平成18年9月臨時会 第20回岩手県議会臨時会会議録

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〇25番(阿部富雄君) 地方競馬の現状についてお聞きします。
 地方競馬全国協会の資料によれば、地方競馬は全国で16主催者があり、売り上げは平成3年度の9、800億円余をピークに減少し、平成17年度は3、700億円と、ピーク時の4割程度に減少しています。平成16年度はすべての主催者で、17年度は14主催者で単年度収支が赤字となっています。また、平成13年度以降、8主催者が競馬事業から撤退しています。岩手競馬の売り上げ動向や事業収支も同様の状況にあります。
 地方競馬全国協会は、地方競馬改革の方向として、主催者間の連携強化と事務委託などによる効率的な運営を目指すとしています。しかし、地方競馬主催者のほとんどが赤字であり、主催者間の連携は効果が期待できず、コスト削減や外部委託も限界にあると思われます。地方競馬の現状をどうとらえているのか、お聞きします。
 次に、今日の状況を招いた責任についてお聞きいたします。
 岩手競馬は、平成3年度の売り上げ690億円をピークに減少を続け、平成17年度は300億円を下回り、ピーク時の約4割に減少しています。平成11年度からは構成団体への配分も行われず、平成12年度は約15億円の赤字が生じ、平成18年度の累積赤字は142億円を抱えるまでになりました。売り上げの大幅な減少に歯どめがかからず、構造的な問題になっています。平成16年11月に岩手競馬組合改革を策定、当初の計画を達成できず、17年2月に改訂計画を策定したものの、同様の結果となり、見直し計画を策定しようとしています。競馬を取り巻く環境の認識に甘さがあり、的確な対応がなされてきませんでした。その責任はどこにあったのか。責任を具体に明らかにし対応がなされてこなかったことが、今日の状況を招いていると思います。管理者、副管理者及び組合事務局、それぞれどのような責任があったと認識しているのか、お聞きします。
 同時に、組織責任も問われます。競馬組合の組織責任が問われるということは、経営能力の欠如であり、これ以上続けても成果を上げることができないと思います。組織責任があったと認識しているのか。認識しているのであれば、どのように改善していこうとするのか、お聞きします。
 県は、競馬組合経営に対し、危機感を持って対応することなく現状を容認してきました。県も的確な対応を打ち出せなかったということです。これまでの県の対応、構成団体としてどのような責任があったと認識しているのか、お聞きします。
 次に、存廃基準の設定についてお聞きいたします。
 競馬事業の存続は、収支が均衡し赤字が拡大しないことが条件という存廃基準を設定するとしています。岩手競馬の存在意義は、県議会出資法人等調査特別委員会が16年8月に公営競馬の成り立ちから見て、地方財政に寄与することが第一義的な存在意義としてとらえるべきであると提言しており、収益を生みそれを分配することに目的があります。競馬法の規定を満たさないような存廃基準を設定すること自体、問題です。存廃基準は法の趣旨に沿ったものにすべきですが、対応をお聞きします。
 次に、関係団体・関係者との合意形成についてお聞きいたします。
 競馬事業は、組合、構成団体のみの問題でなく、業務委託先や馬主、調教師、騎手、厩務員や売店、食堂など多くの方々がかかわり合いを持っています。全国の競馬事業の状況を見ると、コスト削減や業務委託などは関係者の合意を得ることなく進めている主催者が多く、不満が渦巻いています。廃止された競馬場の実態を見ても、馬主、調教師等が廃止に反対し、合意しないまま廃止していることや、廃止に伴う関係者への補償など、救済対策が不十分との指摘が多く出されています。
 岩手競馬にかかわる団体連絡協議会の場で、見直し案について組合から説明していますが、見直し案の策定、存廃基準、廃止も見越した対応について、関係団体・関係者との話し合いを進め、合意を形成することが必要です。それが関係団体・関係者の不安を払拭し、一体となった岩手競馬の再建へ弾みがつくものと思いますが、合意形成をどのように図っていくのか、お聞きいたします。
 以上で質問を終わります。
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 阿部富雄議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、地方競馬の現状についてでございますが、全体として見ますと、依然として厳しい状況にございますが、平成17年度について見ますと、売得金の総額は前年比で4%減少となりましたものの、1日平均売得金では前年比5.9%増と、3年ぶりの増加となっております。こうした状況を反映して、17年度の決算では黒字となる主催者も出まして、これは2主催者でございますが、そういう主催者も出まして、やや下げどまりの感が強まっていると、このように認識をしています。
 次に、今日の状況を招いた責任についてでございますが、私が競馬組合の管理運営の最高責任者である管理者として、その時々の情勢の変化を踏まえて、対応が最良なものとなるように努めてまいったところでありますが、結果として、現在のような運営状況に至ったことは、やはりファンの動向など諸情勢の認識等が不十分であったと、このように考えておりまして、私はぜひとも、岩手競馬の再生に向けた道筋をつけられるよう、全力で取り組むことが組合の管理者としての果たすべき責任と考えております。
 また、副管理者、競馬組合事務局も、それぞれ専門性を発揮しておのおのの職責を十分果たし、一丸となって競馬組合の経営改革を進めていかなければならないものと、このように考えております。
 次に、構成団体としての責任についてでありますが、県としてこれまで競馬組合の経営改善を支援するために、平成16年度から職員を派遣して実行計画や改訂実効計画の策定を支援いたしますとともに、本年度からは、県はもとより、他の構成団体からも職員を派遣して経営再建に向けた取り組みの支援を強化したところでありまして、今後とも、構成団体としての役割を認識しながら、岩手競馬再生に向けて取り組んでいく考えでございます。
 次に、存廃基準の設定についてでございますが、財政競馬としての役割は競馬事業の大きな役割の一つでありまして、競馬事業を継続する上で収益を生むことを目指すべきであると、このように考えるわけでありますが、岩手競馬は当面、単年度の収益を構成団体に配分するという財政競馬の役割は難しい状況にございますが、廃止した場合の影響を考慮すれば、収支が均衡して赤字が拡大しないことを条件に競馬事業を継続することが雇用の場の提供や地域経済への貢献につながるものと考えております。こうした考えのもとで、他の地方競馬の例も参考に収支均衡を基本とする事業存廃の基準を設定することとして、現在、その具体的な内容について検討を進めているところでございます。
 また、関係団体・関係者との合意形成についてでございますが、7月31日の競馬組合議会に見直し計画案を示して以降、関係団体に対して個別にこの見直し案の説明を行って御理解と御協力をお願いしてまいりました。また、8月15日に馬主会、調騎会、厩務員会と競馬組合で構成する岩手競馬競走馬関係団体連絡協議会というものを設置して、見直し計画案の具体的な内容の協議を始めたところでございます。
 この競馬の再生のために、競馬関係者の方々と一体となった取り組みが不可欠でございまして、今後においては、競馬場の食堂で働く方々、駐車場の経営者など岩手競馬を地域で支える関係者の方々に対しても、こうした見直し計画の案の趣旨を十分説明するなどして、関係者の御理解と御協力を得ながら競馬の再生を目指してまいりたいと、このように考えております。

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