 また、現在の一括移譲方式をどのように評価しているのか、お尋ねします。
 さらに、合併したばかりで、今後の調整に追われる中、早期の権限移譲が市町村の経営にどのような影響を与えると考えているのか、お尋ねいたします。
 次に、県北・沿岸振興対策についてお尋ねいたします。
 県北、沿岸と県南、県央との格差の拡大を県政の最重要課題の一つとしてとらえ、本年1月に県北・沿岸振興本部が設置されました。設置そのものと岩手県全体として持続可能な地域となるべく、根本的な課題解決にやっと着手したことを評価するとともに、ぜひとも、絵にかいたもち、机上の空論とならない、実現性の高い計画を立てて実行していただきたいと考えるところでございます。
 何百年にもわたって拡大してきた格差を一朝一夕で是正できるものではなく、地に足のついた確実な一歩一歩こそが大切と考えるところでございます。
 余り個別な事項には触れませんが、功をあせるばかりかどうか知りませんが、個別に見ると、不十分な現状認識に基づいているため、例えば、岩手県北・沿岸売り込み班Σでしたか、少量生産、安定供給が難しい製品をどうやって継続的に売り込むのでしょうか。また、それは県の職員の皆さんの仕事でしょうか。私は、むしろそのための仕組みづくり、そういったものの問題解決に努めるべきではないかと思っているところでございます。そして、そういったものについて第三セクターもつくったのではなかったのでしょうか。
 いずれ種々に、いわばとんちんかんな計画が随所に見えております。まず、生活を続けるためには雇用の場がなければならない。だから、第一に産業振興を進めなければということでしょうが、格差は雇用の機会だけではございません。医療・福祉・教育といった分野でも格差は拡大していると私は思っております。今後、多方面にわたる格差の是正に向けて努力していただきたいと心から願うところでございます。
 こうした計画を立案する前提として、県北・沿岸地域がこれまで県央・県南地域に比べおくれてきた根本的な理由の分析が不可欠であるにもかかわらず、その分析が不十分なため、非現実的な計画になっているのではないかと思われますが、どう分析し、どのように認識しているのでしょうか。
 また、久慈地域と二戸地域を一くくりにする産業振興策は、特にも1次産業において、気候風土、産業基盤の相違から見ても無理があると私は思うのですが、なぜ一くくりにするのでしょうか。無理やり広域振興局的な枠組みを当てはめているようにしか見えず、それでは実情に即した計画にならないような気がしてなりません。また、計画策定などに現場の声を反映する仕組みはどのようになされたのでしょうか。
 以下、具体的な提案をさせていただきますが、それぞれの見解をお示し願いたいと思います。
 初めに、地域振興に不可欠な基本的な社会資本の整備、そのために私は、例えば100億円の県北・沿岸振興基金を創設するとか、そういった考えはどうでしょうか。
 次に、地域限定の県単独かさ上げ補助制度の創設、県単独融資制度の特別優遇融資制度を拡充する、そういった考えはどうでしょうか。
 また、港湾使用料、占有料の減免措置を講ずるべきとも考えますが、いかがでしょうか。
 次に、産業振興に連動する人材育成機関である専門学科、職業能力開発センターの連携、充実強化を図るべきと思うがどうかと質問する予定でしたが、当局では教育委員会と商工と所管が違うということでしょうか、答えようがないという連絡が入りましたので、職業能力開発センターとの連携についてお尋ねしたいと思います。
 しかしながら、私は、地域の資源である専門学科高校と地域の産業振興とは、大いに連動していくべきと考えているところでございます。そうした点もぜひとも今後考慮していただきたいと考えるところでございます。
 また、二戸駅に停車する新幹線の本数をふやすことはできないのか。二戸から八戸までの区間の岩手県側は、岩手県が多くの財源を負担している点を考えれば、当然の要望と考えます。観光においてもそうですが、実際に多くの人の声がございます。八戸のためにつくった新幹線ではないと私は思っております。
 まだまだいろいろございますが、また違った場で提案していきたいと思っております。
 次に、公立大学法人岩手県立大学についてお尋ねいたします。
 地域貢献を前提に設立された県立大学が、新しい学長になったら、いつの間にか国際的に通用する学生を育てる大学に変わりつつあると言われておりますが、県立大学のあり方として、それが正しいのか、常々疑問に思っておりました。
 そこで、初めに増田知事にお尋ねしますが、岩手県立大学の存在意義について、また、県立大学に知事は何を望むのか、所見をお伺いいたします。
 次に、設立当初の理念、目的、育成すべき学生像はどのようなものだったのか。また、それらは新しい学長になってどう変わったのか。公立大学法人になり大学と県のかかわりはどう変わったのか。また、県はどこまで関与できるのか、お尋ねいたします。
 次に、建設業の振興策と課題についてお尋ねいたします。
 財政再建の名のもとの急激な公共事業費カットは、地域の建設業に深刻な打撃を与え、災害時の対応もままならないほどの疲弊をもたらし、先日も大型倒産があったばかりであります。
 県はこれまで、特に建設業従事者の労働移動を前提に、さまざまな施策を実行してきたのでしょうが、県が直接労働移動を促すまでもなく、働く場そのものがなくなることで、移動せざるを得ない状況になっております。知事の言うところの労働移動とはこういうことだったのかと、不思議な気分になる昨今でございます。
 さて、昨日の一般質問でも取り上げておりましたが、県は、本年4月に建設業対策中期戦略プランを作成しました。内容を見ると、県は、建設業を支援しようとしているのか、整理しようとしているのか、よくわかりません。プランについての知事の所感をお尋ねいたします。
 本来、農林漁業だけでは食えずに、建設業従事者となり、兼業によって生活を維持してきたわけでありますが、その生産性の低い1次産業で本当に食べていけるのか常々疑問に思っておりましたが、わらをもつかむ思いで、必死に県の指導に従っているのだと考えております。
 そこで、いまだに余り多くの成功例を聞きませんが、新規分野の取り組み状況と成果はどうなのでしょうか。問題をどのように認識し、どう対処するのでしょうか。
 次に、県が誘導する新分野への参入の取り組みや新技術開発への県融資制度創設の趣旨、経緯、特色について、また、それらが企業経営への新たな圧迫要因になり得るとも考えられますが、いかがでしょうか。
 次に、低入札についてお尋ねいたします。
 低入札は、下請いじめ、手抜き工事等を誘発すると言われておりますが、県は、1億円以上の大型工事に調査基準価格を設け、それを下回った場合には、再調査し、落札者の決定をするといったむだなコストと時間をかけているわけでありますが、私には、なぜ調査基準価格を設定しているのかよくわかりません。
 そこで、調査基準価格と最低制限価格の設定の考え方、調査基準価格設定のメリット、デメリットについてお尋ねいたします。
 また、調査基準価格制度は、私は、廃止すべきではないかと考えているのですが、いかがでしょうか。
 次に、台風12号の被害状況と復旧状況及び対策についてお尋ねいたします。
 特に沿岸北部の市町村に甚大な被害をもたらしたわけですが、その被害状況はどうなっているのでしょうか。また、復旧の状況と見通し、さらには、災害復旧の対象から外れる箇所の復旧状況と、主に漁業者、民間施設被害への県の支援策はどうなっているのでしょうか。
 次に、今回のような災害を未然に防ぐために有効な湾口防波堤が久慈湾で整備されておりますが、今回の被害を受けて、30年かかると言われる工事を、さらにもっと早期に完成させるよう促進すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 また、高波の状況を監視・把握できるGPSの設置についても、早期の設置に向けて国へ要望、働きかけるべきと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、教育行政についてお尋ねいたします。
 初めに、基本的な高校再編の考え方と総合学科高校への現時点での評価をお尋ねいたします。
 また、福岡工業、久慈工業に代表されるように、一連の学科再編、学級減等は、地域とのコンセンサスを図る姿勢も余り見えないような気がします。また、県北・沿岸振興といった県の重要課題との連携もなく、余りにも拙速ではないかとの意見があると言われておりますが、どう認識しているのでしょうか、お尋ねいたします。
 次に、本年2月に条例化された教職員の新昇給制度についてお尋ねいたします。昨日の阿部敏雄議員の一般質問でも取り上げられましたが、若干観点が違うので、通告どおり質問させていただきます。
 本年2月定例会において、地方公務員の昇給制度が改正され、公務員の特別昇給については、業績を適正に評価し昇給させることになりました。業績と関係なく順繰りに特別昇給させていた制度を、全公務員についてその見直しをしているわけでありますが、本県においても、議会の議決を受けて、本年4月から施行されております。にもかかわらず、この制度導入について労使ともに反対の声が上がっており、導入に支障を来しているやに聞いております。その理由をどのように認識しているのでしょうか。
 また、そういった面も含めて、種々の問題はありながらも、条例化されたということは、導入は不可避と考えますが、その点については、教育委員会はどのように考え、実施していくのでしょうか。
 最後に、伝統的行事と地域イベントにおける警察と地域民との連携についてお尋ねいたします。
 明石市の事故と裁判の結果を受けて、平成14年5月9日に警察庁生活安全局長より、雑踏事故防止についての通達が出され、それを基本に県内各地の雑踏警備がなされていると承知しております。
 さまざまなイベントでの安全確保について、主催者だけではままならず、各地警察の協力を得て、何とか安全を維持し、開催を続けてきております。イベントのみならず、地域と警察はさまざまに協力・連携しながら、生活の安全確保、防犯などの活動をしているわけであります。
 そうした地域との連携協力につきましては、地域住民も大変感謝しているわけでありますが、今後とも、地域住民と連携を密にし、協力して、安全確保を図りながら、地域挙げてのイベント等を開催していくべきと考えますが、こうしたイベントの雑踏警備、交通規制及び主催者との連携のあり方についての基本的な考え方、認識をお尋ねしたいと思います。
 若干時間が残りましたが、これで終わらせていただきますが、説明不足の点をしんしゃくしていただき、御答弁していただきたいと存じます。
 以上で、自民クラブ、嵯峨壱朗の質問を終わらせていただきます。
 御清聴まことにありがとうございます。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 嵯峨壱朗議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、私は、有権者に対しまして、政治に携わる者といたしましてマニフェストをお示しして、有権者の審判を経て県政の最高責任者としての任に当たっているところでございます。今後も、リーダーシップを発揮して、県政の任に当たっていきたい、このように考えております。
 また、マニフェストの作成、それに基づく政策の実行、さらには達成度の評価といった、いわゆるマニフェストサイクルによりまして、政策本位の県政運営が確立されていくもの、このように考えておりまして、私も、この4年間の達成度について、みずからが責任を持って評価を行うことといたしております。
 次に、合併市町が抱える課題と県の支援策についてのお尋ねであります。
 合併した新しい市町のまちづくりを支援するために、新市町まちづくりサポートセンターを県の方で設置いたしました。その活動の一環として、ことしの7月から8月にかけて現地調査を行いました。その結果、新しく誕生した市や町は分権時代にふさわしい自治体として新たなスタートラインに立っておりまして、いずれもいろいろ努力されている、こういうふうに認識しておるわけでありますが、一方で、旧市町村民の不安を払拭して、一体感をどう醸成していくかなどの課題に加えまして、地域住民が主体性を発揮することによる新たな住民自治の確立による地域の活性化なども課題となってきている、今このように把握しています。こうした課題を解決するために、新しい市、町の個別の課題について助言に当たっておりますし、それから、地域経営の研究等を行う場として新市町運営懇談会を開催いたしました。したがいまして、こうしたことを今後も行ってまいりまして、県としても必要な助言を行っていく考えでございます。また、県からの権限移譲や、これに伴う県職員の派遣、市町村職員との相互交流などの支援を行うことによりまして今後も新市町を積極的に支援していく考えでございます。
 次に、権限移譲を着実に進めるための県のスタンスということでありますが、県では、4広域振興圏体制のスタートを踏まえまして、市町村にできるだけ権限移譲をするということで、昨年度、その移譲の指針を策定いたしましたが、今年度におきましてはその内容をさらに大幅に見直しを行いました。そのポイントは二つございまして、移譲対象項目の拡充が一つであります。昨年度の約1.5倍となる912項目に対象をふやしまして、その内容も、市町村の行政基盤の強化につながる権限、住民生活に密着した権限、それから現に市町村が望む権限などをその中に盛り込んだところであります。こうした移譲に対して市町村の不安感というものがあるようでありますので、その不安感を解消して、移譲に取り組みやすい環境を整えることを今目指しておりまして、このため、所要の財源を措置いたしますとともに、人的支援を積極的に行いますことや、事前の研修に加えまして、移譲後の適切なフォローを行うことといたしております。
 こうしたことによりまして、現在、昨年度に比べてより多くの市町村、ただ、合併いたしましたので全体の市町村数は減っていますけれども、全体35のうち32の市町村でありますが、この32の市町村と地域の振興局との間で今前向きな検討が行われているところであります。県では、こうした権限移譲に伴う人的支援をさらに強化するために新しい県職員の派遣制度を創設いたしましたので、市町村の理解を得ながら権限移譲を一層進めていきたい、このように考えています。
 それから、県北・沿岸振興対策であります。特に沿岸地域は、かつて素材型産業を中心として県内産業を牽引してきた地域でありますし、また、県北地域は、食料供給に大きな役割を果たしてきた地域である、このようにとらえております。しかし、これまでの産業振興の取り組みは、産業構造が大きく変化する、そして農産物の輸入自由化など地域経済がグローバル化する大きな環境変化の中で、産業集積の戦略が不明確であったことや海外市場をにらんだ国際戦略の視点が不足していたことなどがございまして、必ずしも適切に対応することができておりませんでした。また、すぐれた地域資源を有しながらも、それらを生かした取り組みが十分になされてこなかったことも事実でありまして、他の地域に比べて地域経済の発展がおくれている、このように認識しています。
 今後は、豊かな自然とさまざまな良質な資源を有している県北・沿岸地域でありますので、それぞれ行動する各主体の役割分担を明確にして、地域の産業人の意欲を引き出して、地域が一体となってこの地域にある地域力を十分に発揮するための実効性のある取り組みを展開していく考えであります。
 今、議員の方から社会資本整備のために100億円基金というのを創設したらどうか、こういう提案もございました。この地域では、これまでも県で社会資本や各種生産基盤の整備に努めてきておりますが、今後も、三陸縦貫自動車道、八戸・久慈自動車道の整備など産業の根幹にかかわるものについて、先般お示しした基本方向案で示したとおり、引き続き整備の促進を図っていきたいと思います。また、治山、治水など県土を保全して県民の安全・安心を高めるための公共事業については、今後も引き続き重点的に取り組むことが必要と認識しております。そうした上で、真に必要な社会資本整備について、選択と集中により着実に実施していきたいと考えております。今、本県の行財政を取り巻く環境は大変厳しく、先般お示しした中期の財政収支試算でも多額の財源不足が見込まれております。新たな行財政構造改革プログラムの策定を今後してまいりますが、その中でも、限られた経営資源の中で政策の選択と集中を徹底して行うことが求められる、こういうことでありまして、このような中にありましては、今後、新たに行う事業のために、あらかじめ大規模かつ特定目的の基金を創設してこれに対応することは困難である、このように考えております。
 次に、公立大学法人である岩手県立大学について何点かお尋ねがございました。
 県立大学の使命でありますが、地域の進学需要への対応と、そして、本県のあすを担う人材の育成というその設立の趣旨から、地域社会の諸課題に対応できる優秀な人材の確保・育成を目的とした質の高い教育・研究を行い、これらを通じて地域に貢献していくことでありまして、この使命を果たしていくことが県立大学の存在意義である、このように考えております。県立大学には、県民の期待にこたえて、その使命を果たしていくことを私も強く望んでいるものであります。
 県立大学の設立当初の理念、目的あるいは学生像は何か、こういうお尋ねでございました。その建学の理念は、自然、科学、人間が調和した新しい時代を創造することを願い、人間性豊かな社会の形成に寄与する深い知性と豊かな感性を備え、高度な専門性を身につけた自律的な人間の育成を目指す、これを建学の理念といたしております。それを先般法人化いたしたわけでありますが、法人化に当たって県が定めた中期目標にもこの理念等は明示されておりまして、現在もこの建学の理念というのは変わっていない、そのまま引き継がれているということでございます。こうした建学の理念に基づき、県立大学におきましては、開学以来一貫して地域社会の諸課題に対応できる優秀な人材、心豊かで創造性に富み、進取の気性や国際的視野を持った人材、これは設立時点の基本構想にも重ねて書かれているものでございますが、今申し上げましたような二つの視点を持った優秀な人材の育成に開学以来一貫して取り組んできたところでありまして、現在も同様の考え方で大学教育を進めているものでございます。
 法人化された後の県立大学と県のかかわりについてのお尋ねでございますが、地方独立行政法人制度の基本的な考え方は、設立団体の事前関与を極力縮小して、業績評価など事後チェックへの移行を図って、法人が自主的、自律的で透明性の高い運営を行うことによってサービスの向上、業務の効率化を図る、こういうことでございます。こうしたことから、地方独立行政法人法によりまして大学と県とのかかわり方はおよそ次のように整理されておりまして、大学運営の基本方針に当たる中期目標の策定・変更、学生の授業料など料金の上限の決定・変更の認可、業務運営上欠くことのできない重要な財産の処分等の認可、県の附属機関でございます岩手県地方独立行政法人評価委員会による各事業年度終了時や中期目標終了時の評価、こういうことが大学と県とのかかわり、こういうふうにされております。
 いずれにいたしましても、県立大学というのは県の高等教育の重要な一翼を担う組織でございまして、人材育成、地域貢献の面で県の施策とも密接なかかわりがございます。日ごろから意見交換や連絡調整を図っておりまして、法人化後も、県が進める施策の方向を踏まえながら、県との密接な連携のもとに教育研究が進められるように互いに努めているところでございます。
 次に、建設業対策中期戦略プランについてお尋ねがございました。
 今後、公共投資の重点が社会資本の維持管理に移っていく、こういう大きな流れがありますが、本県建設業が有する経営資源が新たな分野に再配分されて、公共事業に過度に依存することなく健全な経営を行っていけるように企業の経営革新を積極的に支援していくことが本県産業の振興と雇用の安定にもつながる極めて重要な課題である、こういうふうにとらえております。県では、この建設業対策中期戦略プランの推進に向けて新たに各振興局に支援体制を整備して総合的な対策に努めているわけでありますが、今後も、建設業界の自立的な取り組みと連携しながら、地域や企業の実情に応じた、より実効ある支援に取り組んでいきたい、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いします。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) まず、平成17年度の県税収入等についてでございますが、平成17年度の県税収入額は前年度に対しまして0.2%の減となっておりまして、全国の伸び率5.1%増と比べて5.3ポイント下回っている状況でございます。
 この理由につきましては、法人二税が対前年5.0%増と伸びてはございますけれども、この伸びが全国の伸び率13.6%増に比べて低い水準であったということ及びこの増加をしている法人二税の占める税収シェアが全国では37.2%あるのに対しまして本県では27.5%と、総体的に法人二税が小さな割合になっている部分が大きい理由になってございます。また、全国に比べまして税収シェアが高くなっております軽油引取税が前年度を下回っていることも原因の一つかと考えております。
 次に、本年度の税収の状況でございますが、8月末の県税の調定額は773億円余となっておりまして、前年同時期に対しまして5.4%の増となっているところでございます。
 主要税目の状況では、自動車税と軽油引取税が前年度を下回っておりますが、法人二税につきましては前年度を16.2%上回る形で大きく伸びてございまして、また、個人県民税や地方消費税も前年度を上回る調定状況となっております。
 税収の安定的な伸びを確保していくためには、地域経済の活性化、また、企業活動や雇用情勢の改善等が必要なものでございますけれども、あわせまして、県税収入の確保策といたしまして各般の徴収対策を実施するほか、新たな施策推進の観点から森林づくり県民税の導入などにも取り組んできたところでございます。
 次に、入札制度についてでございますが、御指摘のとおり、本県では低入札価格調査制度と最低制限価格制度をそれぞれ採用しているところでございます。このうち低入札価格調査制度につきましては、最低制限価格制度と比べまして、建設業者の企業努力を喚起し、工事の施工に問題がない限り最低金額を提示した入札者と契約ができることから、より低コストでの事業執行が可能になるというメリットがございまして、県民からお預かりした財源で事業を進めていく上では望ましい発注方法と考えているところでございます。しかしながら、低入札価格調査制度は、入札時の低入札価格調査の実施や施工段階での重点監督など多くの人員及び時間を要するといったデメリットもございますので、調査体制の整備が必要となるわけでございます。本県の実情にかんがみまして、設計額1億円を境界といたしまして二つの制度をそれぞれ採用しているものでございまして、具体的には、設計額1億円以上の規模の大きな工事につきまして低入札価格調査制度の方を採用しているところでございます。
 その低入札価格調査制度につきまして廃止を検討してはどうかという点でございますけれども、公共工事入札契約適正化法に基づき閣議決定されました適正化指針におきまして、最低制限価格から低入札価格調査制度への移行に努めるという旨も閣議決定されているところでもございまして、引き続き低入札価格調査制度を活用しながら適正な入札契約事務の執行に努めてまいりたいと考えているところでございます。
 それから、台風12号による被害の状況でございますけれども、本県における被害状況につきましては、9月30日現在で被害総額が20億5、600万円余となっておりまして、被害は、沿岸北部を中心として、野田村、岩泉町、田野畑村など10市町村に及んでいるところでございます。被害の内訳といたしましては、林業関係が10億円余、公共土木施設関係が4億7、500万円余、水産関係が2億7、000万円余、漁港関係が2億6、500万円余などとなっているところでございます。
   〔総合政策室長相澤徹君登壇〕
〇総合政策室長(相澤徹君) 新たな公会計制度についてでございますけれども、総務省におきましては、わかりやすい財務情報の開示等を目的に、新たな財務諸表――現在公表しておりますバランスシート、行政コスト計算書のほかに、純資産変動計算書、資金収支計算書を加えた4表――を公表する仕組みを検討しているところでございます。県といたしましては、総務省の新しいモデルをもとに、3年後――平成20年度決算をめどに新たな財務諸表を公表する考えでございまして、これによって財務状況の透明性が高まり、本県財政の健全化に活用できるもの、このように考えております。
 また、総務省に設置されております新しい地方財政再生制度研究会におきましては、議員御指摘のとおり、従来型のフロー指標である実質収支比率の見直しに加えて、将来的な債務償還能力などを明らかにするストック指標を整備し、より透明度の高い財政情報の開示と財政健全化を図っていくための早期是正スキーム、いわゆる再生型破綻法制の導入について一体的に検討が行われている、こういう状況にございます。
 これが導入された場合の本県の財政評価はどのようになるのかというお尋ねでありますけれども、現在、総務省において検討されている段階であり、また、全国知事会においても再建法制等問題小委員会を設置し、検討を開始している、こういう状況でございます。したがって、まだ現段階では指標のあり方も含めてさまざまな角度から議論が行われているところ、そういう段階ではないかと考えております。いずれにしても重要な課題でありますので、十分注視してまいりたい、このように考えております。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) まず、新たな公会計制度の市町村への導入見通し等についてでありますが、県内市町村においては、新たな公会計制度の一部であるバランスシートを作成しているのは県内市町村の57.1%に当たる20市町村になっているところでありますが、公営企業や第三セクターなどを含む連結バランスシートについては、現段階では作成されていない状況にあります。
 総務省から示されましたいわゆる地方行革推進指針におきましては、先ほど総合政策室長が答弁したとおり新たな財務諸表が標準形とされておりまして、関連団体などを含む連結ベースでの財務諸表の作成を、人口3万人以上の都市は3年後、平成21年度まで、人口3万人未満の都市及び町村は5年後、平成23年度までに整備するよう要請されているところであります。県としても、今後、通知が予定されております総務省の実務的な指針をもとに、これまでの課題などを整理した上で、各市町村に対して新たな公会計の整備が進められるよう助言してまいりたいと考えております。
 また、新たな公会計制度が導入された場合の効果でありますが、県の場合と同様に、資産、債務の適正な管理、住民などに対するわかりやすい財務情報の開示が可能となるといったことから、市町村財政の健全な運営を確保していく上で有効であると考えております。
 次に、一括移譲方式を活用した権限移譲についてでありますが、県では、平成14年度から権限、財源、専門的知識を有する人材を3点セットで移譲する一括移譲方式を開始したところでございましたが、対象市町村からは、迅速かつ効率的に専門業務をこなすことができるという評価を得ているところでございます。
 しかし、この一括移譲方式では1事務で1人に相当する事務量があることが派遣する要件であるため、対象事務は極めて限られた分野となっております。そこで今般、先ほど知事が答弁したとおり、この一括移譲方式を拡大、発展させた新しい県職員の派遣制度を創設し、平成19年4月から実施することとしております。
 この制度は、人的支援の対象事務を拡大するため、原則として複数の移譲事務で1人量に相当する場合は県職員の派遣を受けることができるようにしようとするものであります。これによって、移譲事務に限らず、県職員が有する専門的能力を市町村が希望する分野で発揮できますことから、地域振興にも大きく寄与するということで期待いたしているところでございます。
 次に、早期の権限移譲が新市町の経営に及ぼす影響についてでありますが、市町村合併の目的は、分権時代に対応した強固な行財政基盤を築くことにあり、その中で権限移譲は、みずからの手で実現することができる行政基盤強化の重要な手段であります。合併市町は、合併の効果の一つとしてこれまで以上の行政サービスの充実を住民から求められることとなりますけれども、合併後早期に権限移譲による市町の権能の強化に取り組むことにより、これまでできなかった行政サービスが住民に提供できるなど、新しい市町の姿を住民の目に見える形で示すことが可能となります。このことから、市町村合併を機に権限移譲を受けることにより、合併による行財政基盤の強化と権限移譲による行政能力の向上・拡大効果が相まって新市町の経営に相乗的にプラスに作用するものと考えております。
 次に、県北を一くくりにする産業振興策についてでありますが、この広域圏の設定の趣旨は、より広域的な視点で地域資源や人材を結集し、地域間競争に打ち勝つことのできる戦略的な産業振興に取り組むことにより、一刻も早く自立可能な地域経済の強化を図ろうとするものであります。
 そのような視点に立ちまして、県北広域振興圏におきましては、1次産業のウエートが高い産業構造のほか、畜産や園芸を中心とした農業の集積、食品産業の展開など産業の連続性、類似性という強みを生かし、農林水産業振興の一層の強化とそれらを基盤とした特色ある食産業の展開、食を核とした交流人口の拡大を目指そうとするものであります。特にも県北圏域は、産業経済の面において密接な関係にある八戸都市圏との有機的な連携による広域観光の推進や企業間連携など、産業振興上の相乗効果が期待できるものであります。このような考え方のもとで今回の基本方向をまとめたところでございますが、この圏域の設定によっても、地域の特性を埋没させることなく、それぞれの特徴を生かしていくことが重要であります。そのため、市町村ごとに作成した取り組み工程表などの取り組みについて、圏域の広域的な取り組みともあわせてきめ細かな施策を展開することが重要でありまして、そのことによって県北圏域の産業の底上げを図っていく考えであります。
 次に、現場の声を反映する仕組みづくりについてでありますが、県北・沿岸圏域の産業振興に当たりましては、地元市町村を初め、民間企業、産業関係団体並びに地域住民の方々とともに共通の目標を持って重点的に取り組んで、早期かつ着実に成果を上げることが重要と認識いたしております。そのため、市町村や地域の産業関係者等の声を可能な限り反映させ、実効性のある取り組みとするため、意見交換を重ねてきたところであります。具体的には、振興本部発足後に各地域で市町村等との意見交換を実施したのを皮切りに、県が行ってきた取り組みの検証に関し、関係部局あるいは地方振興局職員が地域の産業関係者や市町村職員等と延べ166回に及ぶ意見交換を行い、さらには、知事と市町村長や産業関係者の方々が産業振興の具体の取り組みに関して意見交換を行ってきたところでございます。また、地方振興局においては、地域との協働の視点から、各種団体関係者や住民等との意見交換あるいはワークショップなどを実施しているところでございまして、今後とも、そうした取り組みを重ねることによって地域の声を施策に反映してまいりたいと考えております。
 次に、地域限定の県単補助金等の拡充についてでありますが、県北・沿岸圏域における産業振興のためには、事業の実施主体となる民間事業者の活動が活発に行われることが重要であります。そのため、これら圏域の中小企業を対象とした中小企業振興特別資金を創設し、企業誘致におきましては、大型補助を創設し補助採択要件の緩和や補助率を優遇するなど、県北・沿岸圏域を対象とした特別支援措置を講じているところでございます。さらに、今般御提案申し上げております補正予算におきまして、この中小企業振興特別資金につきましては、ニーズに十分対応するという観点から融資枠を大幅に拡大するとともに、新たに、当圏域で地域資源を生かした分野で新事業を開始する者等を対象とした県北・沿岸地域起業化支援事業費補助金を創設することといたしております。加えて今月10日からは、農業の担い手育成・確保対策の一環といたしまして、農業近代化資金の貸付対象に農業分野に新規に参入しようとする企業を追加することといたしておりますけれども、特に県北・沿岸圏域におきましては、特例措置として、通常融資率80%のところを100%に引き上げることといたしております。今後におきましても、このような特別な支援策をも念頭に置いて取り組みを進めていく考えであります。
 次に、二戸駅に停車する新幹線の列車本数をふやすことについてでありますが、現在、二戸駅に停車する列車本数は、下り12本、上り11本の計23本であります。これは、JR東日本から、現在の停車本数は、首都圏から北海道までの利用者数などを勘案し、全社的な調整を行った上で編成したものと聞いております。県としては、これまでも地元市町村の要望を受け、停車本数の増加等についてJR東日本に対し要望を行ってきたところでございますが、現在のダイヤは必ずしも地元市町村の意向に十分に沿うものでないことに加えまして、議員御提案のとおり、観光振興を初め、県北・沿岸振興を図る上からもさらなる停車本数の増加が必要であると考えております。新幹線の輸送能力や時間短縮の効果を活用した首都圏等との交流の拡大は、観光振興を初めとする県北・沿岸振興を図る上で大きな力になるものと認識しておりますことから、今後ともJR東日本に対して、地元市町村とともに、県北圏域における積極的な利用促進を図りながら、二戸駅への停車本数の増加について要望してまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長西畑雅司君登壇〕
〇県土整備部長(西畑雅司君) まず、港湾の使用料についてでございます。
 本県の港湾施設使用料並びに占用料につきましては、東北各県と比較して、平均的な水準にあるものと認識しております。
 しかしながら、県では、港湾の利用を促進するとともに、産業の振興を支援するため、港湾施設使用料のうち、コンテナ定期航路の船舶に係る岸壁使用料につきまして、減免措置を講ずる方向で現在調整を進めております。
 また、今議会において、岩手県港湾施設管理条例の一部を改正し、新たに取り扱いコンテナ数に応じて使用料を算定するコンテナ専用野積み場使用料の設定を提案しており、こうした施策により、定期航路の開設・拡充に努めてまいりたいと考えております。
 次に、建設業の新分野への取り組みでございます。
 9月末現在で、農林水産業や環境リサイクル等の分野で27件延べ46社と把握してございます。先進的な取り組み企業15社が知事表彰を受賞するなど、一定の成果を上げているものと考えております。
 今後は、建設企業が、新分野進出などに向けて、より一層実効ある展開が可能となるよう、経営面も含めまして、よりきめ細かな支援が必要と考えております。
 このため、各振興局の総合相談センターにおいて、コーディネーターなどの専門家と連携し、各分野の施策を活用しながら、地域や企業の実情に即した助言や新分野進出後のフォローに努めてまいります。
 次に、貸付金制度についてでございます。
 この制度は、新分野進出や新技術の開発などによる建設企業の経営革新の取り組みを資金面から支援するものであります。
 この制度の検討の過程では、岩手県信用保証協会や岩手銀行を初めとする地元金融機関との間で、保証料率やリスク負担などにつきまして協議を行いながら、県と地元金融機関、岩手県信用保証協会の3者が連携する枠組みとしました。
 具体には、県が貸付金の原資を一部預託し、金融機関が協調して低利融資を行うもので、県と信用保証協会の負担により保証料を軽減するほか、貸付事故の際は、信用保証協会と金融機関が共有して責任を負うこととしております。
 また、この制度を利用する場合には、企業の経営状況や貸し付けに係る事業内容等につきまして、金融機関と信用保証協会による審査が十分なされていくものと考えております。
 次に、災害復旧でございます。
 台風12号の通過に伴い、沿岸北部を中心に、道路、河川、港湾施設などが被災し、直ちに国土交通省に対し災害報告したところであり、11月に予定されている国の災害査定を受けて復旧することとなります。
 現在通行どめとなっております一般県道野田長内線につきましては、地域の重要な路線であることから、国に協議の上、応急工事に既に着手しており、10月中に1車線通行確保を目指しております。
 港湾施設につきましては、被災後直ちに久慈港の仮護岸などの応急工事に着手し、港湾機能の確保を図ったところであり、早期復旧に努めてまいります。
 さらに、二級河川宇部川など、国の災害復旧事業の対象から外れる箇所の復旧につきましては、県単災害復旧事業などによりまして復旧に努めております。
 次に、久慈港湾口防波堤についてでございます。
 津波対策と湾内の静穏度向上を目的として、平成2年度から国により整備が進められております。
 北堤2、700メートル、南堤1、100メートル、合わせまして全体延長3、800メートルのうち、平成18年度末までに、北堤350メートル、南堤150メートル、合わせまして500メートルが概成する予定であります。
 全体事業費1、200億円に対しまして、平成18年度までの事業費は255億8、000万円であり、事業費ベースでの進捗率は21.3%となる見込みであります。
 県では、久慈港の利用促進の観点からも、高波による被害を防止し湾内の静穏度向上を図ることが必要と考えており、釜石港湾口防波堤が今年度に概成することも踏まえまして、今後さらに一層の進捗が図られますよう、国に対して要望してまいりたいと考えております。
 最後に、GPS波浪計についてでございます。
 GPS波浪計は、沖合で迅速に津波や高波の情報を把握することを目的としまして、国土交通省が、東北全体で10基の整備を計画しております。そのうち、岩手県沖には3基の設置が予定されております。
 平成18年度には、岩手県南部沖――釜石沖になりますが――と宮城県中部沖に、漁業関係者との調整も図られ、平成19年3月に設置されると伺っております。残り2基の岩手県沖への早期設置に向けまして、引き続き国に対して働きかけてまいりたいと考えております。
   〔商工労働観光部長阿部健君登壇〕
〇商工労働観光部長(阿部健君) 県北・沿岸地域における職業能力開発センター等の産業界との連携、またセンター等の充実強化についてでありますが、現在、産業界との連携につきましては、職業能力開発センター等におきまして、地元企業のニーズに応じた各種在職者研修を実施するとともに、訓練生のインターンシップを地元企業の御協力の中で行っているところであり、これら産業界との連携につきましては、それぞれの地域におきましてさらに強化してまいりたい、このように考えているところでございます。
 また、職業能力開発センター等の充実強化、この部分につきましては、宮古・下閉伊地域に集積が進みつつあるコネクター及び金型企業等の要望を受け、平成19年4月から宮古高等技術専門校に金型技術科を設置することとしたほか、久慈職業能力開発センターにつきましては、今後、地域における企業ニーズを踏まえ、造船関連学科等、新たな学科の設置について検討するなど、県北・沿岸圏域における産業振興の基本的方向、また産業集積の動向に沿いながら、今後とも産業人材の育成に努めてまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) 台風12号による農林水産業分野の被害の復旧状況と見通しについてでございますが、最も被害の大きかった防潮堤と漁港施設につきましては、11月に、それぞれ国の災害査定を受け、速やかに復旧工事に着手する予定となってございます。
 また、国の災害復旧事業採択基準に満たない漁港施設被害につきましては、県単事業で随時工事着手しているところでございまして、市町村管理分につきましても、年度内復旧を指導しているところでございます。
 さらに、水産施設や養殖施設の被害につきましては、可能な限り補助事業や制度資金を活用するとともに、漁船等の被害につきましては、保険金の早期支払いを要請するなど、災害復旧に万全を期してまいりたいと考えております。
   〔教育長照井崇君登壇〕
〇教育長(照井崇君) まず、高校再編の基本的な考え方についてですが、昨年策定した県立高等学校新整備計画後期計画においては、その基本的な考え方として、生徒一人一人が自分の個性や自分にふさわしい生き方を選択できるように、多様で柔軟な高校教育を展開する学びの環境を整えること、活力ある教育環境を整えるため、望ましい学校規模を確保すること、社会の変化や生徒のさまざまな興味・関心、進路希望等に対応し、選択の幅が広がるよう、多様で特色ある学校・学科を配置すること、地域社会を担う人材を育成するため、産業界のニーズや県の産業振興施策の方向性を踏まえること、としております。
 次に、総合学科高校の評価についてですが、総合学科高校は、普通科目だけでなく専門科目も含めた多様な教科科目の中から生徒が自己の興味・関心に基づいて主体的に科目を選択し、将来の進路を見据えた学習を行うことができる高校で、現在、岩谷堂高校など6校を設置しています。
 岩谷堂高校以外の高校では、まだ卒業生を出しておらず、その評価はこれからですが、異なる分野の専門教育を学ぶことにより、広い視野や柔軟な考え方を身につけることができ、将来の職業観が培われること、自分の進路希望に応じた科目選択ができることで、入学後の生徒の満足度が高いことなどが報告されています。
 一方、課題としては、多様な進路希望を持つ生徒の進路目標を達成させることの困難さなどが上げられております。
 学科再編、学級減等についてですが、後期計画においては、学科改編を含めた学級数の取り扱いについては、中学校卒業予定者数の状況、高校進学希望者の志望動向、各高校の定員充足状況などを勘案しながら、毎年度調整することとしています。
 また、専門高校における学科再編については、地域の産業の動向や産業界のニーズ、県や地域の産業振興施策の方向性も踏まえながら、望ましい学科の配置や教育内容の充実に努めることとしております。具体的に検討する際には、地域の状況を最もよく理解している学校長から意見を聞き、地域のニーズや学校に対する要望などの把握に努めるなど、学科改編には時間をかけて取り組んでいるところです。例えば、来年度、久慈工業高校においては、建築科と定員割れしている土木科を統合することで双方の内容を学べるようにし、これまでの応募状況も考慮して現在の定員を維持することとしています。
 また、学級数については、大幅な定員割れが続いている状況や将来の志願者数の動向などを踏まえて、応募状況に見合った学級数となるよう調整してきているところです。
 次に、新昇給制度についてですが、この制度につきましては、教育関係者や職員団体などから、これまでさまざまな御意見をいただいていますが、その中の主な反対意見としては、教育現場に教員評価はなじまない、この制度の導入により教職員の連携・協力体制が弱まり、学校経営に支障を来す、制度の導入が拙速であるなどというものです。
 こうした反対意見の多くは、公務員制度改革に基づく新昇給制度の導入そのものに対する誤解やその具体的な運用方法や内容について、正確な情報が伝わっていなかったことによるものと認識しています。このため、この制度について正しく御理解いただくための資料を作成、配布して、周知を図るとともに、市町村教育長、各学校長に対する説明会を各地区で数次にわたって行ってきているところです。また、職員団体等との意見交換も随時行ってきており、制度の趣旨・内容については、おおむね一定の理解をいただいてきているものと受けとめています。
 現在は、学校現場にふさわしい仕組みにしてほしい、そのために広く教育関係者から意見を聞き、運用方法や内容に反映してほしい、実施に当たっては、試行期間を設けるなど慎重に進めてほしいなど、この制度の実施に向けての具体的な御意見や御要望をいただいているところです。
 そこで、この新昇給制度の具体的な運用方法や内容について、現在、市町村教育長や校長の代表者などから御意見を伺いながら、試行の実施も含め、鋭意検討を行っているところです。
 県教育委員会としては、教育関係者の御理解のもとに、できるだけ早期にこの制度を本格実施できるよう、全力で取り組んでまいります。
   〔警察本部長山下史雄君登壇〕
〇警察本部長(山下史雄君) イベントにおける警察と地域住民との連携についてでございますが、多数の方が集うイベントの開催に当たっては、過去の教訓も踏まえ、その安全対策には万全を期すこととしております。
 具体的には、行事の開催により雑踏の原因をつくっている主催者は、行事の内容を踏まえ、自主警備の計画を策定、実行する。一方、警察は、主催者の計画に対する指導・助言を行い、さらに、主催者では措置できない犯罪の予防検挙、必要な交通規制、その他、事件事故防止上の必要な措置を講ずる。そして、それぞれの役割を踏まえ、警察と主催者が相互に緊密な連携を図る。こうしたことが必要であると考えております。
 県警察といたしましては、この考え方に基づき、県内各地で行われる祭礼を初めとした各種イベントの開催に際し、計画段階から主催者及び関係者と、そのときどきの条件や事情を踏まえた十分な連絡、打ち合わせを行うことによって、イベントの円滑な遂行と事故の絶無を図ってまいる所存でございます。
〇11番(嵯峨壱朗君) ありがとうございました。何点か質問させていただきます。
 初めに、増田知事にお尋ねします。
 最初の質問、官僚的知事、それと政治家的知事という質問をしましたが、この趣旨は、いわゆる常に両方の側面を持っていると思うんですね、そういった事務的な面も含めると。その中で、どうしても重要な問題に接した場合とか、政治家的側面が強く求められる部分があるかと思うんですが、それに知事は、こういった問いについてどういうふうに認識しているかということ、みずからの認識は結構でございますので、このとらえ方についてちょっと、お考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
 それと、県立大学のことですけれども、新しい学長が随所で、国際的な人材を育てるとか、もしくは外交官を育てるみたいな、そういうふうなことを述べているように聞いているというか、私も文章等を見ているんですが、それは私、本来の、先ほど知事から答弁あった趣旨と違う、いわゆる建学の趣旨も含めて、望むべき学生像というものも含めて、大分趣旨が違うのではないかと私は思っているんです。確かに国際的な感覚にすぐれたというか、そういったものを身につけることは必要ですけれども、それを主なものとして大学を維持するのが県立大学の役目なのかというのを素朴に疑問に思っておりますが、その辺、もう少し詳しくお聞かせ願えればと思います。
 それと、権限移譲についてですけれども、少しはごめんなさいみたいなものがあるかと思ったんですが、何もなかったんですが、それはしようがないですね。それについては、よくわかりました。
 それと、先ほど、これは地域振興部長ですけれども、やはり広域という観点で、4広域という視点で見ても、産業振興というのはやっぱりちょっと違うのではないかと私は思っているんですね。
 例えば、作況指数というのがございますけれども、沿岸・北部と出るんですが、二戸と久慈と、恐らく大分違うと思うんですよね。米のできぐあいも含めて、気候も違いますので。それを一くくりにして作況指数というのを出すんですね。あれはいつも疑問に思っていましたが、恐らく大分差があると思うんですよ。ことしはどうかですけれども、そういったものと同じような感じがするんです。一くくりにすると、実際の実情が見えない。
 先ほど、市町村とさまざまな計画等も踏まえてということでしたけれども、どうも統一的に実態を把握し切れないのではないか、そういった懸念を持っております。もう一回、その点の考えをお聞かせ願えればと思います。
〇知事(増田寛也君) 2点、私の方からお答え申し上げますが、まず、知事の座についてでありますけれども、これは、行政機構のトップという性格を持っています。これは、行政機構を官僚機構というふうに言いかえてもいいかもしれませんが、官僚機構のトップである。ただ、そのトップは、下から上がってくるのではなくて、選挙で選ばれるということで、それは、当然のことながら政治家的な側面を持っている。両面を兼ね備えた形で、いずれにしても県民のために最適な決断、判断をしなければいけない、そういう存在であろう。ですから、一面的なものではなくて、そういう、それだけの重たい座にあって物事を決めていかなければならない、そういうことを常日ごろから認識をして私もやっているつもりでありますが、今後とも、そういうことでリーダーシップを発揮していきたいというふうに思います。
 それから、県立大学の関係で、今の学長が、国際的云々ということをいろいろ言い過ぎているのではないかというような御趣旨かと思うんですが、やはり設立時点での基本構想、あるいは建学の際の理念の中でも、心豊かで創造性に富み、進取の気性や国際的視野を持った人材を育成するということが書かれてありまして、県内の産業状況を見ても、国際的な視点で物事をとらえるということは大事ですから、やはりそれだけの視野を持った人材を育てる、そういうことを多分学長も強調しているのではないかと。
 地域に貢献できる人材、そして、常に地域に貢献するという気持ちを持つということが大事でありますから、そういった国際的視野を持ちながら、いずれそれぞれの学生たちが、その後の生き方の中で、やはり地域貢献ということは忘れずに育ててほしいと思いますし、そのことは、学長も私にはっきりと言っておりますので、建学の精神を生かした大学教育を今後もあの県立大学で果たしていっていただきたい。
 いろいろとお話がございましたんですが、常日ごろから、法人化をされた後も、県の施策の方向を向こうに伝えて、それで、向こうもそれを踏まえながら学校教育をやる、そういう形になっておりますので、ここでの議論なども、今後向こうによく伝えておきたいと思いますが、その上で、県立大学が大いに有為な人材を発揮できるように、こちらもよく見守っていきたいと考えております。
〇地域振興部長(藤尾善一君) 広域圏を一くくりにしたということにつきましての御懸念でございますが、この県北・沿岸圏域の産業振興というのは、いかに競争力を高めていくかということであろうと考えておるわけでございまして、そのためには、いわゆる市場の評価というものを圏域内の産業に結びつけていく。それから、もう一つは、圏域内の企業の有機的な連携といったようなもので、例えば、先ほど申し上げたような食産業等の振興を図っていく。いわゆるそういったことが必要になるわけでございますけれども、そのためには、圏域内の地域資源というものを生かすということが基本前提となってございます。
 地域資源を生かすということは、それぞれの地域のさまざまな実態の違いというものも十分配慮した上で生かしていくということが、今申し上げましたいわゆる県の考え方の中には含まれておりまして、そういうことで、いずれ一言にして言えば、いかにこの地域の競争力を高めるかという観点に立っての設定というふうに御理解いただきたいと思います。
 ただ、それを進める上では、いわゆる県だけではなく、市町村も、あるいはまた地域の産業関係者の方々と協働して取り進めるということを繰り返し申し上げてきておるわけですけれども、何かさまざまな産業振興を進める上で不都合な点といったようなものがあるとすれば、それは地域戦略会議、こういった中でいろいろと議論を重ねながら軌道修正をし、実効性のある取り組みを展開していく、そのように考えておりますので、何とぞ御理解をいただきたいと思います。
〇議長(伊藤勢至君) これにて嵯峨壱朗君の質問を終わります。
 次の方に入りますまで、ちょっとお待ちをいただきたいと思います。
 次に、関根敏伸君。
   〔15番関根敏伸君登壇〕(拍手)

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