平成8年6月定例会 第6回岩手県議会定例会 会議録

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〇1番(斉藤信君)日本共産党の斉藤信でございます。
 請願陳情受理番号第6号岩手県立病院の「200床以上の病院の紹介外特別初診料」の導入に反対することについての請願が不採択との報告でありますが、9、308名に及ぶ請願署名に込められた切実な声にどうこたえる審査がなされたのか、保健商工委員長に質疑をいたします。
 第1に、新聞報道によると、他県でも導入例が多いとの説明が不採択の理由とされています。しかし、私の調査では、全国都道府県立の病院の場合、初診料上乗せ徴収を決定しているのは、わずか14都府県でしかありません。民間病院も含めて近畿医師会連合会の報告によれば、5月1日現在、近畿2府4県の200床以上の病院で初診料の上乗せ徴収を実施しているのは、大阪20・3%、兵庫11・1%、滋賀19・0%、奈良7・1%、和歌山11・5%、京都20・0%など2割以下であるとされています。請願審査は、全国、他県の状況について正確な実態把握のもとになされたのかどうか。
 第2に、紹介外初診時負担制の導入、いわゆる初診料の上乗せ徴収は、200床以上の病院と200床未満の病院及び診療所との機能分担を推進しようとすることが目的であります。しかし、実際は、初診の患者に上乗せ徴収を行っても、機能分担は成功していないし、また、成功しないとの指摘があります。
 全国自治体病院協議会雑誌96年5月号によると、全国自治体病院協議会常務理事、理事、監事、代議員、支部長、支部事務局長合同会議において、諸橋会長は、今回200床以上の病院の初診について特定療養費化されたことについて、初診料を病院に高くし、診療所へ行かせようとする厚生省の考え方は失敗するであろうとし、より信頼のおける病院を患者は選ぶのではないかと述べたと紹介をされています。
 既に先行実施されている岩手医大では、一昨年2月から、特定機能病院として、初診の患者から上乗せ徴収を実施していますが、初診患者に大きな変化がないと言われています。初診料上乗せがねらう機能分担の効果について、どう審査をされたのか伺います。
 第3に、患者負担増の問題であります。94年度の県立病院の初診の患者数は36万6、693人、うち200床以上の14病院では27万7、218人となっています。75%を14病院が占めています。この14病院の初診料上乗せは2億8、531万円となります。救急患者9万1、000人を除いたとしても約2億円の負担増となりますが、県立病院が県民に対して新たな負担を強いることについてどう審査をされたのか、お聞きをいたします。
 第4に、県医療局は初診料上乗せについて、さまざまな弊害があることから、8項目30種類について徴収を除外するとしております。しかし、このほかにもその市町村で県立病院以外に診てもらえない診療科がたくさんあります。宮古病院の脳神経外科、久慈病院の脳神経外科、福岡病院の脳神経外科、遠野病院の小児科、脳神経外科、江刺病院の精神科、整形外科、南光、北陽病院の精神科、これらの病院の診療科はなぜ除外の対象とならなかったのですか。眼科、耳鼻咽喉科のみを除外としたのはなぜでしょうか。審査の内容を示していただきたい。
 また、老人保健法が適用される老人の場合、外来一部負担額が月1、020円となっています。初診料上乗せが行われるなら倍以上の負担となります。なぜ老人が除外の対象とならなかったのか、その理由と根拠についてどう審査されたか、お示しをいただきたい。 第5に、200床以上の病院と200床未満の病院で区別する根拠について伺います。 県医療局の6月にまとまったばかりの岩手県立病院等事業計画によると、県立病院の類型と診療機能計画では、センター病院、広域中核病院、地域総合病院、地域病院に分けられています。そのうち地域総合病院は広域中核病院との連携のもとに、1、一般総合医療機能、2、特殊専門医療機能、3、地域ケア支援機能などの機能を有するとして7つの基本診療科が定められています。
 ところが、200床以上で線引きすると、地域総合病院のうち遠野、江刺は初診料を上乗せし、その他の病院については初診料は上乗せしない。200床以上の病院について県医療局長はこう答弁しています。主として入院患者さんを中心に高度専門的な医療を提供する200床未満の千厩、高田、大槌、山田、一戸の各病院については、外来の患者さん、在宅医療を中心とした初期医療、いわゆるプライマリーケア的な機能を担うとしています。同じ地域総合病院として位置づけられながら、初診料上乗せ徴収によって、天と地の違いが出てくるのはなぜでしょうか。県医療局自身の岩手県立病院等事業経営計画の内容に関連して、どう審査されたのかお聞きをいたします。
 最後に、県民によってつくられ、県民によって支えられてきた県立病院、全国一を誇る県立病院が、全国に先駆けて県民に初診料を上乗せ徴収することが、県立病院の創業の精神であり、基本理念でもある、県下にあまねく良質な医療の均てんを基本方針と掲げられている、心通う患者中心の医療の展開という方針から見て矛盾する、反するものではないでしょうか。県民、患者の病院選択の自由が経済的に脅かされるのではないかとの指摘があります。この点についてどう審査されたのか。
 以上、署名にこたえた説得力ある具体的な答弁を求め、質疑といたします。
〇保健商工委員長(折居明広君)斉藤信議員の質疑にお答えいたします。
 まことに多岐にわたる、しかも専門的な項目でのお尋ねでありますが、受理番号第6号の審査の経緯についてのお答えを申し上げます。
 請願の要旨は、結論としては、県立病院の200床以上の初診時の紹介外特別初診料を導入しないことということでありますが、本会議においての一般質問における執行部の詳細な答弁等により、ただいまの質疑へのお答えとしては、大方尽きておるものと判断されますし、さらに、当委員会でも県立病院の外来診療の実態や、適用対象外を設けるなど患者さんへの配慮などについても審議が及んだところであり、また、県営医療審議会においても、8月1日施行ということで一定の了承がなされていること等を勘案し、これらを総合的に判断した結果、全会一致で不採択と決定した次第であります。
 以上であります。
   〔1番斉藤信君登壇〕
〇1番(斉藤信君)日本共産党の斉藤信でございます。
 議案第4号、請願陳情受理番号第3号の採択、並びに請願陳情受理番号第6号の不採択に反対の討論を行います。
 議案第4号岩手県県税条例の一部を改正する条例案は、これまで4、000万円を超える長期譲渡所得に対して税率3%を課していたものが、8、000万円を超える譲渡益まで引き上げられるものであります。結局4、000万円を超える長期譲渡所得は、県税では1%の減税となるものの、市町村民税では0・5%、所得税では5%を含め6・5%もの大幅減税となるものであります。これは、バブル経済と地価上昇対策としてとられてきた措置でありますが、今回の減税は、高額所得者への減税、優遇措置であり、バブル再燃の危惧をもたらすおそれがあり反対をするものであります。
 請願陳情受理番号第3号港湾整備の促進についての請願は、バブル経済時代の計画であり、その見直しが求められている大船渡港湾整備計画や、既に工業用地の造成などにかかわる返済で今年度も21億4、870万円にも及ぶ一般会計からの持ち出しとなっている港湾整備計画をそのまま推進、促進しようとするものであり、地域、住民本位に見直しする立場から、請願の採択に反対をするものであります。
 請願受理番号第6号岩手県立病院の「200床以上の病院の紹介外特別初診料」の導入に反対することについての請願は、短期間のうちに9、308名の署名が県議会に寄せられたことに見られるように、県民、患者の切実な声、要望が込められたものであります。 医療過疎の時代に、県民自身の運動によってつくられたのが今日の県立病院であります。だからこそ、全国一の28病院を擁する県立病院となったのであり、28の県立病院の一つ一つが地域医療を担うかけがえのない役割を果たしているのであります。県下にあまねく良質な医療の均てんをという基本理念は、県立病院の創業の精神であり、伝統ともなっているのであります。
 ところが、県医療局は、県民、患者の声を聞くこともなく、厚生省の診療報酬の改定、改悪の方針に追随し、8月1日から200床以上の県立病院で初診の患者から、初診料以外に1、030円の上乗せ徴収を行うことを一方的に決めたのであります。初診料への上乗せ徴収は、第1に、県民と患者に新たな負担増を押しつけ、県民と患者の病院選択の自由を経済的側面から脅かすものであります。14県立病院の初診患者は年27万人を超えています。私の試算では、少なく見ても約2億円以上の新たな負担を県民に強いるものであります。
 第2に、初診料上乗せの目的である県立病院の機能分担、受診抑制は、全国自治体病院協議会の会長発言や、既に実施している岩手医大などの実態を見ましても、余り見通しのないものであります。結局は、患者への負担増のみが押しつけられることになりかねません。
 第3に、県医療局は初診料上乗せのさまざまな弊害を認め、8項目30種類において徴収除外とすることを明らかにしていますが、宮古、久慈、福岡、遠野、江刺、南光、北陽、各県立病院の脳神経外科や小児科、整形外科、精神科などは、その地域にはない診療科であります。また、老人保健法適用の老人も除外とならないなど、矛盾と問題点が数多く残されていることであります。
 第4に、県医療局は200床以上の県立病院で初診料の上乗せ徴収を行う理由として、病院間の機能分担の推進を強調しています。そして、200床以上の病院は主として入院患者さんを中心に高度専門的な医療を提供するとし、その他の病院では外来の患者さん、在宅医療を中心とした初期医療、いわゆるプライマリーケア的な機能を担うとしています。これは、200床を基準に新たな県立病院の差別と選別を進めるものであります。県医療局自身が去る6月に明らかにしたばかりの県立病院ヒューマニティー21計画、岩手県立病院等事業経営計画とも矛盾し、また、反するものであります。
 計画では、県立病院の類型を明らかにしていますが、200床以上で線引きしているわけではありません。地域総合病院として遠野、江刺、千厩、高田、大槌、山田と一戸・北陽の7病院が指定され、一般総合医療機能を課すとされています。200床以上の遠野、江刺では初診料の上乗せが行われるが、その他では行われないことになります。結局6月に出したばかりの県医療局自身の計画さえ踏みにじって、何が何でも県民に初診料の上乗せ徴収を行う。こういうことにならないでしょうか。
 第5に、初診料上乗せ徴収は、診療報酬の改定でも問題が多いことから、各病院の選択制とされたものであります。私の調査では、全国の県立病院の場合、岩手県を含め14都府県が実施を決めているにすぎません。全国一を誇る岩手の県立病院が初診料上乗せ徴収で、全国の先導役を果たすことは許されるものではありません。
 重要なことは、初診料上乗せ徴収問題は、県立病院のあり方が根本から問われる問題だということであります。にもかかわらず、県医療局が、県民の声も聞かず一方的に強行しようとする姿勢は、県立病院の基本理念、基本方針に反するものと言わなければなりません。
 私は、県立病院の県民からの遊離、変質を心から危惧するものであります。同時に、県議会としても9、308名に込められた県民の要望と、県立病院のあり方を問う請願に対して直ちに不採択とすることは、県議会の慎重審議、徹底審議で県民の負託にこたえるという本来の姿に反するものと言わなければなりません。
 日本共産党は、引き続き、県民と力を合わせ、県下にあまねく良質な医療の均てんを、心の通う患者中心の医療の展開をという県立病院の創業の精神、基本理念と基本方針を守り抜くために全力を挙げて奮闘するものであります。
 以上、反対討論といたします。
 御清聴ありがとうございました。
〇議長(堀口治五右衛門君) 以上で通告による討論は終わりました。
 これをもって討論を終結いたします。
 これより議案第4号及び請願陳情中、受理番号第3号、受理番号第6号を採決いたします。
 各案件は、委員長の報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(堀口治五右衛門君) 起立多数であります。よって、議案第4号及び請願陳情中、受理番号第3号、受理番号第6号は、委員長の報告のとおり決定いたしました。
 次に、議案第1号から議案第3号まで、議案第5号から議案第14号まで、及びただいま議決いたしました請願陳情を除く請願陳情を一括して採決いたします。
 各案件は、委員長の報告のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕
〇議長(堀口治五右衛門君) 起立全員であります。よって、議案第1号から議案第3号まで、議案第5号から議案第14号まで、及びただいま議決いたしました請願陳情を除く請願陳情は委員長の報告のとおり決定いたしました。
   日程第16 委員会の閉会中の継続審査及び継続調査の件
〇議長(堀口治五右衛門君) 次に、日程第16、委員会の閉会中の継続審査及び継続調査の件を議題といたします。
〔参照〕
総務委員会
受理
番号
件   名
18消費税について請願
24特別地方消費税を地方消費税へ吸収(廃止)することについて陳情
14級以上の身体障害者に対する自動車税免税について請願
8消費税税率引き上げ中止を求めることについて請願
10土木事務所の機能の充実強化等について請願
11消費税の飲食料品に対する税率の軽減を求めることについて請願
12「従軍慰安婦」問題の解決のため、政府に意見書の提出を求めることについて請願

福祉文教委員会
ひとにやさしいまちづくりについて
保健商工委員会
受理
番号
件   名
9院内保育所に係る県単独事業を新設することについて請願

農林水産委員会
黒毛和種の生産振興について
土木委員会
さわやか岩手イメージアップ大作戦事業について
〇議長(堀口治五右衛門君) お諮りいたします。委員会の閉会中の継続審査及び継続調査の件につきましては、先ほど各委員長から報告のとおり申し出がありましたが、委員長から申し出のとおり、閉会中の継続審査及び継続調査に付することに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(堀口治五右衛門君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長から申し出のとおり、閉会中の継続審査及び継続調査に付することに決定いたしました。
   日程第17 発議案第1号洋上勤務者に対する選挙権行使の機会確保についてから日程第24 発議案第8号中国の核実験に抗議し、実験の即時中止を求める決議まで
〇議長(堀口治五右衛門君) 次に、日程第17、発議案第1号から日程第24、発議案第8号までを一括議題といたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております各案件は、各派共同提案及び委員会提案でありますので、会議規則第34条第2項の規定及び先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(堀口治五右衛門君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 これより発議案第7号港湾整備の促進についてを採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(堀口治五右衛門君) 起立多数であります。よって、発議案第7号港湾整備の促進については、原案のとおり可決されました。
 次に、発議案第1号から発議案第6号まで、及び発議案第8号を採決いたします。
 各案件は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(堀口治五右衛門君) 起立全員であります。よって、発議案第1号から発議案第6号まで及び発議案第8号は、原案のとおり可決されました。
   閉 会
〇議長(堀口治五右衛門君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 これをもって本日の会議を閉じ、第6回県議会定例会を閉会いたします。(拍手)
   午後1時46分 閉 会

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