平成18年12月定例会 第22回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(平沼健君) 自由民主クラブの平沼健でございます。通告に従いまして質問させていただきます。
 まず、改革派知事としての3期12年間について伺います。
 2003年の知事選挙で、環境首都、スローライフ、そしてローカルマニフェストを掲げ3選を果たした増田知事が、10月30日、来春の知事選に出馬しないという突然の引退表明に、多くの県民から惜しむ声が聞かれました。多くの県政課題が横たわっているときだけに、非常に残念であります。
 4期は長いとか、あるいは人物次第だと言われておりますが、それは別にして、大きなスローガンを掲げて県民の負託を受け、この12年間、県政のトップに君臨し、産業振興、雇用拡大、行財政改革、県北・沿岸振興による格差是正、さらには地方分権への取り組み等々、問題はいまだ山積しており、そのいずれもが道半ばであります。ある程度さきの見通しが開け、評価できるところまで責任を持って取り組まずに身を引くのは、無責任と指摘せざるを得ません。このことについて、知事のお考えを伺います。
 知事は、改革派知事として12年前に登場し、政策公約集、マニフェストをいち早く掲げたり、がんばらない宣言や地方6団体の中心的存在として、外部ではその名をはせたのも事実です。しかしなから、内情はどうでしょうか。国の景気浮揚対策に乗せられたとはいえ、財政規模から見て、東北6県の中でも異常なほどの公共投資を行い、中盤以降は急ブレーキを踏み続けざるを得なかった結果が、今の実態です。
 新しい中期財政見通しが8月に試算され公表されておりますが、それによると、平成19年度から22年度までの4年間の歳入・歳出ギャップが、2、579億円と拡大いたしました。これは、地方交付税の縮小が原因だと述べておられますが、県債残高が1兆4、000億円強、県民1人当たり100万円強の借金まで拡大した実態を踏まえ、プライマリーバランスの達成と維持等の対策がうたわれておりますが、これまでの財政見通しの甘さが大きかったのではないかと考えます。
 知事は、これまでの12年間の財政状況について、御自身のこれまでの判断や見通しをどのように総括されるのか、お伺いします。
 知事は、平成11年度に、県政史上最も多くの県民の参画を得て岩手県総合計画を策定いたしましたが、知事は、その達成状況をどのように評価しているのでしょうか。この総合計画は、平成22年度を最終年度とするものですが、知事御自身は、マニフェストをより重視しているとも伺っており、増田知事が退任されると、この計画は打ち切りとなるのでしょうか。それとも、新しい知事にそのまま引き継がれるのでしょうか、伺います。
 知事のマニフェスト、誇れるいわて40の政策が、本年8月に評価レポート2006として発表されましたが、知事個人のマニフェストを知事部局が評価するというのは、全くおかしなことであり、私は、これはあくまでも県民一人一人が、実際に自分が肌で感じ評価すべきものだと認識しております。
 さて、昨日の一般質問でも触れられていましたが、11月19日の第3回ローカル・マニフェスト検証大会において、増田知事が2003年に掲げたローカル・マニフェストの総合評価が、対象6首長の中で2番目に高い、100点満点中88点の高い評価を受けたと報じられておりました。それはそれで喜ばしいことですが、一県民として、実感がないのは私一人だけでしょうか。特に、数値を盛り込んだ7項目を、重点施策として取り組んでこられたはずですが、知事御自身はこれをどのように評価しているのか、伺います。
 知事は、この12年間、多くの提案や改編を断行されてまいりました。知事が熱心に取り組んできたものの一つに、県組織の改編や行政改革があります。総合政策室を新設し、知事の理念や思いを戴した県政推進上、重要な政策の立案に取り組んでおられますが、果たして他部局の事業とうまく連動し、組織がうまく機能しているのでしょうか。また、知事は、職員の質を高めるために、数億円を費やしてトヨタ方式などの行政品質向上運動を展開してきましたが、一連の取り組みの成果をどのように評価しているのか、伺います。
 さらには、増田県政の負の遺産である森のトレーの訴訟問題と林野庁との延滞利息をめぐる口約束の件、岩手競馬問題及び肉牛生産公社への県貸し付けの問題等、これらの懸案の解決に向け、残る任期の中でどのように責任を果たそうとしているのでしょうか。
 次に、県事務の市町村への移譲について伺います。
 平成12年4月に地方分権推進一括法が施行され、地方自治法が改正されたことに伴い、機関委任事務が廃止されるなど、全国的な画一性を重視してきた旧来の国主導による中央集権型行政システムから、地方分権型行政システムへ方向転換することとなりました。このような流れの中で、市町村合併の進展により、本県の市町村数は35市町村となり、特に中核都市を目指す盛岡市や、人口10万人を超える合併市が複数誕生するなど、基礎自治体としての規模・能力が大きく拡充し、県内の市町村の状況が一変しました。
 一方、県は、九つの広域生活圏を本年4月より四つの広域振興圏に見直し、県南は広域振興局体制に移行しました。私は昨年9月の一般質問で、将来の姿として、地方振興局を廃止し、そのかわり本庁をより充実させ、住民に最も身近な市町村に権限を移譲し、市町村中心の行政システムをつくるべきとの提案をさせていただきましたが、市町村への権限移譲と地方振興局の改編は、知事の主張する道州制へつながる施策だと確信しているものですが、いかがでしょうか、知事の御所見を伺います。
 また、この取り組みを次の知事にどのように引き継ごうとしているのでしょうか、あわせて伺います。
 企画理事に伺います。
 県南広域振興局は、スタートしてまだ半年経過したばかりですが、企画理事を初め、関係者が新しい組織において一丸となって取り組んでいる姿には、敬意を表します。組織改編により、職員数も削減されたようで、行政としては効果があったと判断しているようですが、地域から聞こえてくる声は苦情ばかりのようですが、当局はどのようにとらえているのでしょうか。
 県南広域振興局の体制となり、屋上屋化がますます助長される結果になってはいないでしょうか。基礎自治体である市町村へ権限と財源を移譲し、基礎自治体の腰を強くすることを優先すべきだったのではないでしょうか。
 平成19年度から、県内31市町村へ財源を付して権限移譲が実施されようとしております。県が導入した権限移譲は、事務量や専門性をポイント化し、その度合いによって財源つきで県職員を派遣するものであります。今後とも、さらに多くの権限と財源を基礎自治体である市町村へ移譲していくべきであります。しかし、この移譲は、市町村中心の行政システムの確立が主目的であり、移譲に伴って発生する市町村の短期的な非効率性や経費の措置については、当初のふなれさ等を考慮して、業務量を算定するなど配慮すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 また、人的措置については、派遣期間が2年間と限られておりますが、事案によってはノウハウの移転に時間を要する場合があります。特に、技術関係や国家資格取得の関係で、そのような事案が想定されますので、派遣期間は柔軟に対応すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 せっかく市町村に権限が移譲されても、住民が市町村と地方振興局の両方へ出向くことになれば、屋上屋との批判は免れないところから、移譲事務フローの簡略化を同時に進める必要があると考えますが、どのようにお考えか、伺います。
 一方、県が導入した事務量や専門性による事務権限移譲のポイント数は、地方振興局の部の単位の合計であるため、県職員派遣の基準までポイントが届かず要望を見送った市町村や、県から提示された権限移譲項目と市町村が求めている項目がマッチしていないと指摘している市町村もありますが、これを、今後どのように調整し、権限移譲を拡大していこうとしているのか、お尋ねいたします。
 次に、県工事入札制度について伺います。
 平成17年9月に、県の入札制度が改変され、当面の措置として、予定価格はすべての工事で公表され、受注希望型指名競争入札は30社、指名競争入札は20社に拡大、入札時、工事内訳書の提出が義務づけられました。指名競争入札の拡大により、業者間のコスト競争が激しくなり、まさしく建設業界は淘汰の時代に入っております。どの産業、業界もコスト競争で競っているわけであり、建設業界も当然と言えば当然であります。しかし、初めから需給バランスが崩れ、予定価格を公表している入札制度では、入札参加者は価格を下げざるを得ないのではないでしょうか。
 増田知事は、今年度スタートした際の記者会見で、平成8年度に1兆780億円あった県内建設投資額が、平成22年度には50%以下に低下するとして、環境整備や円滑な労働移動に取り組む考えを示し、企業合併、連携、縮小・撤退の支援等々、これまで踏み込まなかった分野の支援策を含め、建設業対策中期戦略プランを実施しております。その根底には、県営建設工事では、県内業者への発注金額が、平成16年度の564億円から平成22年度には300億円弱と、約50%減となり、発注件数では同様に1、959件が751件と、60%以上も減になるとの試算があります。その支援策として、建設業総合支援本部をこの4月から設置し、各地方振興局には建設業総合相談センターを設置し対応しておりますが、今現在の利用・相談実態はどのような状況で、支援策としてどの程度機能しているのでしょうか。
 減り続ける工事量とふえる入札参加者数、そして下がり続ける自社の受注率と低落札価格。発注者からすれば、県民の血税で公共事業を発注するわけですから、1円でも安く、よい品質のものを納入させることは当然であります。しかしながら、反面、各建設業団体は、地元自治体と、災害など緊急時の救援協定を締結しております。
 元来、地域に根差した建設会社は、たとえ災害協定が結ばれていなくても、災害時には被災地にはせ参じてくれます。それは、自分自身が地域住民であると同時に、地域の仕事で生きているという地域との一体感、そして、建設業が地域経済の下支えになっているという自負があるからであります。しかし、競争性を重んじる入札制度の推進は、徐々に各自治体の地域性をなくする方向に動いているのが実態です。無理して仕事をとらなければ、企業経営が立ち行かなくなるから無理をする。これが現実ではないでしょうか。地元の物件はできるだけ地元の業者が、正当な競争のもとに受注できるよう、地域性を十分に加味しながら検討すべきではないでしょうか。私は、災害時の救援活動のみのために、地域性を重視すべきだと訴えているのではありません。すべての県工事において、入札参加業者数だけをふやして競争を高めることが、果たして地域経済と県土の発展に本当につながっていくのか、大きな疑問を感ぜざるを得ないのであります。
 公共工事に求められているのは、生活基盤整備による雇用対策を含めた地域振興であり、建設業の育成でもあります。今後、さらに入札制度をどのように改善しながら建設業を育成し振興しようとしているのか、今後に向けてのお考えをお示し願います。
 次に、県北・沿岸振興策について伺います。
 知事が岩手県の最重要課題の一つとして掲げている県北・沿岸振興における産業振興の基本方向と取り組み指針が、平成18年11月20日付で提示されました。
 内容は、県北圏域と沿岸圏域のそれぞれを農林水産業、製造業、観光、社会資本整備に分類し、各市町村から聞き取り調査した項目を細部にわたり分析し、具体的な取り組みまで記載されております。また、地域を対象とした中小企業への金融措置も拡大され、70億円枠の融資制度も実施されていることについては、改めて評価いたします。しかしながら、今回の取組指針の内容は、これまでに各地域が人材と財源不足のために実行できなかった事業であり、特別に目新しい項目はありません。しかも、取組方針については、必要な予算を確保し、重点的に取り組みを推進するとか、地方振興局においては、新たな組織体制を平成19年4月から整備するとなっております。担当部が大変な時間をかけ、苦労してまとめ上げたことは評価しますが、県北・沿岸住民は、早くからその先が知りたいのです。少子化による人口減少が続いており、特に県北・沿岸部から県央・県南部へ人口が移動しております。この県北・沿岸部の人口減少を抑えるためには、各地域の特徴を最大限生かすことが重要であり、交流人口をふやす必要があります。そのためには、まず道路網の整備や下水道など、おくれているインフラ整備に特化すべきだと思います。特に、隣の自治体に移動するには、地域の中心となる自治体を経由しなければ到達できないのが、県北・沿岸部の道路事情です。
 このような各地の横軸の道路整備を含め、県央部までの道路整備を最重点に掲げて実行してもらえば、地域の産業振興は、民間で工夫しながら進めていくものと確信するものでございます。種々産業政策を掲げ、産業振興を図ろうとすることも大変ありがたいわけですが、住民及び産業界が最も期待している道路整備に思い切った大きな財源を投入することが、県北・沿岸振興に短時間で効果が期待できると判断しますが、知事の御所見を伺います。
 次に、低気圧による漁業被害対策について伺います。
 10月6日から8日にかけて、県内に強い風雨をもたらした発達した低気圧は、県北と沿岸部を中心に大きな被害をもたらし、特に葛巻町を初め、岩泉町、久慈市、九戸村、軽米町、宮古市等を中心に、河川、道路、農地、農業施設、治山・林道施設、そして漁港関係施設、水産関係施設に集中的に被害が発生しました。10月20日現在で、被害総額は181億円以上と試算されております。中でも、いまだかつてない強大な波浪等により、水産関係施設に甚大な被害が発生し、漁業者の最大の収入源である定置網が破断、流失し、大きな被害となっております。定置網は、1ヶ統、数千万円から1億円以上もする高額な漁具であり、漁業共済にも未加入であったほとんどの漁業協同組合では、将来への漁業経営に大きな負担となっております。
 定置網を初め、カキ、ホタテ等の漁具、施設に対する共済制度は確かに存在しますが、この共済制度は掛金が高額なため、加入したい、あるいは加入しなければならないことはわかっていても、水揚げ量の減少、魚価の安い現状では、大半が共済に加入できない状態であります。
 今回の漁業被害に対し、県は、定置網の復旧支援に約2億円を原資とし、岩手県信用漁業協同組合連合会に預託し、8億9、000万円を個人漁業者や漁協に、貸付利率1%で協調融資する予算案が今定例会に提案されており、漁業関係者にとっては大変力強い支援だと思います。しかしながら、地球温暖化による海水面温度の上昇のせいでしょうか、近年の低気圧は従来と異なり、三陸沖で発達し、北東北に大きな災害を発生させることが多くなってきました。今後の天災に備えるためには、国、漁業団体、そして漁業従事者等との連携を図り、定置網を含めた漁具及び漁業施設の共済加入を、県が中心となって積極的に推進する必要があるのではないでしょうか。
 現在の共済への加入条件では、零細な漁家や中小漁協にとっては高額な掛金の問題があり、簡単には加入できませんが、加入者がふえれば掛金も安くなることが考えられ、県、漁業団体が掛金の一部を負担することで、全加入を図ることが今後の本県の漁業振興のためには必要ではないでしょうか。ぜひ、県が中心となって進めるべきだと考えますが、当局の御見解を伺います。
 最後に、岩手競馬事業について伺います。
 岩手競馬事業がここまで累積赤字を拡大してしまった背景には、多くの問題が指摘されておりますが、言ってみれば、無責任経営ということに尽きます。中でも、オーロパークへの過大投資が大きな要因であり、さらには、数年にわたる繰り上げ充用を、安易に疑問も感ぜずに繰り返してきたことも無視できません。こういう経営感覚は民間人には全くないものであり、倒産は絶対にないと信じられている県や市が資金の保証人であるために、関係者全員が、全く無責任になっているのだと指摘せずにはいられません。地方自治法施行令では、この繰り上げ充用が認められているそうですが、余りにも安易に、ためらいもなく、利用するだけ利用し、翌年度にその分を取り戻すだけの努力を怠ってきたツケが、現在に至っているのが実態です。
 そもそも、繰上げ充用とは、会計年度独立の原則の重大な例外をなすもので、当該地方公共団体にとってはまさに非常事態であり、支払いに支障を来さないための、やむを得ない特異な決算手段であるとされております。すなわち、地方公共団体に赤字決算が認められていないところから、緊急避難的に運用すべき制度でありますが、この件について、知事のお考えを伺います。
 先月20日、県競馬組合議会が新改革計画案を可決しました。岩手県議会から代表者を送り、多くの議論の末、競馬議会で新改革計画案が可決されたことは重く受けとめなければなりません。しかしながら、関係者にはまだまだ多くの努力が必要です。売り上げについては、国内全体の馬券売り上げが年々減少している中、他競馬主催者の発売を拡充し、岩手競馬の売り上げ増を図る計画が本当に現実的なのでしょうか。私には、全く疑問です。売上額は想定する売上額の10%減程度に抑えて、トータルコスト削減に重点を置いた再建計画でなければ将来への継続にもつながらず、ましてや、融資に対する今後の返済計画も立てられず、多くの県民の理解を得るのも難しいのではないでしょうか。売り上げに占める経費の割合を25%以内で実行する予定であれば、なおさら売り上げ予想額を下げるべきであります。でなければ、来年度純利益計画がプラス1、600万円ではスタートから赤字になり、廃止につながることが目に見えております。予想売上額を極力抑えた額で経費削減を再検討すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 今回の新改革計画は、これまでの計画が再三行き詰まった末の最後の手段として、単年度収支均衡を条件として、330億円を融資するというものであります。県、両市が、最後のとらの子である基金を取り崩し、融資財源に充てるものであります。
 昨日も質問がありましたが、基金残高の底が見える状態では、県民が大きな不安を抱くことになりますが、万一、不幸にも災害等が発生した場合の財源対策をどのようにしようとしているのか、伺います。
 また、廃止するにしても、基金取り崩しや起債、県税などで負債を処理するしかないわけでありますから、新改革計画を十分に精査し、単年度黒字を続けることができると判断し得る計画策定を選択しなければなりません。従来の計画は、余りにも見通しが甘かったことが裏づけられたわけであり、今回もまだ売り上げ増に期待した計画であり、事業再建という厳しさが感じられないのは私だけでしょうか。
 増田知事は、この新改革計画に基づく融資予算案を首尾よく議会を通し、返済計画のないまま融資330億円を決定して、その責任は果たしたと判断するのでしょうか。平成19年度に実行してみて、単年度収支の見通しが出るときは、岩手県知事でもなく、競馬組合の管理者でもあり得ないわけで、その最終責任は、次の知事がすべて負うことになるのでしょうか。岩手競馬事業全体の責任のとり方、責任のあり方を具体的に知事から伺います。
 以上で私の質問を終わりますが、答弁によっては再質問をする場合もあります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 平沼健議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、私の進退の表明の関係でありますが、まず、現任期については、県政の総仕上げとしてマニフェストを掲げまして、それを県の政策、40の政策として政策化をし、ものづくり産業の振興や地域力を生かしたさまざまな取り組みの推進に努めましたほか、行財政構造改革プログラムを実行するなどによりまして、財政面でのプライマリーバランスの黒字化も達成するなど、総じて成果を上げたというふうに考えております。さらに、産業成長戦略、県北・沿岸の産業振興の基本方向などの策定を通じまして、県が重点的に取り組んでいくべき方向性について道筋を示した、このように考えます。
 知事としての進退につきましては、多選の弊害を戒めるという私の考えに従いまして、任期を長くとも3期としたところでございます。
 財政状況の総括でありますが、この12年間の前半におきましては、社会資本の整備を特に前倒しをしながら進めてまいりました。これは必然的に県債残高の増加をもたらすものでありますが、県民生活の向上、そして、今後の発展の基盤となるインフラの整備促進を図ることを優先すべき、このような判断で行ってきたものであります。一方で、予測の範囲を超えた景気の低迷の長期化、さらには、当初の想定を超えた交付税の大幅減額の影響などもございまして、財政状況が年々厳しさを増しているという状況がございます。このため、財政の健全化に向けまして、平成15年度に行財政構造改革プログラムを策定してこれに沿った取り組みを進めてきておりまして、今年度は県債残高が減少に転ずるなど、今、財政健全化に向けての財政運営に努めているところでございます。地域経済の動向や国の動きを考えますと、当面こうした厳しい財政環境が続くと見込まれますので、今後とも持続可能な財政構造の構築に向けた取り組みを進めていくことが必要、このように認識しております。
 総合計画についてでありますが、これは、平成17年度末時点でありますけれども、政策の基本となる74の分野のうち50分野、すなわち全体の3分の2が目標水準をおおむね達成したと考えておりまして、総じては着実に推進されている、このように評価しています。このような計画に掲げる個々の施策については、県民生活を向上させていく観点から、今後も引き続き取り組んでいくべきもの、このように考えております。
 現在、こうした考え方をも踏まえて、総合計画の後期実施計画として位置づける新しい政策推進プランの策定の準備作業を行っている段階でありまして、大枠の論点について検討を進めておりまして、これは新しい知事にお伝えしたい、このように考えております。いずれ、現在の総合計画を最終年度まで継続するか否かにつきましては新しい知事が判断される事柄、このように考えております。
 次に、ローカル・マニフェストの検証の関係でありますが、先般、この検証大会が開かれました。当日は、知事と市長がみずから検証した結果を報告して、さらに、本人とは別に大学教授などの有識者も評価を行う、こういうやり方で行われました。私の評価は、進捗度の項目に対する評価は低かったんですが、その他の項目については高い評価をいただきました。いずれにしても、いただいた評価の内容を真摯に受けとめることが必要でありまして、当初掲げた目標の達成に向けて、県民の意向を踏まえつつ、全力を挙げて今後も取り組んでいく、こういう考え方でございます。
 私が4年前の選挙で掲げましたマニフェスト、七つの重点施策を含むマニフェストは、県の政策に置きかえました40の政策とは別でございます。そのもとにはなっておりますが別のものでございますので、40の政策については県の政策でありますので県の方で評価レポートをまとめたわけでありますが、それとは別に、私のマニフェストについては私と県民との約束ということでございますので、来年の2月を目途に私自身が評価をしてその結果を公表したい、このように考えております。
 次に、総合政策室の機能などについてですが、総合政策室は、政策全体の基本的な方向づけを行う中心的な役割を担っているところでございまして、部局間の連携のもとで、組織の自主性、裁量性が発揮されて、施策の効果的な推進が図られている、こういうふうに認識しております。
 また、地方分権の進展、そして、今申し上げました厳しい行財政環境などがございますので、本県を取り巻く状況が大きく変化しております。その中で、行財政基盤をしっかり構築すること、それから、質の高い仕事をしていくためには、前例踏襲型の行政運営を極力排除して、県民の視点、すなわち顧客本位の改革が必要でありまして、その関係で行政品質向上運動を起点とした一連の取り組みを推進してきたわけでございます。こうした取り組みを通じて、みずからの仕事を絶えず見直しをして改革するという意識が浸透してまいりましたし、それから、職員の政策立案能力の向上を初め、県民対応の改善、幹部職員のリーダーシップの向上などが図られてきた、このように評価しております。
 昨年度において、この取り組みに先行的に取り組んだ農林水産部、総務部では、改善によって生み出された時間を例えば担い手育成業務の推進など新たな課題の対応にシフトさせましたほか、超過勤務時間でも対前年比20%以上の削減といった成果も上がっておりますので、本年度は全庁的に取り組んでいるところであります。
 森のトレー、そして肉牛生産公社、さらには競馬組合など、こうしたいわゆる負の遺産解決に向けた責任ということでありますが、こうした懸案の解決に向けて、私も、私の任期の間で方向づけるべきものはきちんと方向づけたいという思いで取り組んでおりまして、残りの任期中、そのために全力を尽くしていきたい、このように考えております。
 それから、地方振興局の再編と道州制ということで、市町村への権限移譲の関係でございます。
 市町村への権限移譲は、住民に身近な行政サービスをきめ細かく総合的に提供できる市町村中心の行政システムを構築するための大きな手段の一つ、このように考えます。広域生活圏と地方振興局の見直しは、分権型社会の構築と産業の振興による自立した地域を目指す、こういう観点から、原則として広域振興圏ごとに一つの広域振興局を設置し、完結性の高い広域行政の実現を目指すもの、これら双方の取り組みによって地方分権改革が推進され、その方向性は将来の道州制にもつながるもの、このように考えます。これまで進めてまいりました市町村への権限移譲、そして地方振興局の再編等、分権改革に向けた取り組みにつきましては次の知事にもお伝えしていきたい、このように考えております。
 県北・沿岸振興についてでありますが、従来から社会資本や各種生産基盤の整備にこの地域で努めてまいりましたが、これまでのこうした社会資本整備は、公共投資による直接投資効果のみに過度に依存しておりまして、本来の目的である、整備をされた社会資本を活用した地域産業の振興への取り組みが不十分であった、このように判断しております。したがって、県北・沿岸圏域の産業振興を図っていくためには、分野を超えた戦略のもとで、既存の社会資本を活用しながら、産学金――金というのは金融ですが――と緊密に連携して、地域力を十分発揮し得る取り組みを重点的に進めていくことがより重要である、このように考えます。
 先般の県北・沿岸地域の産業振興の基本方向は、そうした考え方を基本として策定しておりますが、もちろん三陸縦貫自動車道や宮古盛岡横断道路の整備など産業の根幹にかかわる道路につきましては、基本方向に掲げておりますとおり、引き続き重点的に取り組むことが必要と考えます。今後も、公共事業の選択と集中を図っていく中で、必要な道路事業は着実に実施していきたい、このように考えております。
 次に、岩手競馬についてであります。
 まず、繰り上げ充用についてのお尋ねでありますが、会計年度経過後に至って歳入が歳出に不足するときに、翌年度の歳入を繰り上げてこれに充てることができるものと、このようにされておりまして、地方自治制度上、この繰り上げ充用というのは許容されるものではございますが、今、議員の方からも御指摘がございましたが、これはあくまでも緊急避難的なものである、このように認識しております。一方、当岩手競馬組合としては、競馬事業がいわゆる収益事業の性格を有しておりますので、赤字を直ちに構成団体に分賦するのではなくて、売り上げの拡大やコストの削減等により収支改善を図り、赤字は自助努力で解消すべきものとの認識で繰り上げ充用を行ってきたものでございます。
 新計画の売上額と経費削減についてでありますが、今回の新しい計画策定に当たりましては、平成19年度の年間発売見込み額は、今年度の動向などを踏まえまして、改訂実行計画は363億円という大きな額を掲げておりましたが、そこから下方修正をして272億円余と見込んでございます。また、コスト削減につきましても、平成19年度には18年度事業経費見込みからさらに約18億円の削減を図ることとして、その実現に向けた取り組みを今進めているところでございます。
 新計画では、あらかじめ各事業経費への配分割合を定めまして、その枠内で事業を運営することとして、発売収入の状況によりましては、25%の枠内におさまるよう、必要に応じてさらに事業経費を見直すなど、発売額に見合った事業運営とすることとしておりまして、平成19年度におきましても、引き続き業務全般にわたるコスト削減に取り組んでいく考えでございます。
 競馬事業全体の責任のあり方についてでございますが、私は、岩手競馬につきましては、将来方向についてきちんと方向づけたい、こういう思いで今取り組んでいるところでございます。収支均衡を基本とする競馬事業存廃の基準を設定した上で、過去の債務については、構成団体が一定の役割を果たす融資スキームを実行して、岩手競馬の再生に向けた枠組みをしっかりと構築する必要がある、このように考えておりまして、この点については議会でこれまで申し上げたものでございます。このため、さきの競馬組合議会で承認をいただきました新しい計画を、当議会を初めとする構成団体議会、それから県民、市民の皆様方に十分説明をして御理解をいただきますように、今後十分取り組んでいきたいと思っております。また、競馬関係者には、こうした構成団体融資の重みというものを十分に受けとめていただきまして、管理者である私を先頭に、競馬関係者が一丸となって岩手競馬の再生に取り組んでいくという意識の醸成を図りまして、再生の道筋がつけられるように全力を尽くしていくことが私の果たすべき責任、このように考えているところでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部長から答弁をさせますので、御了承お願いいたします。
   〔企画理事酒井俊巳君登壇〕
〇企画理事(酒井俊巳君) 県南広域振興局に関するお尋ねについてでございますが、広域振興局発足以来、県民の皆様からいただきました苦情を含む御意見等につきましては、本局や総合支局、行政センターに寄せられたものを中心に整理を行っているところでございます。
 広域振興局化するに当たりましては、パスポートの交付事務など県民個人を直接的な対象とするサービスに関しては、その提供の仕方は基本的に従前の6地方振興局のときと変わっていないところでございますけれども、お寄せいただいた御意見等は行政センターが設置された地域からのものが多いわけでございますが、例えば、指導監督業務等が本局に集約化された社会福祉法人等の団体、あるいは工事や物品の入札業務が総合支局に統合されたことに伴う関係業者の方からのものでございまして、書類の提出先がわかりにくくなった、あるいは、これまでに比べ距離が遠くなり時間がかかるといった内容のものでございます。
 これらの御意見等に対しては、真摯に受けとめ、速やかな改善等に努めているところでございますが、改善のためには、現行の業務のやり方そのものを抜本的に変えていかなければならないものもあることから、時間がかかるもの、あるいは再編の目的上、どうしても御理解をいただかなければならないこともございますけれども、可能な限りの対応に努めてまいりたいと考えております。
   〔地域振興部長藤尾善一君登壇〕
〇地域振興部長(藤尾善一君) まず、広域振興局体制による屋上屋化と基礎自治体の強化についてでありますが、広域振興局体制の発足に当たりましては、本局と支局等が適切な役割分担のもとで業務執行ができることを目指したところでございまして、総合支局は、当面、地方振興局のサービス水準を維持し、行政センターでは、窓口対応や現地対応が必要な業務を行うこととしているものでございます。しかし、役割分担をなお明確にすべき部分や、所期の目的どおりの運用がなされているかなど改善を要する点も指摘されているところでございまして、目下、住民の方々の御意見等を踏まえながら、先ほどの企画理事の答弁にもございましたように、必要な改善に努めているところでございます。
 次に、基礎自治体の強化についてでありますが、先般の広域生活圏と地方振興局の見直しは、地域の資源や人材を結集し、地域間競争に打ち勝つことのできる戦略的な産業の振興による一刻も早い自立可能な地域経済の確立が本県の喫緊の課題であるとの考えから行ったものであり、市町村への権限移譲は、市町村の行財政基盤の強化を図るための重要な取り組みの一つとして推進しているものでありますことから、近接・補完性の原理に基づき市町村中心の行政システムを構築していくためには、どちらも欠かすことのできない重要な施策であると認識いたしております。県としては、地域の自立により県民生活の維持向上を図るため、今後とも四つの広域振興圏を基盤として広域行政を推進していくとともに、市町村への必要な支援を行っていく考えであります。
 次に、市町村への権限移譲の場合の業務量の算定、派遣期間等への配慮についてでございます。
 権限移譲に伴い、市町村で事務処理を行うために必要となる経費につきましては、その所要額を事務処理交付金として措置しております。その算定に当たりましては、県での処理経費をそのまま適用するのではなしに、市町村が行う事務処理の各段階ごとに経費を積算し、積み上げているものでございます。さらに、人件費単価の設定におきましては、地方交付税の基準財政需要額の算定に用いる職員単価を適用するなど、権限移譲によって市町村が財政的な不利益をこうむらないように配慮しているところでございます。
 今般、新しい人的制度として創設いたしましたポイント式一括移譲、これは、移譲事務を専門性と事務量に応じてポイント化いたしまして、そのポイントが10ポイント、または合併市町村、県北・沿岸市町村の場合は、それよりも低い8ポイントに達したごとに希望する分野の県職員を1人派遣するという制度でございますけれども、これによって、専門知識を有した県職員を県負担のもとで派遣し、直接市町村職員に移譲事務を処理するためのノウハウや技術の習得をサポートするということを目的といたしておりまして、おおむね1年ないし2年間でこれらノウハウや技術の習得をするわけでございますが、これは可能であると考えております。しかしながら、それぞれの事情によりまして2年を超える期間が必要な場合は、県、市町村相互に職員を交換し合う人事交流制度などを活用することによって市町村の要望に前向きにこたえていきたいと考えております。
 次に、移譲事務フローの簡略化についてでありますが、権限移譲は、県の関与をなくし、住民に一番身近な行政機関である市町村で完結できるよう、住民本位で、サービスの質の向上を図るということがねらいでもあります。したがって、権限移譲されたことによりまして、住民が県の窓口である振興局と市町村役場の窓口の双方に出向くことがないような仕組みとするよう、市町村との間で十分な調整を図ることとしております。また、市町村への移譲に当たりましては、可能な限り事務の簡略化を図るなど、より効率的な事務処理となるよう、業務プロセスの改善もあわせて行っていく考えでございます。
 次に、移譲項目と要望がマッチしないなどの場合の対処についてでありますが、権限移譲による市町村への人的派遣制度は平成19年度から22年度までの4年間を実施期間としているところであり、今回、派遣基準に達しなかった市町村におきましては、今後も計画的に権限移譲に取り組んでいただくよう、振興局での検討会、研究会などを開催しながら市町村の権限移譲に向けた取り組みを支援していく考えであります。
 そもそも要望がマッチしないというような場合についてでございますけれども、現在、移譲指針に登載している事務は大きく三つに分かれるわけでございまして、一つは、土地の利用規制に関する許可など市町村の行政基盤の強化に資するもの、二つには、県道の維持・修繕など住民生活に密接に関連したもの、三つには、NPO法人の設立認可など市町村が現に望むもの、こういったようなものを盛り込んでおるわけでございますけれども、県で行うよりも市町村で行うことがふさわしいといったような権限につきましては、今後とも市町村の要望も取り入れながら積極的に掘り起こし、移譲指針に盛り込んでいく考えであります。
   〔県土整備部長西畑雅司君登壇〕
〇県土整備部長(西畑雅司君) 建設業総合相談センターの相談状況についてでありますが、相談実績は、この11月末までに52社、65件となってございます。内容は、農業や環境、福祉等の分野に関するものであります。
 また、岩手県建設業協会の経営支援センターと連携を図りながら、新分野進出に係る意向調査の実施、久慈地域のイチゴ生産や釜石地域のマツカワカレイの養殖など、地域の実情に応じた調査研究の取り組み支援、企業のニーズを踏まえたセミナーや新たな融資制度の説明会を開催しているほか、製品開発や販路開拓に要する経費について支援を行った企業へのフォローに努めてきたところでございまして、新分野進出に取り組む企業は少しずつふえてきているなど、徐々にではございますが、総合相談センターとしての機能を発揮してきているものと考えてございます。
 今後は、新たに設置したコーディネーターとも連携しまして、企業の巡回相談の実施や経営戦略セミナーの開催によりまして、新規事業の立ち上げに向けた実践的な支援を行うほか、新たな相談者の掘り起しにも努めてまいりたいと考えてございます。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) 入札制度についてでございますが、公共工事の発注は、良質な社会資本をより少ないコストで整備することが基本であることから、できる限り広く競争を行った上で請負先が決定されることが必要でございますけれども、一方で、県営建設工事の発注の動向が、建設業を初め、県内経済や県内雇用に及ぼす影響も大きいことから、公正性、透明性、競争性の確保を前提としつつ、県内業者で施工が可能と認められる工事は県内業者に発注するなど、品質の確保とあわせまして、県内建設業の振興や地域振興の面にも配慮してきているところでございます。引き続きこうした考え方を基本としつつ、最近の問題事例の発生にもかんがみまして、今後、全国知事会のプロジェクトチームでの検討結果等を踏まえまして、談合や不正な官側の関与が生じないように取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 次に、岩手競馬に関しまして基金の取り崩しの関係でございますが、競馬組合への融資により主要3基金の残高が減った場合には、災害などを含めた緊急的な財政需要に備える余力がその分だけ弱くなることは確かでございますけれども、仮にそこで大きな災害が発生したような場合につきましては、まず、国庫補助金や災害復旧事業債など、災害対応のための各種の財政措置を最大限に活用して対応したいと考えておりますが、さらに必要な場合には、主要3基金の活用、また、なお不足する際には、その他の特定目的基金からの転用なども含めてさまざまな方策を検討いたしまして所要の財源を確保していくことを考えたいと存じます。
   〔農林水産部長高前田寿幸君登壇〕
〇農林水産部長(高前田寿幸君) 漁業共済についてでございますが、漁業共済は、災害から生産物や施設を守り、漁業経営の安定を図るために重要な制度でございますことから、漁業共済組合と連携を図りながら、各地で説明会を開催し、その加入促進に努めてきたところでございまして、この結果、養殖施設の加入率は、平成14年度の23%から平成17年度には54%まで増加し、全国トップクラスの加入率となってございます。
 この共済の掛金につきましては、既に3分の1から2分の1程度の国の補助が行われておりますことや、農業など他分野とのバランスなどを考慮いたしますと、これ以上の助成は難しいものと考えております。したがいまして、県といたしましては、漁業共済へのさらなる加入促進と補助事業を活用した災害に強い養殖施設への転換を促進するとともに、今後の災害対策のあり方について、県漁連など関係団体と連携を図りながら、検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
〇23番(平沼健君) ただいまの答弁に対しまして、何点か再質問をさせていただきます。
 まず、順序逆になりますけれども、入札制度、ただいま部長から答弁がございました。私が申し上げたのは、今のような形での入札制度は、現在、受給というか、アンバランスな形ですよね。仕事量が少ない、ただ、業者が多い。そういうようなところで、コスト競争だけでどんどん押していったときに、確かにそれは、先ほど壇上で申し上げたような形になっていくんですけれども、最終的には、そういうことでいきますと、残るのは中央の大手ゼネコンといいましょうか、そういう少ない数に逆に戻ってくるのではないかなと。そうすると、今大きな問題になっています談合といいましょうか、そういうことに逆に結びつくような懸念というか、危険性があるんじゃないのかなということが一つあります。その辺をどういうふうにお考えなのか。そしてまた、こういうことを進めていくと、地域社会、地域経済に与える影響というものを、どの程度と判断しておるのか、想定しておるのか、それを再度またお答えいただきたいと思います。
 それから、知事に2点ほど大きな形で伺います。
 ちょっとくどいんですけれども、繰り上げ充用ということで今知事から答弁がございました。これは知事がおっしゃるとおり、私も調べたんですが、地方自治用語辞典とか、あるいは地方自治法施行令とか、こういうものがあるんですけれども、確かに知事がおっしゃるとおりでございます。ただ、私がここで問題にしたかったのは、この繰り上げ充用というのは、法律上は認められているんだけれども、先ほど話がありましたとおり、緊急避難的なんだと。ということは、岩手競馬みたいな毎年同じことを繰り返してくるということが、節度がどの辺にあるのか。その辺を私は問いたかったんですけれども、やっぱりこれはこの施行令にもありますように、本当に緊急避難。だから常態としてはあってはならないというか、そういうことだと思うんですよ。それを拡大解釈したといいましょうか、とにかく毎年こういうことを繰り返してきたということは、私は、これは法律違反とは申し上げませんが、それに近いんじゃないのかなというようなことでとらえて先ほど質問したわけでございまして、この件について再度また知事のお考えというか、それを伺いたいと思います。
 それから、同じ競馬についてですけれども、実はこの間競馬の説明をいただきました。説明会がございました。その会場でも、我が会派の嵯峨壱朗議員から、金融機関の貸し手責任というのはどうなんだと、そういうような質問が出たんですが、そこにおられた方からの回答がどうも要領を得ないというか、私は理解できなかったものですから、再度またここで同じことをとらえながら、金融機関の貸し手責任。これは、そのときには一部事務組合だし、債権カットというのは不可能ですという話だったと思うんですが、ただ、そうじゃなくて例えばの話、ちょっとこれは例としてどうかわかりませんが、森のトレーの場合を考えてみていただければ、これは国からの補助金の返還命令を県が今受けているわけでして、その責任を問われているわけですね。それと全く同じとは言いませんが、やっぱりこれはある意味では、見方を変えれば、同じような考え方というか、同じような形になると思うんですよ。だから私は、貸した側の責任も相当あるという判断をしているんですけれども、それについて知事は、今までに競馬組合のトップとして、金融機関とこの件についてどのような話し合いをしてきたのか、それもあわせてお尋ねしたい、このように思います。
 それから、今回の融資、返済計画が入っていません。これはまた後からということなんでしょうけれども、この返済計画が入らない計画案というか、そういうことはあり得ないんですね。やっぱりこれは返済をするということがあれば、1年間に、毎年5、000万円とか1億円とか、その分が今度は利益にオンしなきゃいけないわけですね。だから、運営上、経営が非常に厳しくなってくるというか、そういうことだと思うんですが、この返済計画を入れた形での、本当にシビアな再建計画というか実行計画を、早急に立ち上げるというか出すべきだと私は思いますが、その件についてもお考えをお聞かせ願いたい。
 それから、最後、競馬なんですけれども、損益分岐点というのがあると思うんですね。要するに、売り上げの75%は配当ですよと。残りの25%でもって経費をつくっていくと、経費分だということですよね。そうすると、売り上げが1、000億円の場合と今回のように300億円の場合と、全く25%の、比率は同じだけれども額が全く違いますね。そうしたときに、では、競馬組合としてこの損益分岐点というものをどの辺に想定しているのか。まだまだ売り上げが減っても大丈夫ですよと。やり方によっては大丈夫だということなのか、あるいは三百四、五十億円なんだということなのか、その辺の想定が当然あると思うんですが、その辺もし支障がなければお聞かせ願いたい、こう思います。
 それと、本当の最後の最後なんですけれども、知事が就任したとき、平成7年でしょうか、このときの──これは財政についてですが、県債残高がたしか7、000億円前後だったんですね。これが先ほど私が壇上で申し上げたように、今1兆4、000億円超えました。ちょうど2倍です。これは当時知事が就任したときには、日本経済が右肩下がりの状況ですよ、ずっと。そしてまた、少子化が大きな課題というか問題というか、そうした時代背景が当時もあったわけです。そういうような就任時の状況を踏まえながら、一つは、私は民間と行政は全く一緒とは、そういう考えじゃないんですけれども、ある面では行政も民間感覚が相当必要なわけですね。
 そこでお尋ねしますが、増田知事は岩手県株式会社の社長なわけですね。そうしたときに、この財政というか先の見通しというか、そういうことが本当に正しかったのかどうか。これ、正しいと言うでしょうけれども。
 知事が任期中に、例えば盛岡駅の西口開発、アイーナ、あるいは先ほど申し上げた盛岡競馬場のオーロパークをつくりました。こういうのは、途中で工事を中断することもできたはずなんですよ。そういうようなこともありますし、また、岩手県のような財政規模の県、面積は大きいんですけれども、こういうような財政規模の県で、国立の岩手大学があるにもかかわらず県立大学を立ち上げたという、そういうことが本当に正しかったのかどうなのか。やっぱりその辺も考慮して、本当に疑問もあるんですけれども、最後に、知事の県政における経営認識というか、財政見通しというものが岩手県株式会社の社長としての立場で、どのように御自身が判断しているのか、お伺いして私は終わります。
〇知事(増田寛也君) 何点かありましたので、まず競馬の関係からお答えを申し上げます。
 まず繰り上げ充用の関係でありますが、これはやはり緊急避難的な措置でありまして、財政的な観点から言えば、やはり財政は節度を持って運用していかなければいけないということであります。従来は単年度で見まして、経常収支が赤でありましたので、しかし、それを競馬組合の自助努力で何とか防ごうということで、この緊急避難的な措置を講じつつ、これを何年か繰り返してきたということがございましたので、今回の新計画では、25%の事業収益の中ですべての経費を賄うと。収支が均衡して、赤字が今後は拡大しないということを条件に競馬事業を継続する、こういう形に何とか切りかえようと、今、しているわけでございまして、単年度の収支で赤が発生をしないということでございますので、この点についてぜひ御理解を賜りたい。繰り上げ充用につきましては、そのもととなりました単年度の収支の赤ということが、今後発生しないような事業構造に切りかえていくということで、御理解を賜りたいと思います。
 それから、金融機関としての貸し手責任ということでお話ございました。この金融機関とはこれまでも私も何回か、向こうのトップ、何人かの方とお会いをして交渉を重ねながら、地方債の引き受けや、それから今後も一時借り入れなどの関係は出てくると思いますが、一時借入金の融資、それから支払い利息の取り扱いなど、組合にとって有利な条件での融資の実現を図ってきたところであります。
 先般の議員に説明のときに、恐らく組合が、これ地方公共団体ということで、いわゆる債務の棒引きのようなことを想定しておりませんので、そのことをお話ししたんだろうというふうに思いますが、この金融機関の関係で申しますと、これからも金融機関に対しまして組合としても関係を──今回は構成団体融資に切りかえるという形で、長期債務の方は、それで全部構成団体融資ということに切りかわりますが、金融機関との関係は今後も続くということが想定されますので、一時借り入れなどの関係で想定されますので、これからも金融機関とは真摯に交渉していきたいというふうに思います。それから、今回構成団体融資に切りかえるというのは、ああいう存廃基準を設定したので、金融機関の方から借りるということが困難という事情もありますが、組合側の事情としても、どうしても金融機関からの借り入れですと、支払い利息が収支を圧迫するといったようなことなどがございまして、過去の借入金に起因する負担ということについて今までも大変苦しんでまいりました。そういう競馬組合側の事情として、今回構成団体融資に切りかえたということもございます。そうしたことの事情も御理解をいただければというふうに思います。
 それから返済計画ですが、これについての具体的な計画がないというお話でございました。これにつきましては、今つくっております新計画の中でも、あらかじめ決まった額を毎年毎年定期的に返済していくというような、安定的な収益を確保するまでのところは当面難しいと。要は単年度黒にするという、そういうルールのもとで、何とか事業を継続するというところまでが当面は限度でありまして、決まった額を定期的に返済していくような、そういう安定的な構造に早く着地をさせようということに、当面全力を投じていきたい。ただし、事業を廃止すると、融資以上の負担が構成団体に生じてくる、こういう状況も一方で考えながら、とにかく事業が継続するということ、そして、今後の収支状況に応じて少しずつでも元金を返済させていくということが、トータルで考えれば構成団体の負担を最小限にすると、こういう考え方であの計画をつくっておりますので、当面は今御指摘いただきましたように、返済計画がない融資という形をとらざるを得ないということでございます。事業を継続させて、そして雇用の場とか地域経済の貢献といったことも含めて、競馬事業を安定化させた上で、その後、収支構造の転換をさせて少しずつでも融資額を返還させたい、このように考えているものでございます。
 それから、損益分岐点でございますが、これにつきましては、テレトラックごとの経営の分析などの際に、こうした損益分岐点的な手法を活用しながら、コスト削減に取り組んできていました。各地域にかなりのテレトラックを設けたわけでありますが、それごとにどういう損得があるかということをそれでやってまいりました。今回は、全体の競馬事業をとにかく発売収入の25%の中ですべてが賄えるようにと、そういう構造に今切りかえるということで全力を挙げているところでございますので、まず、収支均衡を実現するということを目標とする段階にあるというふうに考えております。その上で、それを安定化させた上で、収支構造の改善に取り組んでいきたい。その際に、そうした議員からのお話のようなことも踏まえて、より望ましい収支構造につなげていきたい、このよう考えております。
 それから最後に、財政運営全般についてでありますが、お話のとおり、私が就任したときの県債残高がおおよそ7、000億円。今、1兆4、000億円近くあるわけでございますが、今年度から少しずつ県債残高が減少に転じるということでございますが、私が就任してから特に前半の間、さまざまな公共資本の整備を進めてまいりました。これは当然、県債残高が増加をするという想定はしつつも、それよりもさらに県民の利益に合致する点が多いだろうということで議会などでも御議論をいただきましたが、さまざまな場面でプロセスを経て整備を進めてまいりました。
 先ほどお話があったアイーナもお話のとおりでございますが、それからあと県立大学、これも県立大学をつくる意味があるだろうと。アイーナも、いろいろ中で御議論ございましたが、アイーナについても、そうした県民のさまざまな団体活動にも資するということで整備を進めたものでございます。オーロパークは、私が就任したときはもう大抵でき上がっておりましたので、これはちょっと別でありますが、ただ、これもいろいろなプロセスを経て整備をされてきたというふうに考えておりますが、ただ、いずれにしても、一定の想定の範囲の中で整備をしつつも、しかし、その後、経済が長らく低迷状態であったといったようなことや、本来予定をしておりました、あるいは予想しておりました交付税が大幅に削減をされたといったようなことで、結果として、やはり現実に起こっていることは、財政が極めて硬直化をしているという事実がございます。これは、常にそうした面、結果責任は問われる立場に私もございますし、ああいった施設などいろいろ整備をしてまいりましたが、財政の硬直化を招いたという点については、率直に反省をしなければいけないと、また、責任を感じなければいけないというふうに思っています。
 今後でありますが、しかし、新幹線、高速道路それから試験研究機関、県立大学を含むさまざまな社会資本、公共資本が整備されましたので、それをできるだけ活用した産業基盤の充実という方向に切りかえるべきというふうに考えておりまして、そういったことを具現化したのが今回の産業成長戦略であったり、県北・沿岸振興であったりするものでございまして、できるだけこうした基盤を生かしながら、県民生活の向上に向けた取り組みを進めていきたい。
 それから、やはりどうしてもこれだけ財政が硬直化いたしますと、財政健全化のためのかなりきつい措置も講じなければいけませんので、今、かなり公共事業が選択と集中を進めているわけでございます。その関係で従来と比較いたしますと、県民の皆さん方にとっては大変痛みあるいは物足りなさをお感じになる部分があるかもしれませんが、これまで整備された施設を十分に活用しつつ、しかし、今後も財政運営を工夫しながら、必要なものは厳選した上で整備を進めていくという考えで取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。
 いずれ、任期が残りまだございますので、その間に競馬の問題も含め、きちんとした道筋、方向づけをしていきたい、このように考えております。
〇総務部長(川窪俊広君) 入札制度の件についてでございますが、昨年の91社の排除勧告問題を踏まえまして、談合等の不正行為が生じにくいような入札制度改善の一環といたしまして、指名業者数を拡大する等の対応を行っているところでございまして、その結果として入札参加企業数が増加をして、従前よりも、個々の入札における競争性の向上が図られているというふうに認識しておるわけでございます。
 こうした入札のあり方が、県内経済にどのように影響するかという点につきましては、個々の工事の入札における競争の激化という問題のみでなく、公共工事等の予算の規模の動向でありますとか、あるいは景気の動向等に左右される面も大きいと考えられますので、明確にお答えすることは難しいわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、公共工事の発注が県内経済等に及ぼす影響も大きいということを踏まえまして、公正性、透明性、競争性の確保ということを前提としながら、県内業者で施工が可能な工事につきましては、県内業者に発注するというような形などを通じまして、地域経済の観点からの配慮を行ってきているところでございまして、いずれにいたしましても、この入札制度の問題につきましては、最近の問題等を踏まえまして、全国知事会のプロジェクトチームの検討状況等を踏まえながら、引き続きそのあり方を検討してまいりたいと考えております。
〇議長(伊藤勢至君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後 6 時37分 散 会

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