平成7年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇25番(千葉浩君) 県民クラブの千葉浩でございます。
 私は、初当選いたしました平成3年の6月定例会以降、昨年の12月定例会まで、4回にわたって一般質問の機会を与えていただきましたが、今回は県民クラブを代表し、県政の諸課題につきまして質問をさせていただきます。
 まず最初に、1月17日に発生した兵庫県南部地震に関連してお尋ねをいたします。
 この地震は、大都市直下型の史上最大の地震であり、多くのとうとい生命と貴重な財産を一瞬にして奪い、電気、ガス、水道などのライフラインを破壊し、都市機能や地域の経済活動を壊滅的状態に陥れる未曾有の大災害となりました。地震発生から1カ月を経過した今なお、多くの被災者が不自由な避難生活を余儀なくされている状況にあります。震災で亡くなられた方々とその御遺族に対し、深く哀悼の意を表します。また、被災されました方々に衷心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復興をお祈りするものであります。
 本県は、過去に幾度となく地震や津波による甚大な被害を受けておりますが、このたびのような大災害に対処するためには、知事はさきの記者会見において、県の地域防災計画を根本的に見直さなければならないと発言をされておられます。この見直しについては、既に先輩議員が質問されておりますので重複しての質問は控えますが、県民の生命、身体及び財産を災害から保護するという災害対策の基本に立ち、より一層実行性の伴う計画とされるよう要望するものであります。
 本県の三陸海岸地域は地震の多発地域であり、地震・津波観測体制の強化の必要性については、我がクラブの山崎議員がさきの本会議でも申しているところであります。その後、気象庁は全国に観測施設を整備したことにより、津波予報は二、三分で発表されるようになったのであります。
 一方、昨年10月の北海道東方沖地震や12月の三陸はるか沖地震により津波警報が発表され、地元の自治体から避難勧告が発令されたにもかかわらず、避難した住民は、避難すべき住民のわずか1割にも満たなかったことを、後日、新聞で知ったところであります。避難勧告が出されても住民が避難しなければ、人的な被害を最小限度に食いとめることはできないのであります。自治体の職員や消防関係の方々は、災害から地域住民の生命や財産を守るため、懸命に努力をされておられます。住民の方々は、自治体と一体となって、自分たちの生命をそして自分たちの地域を災害から守る努力が必要であります。このことを、阪神・淡路大震災は教えてくれました。今後、自治体は、地域住民とともに自主防災組織を結成するなどしていく必要があると考えるのでありますが、県は、これをどのように指導される考えなのか、お伺いをいたします。
 次に、農業関係についてお伺いいたします。
 まず、本県農業に対する認識についてであります。
 知事は、就任早々、平成3年の12月に第三次新いわて農業確立計画を策定するに当たって、1990年代を本県が揺るぎない礎を築くための重要な時期とした上で、農業に対しては岩手新時代の基幹産業として位置づけ、魅力のある新しい岩手農業を構築していくと決意を述べられておられます。しかしながら、先般の知事演述においても触れられておりますように、本県農業が、平成5年のあの未曾有の低温気象による大冷害、さらにまた昨年の高温気象による大豊作といったように、自然の驚異と恵みをこの2年の間に一気に経験するようなことが起ころうとは、一体だれが予測したでありましょうか。そしてまた、ウルグアイ・ラウンド農業交渉の合意に伴い、本年度から新たな国際環境のもとで農業を展開していかなければならないといった局面を迎えることになったのでありますが、まさに、これからの農業は、自然との闘い、国際農業との闘いをどう乗り越え、どう生き残っていくのか、試練の連続であろうと思うのであります。こうした中において、知事は常に農業に対して深い理解を示され、みずから先頭に立って農業者の勇気と知恵を引き出し、本県農業の推進に力を注いでこられましたことに深く敬意を表しているものであります。
 そこで、この際お伺いするわけでありますが、農業確立計画の中間年次を迎えるに当たって、知事は本県農業の姿についてどのように認識しておられるのか、改めて御所見を賜りたいと思います。
 次に、平成7年度の生産調整への取り組みについてお伺いをいたします。
 昨年12月16日、国は平成7年度の生産調整について、現行の目標面積60万ヘクタールをそのままとして、別枠で8万ヘクタールを加え、全体目標面積を68万ヘクタールとする減反強化策を打ち出しました。生産調整対策については、始まって以来、4分の1世紀という長きにわたる対策として、生産者の方々の協力のもとに続けられてきたものであります。この間、その時々の需給状況によって、強化、軽減が繰り返えされ、殊にこの数年は、米不足を背景に官民挙げて復田を進めてきたわけで、生産者も米をつくれる意欲に燃えて大いに復田に取り組んできたことは、御承知のとおりであります。しかしながら、平成6年度産米が大豊作とはいえ、たかだか1年のことで、一転して生産調整が強化されたわけであります。まさに、その場しのぎの場当たり対策であり、生産農家の気持ちを思うとき、まことに割り切れないものがあり、何か苦いものが胸に残るわけであります。
 一方、今後の米管理システムとして、米の生産と流通の規制を緩和し、市場原理の導入を目指すいわゆる新食糧法では、これまでと異なり、生産者の意向を重視した生産調整となり、ペナルティもなくなるとの報道もありますし、また、米の生産調整が目標どおりに実施されるかどうか、その実効次第で米の価格が左右されると言われております。そういった意味で、平成7年度の生産調整の取り組みは、新食糧法のもとでの生産調整へと移る大事な取り組みであると考えますが、平成7年度の生産調整に当たり、どのように進めていくおつもりなのか、御所見をお伺いをいたします。
 次に、農山村女性活動の環境づくりについてであります。
 本県における農業従事者は、働き盛りの16歳から59歳までの6割が女性であり、まさに本県の農業は女性によって支えられていると言っても過言ではないのであります。また、家庭生活の中心的な役割を担っているほか、農村景観づくりや農村環境づくり、都市住民との交流など、新たな取り組みにも大きな役割を果たしております。しかしながら、どうでしょうか。経営面では補助的立場に置かれ、農業者年金への加入もできないといったように、農業経営上で女性の立場は全く不明確なばかりでなく、農協理事や農業委員、県、市町村が主宰する審議会委員への登用が少なく、農林業の振興、地域づくり等の方針決定に女性の意見が反映されていないことへの不満が多いことも知られております。昨年8月に国の農政審議会が取りまとめた新たな国際環境に対応した農政の展開方向においても、活力に満ちた農業構造、農業経営を実現していくためには、農業生産において重要な役割を担っている女性に対する適正な評価、就業環境整備、意思決定の場への参画等が提言されておられます。本県においても、農業労働力の減少が今後ますます進むと予想される中にあって、農業・農村における女性の果たす役割がますます大きくなるものと思われますが、これらの女性の皆さんが意欲を持って働ける環境づくりや環境整備こそが、今、最も必要であると思うのであります。知事の御所見をお伺いをいたします。
 次に、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱を踏まえた農業農村整備事業の推進についてでありますが、一昨年のウルグアイ・ラウンドの農業合意に対応するため、政府は、農政審議会が答申した新たな国際環境に対応した農政の展開方向を踏まえ、昨年10月にウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱を決定したところであります。この大綱の中で、農業農村整備事業については、国際化の急速な進展を踏まえ、事業効果の早期発現を図るため、地域農業の展開方向に即した高生産性農業基盤の整備を重点的かつ加速的に推進するほか、特色ある地域条件を生かし、生産基盤と生活環境基盤の一体的な整備を図ることとしております。国は、これらの対策の実現のため、ウルグアイ・ラウンド関連農業農村整備緊急特別対策として、担い手を育成し、高生産性農業を確立するための生産基盤整備の促進及び中山間地域活性化のための条件整備の促進を図ることとし、今後、6年間の事業費として3兆5、500億円、また、この対策の初年度分として、平成6年度補正予算に5、406億円、平成7年度当初予算に486億円を政府案として示したところであります。 一方、本県の農地の整備率は、水田が49%、畑45%と低い状況にあり、また、集落排水施設など生活環境基盤の整備も都市に比べて大きくおくれております。このような状況を踏まえ、県としては、農業農村整備をどのように進めていくべきか、御所見をお伺いをいたします。
 次に、三陸地方拠点都市地域についてお伺いをいたします。
 地方の自立的成長を促進し、国土の均衡ある発展を図ることを目的としたいわゆる地方拠点法が施行されて、約2年余りが経過したところであります。御案内のとおり、地方拠点法は、地方定住の核となるような地方拠点都市地域を整備し、東京一極集中是正とともに地方の活性化を図ろうとするものでありますが、全国的にも、現在、東京、大阪及び神奈川を除く44道府県、70地域が指定されているところであります。本県におきましても、平成5年2月に指定されました北上中部地域に続き、県内2カ所目の地方拠点都市地域として、昨年9月、沿岸地域の関係10市町村からなる三陸地方拠点都市地域が指定され、以来、基本計画の策定作業が続けられてきたところであります。今般、関係市町村がまとめた三陸地方拠点都市地域基本計画案によると、豊かさとゆとりを実感できる魅力ある生活空間の創造を基本理念に掲げ、宮古、釜石、大船渡及び陸前高田市の4都市に7カ所の拠点地域を設け、また、地域内を、都市機能集積、定住促進、産業活動など5つのゾーンに分け、地域内の機能分担の方向を明らかにするなど、今後、10年間の整備計画が定められており、現在、承認申請に向け、県との調整が進められていると仄聞しております。
 私は、この計画における地域整備の基本方向は、単に本地域のみならず、今後の沿岸地域全体の振興、さらには県土の均衡ある発展を図っていく上で極めて重要な意味を持つものであると認識しております。本地域の今後の発展方向を考察するに、その地理的な遠隔性や狭隘な土地の分散という地勢的な条件などが絡み、地方定住の核として本地域が発展していくためには、それぞれの市町村の特性に応じた機能強化を図っていくことはもとより、県内陸部や隣接する宮城県などとの連携を強化し、人、物、情報などの地域間交流を積極的に推進していくことが、三陸地方拠点都市地域の育成、強化に際して有効な施策の1つであると考えられるところであります。そのためには、これらの交流・連携を支える道路、港湾などの社会資本の整備充実が不可欠であり、国、県等の積極的な支援が望まれることは言うまでもありません。
 そこで、お伺いいたしますが、三陸地方拠点都市地域基本計画を承認するに当たり、本地域の発展方向についてどのように考えておられるのか、知事の御所見をお伺いをいたします。
 次に、介護知識、介護技術の普及についてお伺いをいたします。
 御案内のとおり、近年の平均寿命の伸長により、今後、75歳以上のいわゆる後期高齢者の増加と、それに伴う寝たきりなどの介護を必要とする方々の増加が予想され、だれもが介護する側、あるいは介護を受ける側になる可能性の高い社会になるものと考えられます。こうした中で、家庭や地域社会で安心して生活をするためには、各種福祉サービスの一層の充実はもちろんのことでありますが、1人1人の県民が介護についての適切な知識や技術を身につけ、長寿社会はすべての県民で支えるという意識を持つことにより、家庭や地域の介護力を高めることが必要になってくるものと考えられます。しかし、介護の知識や技術をどこでどのようにすれば得られるのか、個々の県民に十分に周知されているとは言えない現状にあり、家庭で介護をされている方々や介護について関心を持つ方々が、介護に必要な知識、技術、各種情報を適時的確に得ることのできる環境づくりが求められているところであります。このようなことから、介護知識と技術の研修・普及、看護福祉機器・用品の情報提供などの機能を持つ施設を整備し、長寿社会をみんなで支えていこうという意識の形成を図ることが重要と考えますが、御所見をお伺いをいたします。
 次に、平成7年度における商工施策についてお伺いをいたします。
 最近の我が国経済は、各種指標によれば、徐々に明るさが見え始めていると言われております。しかしながら、依然として設備投資が低水準で推移しており、加えて為替相場の動きなど懸念すべき要因も見られるところであります。本県経済におきましても、鉱工業生産が前年水準を上回って推移しているなど、緩やかに回復に向かっていると言われております。このような経済情勢の中、政府は昨年末、平成7年度の経済見通しと経済運営の基本的態度を発表しております。これによると、経済運営の基本的態度として、内需を中心とした安定成長の確保や、国内産業の空洞化懸念に対する規制緩和の推進、内外価格差の是正・縮小、産業・雇用構造転換の円滑化推進など5項目を挙げておりますが、私は、これらのうち、第2番目の基本的態度の経済の先行きについて、依然存在する閉塞感を打破するとともに、国内産業の空洞化等の懸念に適切に対応し、内需主導型の経済構造を実現し、創造的で活力ある経済社会を構築するため、我が国経済の将来的な発展環境を整備することが最も重要と考えるものであります。国においては、この観点から種々の施策を講ずる方向にありますが、本県においても、国の施策と相まって本県経済のかなめである商工業の一層の振興を図っていくべきと考えるものであります。県におきましては、3県総の前期計画の最終年度でもある平成7年度には、このような観点から、どのような商工施策を推進されようとしているのか、お伺いをいたします。
 次に、県立病院の機能の充実についてお伺いをいたします。
 近年の我が国の医療は、高齢化が進展する中で、国民の生活水準の向上、医療の質の向上、医療技術の進歩と相まって、患者さんのニーズが多様化・高度化するなど、医療をめぐる環境が大きな変革期を迎えております。私は、本県の医療環境も全国的傾向と同様にあるものと認識しており、このような医療環境の変化に適切に対応していくためには、現在進めている施設整備計画の促進とあわせて、診療機能の充実が求められていると思慮しているところであります。今月オープンいたしました大船渡病院は、利用された患者さんからは、施設面、運営面において、利用者に配慮した病院であると高い評価を受けていると聞き及んでおります。現在、岩手県立病院等長期経営計画に沿って施設整備が進められている胆沢病院ほか3つの病院についても、地域住民からは、1日も早く近代的医療施設としての完成が望まれているところであります。
 そこで、お伺いをいたします。
 今後、県営医療として、経営の基本理念である県下にあまねく医療の均てんをという創業の精神のもとに、地域住民の医療を確保するためには、施設の整備とあわせ、マンパワーの確保、高度医療機器の整備等診療機能の充実を図るとともに、特にも全国を上回る早さで進展する高齢化など、地域の特性に即した効率的な医療供給体制の整備が望まれるところでありますが、御所見をお伺いをいたします。
 最後に、教育問題についてお伺いをいたします。
 まず、教育立県へのこれまでの取り組みについてでありますが、知事は、常日ごろ、活力と希望にあふれた地域社会を築くためには、人間性豊かな人づくりを進めることが重要であり、その実現のために、教育の担う役割は極めて大きいとの認識のもと、教育立県を掲げ、教育の諸課題に積極的に取り組んでこられたところであり、私は、こうした知事の姿勢を高く評価するものであります。
 最近の教育環境を見ますと、経済社会の発展に伴い、県民の学習意欲が多様化、高度化するとともに、スポーツや文化活動に対する興味関心が増大し、これに即応した各種施設の推進が求められている一方、登校拒否を初めいじめなど学校適応の問題が指摘されるなど、教育に寄せる県民の期待と関心はますます高くなっております。知事は、3県総において、はつらつと生きる心豊かな人づくりの推進を掲げ、生涯学習社会の構築に向けて、各種施策を積極的に展開してこられましたが、教育立県に係るこれまでの取り組みについて、知事自身、どのように評価されるのか、改めてお伺いをいたします。
 次に、県立大学の整備についてであります。
 先般、県立大学基本構想検討委員会が、平成10年の開学に向けた県立大学の基本構想を答申されました。本県の高等教育機関の現状を見ますと、大学の進学率、収容力ともいずれも全国平均を大きく下回っており、大学進学者の大幅な県外流出を招いております。そのため、親の経済的な負担が増大するほか、前途ある人材の県内確保にもマイナスとなっているところであります。県立大学の設置は、県民のひとしく待ち望んでいたところであり、教育立県を目指した知事が、後世への大きな遺産となる礎をつくられたものとして評価するものであります。県立大学の学部としては、高齢化、情報化といった社会潮流や本県の置かれた状況を踏まえて、看護、福祉、情報、政策という多彩な構成となっております。今後、具体的な大学づくりが進められるわけでありますが、知事は、どのような特色を持った県立大学を思い描いておられるのか、お伺いをいたします。
 以上で終わりますが、今期限りで勇退されます工藤知事におかれましては、2月定例会初日の本会議において最後の所信を述べられたのでありますが、これまでの功績並びに御労苦に対し、深甚なる敬意と感謝を申し上げます。このたびの引退は、惜しまれながらの御勇退でありますが、健康に御留意され、さらなる御指導、御助言をいただきますことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〇議長(佐々木俊夫君) 本日の会議時間は、議事の都合により、あらかじめ延長いたします。
   〔知事工藤巌君登壇〕
〇知事(工藤巌君) 千葉浩議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、末尾に、不肖私に対するねぎらいとお励ましの言葉をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございました。
 まず、御質問の第1点、自主防災組織の育成についてでございますが、近年の経済社会の進展に伴い、災害の発生要因は複雑多様化するとともに、大規模化の傾向にあります。このような状況において、災害を未然に防止し、最小限にとどめるには、国や県あるいは市町村が一体となり防災対策を進めることが基本でありますが、災害から生命と財産を守るには、県民1人1人が協力し合い、助け合う地域ぐるみの防災体制の確立が極めて重要であると存じております。このため、県は、市町村等との連携を図りながら自主防災組織の結成を積極的に進めてきておりますが、都市部における組織率が低いことなどから、今後におきましても、県民に対する防災知識の普及啓発と組織の育成強化等に一層努めてまいりたいと存じております。
 次に、本県農業に対する認識についてでございますが、本県農業は、これまで幾多の困難に遭遇しながらも、農業者を初め関係者の英知と努力により、これを乗り越えてきたところであり、その結果、意欲ある担い手や高収益作目の産地が各地で育つなど、本県農業は着実に進展してきているものと認識しております。今後におきましては、近年頻発する異常気象を克服しながら、新たな国境措置の実施など、農業を取り巻く環境の変化に的確に対処するため、寒冷気象にも耐え得る地域農業への再編を強力に推進するとともに、効率の高い圃場の整備や担い手農家の規模拡大による生産性の向上を加速し、さらには多様な消費者ニーズを先取りした販売戦略を展開していくことが肝要であり、こうした取り組みと相まって、農業者の創意工夫が遺憾なく発揮されることにより、必ずや21世紀に向けたたくましい岩手農業が構築されるものと確信いたしております。
 次に、平成7年度の生産調整への取り組みについてでありますが、今回の追加的転作の実施につきましては、平成6年産米の史上まれに見る大豊作に伴い、米の需給が大幅に緩和し、販売環境が非常に厳しい現状にありますことから、まことにやむを得ないことと存じております。と同時に、今回の措置は、新食糧法下における需給調整への円滑な移行を図るいわば先駆けとも考えております。したがいまして、この推進に当たりましては、農業者の方々の理解と協力を得ながら、新たな転作手法である調整水田の活用や互助方式の確立など、生産調整に弾力的に対応できる地域ぐるみでの仕組みづくりを進めるとともに、収益性の高い農業への再編を加速する契機としてもとらえ、高収益作物の導入・拡大を一層促進してまいる必要があると考えております。なお、新食糧法下における米の生産調整が全国的に実効ある取り組みがなされるよう、対策の充実について国に対し要望してきているところであります。
 次に、農山村女性活動の環境づくりについてでありますが、私は、女性の方々の多方面にわたる活躍が原動力となって、初めて生き生きとして魅力ある農山村が形成されるものと確信しております。しかしながら、現実には休日や報酬がないとか、経営に参画しても制度的な保証がないなどの声も伺っているところであります。このようなことから、平成6年にいわてふるさと女性ビジョンを策定し、主体性を持ち、はつらつと生きる女性、担い手として力を持った女性像を目指して、女性自身の社会参画の促進や女性の役割について広く理解をいただくための啓発など、女性が活動しやすい環境づくりに努めているところであります。既に県内各地において農山村女性として自信と誇りを持ち、すぐれた実践活動をしている方々がふえてきておりますが、今後、農山村女性が働きやすく、住みやすく、活動しやすい環境づくりを、より一層推進していくことが重要であると考えております。
 次に、農業農村整備事業の推進についてでありますが、ウルグアイ・ラウンド農業合意による新たな国際環境の中においても、揺るぐことのない力強い農業、活力のある農村の構築を図るためには、効率の高い地域ぐるみ農業を展開できる生産条件と、若者も魅力を持って生活できる定住条件の改善を図っていくことが極めて重要であると存じております。このためには、地域の立地条件を生かしつつ、担い手農家への農地の利用集積や作業効率を高める大区画圃場や農業用水施設等の生産基盤とともに、集落排水施設や農業集落道などの生活環境基盤の整備を、短期間に、かつ、総合的に実施する必要があると考えております。私は、3県総策定とともに、そのための努力に全力を傾けてまいったつもりでございますが、今般、ウルグアイ・ラウンド関連の農業農村整備緊急特別対策が実施されたことから、基盤整備のおくれている本県としてはこれを好機ととらえ、積極的に地元の合意形成を図りながら、国の対策を最大限に活用し、農業農村整備を加速的に推進してまいりたいと考えております。
 次に、三陸地方拠点都市地域の発展方向についてでございますが、私は昨年9月、沿岸地域の有する個性や特色を生かして、その発展可能性を最大限に引き出しながら本地域の振興を図り、もって県土の均衡ある発展を図るという観点から、三陸地方拠点都市地域を指定したところであります。本地域の発展方向につきましては、三陸縦貫自動車道の整備や三陸鉄道の機能強化などにより、地域の一体化を促すとともに、各都市間の適切な機能分担、相互連携による広域的な都市機能の増進や、豊かさとゆとりを実感できる居住環境の向上を図りながら、沿岸地域における連担都市圏を形成していくことが重要であると存じております。また、陸・海運の結節機能を生かした物流拠点の形成、豊富な海洋資源、すぐれた自然景観等を生かした産業や観光・リゾートの振興を図るとともに、内陸部と結ぶ幹線道路の整備などにより多様な交流・連携を促進しながら、広く沿岸地域全体の発展を牽引する地域として整備していくことが肝要であると存じております。
 次に、介護知識、技術の普及についてでありますが、在宅介護の問題がますます大切になるこれからの高齢社会においては、ホームヘルプサービス等各種の在宅福祉施策の充実はもちろんのこと、地域住民1人1人が介護の知識や技術を身につけ、高齢者介護に積極的に参加し、ともに支え合う長寿社会を構築することが極めて重要となってまいります。このような状況を踏まえて、県では介護の実習を通じた知識、技術の普及に加え、高齢者福祉の向上や介護者の負担軽減に役立つ福祉機器や住宅改造に関する情報の提供等を行い、介護に関する県民の意識の啓発を図るため、平成7年度に介護実習・普及センターを設置する予定であります。今後、市町村が設置している在宅介護支援センター等、地域における関連施設との連携等を通じて、この介護実習・普及センターの機能が最大限に活用されるよう努め、住み慣れた家庭や地域で、安心して生活を続けたいという県民の期待にこたえてまいりたいと考えております。
 次に、平成7年度の商工施策についてでありますが、私は、本県経済がより一層健全な発展を続けるためには、地域経済の重要な担い手である商工業の振興を図ることが極めて重要であると考え、各般にわたる施策を展開し、県内商工業の振興に努力をしてまいったところであります。しかしながら、最近における本県商工業をめぐる環境は、円高等による国際競争力の低下に伴う企業の海外進出など、いまだかつて経験したことのない構造変化に直面しているところであります。こうした環境のもとで、構造変化の流れを積極的に乗り切り、創造性に富んだ企業活動の展開が図られるよう、平成7年度においては新規事業分野の開拓や研究開発を初め、新たに企業を興そうとする場合への支援の諸施策を進めてまいりたいと考えております。県といたしましても、引き続き既存施策の拡充強化はもとより、国の施策の動向を見ながら、創造的事業活動や既存事業者の事業革新が促進されるよう、一層努力してまいりたいと考えております。
 次に、県立病院の機能の充実についてでありますが、高齢化を初めとする地域社会の変化に適切に対応していくためには、保健医療・福祉の体制の整備が重要であり、医療分野においては、限られた医療資源の有効活用と医療機関相互の機能分担と連携強化が肝要であると認識しております。県立病院においては、地域の状況に応じた救急医療を初めとする診療体制や看護体制の強化を図るとともに、高度医療機器も計画的に導入してきたところであり、病院機能は着実に充実してきていると考えておるところであります。特にも、医療資源の希薄な地域の病院においては、特別養護老人ホームや老人保健施設との併設や在宅医療の推進に積極的に努めるなど、地域の特性を踏まえた運営に努めてまいったところであります。今後とも、県立28病院が良質で効率的な医療サービスを最大限に発揮できるよう、最善の努力をしてまいる所存であります。
 次に、教育立県の取り組みとその評価についてでありますが、私は、3県総において教育の振興を県政の重要施策に位置づけ、生涯学習推進センターや美術館、歴史・文化に関する研究機関、スポーツ研修センターの整備に取り組むなど、生涯学習社会の構築に向けて各般の施策を展開してまいりました。また、生涯学習の基盤を培う学校教育につきましては、これは教育委員会の所管するところではございますが、児童生徒1人1人の個性に応じた教育を進め、主体的に学習する能力を育成し、人間として必要とされる基礎、基本を身につけることができるように、私としては教育諸条件の整備に努めてまいったところでございます。もとより、教育立県とは、学校教育、社会教育にとどまるものではございませんで、産業の振興、担い手の育成、研究普及の活動など、さまざまな産業育成の分野にまで及ぶものと考えているところでございます。
 私は、教育振興の基本的な考え方について、教育はその人自身の幸せのためでもあり、また、地域発展の基本でもあると申し上げてまいったのでありますが、このような考え方に立って、本県独自に進めてまいりました教育振興運動の成果を踏まえながら、教育諸施策の推進に最善を尽くし、具体的な事業に取り組むことができたと存じております。
 私は、自分でどう評価するかという御質問なのでございますが、教育委員会並びに関係の皆様方とともどもに、全力を尽くしてきたとは存じているのでございますが、教育の理想というものは大変に大きく深いものでございまして、そういう観点から見ましたときに、まだまだ不十分だったのだなとみずからを評価をしているわけでございます。
 さて、最後に県立大学の特色についての御質問でございますが、先般策定した県立大学基本構想においては、大学の設置の趣旨や必要性を十分に踏まえ、建学の理念の中で、豊かな教養の習得と人間尊重の精神の涵養を基本に置きながら、学際的領域や実学、実践を重視した教育、研究に意を用いることとし、地域社会への貢献、ひいては国際社会への貢献を目指す大学とすることを基本方向として掲げたところであります。
 啄木や賢治など、多くの人材をはぐくんできた風土の上に立って、知性と感性を高めるとともに、郷土を愛し、そこに生きる喜びを感じ、その発展に夢を抱く人間の育成が何よりも肝要であると私は考えております。20世紀との節目に開学するこの大学が、真に県民の夢と期待にこたえる大学として、全国に誇り得る特色のある総合大学となることを心から願っているものでございます。
〇議長(佐々木俊夫君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時3分 散 会

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