平成13年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(増田寛也君) 第9回県議会定例会が開催されるに当たり、今後の県政運営の基本方針について所信の一端を申し上げます。
 今、21世紀という新たな世紀を迎え、改めて20世紀における岩手の姿を振り返ってみますと、およそ半世紀にわたって続いた戦争という時代環境の中で、たび重なる冷害は農村社会に大きな打撃を与え、また、三陸大津波やチリ地震津波、カスリン、アイオン台風により多くのとうとい人命が失われるなど、まさに苦難の連続でありました。
 しかしながら、このような厳しくもまた困難な中にあって、岩手の先人は、勇気と英知を持ち、北上川の洪水対策など県土の復興とその後の発展に積極果敢に取り組み、現在の本県躍進の礎を築き上げてまいりました。ここに改めて先人の労苦をしのび、その努力に敬意を表するとともに、また、この苦難の歴史があったからこそ我々のよって立つ現在の岩手があるということに思いをいたすものであります。
 一方、我が国は、大戦後の国土の荒廃、食料不足の困難期を乗り越え、欧米諸国へのキャッチアップを目指した経済政策、開発政策により規格大量生産型の工業社会を形成し、国民所得や生活の利便性を飛躍的に向上させるなど、経済大国として発展してまいりました。
 しかし、反面において東京一極集中と地方の過疎化が進み、本県においても、若年労働力の流出や全国との所得格差、社会資本整備の立ちおくれなどの課題が生じたところであります。
 また、大量生産、大量消費による世界的な経済の拡大は、廃棄物処理の社会的問題と地球温暖化など地球規模での環境問題を招いており、今、それらへの対応がすべての人類に突きつけられているところであります。本県においても、旧松尾鉱山から排出される鉱毒水の処理について、今後も半永久的にその対策が求められるなど、将来に大きな負荷が残されております。
 21世紀を迎え、人々は真の豊かさとは何かを問い直し、新たな時代に対応した価値観を模索しております。私は、右肩上がりの経済成長の中での経済効率一辺倒の価値観から脱却し、これからは、人々が個人として自立するとともに、創造力を発揮し、そして生きる喜び、生きる価値を見出されるような希望の持てる社会でなければならないと考えております。このことは、人間を基本とした価値観の形成であり、個々人の立場をお互いに認め合う、思いやりのある社会の形成でもあると考えます。
 また、21世紀の経済社会が持続可能な発展を続けるためには、これまでの資源多消費型社会に決別し、環境への負荷が少ない、まさに次世代に負荷を残さない循環型の社会を構築しなければなりません。
 そのためには、地球を守るというグローバルな価値観に基づいた、環境を基本とする経済社会システムへの変革が必要であります。さらに、情報通信技術、いわゆるITの活用によりネット経済の活性化を図るとともに、これまでの工業社会から、情報と知識が付加価値の源泉となるいわゆる知識創発型社会への転換を促していくことが急務であり、何よりもすべての人々がITの恩恵を享受できるような環境づくりが必要であります。
 また、人々の生活が広域化している中で、これからの行政は、今までの行政の枠組みにとらわれない、まさに県の枠を越え、広域的な視点から各分野においてダイナミックに連携や機能分担を進めていくことが重要であり、そのことが真に豊かな社会の実現にもつながるものと考えております。そして、これらは、地域が主体となり、地域が勇気を持って挑戦していかなければならないものと考えます。
 本県は、厳しい気候や風土の中で、困難に立ち向かい、岩手を創造してきた多くの先人を輩出してきました。新渡戸稲造や田中舘愛橘、原敬や後藤新平を初めとする日本や世界を先導したひと、そして、宮澤賢治、石川啄木のように、歴史的な評価の中で光を放つような人材をはぐくんでまいりました。
 また、本県には、世界遺産登録を目指している平泉の文化遺産のように歴史的な文化の大集積があり、一方、美しい大自然の中で、縄文の昔から自然をともに生きるものとしてとらえる木の文化、森の文化が脈々と受け継がれているなど、時代を越えて変わらない本質的な価値を持つものが数多く継承されております。
 私は、岩手に生きる私たちが、このような先人の偉業や本県の独自性、特性に誇りを持ち、自信を持って21世紀の新しい岩手づくりに生かしていくことが最も重要であると考えております。
 21世紀の岩手の可能性を大きく引き出していくキーワードは、環境、ひと、情報であります。
 環境については、岩手の豊かで美しい自然を基本に考えなければなりません。この美しい岩手の大地を守り、自然と共生し、また、ものの生産から廃棄物の処理、再資源化に至る、いわゆる動脈産業から静脈産業までの総合的な生産システムの再構築や環境産業の育成など、地域の持続的発展に向けた循環型社会実現への取り組みが必要であります。
 新しい岩手づくりを支えるひとづくりについては、県民一人一人が、地域に対してその人ならではの貢献ができる、そのようなひとを社会全体として育てていく必要があります。特に、21世紀を担う青少年については、岩手ならではの特色を生かしながら、個性と創造性にあふれ、他人への思いやりと自立心に富んだ人間に育て上げていく教育に真っ正面から取り組んでいく必要があると考えております。
 また、ITは、これまで本県の発展を阻む壁であった距離の制約を克服し、ITの活用によって、岩手の新しい世紀の経済活性化はもとより、福祉の向上や国内外とダイレクトに交流と連携が活発に展開されることが期待されるところであります。このため、情報については、いわて情報ハイウェイを活用した高度情報化を促進するほか、特に、近年発展の著しい移動体通信技術、いわゆるモバイル通信技術を積極的に活用してモバイル立県の実現を目指してまいります。
 今、地方分権の進展に伴い、地域の自立、住民一人一人の自立が強く求められています。これからは、私たち一人一人が、自分たちの地域づくりに大いなる気概を持ち、自己決定、自己責任の原則を強く心に刻みながら、勇気を持って新たな第一歩を踏み出すことが必要であります。
 このため、私は、新しい地域づくりの担い手として期待されるNPOや県民、事業者など、あらゆる主体の参画を得ながら、個々人の創造力と地域力を結集し、新しい岩手づくりを進めてまいります。そして、私自身リスクを恐れず、また、既成概念にとらわれることなく、県民の皆様の先頭に立って、諸課題に対し、果敢に取り組んでまいる決意であります。
 次に、新しい岩手づくりを進めるための基本的な考え方について申し上げます。
 私は、新しい岩手づくりのシナリオとして策定した岩手県総合計画の着実な実行を図るため、県民の皆様の参加と協力をいただきながら、多くの知恵を出し合い、また、限られた資源を有効に活用し、県民満足度の高い行政の推進に取り組んでまいります。
 そのため、県民への説明責任の徹底を図るとともに、県の施策について県民意識調査を実施するほか、県政懇談会などによる県民の皆様の意見、提言を踏まえて、施策の企画立案を行ってまいります。
 さらに、成果重視の行政への転換を図るため、今年度から行った政策評価の充実を図り、平成13年度から本格的に取り組むなど、県民の視点に立った行政の推進に一層努めてまいります。
 平成13年度の施策重点化方針については、今年度の政策評価の結果に基づき、次のとおり定めたところであります。
 第1は、環境首都実現に向けた取り組みであります。資源循環型社会の構築に向け、廃棄物の発生抑制、再使用、再利用等を促進するとともに、環境への負荷の少ない新エネルギーの導入を進めるほか、北東北3県の共同により広域的な産業廃棄物対策の推進に取り組んでまいります。
 第2は、結の心・子育て環境日本一に向けた取り組みであります。
 いわて子どもプランを基本として、世代や性別を越え、家族、学校、企業等地域社会が一体となり、子育てを促進する施策を市町村と連携して進めてまいります。
 第3は、快適な暮らしを目指す生活基盤整備の推進であります。
 市町村と連携し、下水道、集落排水、合併処理浄化槽等の汚水処理施設の整備を積極的に進めてまいります。
 第4は、産業連携と新産業の創出、雇用の確保に向けた取り組みであります。
 日本経済は依然として厳しい状況が続いておりますが、本県におきましても景気の回復は喫緊の課題であり、農林水産業施策の一体的推進など、従来の壁を越えた新しい視点での各産業間の連携に取り組むなど、地域経済の活性化が図られ、地域の豊かさにつながるよう全力を挙げて取り組んでまいります。また、多面的な企業支援、起業化支援による新産業の創出を目指すほか、雇用の確保に向け、地域産業の振興、県外からの企業の導入などに積極的に努めてまいります。
 第5は、多様な交流・連携を支える交通ネットワークの整備であります。
 高速交通ネットワークや高速交通拠点へのアクセスなど重点的な整備を進めるとともに、特に道路の整備に関するプログラムを着実に推進しながら、効果的な道路網の整備を図ってまいります。
 第6は、情報の森づくりの推進に向けた取り組みであります。
 昨年開通したいわて情報ハイウェイを最大限に活用して、保健・医療・福祉や防災、教育、産業などさまざまな分野について、岩手の新しいネットワーク社会の構築を目指したシステムの具体化や活用を進めてまいります。
 第7は、いわて型教育の推進に向けた取り組みであります。
 岩手らしさを生かした特色ある教育を推進し、生きる力をはぐくむ教育を進めてまいります。また、この取り組みに当たっては、専門家やボランティアなど地域の人材を積極的に活用しながら、地域、家庭、学校が一体となったひとづくりを進めてまいります。
 次に、分権時代に対応した新しい行財政システムの確立について申し上げます。
 昨年4月にいわゆる地方分権一括法が施行され、新たな時代に第一歩を踏み出したところでありますが、私は、地方が住民の視点に立ち、真に責任ある行政を進めていくためには、住民に最も身近な存在である市町村が行政の中心となり、透明性の高い行政を推進していくことが望ましい姿であると考えております。そのため、県といたしましては、市町村を中心として、県と市町村がその役割を分担し、補完し合う新しい関係の構築に向け、権限委譲や人事交流、広域行政の推進に努めてまいります。
 また、地方分権の推進については、国から地方への税財源の移譲という大きな課題が残されており、これを実現して初めて名実ともに地方分権の時代がスタートするものと考えていることから、この課題の解決に向け努力をしてまいります。
 さらに、個人の価値観が多様化し、さまざまな行政需要が増大していることから、情報公開や県民参画を進めながら、県民満足度の高い施策を重点的、効果的に実施していく必要があります。
 このため、組織機構の再編を行い、政策の企画立案、調整、評価等を所管する総合政策部門の整備や各部局における政策形成機能の強化を図るとともに、特定地域の重要課題に対応しながら、地方振興局と市町村を総合的に支援する地域振興部門の充実を図るなど、総合計画で示した岩手の将来像を構成する五つの社会を実現するための施策を効果的に推進できる体制を構築してまいります。
 また、県民ニーズに即応できる行政運営を目指して、自己診断、自己改革により組織の体質改善を進める行政品質向上運動に全職員が一丸となって取り組むほか、パブリックコメント制度の推進や本格的な財務諸表の作成など、説明責任の徹底に努めてまいります。
 さらに、環境問題や観光、教育、試験研究など、多くの分野において、県の枠を越え、県同士の広域的な連携や機能分担により、より適切かつ効率的な行政が展開され、県民サービスの向上が期待できることから、北東北3県を基本に、今後、東北各県との広域連携について具体的な取り組みや検討を進めていく考えであります。
 次に、平成13年度の予算編成方針等について申し上げます。
 今回提案した平成13年度予算案は、21世紀の新たな発展基盤を構築するため、岩手県総合計画の着実な推進に向け、中期的な財政見通しのもとに、政策評価結果による施策重点化方針に留意しながら、限られた財源を重点的かつ効果的に配分し編成したところでございます。
 また、行財政を取り巻く環境は極めて厳しい状況が続いており、引き続き行財政運営の健全化と行政改革を推進し、多様化、高度化する行政需要に積極的に対応してまいります。
 なお、昨年、職員の不祥事により、県政に対する県民の信頼を著しく損なったことは、極めて遺憾なことであります。このような事件が再び起こらないよう、公務員倫理を明確にするための措置を講ずるとともに、職員研修を充実するなど職員の公務意識の徹底を図るほか、生活者や地域の視点に立った県政を推進するにふさわしいチャレンジ精神や自立心、責任感を持った職員の育成に努め、県政に対する県民の信頼回復に全力を尽くしてまいります。
 以下、岩手県総合計画において、岩手が目指す将来像として掲げた五つの社会ごとに平成13年度の主要な施策について申し上げます。
 第1に、自然と共生し、循環を基調とする社会の実現に向けた施策についてであります。
 まず、環境首都いわての実現に向けて、生活環境や自然環境などの新たな問題に適切に対応するため、条例の制定などに取り組むとともに、環境家計簿を全世帯に配布するほか、県民、企業、環境団体などとの共同による環境展を本年10月に開催するなど、地球温暖化防止に向けた各種の取り組みを促進してまいります。
 また、循環型社会の創造に向け、いわて資源循環型廃棄物処理構想に基づき、廃棄物処理計画の策定や循環型のモデルとなる廃棄物処理施設の検討を進めていくほか、廃棄物の減量化、リサイクルの促進、普及啓発を図ってまいります。
 さらに、北東北知事サミットの合意に基づき、産業廃棄物の不法投棄を防止し、適正な処理を進めていくために、広域的な産業廃棄物対策について、3県共同で検討してまいります。
 また、風力、太陽光、地熱、水力など新しいエネルギーの利活用を進めるとともに、環境共生住宅の建設を推進し、地球環境にも優しく暮らしやすい住宅の普及を図ります。
 第2に、快適に安心して暮らせる社会の実現に向けた施策についてであります。
 まず、快適な暮らしの実現に向けて、公共下水道と農業集落排水施設との連携による効率的な整備について、モデル地域を選定し検討を行うなど、汚水処理施設の整備を一層推進してまいります。
 また、北東北における拠点都市としての機能を高めるため、盛岡駅西口地区に整備する多機能型複合施設の実施設計に取り組むほか、盛岡南地区への交通軸となる(仮称)中央大橋を整備してまいります。
 次に、健やかで、安心できる暮らしの実現に向けて、ユニバーサルデザインによるひとにやさしいまちづくりを推進するほか、いわて情報ハイウェイを活用した医療情報ネットワークの構築に取り組んでまいります。また、県立病院における医師の確保と市町村立病院等に対する支援体制を強化するため、新たに医師養成制度を創設するとともに、磐井病院や南光病院の新築に着手してまいります。
 さらに、本年7月に開所する環境保健研究センターにおいては、県内外の大学、試験研究機関等との協力・連携を図りながら、さまざまな環境・保健に関する調査研究・技術開発を積極的に推進してまいります。
 少子化対策については、本年1月に策定したいわて子どもプランに基づき、多様な地域ニーズに応じた保育所の整備を促進するほか、虐待等の問題に対応する相談体制の拡充を図るため、新たに児童家庭支援センターを設置するとともに、地域で子育てを支援する体制の整備を図るなど、次代を担う子供たちが健やかに育つ環境づくりを推進してまいります。
 また、高齢者の生きがいづくりや社会参加を促進するほか、介護予防・介護保険の円滑な実施、質の高いサービスのための支援を行ってまいります。
 さらに、障害者授産施設の整備を促進し、障害者の能力に応じた就労の促進に努めるなど、障害者や難病患者が地域の中で自立して生活できる環境の整備を図ってまいります。
 次に、安全な暮らしの実現については、ハイテク犯罪やストーカー犯罪への対応を強めるほか、高齢者の交通安全教育を実施するとともに、歩道の整備やバリアフリー化など総合的な交通安全対策を推進してまいります。
 また、岩手山の火山対策などの防災対策を一層充実するとともに、救急業務の高度化を促進し、消防防災体制の充実強化を図ってまいります。
 第3に、創造性あふれ、活力みなぎる産業が展開する社会の実現に向けた施策についてであります。
 まず、農業については、本県ならではの恵まれた資源を積極的に生かし、意欲ある担い手を中心に、水田の高度利用を図るなど、適地適作を基本とした作目再編を促進するとともに、消費者の求める品質の高い農産物の供給力の向上を図り、米・園芸・畜産のバランスがとれた総合産地の形成を推進してまいります。
 また、いわて農業純情度指標の達成に向けて、エコファーマー等による環境に優しい栽培技術の普及や耕種と畜産の連携による自然循環機能を活用した持続的農業の取り組みを進め、安全な農産物の生産拡大を図るとともに、地元の産物を地元で消費する、いわゆる地産地消の取り組みを初め、県産農林水産物を一体とした効果的なマーケティング活動を展開してまいります。
 さらに、次代の農業担い手を育成するため、県立農業大学校の再編整備を進めてまいります。
 林業については、水源涵養等公益的機能の高度発揮が求められる森林の造成、地域の豊かな森林資源を活用する木材加工施設の整備を促進するほか、木質バイオマス利用の調査検討を進めてまいります。
 水産業については、つくり育てる漁業を積極的に推進し、その生産基盤である漁港及び漁場の一体的な整備を進めるとともに、ハセップ方式の導入や生産・加工・流通・販売の一貫した取り組みに努めてまいります。
 地域産業の振興については、中心商店街活性化に向けた支援を拡充するほか、地域課題の解決を起業化に結びつけるコミュニティ・ビジネスを支援するとともに、いわてブランドの確立や新たな海外販路の開拓など、県産品の情報発信の強化に取り組んでまいります。
 また、中小企業については、国際規格の認証取得など、経営の高度化に取り組む意欲的な企業を積極的に支援してまいります。
 科学技術の振興については、昨年11月に策定した新岩手県科学技術振興指針に基づき、大学、試験研究機関等の独創的な研究開発を推進するなど、持続的な技術革新を生み出す知的創造地域の形成を目指すとともに、青少年の科学技術に対する理解増進に努めてまいります。
 新産業の創造については、産業化に向けた産学官連携による新技術の研究開発や先進的なマルチメディア・ソフトウエア開発などを進めるほか、いわて情報ハイウェイを活用した地域プラットフォームの充実強化、産業界と一体となったゼロエミッション化の推進や環境関連産業の育成など、新たな産業の創出に努めてまいります。
 観光の振興については、総合的な観光情報発信体制を整備するほか、三陸地域を対象とする体験型観光ツアーの実施や八幡平山頂レストハウスの整備などに取り組んでまいります。
 働く環境の整備とひとづくりについては、仕事と育児・介護の両立を支えるファミリー・サポートセンターの設置を促進するとともに、平成16年度に本県で開催が予定されている技能五輪全国大会に向け、技能者の育成確保を図るなど、高度で創造的なひとづくりに努めてまいります。
 第4に、ネットワークが広がり、交流・連携が活発に行われる社会の実現に向けた施策についてであります。
 まず、市町村総合補助金や地域活性化事業調整費により、地域の主体性を生かした地域づくりを支援してまいります。
 国際交流、国際協力については、海外の県人会や岩手で学んで帰国した研修員等を核としたネットワークづくりを進めるとともに、国際協力に対する県民の理解を深めるためのフォーラムを開催するなど、世界に開かれた岩手づくりに努めてまいります。
 次に、交通ネットワークの形成に向けて、東北横断自動車道釜石秋田線の釜石-花巻間や三陸縦貫自動車道等の整備を促進するとともに、県北・沿岸地域等における地域づくりを支援するため、県道、農道、林道等の連携による道路網の整備を進めてまいります。
 また、花巻空港滑走路2、500メートル延長の早期完成や交通施設のバリアフリー化など、公共交通機関の利便性の向上を図るほか、来年末に開業予定の東北新幹線盛岡以北の建設促進に努めるとともに、並行在来線については、第三セクターを設立し、開業に向けた準備を進めてまいります。
 情報化の推進については、インターネットが使えるようになるためのIT講習会を実施するとともに、携帯電話等の利用可能エリアの拡大やモバイルの端末を利用した地域情報化の実証実験を行うほか、電子県庁の構築を図るなど、県民生活とともに県行政の一層の情報化に努めてまいります。
 第5に、個性が生かされ、共に歩む社会の実現に向けた施策についてであります。
 まず、学校教育については、基礎的・基本的な学習内容を重視するとともに、総合的な学習の時間における体験学習などを通じ、みずから学び、考える力をはぐくんでまいります。また、英会話能力の向上など児童生徒の国際理解教育を進めるとともに、教育分野における情報化を推進するほか、中学校へスクールカウンセラーを配置し、不登校などの学校不適応に関する相談支援体制を整備するなど、岩手らしさを生かした特色ある教育を進めてまいります。
 さらに、社会教育については、体験活動や家庭の教育力向上のための支援を行うとともに、家庭、学校、地域社会等と一体となって青少年の健全育成に努めてまいります。
 岩手県立大学については、教育研究活動の一層の充実を図るため、平成14年4月の大学院への新たな研究科の設置に向けた取り組みを進めてまいります。
 文化の振興については、本年10月に県立美術館を開館し、県民に美術鑑賞の機会を提供するほか、世界遺産暫定リストに登載された平泉の文化遺産についてさらなる学術的な調査研究を進めるとともに、県立博物館にいわて地元学センター機能を整備するための調査を進めてまいります。
 スポーツの振興については、競技力の向上に努めるとともに、県民各世代にわたりスポーツ活動が展開できる環境を整備してまいります。
 また、男女共同参画社会の形成に向けては、いわて男女共同参画プランに基づき、地域における男女共同参画の取り組みを支援するとともに、審議会等への女性委員の登用を進めてまいります。
 さらに、ボランティアやNPO活動の促進については、支援拠点機能の拡充やNPOの安定的な活動を図るための財政支援など活動環境の整備を進めてまいります。
 以上、今後における県政運営の基本方針と平成13年度の施策の概要について申し上げましたが、私は、新しい岩手づくりに向けて何よりも重要なことは、県民一人一人が、21世紀の岩手づくりの主役は自分である、このような意識を持って行動することと考えております。そのためには、本県のすぐれた環境の中で、夢をはぐくみ、夢をつなぎながら、地域の思いやみずからの夢の実現に向けて、息長く取り組んでいくことが最も重要であります。
 平民宰相と言われた原敬は、地方分権論の中で、「而て地方果たして隆盛の域に至らば我日本の富強は求めずして至らん。」と述べました。これは、明治維新後、中央集権的な国家体制が強化される中で、画一的な制度の押しつけに対する不満が各地で生じたことを背景に、地方の隆盛を図るためには地方分権の政策が必要であり、地方の隆盛が、ひいては国全体の発展につながるということを説いているものであります。
 このことは、まさに地方が自立し、自分たちの地域に誇りを持ち、地域の自然や歴史、文化などの特性を生かして、自分たちの価値観により自分たちの暮らしを創造していくという総合計画に掲げる生活者主権、地域主権の考え方につながるものと理解しております。
 生活者主権、地域主権の社会を実現するためには、乗り越えなければならない多くの痛みや苦しみがあり、未来に挑戦する勇気が必要であります。
 私は、本県の自然や風土、文化を土台とし、人と人とのつながりや世代間の交流を大切にしながら、みずからの夢にチャレンジする人材を育て、21世紀の目標像である夢県土いわての実現に向けて、確かな足取りで、県民の皆様とともに歩んでいきたいと考えております。
 議員の皆様の一層の御理解、御協力と県民の皆様の岩手づくりへの積極的な参加を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。(拍手)
   
日程第4 議案第1号平成13年度岩手県一般会計予算から日程第59 報告第2号道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分の報告についてまで
〇議長(山内隆文君) 次に、日程第4、議案第1号から日程第59、報告第2号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。武居総務部長。
   〔総務部長武居丈二君登壇〕
〇総務部長(武居丈二君) 本日提案いたしました各案件について御説明いたします。
 議案第1号は、平成13年度岩手県一般会計予算であります。
 この予算の編成に当たりましては、国、地方を通じて引き続き厳しい財政環境下にあることにかんがみ、国の予算編成方針や地方財政計画等に留意するとともに、中期財政見通しを踏まえ、歳出の抑制等、財政運営の健全化に最善の努力を傾注しながらも、21世紀の新たな発展基盤を構築するため、岩手県総合計画の着実な推進に向けて各般にわたる施策に重点的な配分を行ったところであります。
 特にも、新たに実施した政策評価の結果に基づく施策重点化方針を踏まえて関連事業に重点的に措置したほか、公共事業については、費用対効果分析等により採択基準を明らかにしながら、重点的、効果的な実施に努めることとしたところであります。
 以下、その概要について御説明いたします。
 第1条は、歳入歳出予算の総額をそれぞれ9、027億8、238万円と定めるものであります。これを前年度当初予算と比較しますと0.7%の増となっております。
 次に、歳入について御説明いたします。
 第1款県税につきましては1、266億6、800余万円を計上しており、前年度当初予算と比較しますと32億7、100余万円の増となっておりますが、この見積もりは、平成12年度の税収の最終見込みを基礎として、平成13年度の経済見通しによる経済指標、地方財政計画の収支見込みにおける税収の伸び及び県内経済の動向等を勘案するとともに、税制改正による恒久的な減税に伴う影響分などを見込んだものであります。
 第2款地方消費税清算金につきましては276億5、900余万円を計上しており、前年度に比較して24億3、500余万円の増となっております。
 第3款地方譲与税につきましては32億6、800余万円を計上しており、前年度に比較して4、100余万円の増となっております。
 第4款地方特例交付金につきましては10億4、600万円を計上しており、前年度に比較して3、600万円の増となっております。
 第5款地方交付税につきましては2、695億3、200余万円を計上しており、前年度に比較して133億6、300余万円の減となっております。
 第6款交通安全対策特別交付金につきましては6億5、800万円、第7款分担金及び負担金につきましては115億5、500余万円を計上しております。
 第8款使用料及び手数料につきましては121億1、600余万円を計上しており、前年度に比較して1億700余万円の増となっておりますが、これは、手数料の適正化を図ったことなどによるものであります。
 第9款国庫支出金につきましては1、758億200余万円を計上しており、前年度に比較して41億2、800余万円の減となっております。
 第10款財産収入につきましては18億7、800余万円を計上しております。
 第11款繰入金は282億7、900余万円を計上しておりますが、これは、県債管理基金、公共施設等整備基金及び中山間地域等直接支払交付金基金等から繰り入れを行うものであり、前年度に比較して65億5、100余万円の増となっております。
 第13款諸収入につきましては1、090億100余万円を計上しておりますが、その主なものは貸付金の元利収入であります。
 第14款県債につきましては1、353億1、600万円を計上しており、前年度に比較して132億9、800万円の増となっておりますが、これは、臨時財政対策債の発行などによるものであります。
 次に、歳出について御説明いたします。
 第1款議会費につきましては15億2、200余万円を計上しております。
 第2款総務費につきましては486億4、100余万円を計上しておりますが、その主なものは、市町村総合補助金15億4、800万円、二戸広域センター(仮称)施設整備費補助2億2、200余万円、情報通信技術講習推進事業費8億5、200余万円、東北新幹線建設促進対策事業費113億200余万円、並行在来線対策事業費15億2、300余万円、参議院議員選挙執行費9億7、100余万円等であります。
 第3款民生費につきましては530億6、000余万円を計上しておりますが、その主なものは、知的障害者更生援護費24億5、200余万円、介護給付費等負担金66億8、600余万円、すこやか子どもランド(仮称)整備事業費18億1、900余万円、児童保護措置費57億9、300余万円、児童扶養手当支給事業費36億8、200余万円、生活保護扶助費43億2、500余万円等であります。
 第4款衛生費につきましては231億6、100余万円を計上しておりますが、その主なものは、環境保健総合情報システム(仮称)整備費1億6、500余万円、医療情報センター構想推進費2億3、700余万円、老人保健対策費65億5、600余万円、産業廃棄物処理モデル事業推進費11億5、100余万円、自然公園山岳施設リフレッシュ整備事業費2億1、100余万円、救急医療対策費9億3、700余万円等であります。
 第5款労働費につきましては35億3、900余万円を計上しておりますが、その主なものは、緊急地域雇用特別基金事業費補助3億4、700余万円、職業能力開発推進事業費4億2、100余万円、公共職業能力開発費4億7、200余万円等であります。
 第6款農林水産業費につきましては1、328億1、600余万円を計上しておりますが、その主なものは、中山間地域等直接支払事業費34億5、500余万円、農業大学校施設整備費4億1、700余万円、県営畜産経営環境整備事業費19億200余万円、農道整備事業費33億3、300余万円、ほ場整備事業費114億4、900余万円、農業集落排水事業費41億8、300余万円、造林事業費23億7、200余万円、ふるさと林道緊急整備事業費46億6、300余万円、治山事業費43億7、400余万円、広域漁港整備事業費42億4、200余万円、海岸保全施設整備事業費12億5、800余万円、漁業集落環境整備事業費13億1、500余万円等であります。
 第7款商工費につきましては804億5、100余万円を計上しておりますが、その主なものは、商工業小規模事業対策費26億7、200余万円、中心市街地活性化推進事業費19億1、000余万円、商工観光振興資金貸付金180億7、900余万円、中小企業経営安定資金貸付金284億2、500余万円、いわて緊急経済対策資金貸付金87億200余万円、工業立地促進資金貸付金34億7、100余万円等であります。
 第8款土木費につきましては1、429億4、000余万円を計上しておりますが、その主なものは、空港整備費53億2、100余万円、交通安全施設整備事業費34億400余万円、道路維持修繕費41億2、400余万円、緊急地方道路整備事業費149億9、600余万円、地域活性化支援道路整備事業費62億6、000万円、道路歩行環境整備事業費7億5、000万円、河川災害復旧等関連緊急事業費37億3、400万円、砂防事業費23億3、000万円、簗川ダム建設事業費38億6、000万円、過疎地域公共下水道整備代行事業費21億2、300万円等であります。
 第9款警察費につきましては354億1、800余万円を計上しておりますが、その主なものは、警察行政運営費233億1、400余万円、警察情報管理システム開発事業費4億6、800余万円、警察署庁舎整備事業費38億7、300余万円、交通安全施設整備費17億800余万円等であります。
 第10款教育費につきましては1、843億8、300余万円を計上しておりますが、その主なものは、いわて教育情報ネットワーク整備事業費5億6、600余万円、高等学校校舎建設事業費31億7、200余万円、柳之御所遺跡土地公有化事業費2億200余万円、県民会館施設整備費6億1、600余万円、美術館管理運営費7億800余万円、県立大学運営費56億5、700余万円、私立学校運営費補助48億1、600余万円等であります。
 第11款災害復旧費につきましては130億600余万円を計上しておりますが、その主なものは、団体営農地等災害復旧事業費20億7、300余万円、漁港災害復旧事業費2億3、900余万円、河川等災害復旧事業費92億6、700余万円等であります。
 第12款公債費につきましては1、222億9、000余万円を計上しております。
 第13款諸支出金につきましては612億4、800余万円を計上しており、その主な内容は、公営企業負担金194億7、800余万円、地方消費税清算金131億4、700余万円、地方消費税交付金139億100余万円等であります。
 第14款予備費につきましては3億円を計上しております。
 以上をもって第1条の説明を終わりますが、歳出に充当した一般財源の額は、県税、地方交付税等で4、880億4、000余万円となっており、その割合は54.1%となっております。
 第2条債務負担行為は、公営企業金融公庫及び市中金融機関が岩手県土地開発公社に融通した資金についての債務保証等56件について、債務を負担しようとするものであります。
 第3条地方債は、地区合同庁舎建設事業等58件について、限度額、起債の方法、利率及び償還の方法を定めようとするものであります。
 第4条一時借入金及び第5条歳出予算の流用は、それぞれ所要の措置を講じようとするものであります。
 議案第2号から議案第12号までは、平成13年度母子寡婦福祉資金特別会計予算等11件の特別会計予算でありますが、これは、それぞれの事業計画等に基づき、その所要額を計上したものであります。
 議案第13号から議案第15号までは、平成13年度県立病院等事業会計予算等3件の公営企業会計予算でありますが、これは、それぞれの事業計画に基づき、収益収支及び資本収支等の所要額を計上したものであります。
 議案第16号から議案第21号までの6件は、建設事業等に要する経費の一部を受益市町村に負担させることに関しそれぞれ議決を求めようとするものであります。
 議案第22号から議案第52号までの31件は条例議案でありますが、これは、個人情報保護条例、職員の職務に係る倫理の保持に関する条例など4条例を新たに制定するとともに、情報公開条例など24条例の一部改正及び岩手県衛生研究所条例など3条例の廃止をしようとするものであります。
 議案第53号は、水沢市と胆沢郡胆沢町の境界変更に関し議決を求めるものでありますが、これは、土地改良事業の施行に伴い、水沢市と胆沢郡胆沢町の境界を変更しようとするものであります。
 議案第54号は、包括外部監査契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 次に、報告第1号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 報告第2号は、道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 以上のとおりでありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださるようお願いいたします。
   
〇議長(山内隆文君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後2時 散 会

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