平成15年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(増田寛也君) 本日、ここに第17回県議会定例会が開催されるに当たり、私の所信を申し上げます。
 平成11年4月、再び知事に就任して以来、私は、この4年間を、岩手県総合計画が目指す夢県土いわてをつくり上げていくための変革と創造の4年間として位置づけ、生活者や地域にとって最適の施策を選択し推進する現場重視の観点からさまざまな行政システムの改革を推し進めるとともに、21世紀において、それぞれの地域が自立性と多様性を持って輝く新しい岩手の土台づくりのため、自立、参画、創造の理念のもと、県民の皆様一人一人と手を携えながら全力で挑戦してまいりました。
 この任期を通じて、多くの県民の方々が日々の暮らしの中で地域の課題を直視し、それに対して真正面から取り組んでいる姿に接し、地域づくりに向けた熱意あるいは県政に対する期待を強く感じ、生活者主権、地域主権の社会を実現させることの重要性についてさらに思いを強くいたしました。
 この間、県議会並びに県民の皆様から賜りました数々の御厚情、御支援に対し、心から感謝申し上げます。
 20世紀から21世紀へのかけ橋となったこの4年間を振り返りますと、世界経済の潮流は、アジア通貨、金融危機の影響などから回復に向かう中、中国が高成長を続け、世界の工場としての地位をさらに高めるなど、地球規模での相互連関が深まる一方で、国際間での経済競争が一層激化してまいりました。また、アメリカにおける同時多発テロやイラク、北朝鮮をめぐる問題に見られるように、国家・地域間の紛争や社会経済の不安定化などが顕在化してきており、これからの予測が難しい、まさに海図なき時代を進んできたとの感があります。
 このような中、地球環境やエネルギー、人権など多くの分野で、互いの価値観を認め、一人一人が地球市民としての意識を持ちつつ、自立した個人や地域を基礎とし、相互に連携して課題に当たっていくことの重要性がさらに強まってきております。
 我が国に目を転ずれば、国は、経済の活性化を図るため聖域なき構造改革に取り組んでおりますが、依然として我が国の潜在力の発揮を妨げる規制や制度の根本的な改革にはほど遠く、いまだ日本経済の再生には至っておりません。
 こうした国の構造改革は、一方で、地域経済や地方財政などにさまざまな痛みをもたらしておりますが、この改革が進みつつある今こそ未来への飛躍の機会ととらえ、自己決定、自己責任の原則のもと、みずからの地域をみずからの力で築き、真に自立ある地域として発展させていくことが重要であると考えております。
 また、この4年間は、平成12年4月にいわゆる地方分権一括法が施行され、地方分権が新たな一歩を踏み出すとともに、市町村合併の議論が高まるなど、地方自治を取り巻く環境が大きく変化した時期でもありました。
 今後、さまざまな構造改革が進む中で、それぞれの自治体がその特徴を生かして自立的な地域づくりを進めることを基本とし、他の自治体との協力、共同によって大きな効果を発現し得る分野においては、従来の枠を越えた広域での連携などにより、相互に補完し合いながら地域の自主性を高めていくことがますます重要となってきております。
 さて、私は、21世紀において本県が確かな足取りで歩み始める出発点とするため、平成11年8月、新しい岩手のシナリオとして岩手県総合計画を策定いたしました。
 計画では、岩手の可能性を生かし、未来を切り開いていくため、環境、ひと、情報の三つの視点を21世紀の可能性の扉を開くかぎと位置づけ、自立、参画、創造の理念のもと、県民の皆様の参加と協力をいただきながら、さまざまな施策の着実な推進を図ってきたところでございます。
 以下、計画において岩手が目指す将来像として掲げた五つの社会ごとに県政を顧みるとともに、今後の課題について申し上げます。
 第1に、自然と共生し、循環を基調とする社会についてであります。
 まず、環境首都いわての実現に向けて、県民の健康で快適な生活を確保するための環境の保全に関する条例を制定し、生活環境や自然環境等の新しい環境問題への適切な対応に努めてきたほか、環境保全活動に関する投資とその効果を評価する環境会計を全国の自治体に先駆けて導入するとともに、岩手県地球温暖化防止県民行動計画を策定し、全県的な地球温暖化対策に取り組んでまいりました。
 次に、人と自然がともにある環境の保全に向けて、岩手県希少野生動植物の保護に関する条例を制定し、県内に生息、生育する希少野生動植物の保護に努めるとともに、河川改修において、生態系など環境に配慮した多自然型川づくりに取り組んでまいりました。
 青森県境における産業廃棄物の不法投棄事案につきましては、現場の環境再生と排出事業者などの責任追及に向けて、現在、全力を挙げて取り組んでいるところでありますが、この事件を教訓として、循環型地域社会の形成に関する条例等3条例を制定し、北東北3県が連携した広域産業廃棄物対策などを推進しております。また、環境共生住宅の建設を促進するとともに、太陽光や風力、地中熱、さらには木質バイオマスなど本県の地域特性を生かした新エネルギーの導入に取り組んでまいりました。
 今後、環境汚染の拡大防止と地域住民の安全・安心を確保するため、青森県境における不法投棄現場の環境再生に取り組むとともに、ゼロエミッション型社会の構築に向けて、廃棄物の発生抑制、リサイクルの促進、産業廃棄物の処理の適正化を図るための総合的な施策を推進していく必要があると考えております。
 また、木質バイオマスを初めとする新エネルギーの利用促進や省エネルギー対策など地球温暖化防止に向けた実効性の高い取り組みを進めていく必要があると考えております。
 第2に、快適に安心して暮らせる社会についてであります。
 まず、快適な暮らしの実現に向けて、汚水処理施設の整備を推進するとともに、新たな県民活動の拠点となる多機能型複合施設の盛岡駅西口地区への整備に取り組んでまいりました。
 次に、健やかで安心できる暮らしの実現に向けて、周産期医療システムの整備や小児救急医療体制の充実など、きめ細かな保健医療体制の整備に努めたほか、環境保健研究センターや一戸病院、沼宮内病院等の整備を進めるとともに、健康いわて21プランに基づく県民一人一人の健康づくりの推進や、ユニバーサルデザインによるひとにやさしいまちづくりの展開に努めました。
 また、多様なニーズに応じた保育所の機能充実や子供の健全育成環境づくりの拠点としてのいわて子どもの森の整備を進めるとともに、福祉総合相談センターに児童虐待対応専門チームを設置するなど、安心して子供を産み育てられる環境づくりを進めてまいりました。さらに、高齢者の生きがいづくりや社会参加の促進を図ったほか、介護保険施設等の拡充や介護保険制度の円滑な実施に努めるとともに、障害者授産施設等の整備を促進するなど、障害者が地域の中で自立して生活できる環境の整備を図りました。
 一方、安全な暮らしの実現に向けて、交通安全に関する普及・啓発や施設整備などの総合的な対策を進めるとともに、県民に身近な犯罪の防止に努めました。
 さらに、牛海綿状脳症や食肉の不正表示等の問題を踏まえ、食の安全・安心に対する消費者の不安を払拭し、その信頼を確保するため、安全で安心な岩手の食の確立に向けた、生産から消費段階に至る総合的な取り組みを開始したところであります。
 今後、快適に安心して暮らせる社会の実現に向けて、県民がどこに住んでいても安心して暮らせる保健医療体制の整備を進めるとともに、ユニバーサルデザインによるまちづくりを積極的に推進するなど、地域のすべての人々が互いに支え合い、ともに生きていく社会の構築を進める必要があると考えております。
 また、安全で安心できる食の供給システムの確立に向け、生産から流通・販売までの一連の対策のほか、客観的な安全性のチェック・評価機能の整備などの総合的な施策をさらに進める必要があると考えております。
 第3に、創造性あふれ、活力みなぎる産業が展開する社会についてであります。
 まず、喫緊の課題である厳しい雇用情勢に的確に対応するため、雇用の創出、雇用のマッチング支援、セーフティネットの充実及び雇用創出等のための産業支援を基本とする総合的な雇用対策に取り組むとともに、岩手のものづくりを担う地域の人材の育成に努めてまいりました。
 次に、農業については、適地適作を基本とし、環境に優しい持続的な生産方式による米、園芸、畜産のバランスがとれた総合産地の形成に努めるとともに、中山間地域における生産活動への支援を進め、また、林業については、森林の持つ公益的機能の維持、増進や木材の安定供給を図るため、適切な森林整備を進めたほか、県産材の需要拡大や特用林産物の生産振興に取り組んでまいりました。水産業については、ヒラメの本格的な放流や新たな養殖魚種の開発など、つくり育てる漁業を一層推進するとともに、ハセップ方式の導入に努めてきたほか、秋サケ等水産物の消費拡大を図りました。
 さらに、農林水産業を支える意欲ある担い手の育成・確保に努めるとともに、生産者と消費者との結びつきを強化する地産地消運動を積極的に推進いたしました。
 一方、地域産業の振興については、中心市街地におけるにぎわいの創出などに向けた取り組みを支援してきたほか、地域密着型の新しい産業の創出などを進めるとともに、産業の枠を越えたいわてブランドの確立を目指し、総合的、戦略的なマーケティング活動を支援してまいりました。
 また、科学技術を担うひとづくり、ネットワークづくりに取り組むとともに、新たに岩手県地域連携研究センターを設置するなど、産学官の連携による研究開発型の地域産業の育成を目指した取り組みを進めてまいりました。
 さらに、製造業に加え、情報や流通関連業等幅広い業種を対象に優良企業の誘致に取り組むとともに、地域の産業支援機関とのネットワークによる総合的支援を行うことにより、新事業創出の促進やベンチャー企業の支援体制の強化に努めました。
 また、観光の振興については、地域提案型の旅行商品の開発やグリーンツーリズム等を活用した体験型観光ツアーの提案に努めるとともに、北東北3県共同での海外宣伝等を行うことにより、幅広い観光客の誘致に取り組みました。
 今後、農林水産業につきましては、消費者の視点に立ち、安全・安心に軸足を置きながら、体質の強い農林水産物の供給体制の確立を図っていく必要があると考えております。
 また、本県のものづくり基盤を拡充するため、新たな牽引役となる自動車関連産業の育成と幅広く厚みのある産業集積を促進するとともに、産学官連携やすぐれた人材の育成・確保を図りながら、起業家やベンチャー企業の育成に向けた施策を進めていく必要があると考えております。
 第4に、ネットワークが広がり、交流・連携が活発に行われる社会についてであります。
 まず、地域が主体となった個性豊かな魅力ある地域づくりに向けて、地域資源を再発見するいわて地元学の普及などに取り組むとともに、市町村総合補助金を創設し、市町村の自主的な地域づくりを積極的に促進してまいりました。
 また、広域行政の推進については、広域行政推進指針を策定し、市町村の合併パターンを含む広域行政の方向性を示すとともに、合併後の地域の将来像に関する調査・研究など、市町村合併に向けた取り組みを支援いたしました。
 次に、高速交通ネットワークの形成に向けて、東北横断自動車道釜石秋田線の東和-花巻間や三陸縦貫自動車道山田道路の開通など高規格幹線道路や地域高規格道路等の整備を促進してまいりました。
 また、東北新幹線盛岡以北の建設促進に努めるとともに、並行在来線について、IGRいわて銀河鉄道株式会社を県が中心となって設立し、鉄道事業の存続による地域交通の確保に努めてまいりました。
 情報通信網の整備については、いわて情報ハイウェイを構築し、防災、医療、教育等の分野の情報通信基盤を整備するとともに、県民に身近な情報通信インフラの整備を促進し、行政サービスや県民生活の利便性の向上を図りました。
 今後、市町村合併については、平成17年3月の市町村合併特例法の期限を控え、地域の将来方向について、より具体的な検討が進められるよう、積極的に働きかけてまいりたいと考えております。
 また、交通ネットワークの整備に当たっては、その必要性や優先度を判断するとともに、地域の実情に合った公共事業を行う仕組みづくりを進める必要があると考えております。
 第5に、個性が生かされ、共に歩む社会についてであります。
 まず、学校教育については、きめ細かな指導による児童生徒一人一人に応じた教育を推進するため、少人数指導の充実などに取り組んだほか、総合的な学習の時間における体験学習等を通じみずから学び考える力をはぐくむとともに、生徒や地域住民が一体となった特色ある学校づくりを進めるなど、岩手らしさを生かした教育を推進してまいりました。
 また、高等学校教育の改革や、家庭や地域と連携した開かれた学校づくりの推進、学校評価システムの確立、特別な支援を必要とする障害のある児童生徒への教育の充実など、時代や地域のニーズに対応した取り組みを推進いたしました。
 さらに、県民一人一人がそれぞれの個性を生かし、生涯を通じて創造的に学び続けることができる生涯学習環境の整備に努めるとともに、自分たちの夢を実現する体験活動を通じた主体性や協調性の養成など、青少年の健全育成に取り組みました。
 文化の振興については、広く県民が美術に親しむことのできる県立美術館を開設するとともに、世界遺産暫定リストに登載された平泉の文化遺産について、世界遺産への登録に向けた条件整備を進めてまいりました。
 スポーツの振興については、県民の豊かなスポーツライフの実現を目指し、総合型地域スポーツクラブの普及など生涯スポーツの環境づくりを推進するとともに、スポーツの競技力向上に向け、ジュニア層の選手強化や優秀な指導者の養成に努めてまいりました。
 また、男女がその個性と能力を十分に発揮することができる社会の実現に向けて、岩手県男女共同参画推進条例を制定するとともに、地域社会に貢献する人材の育成等を行いました。
 さらに、公益信託いわてNPO基金を創設し、NPOへの財政支援や業務委託の促進を図るとともに、いわてNPOサポートルームでの各種相談や情報提供を通じて、ボランティアやNPO活動が社会に定着するための環境の整備に取り組みました。
 今後、岩手の子供たちの多様な個性を生かしながら、学力の向上や豊かな心の醸成、たくましい体力の養成に努めていくとともに、地域の連携・協力による開かれた学校づくりや、教育を担う教員の資質・能力の向上に努めていく必要があると考えております。
 また、NPOについては、政策立案過程からの参画を図る仕組みづくりを進めるなど、行政とNPOとの協働をさらに積極的に推し進めていく必要があると考えております。
 私は、新しい岩手づくりを進めていくためには、従来の行政運営の仕組みを抜本的に見直し、生活者や地域から始まる新しい行政システムを確立することが不可欠であるとの認識に立ち、四つの方針に基づき、新たな時代にふさわしい行政システムへの改革を断行してまいりました。
 第1に、県民とともにつくる開かれた県政の推進であります。
 地域がみずからの責任と判断で物事を決めていくためには、まず、行政と県民との間の情報の共有が不可欠であり、行政の保有する情報は住民との共有財産であるとの認識のもと、個人情報保護条例を制定するとともに徹底した情報公開を進めてまいりました。
 また、企業会計方式による財務諸表の公表や、政策立案過程におけるパブリックコメント制度の推進などにより、県民への説明責任を果たすとともに県民参画の仕組みづくりを進め、県民と行政が互いの信頼関係のもとに真のパートナーシップを確立し得るよう県政の運営に努めてまいりました。
 第2に、一人一人の意欲を高める生活者の視点に立った県政の推進であります。
 NPOやボランティア活動の拠点施設の提供など、住民の社会活動への参画を積極的に支援するとともに、県民意識調査の実施や公共施設の利便性など県民サービスの向上を図り、生活者の視点に立った、暮らしの満足度の向上に努めてまいりました。
 第3に、地域の元気を高める地域の視点に立った県政の推進であります。
 地方分権一括法の施行など県と市町村の新たな時代の到来を踏まえ、市町村総合補助金を初め、人と財源をセットとした県事務の市町村への一括事務移譲等、市町村との間の適切な役割分担と支援協力関係に基づいた新たな取り組みを進めてまいりました。また、地方振興局への権限委譲やその政策形成機能の強化を図るなど、現場を重視し、地域の視点に立った県政推進に努めてまいりました。
 第4に、機動性と柔軟性を重視した県政の推進であります。
 予算主義から成果主義への転換を図り、より効果的で効率性の高い行政運営を行うため、政策評価システムを導入するとともに、政策評価の結果を踏まえつつ、現場に最適な施策を選択し集中するという考え方に基づいた政策推進を行うため、新たに政策形成・予算編成システムを導入し、限られた資源を最大限有効に活用しながら社会経済情勢の変化に的確、迅速に対応した行政運営に努めてまいりました。
 また、民間経営管理手法の導入や、自己診断、自己改革によって組織の体質改善を図る行政品質向上運動の取り組みを進め、スリムで柔軟な行財政システムづくりに努めるとともに、多様化する県民のニーズに迅速にこたえる行政経営に努めてまいりました。
 さて、我が国が、現在の閉塞状態から立ち上がり、活力に満ちた真に豊かな社会を実現するためには、徹底した地方分権改革による国と地方の明確な役割分担のもと、自己決定、自己責任の原則に基づく地域主権型の社会を形成していくことが重要であります。
 私は、地方がみずからの役割を確実に担い、みずからの力で課題を解決し地域づくりを進めていくためには、エネルギー、食料などの物的資源や、教育や交流・連携等の人的資源、また、技術や立案機能等の知的資源などの分野における自立が不可欠であり、それぞれの地域地域が、その個性を引き出し、特性を生かしながら自立への方向を目指していくことが重要であると考えております。
 また、右肩上がりの経済成長の時代が終えんを迎える中、私たちは、経済や社会の成功の本当の意味を問い直す時期に来ています。私は、20世紀における効率性や経済性重視の画一的な価値観から脱却し、一人一人が自立した個人として、創造力を発揮し、それぞれの生きる価値を見出すことのできるような社会を実現していくことが重要であると考えております。
 それは、それぞれの個を基本とし、互いの多様性や違いを認めて共生していく社会の形成であり、その中で、時間、安らぎ、自然など20世紀の尺度ではともすれば評価されなかったものに光を当て、新しい多様な価値観を創造していくことが大切であります。
 私は、こうした考え方に立って、一昨年からがんばらない宣言をあえて提唱してまいりました。さらに、これを具体化する方向の一つとして、グローバルに進む経済社会のスピードのみにとらわれず、みずからの地域に本来あるものを大切にした豊かな時間の過ごし方、生き方を通じて、一人一人や地域にとっての真の豊かさを実現しようとするスローライフの考え方に着目していくことが重要であると考えております。
 岩手では、地域の歴史・文化の再発見や、地域資源を活用したグリーンツーリズム、地産地消運動など、こうした考え方に通じるさまざまな活動が行われております。
 今後、これらの活動をさらに支援していくとともに、県民の皆様はもとより、幅広い方々にスローライフの考え方を理解いただき、日常生活の中で支持していただくことによって、これまでグローバリズムの名のもとに駆逐されてきた、本県の地域地域に息づいている本物の価値の再評価・活用へとつなげていくことが必要であると考えております。
 そして、岩手が守りはぐくんできた、こうした本当の豊かさを生かした地域づくりを通じて、地域の真の自立を図っていくことが重要であると考えております。
 今後、市町村を中心とした地域主権型の社会が形成されていく中で、県は、広域的な視点からの地域の先導や市町村の支援、さらに、県域を越えたより広域での行政課題への対応や機能分担など、新たな役割を担っていくべきものと考えております。
 また、今後、グローバル化が一層進む中で、国際間での地方と地方が、東京など中央を介することなく結びつき、独自の産業的なつながりを強めていくものと考えられますが、そのとき、情報や知識が盛んに集積・発信され、そこから知的創造が活発に行われる地域となって、海外、とりわけ北東アジア地域などとの産業連携の主体としての役割を担っていくことが重要であると考えております。
 私は、こうした展望のもと、北海道・北東北知事サミットでの合意事項に基づき、これまで一つ一つ積み重ねてきた北東北における広域連携の成果をさらに積み重ねることを基本とし、北東北における新たな地域主権の確立に向け、これからの地方の自立のあり方について幅広い議論を進めていくことが必要であると考えております。
 さらに、こうした北東北における連携の成果を北海道や東北各県との連携の強化につなげ、東北全体としての総合力発揮の可能性を示すことによって、我が国のあるべき針路をこの北東北から照らしてまいりたいと考えております。
 以上、これまで4年間における県政の取り組みと今後の課題、そして将来への方向性について申し上げました。
 今回提案した平成15年度予算案は、統一地方選挙を控えていることなどから、義務的経費及び経常的に要する経費を中心とした骨格予算として編成したところでございます。
 平成15年度は、地方財政計画の大幅な縮減による地方交付税の減収、さらには、引き続き県税収入の減収が見込まれるなど、歳入の確保を図ることが極めて厳しい状況にあるため、歳入に見合った歳出となるようその規模を見直したところであります。
 特に、公共事業については、これまで事業の大幅な前倒しを行い、おくれていた社会資本の整備促進を図ってきたところでありますが、その平準化を図るため投資規模の水準を見直したところであります。
 また、岩手県総合計画に掲げる主要事業や新たな行政課題などに機動的に対応していくことが求められておりますことから、政策評価を一層徹底するとともに、新たに政策形成・予算編成システムを導入することにより、行政ニーズに即した政策立案と予算編成事務の簡素合理化を図るなど、限られた財源の重点的かつ効果的な活用に努めたところであります。
 私たちは、時代の大きな変化の中で刻まれた混迷の溝の前にあっても、一歩一歩歩み続けていかなければなりません。私は今、こうしたときだからこそ、これまでの経験に基づく従来の延長線上での改革だけではなく、過去の成功体験にとらわれない新しい発想に基づく非連続の改革に、失敗を恐れない勇気を持って挑戦していくことが大切であると考えております。そして、私たち自身やそれぞれの地域が、他のどこでもないこの岩手の大地が持つ本当の豊かさを大切に生かしながら、しっかりと自立し、豊かな知性や創造性に裏打ちされた誇りと気概を持って未来を切り開いていくことが何よりも重要であると考えております。
 私は、21世紀における夢県土いわての創造をより確かなものとするため、さらに、県民一人一人と手を携え、ともに議論し、汗を流しながら精いっぱい努力をしていく覚悟であります。
 議員の皆様の一層の御理解、御協力と県民の皆様の岩手づくりへのさらなる参加を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。
 どうもありがとうございました。(拍手)
   
日程第5 議案第1号平成15年度岩手県一般会計予算から日程第59 報告第2号道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分の報告についてまで

〇議長(谷藤裕明君) 次に、日程第5、議案第1号から日程第59、報告第2号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。小原総務部長。
   〔総務部長小原富彦君登壇〕

〇総務部長(小原富彦君) 本日提案いたしました各案件について御説明いたします。
 議案第1号は、平成15年度岩手県一般会計予算であります。
 この予算の編成に当たりましては、統一地方選挙を控えておりますことから、原則として新規または政策的経費については計上を見合わせるいわゆる骨格予算として編成したところでありますが、国、地方を通じて一段と厳しさを増している財政環境下にあることにかんがみ、地方財政計画や中期財政見通しを踏まえ、歳入に見合った歳出規模となるよう、公共事業の投資規模の水準を見直すとともに、公共事業以外の一部建設事業については整備年度の繰り延べを行うなど、歳出の抑制を基本としたところであります。
 また、緊急雇用対策や青森県境における不法な産業廃棄物投棄への対応、BSE対策など、緊急に取り組むべき課題等については、可能な限り当初予算に計上するよう配慮したものであります。
 以下、その概要について御説明いたします。
 第1条は、歳入歳出予算の総額を、それぞれ8、170億2、760万8、000円と定めるものであります。これを前年度当初予算と比較しますと5.9%の減となっております。
 次に、歳入について御説明いたします。
 第1款県税につきましては、1、056億7、100余万円を計上しており、前年度当初予算と比較しますと67億1、000余万円の減となっております。
 第2款地方消費税清算金につきましては、252億4、300余万円を計上しており、前年度に比較して3億7、900余万円の減となっております。
 第3款地方譲与税につきましては、40億4、200余万円、第4款地方特例交付金につきましては、21億4、200万円を計上しております。
 第5款地方交付税につきましては、2、444億5、500余万円を計上しており、前年度に比較して204億6、300余万円の減となっております。
 第6款交通安全対策特別交付金につきましては、6億2、400万円を計上しております。
 第7款分担金及び負担金につきましては、74億3、600余万円を計上しており、前年度に比較して36億900余万円の減となっております。
 第8款使用料及び手数料につきましては、117億9、800余万円を計上しており、前年度に比較して1億3、500余万円の減となっております。
 第9款国庫支出金につきましては、1、396億8、100余万円を計上しており、前年度に比較して218億4、100余万円の減となっております。
 第10款財産収入につきましては、14億4、400余万円を計上しており、前年度に比較して17億3、800余万円の減となっております。
 第11款繰入金は、389億3、200余万円を計上しておりますが、これは、県債管理基金、公共施設等整備基金、緊急地域雇用創出特別基金等から繰り入れを行うものであり、前年度に比較して24億2、700余万円の増となっております。
 第13款諸収入につきましては、973億9、400余万円を計上しておりますが、その主なものは、貸付金の元利収入であります。
 第14款県債につきましては、1、381億6、000余万円を計上しておりますが、前年度に比較して48億1、800余万円の増となっております。
 次に、歳出について御説明いたします。
 第1款議会費につきましては、14億8、200余万円を計上しております。
 第2款総務費につきましては、391億9、400余万円を計上しておりますが、その主なものは、盛岡駅西口複合施設整備事業費17億900万円、市町村総合補助金13億円、東北新幹線建設促進対策事業費12億6、500余万円、並行在来線対策事業費38億6、500余万円等であります。
 第3款民生費につきましては、480億200余万円を計上しておりますが、その主なものは、重度心身障害者(児)医療助成費16億4、400余万円、知的障害者更生援護費8億4、400余万円、介護給付費等負担金77億9、500余万円、児童保護措置費67億500余万円等であります。
 第4款衛生費につきましては、280億3、300余万円を計上しておりますが、その主なものは、精神障害者入院等措置費11億2、700余万円、老人保健対策費85億5、700余万円、県境不法投棄現場環境再生事業費28億7、500余万円、緊急医療対策費9億2、500余万円等であります。
 第5款労働費につきましては、38億900余万円を計上しておりますが、その主なものは、緊急地域雇用創出特別基金事業費補助10億円、認定職業訓練費3億2、600余万円、公共職業能力開発費4億500余万円等であります。
 第6款農林水産費につきましては、1、005億7、100余万円を計上しておりますが、その主なものは、中山間地域等直接支払事業費37億7、300余万円、県営畜産経営環境整備事業費13億8、300余万円、ほ場整備事業費85億2、800余万円、森林整備事業費19億800余万円、治山事業費20億7、800余万円、広域漁港整備事業費23億7、000余万円等であります。
 第7款商工費につきましては、656億3、300余万円を計上しておりますが、その主なものは、商工業小規模事業対策費23億5、500余万円、商工観光振興資金貸付金166億8、700余万円、中小企業経営安定資金貸付金270億8、700余万円、工業立地促進資金貸付金29億7、500余万円等であります。
 第8款土木費につきましては、1、086億7、000余万円を計上しておりますが、その主なものは、空港整備費55億7、300余万円、緊急地方道路整備事業費93億1、100余万円、簗川ダム建設事業費43億3、300万円、港湾改修事業費17億円、街路事業費12億7、300余万円等であります。
 第9款警察費につきましては、304億6、600余万円を計上しておりますが、その主なものは、警察行政運営費229億1、200余万円、新通信指令システム整備事業費1億4、700余万円、交通安全施設整備費14億1、700余万円等であります。
 第10款教育費につきましては、1、769億2、100余万円を計上しておりますが、その主なものは、すこやかサポート推進事業費3億5、000余万円、柳之御所遺跡土地公有化事業費1億5、500余万円、県立大学運営費54億6、700余万円、私立学校運営費補助53億1、400余万円等であります。
 第11款災害復旧費につきましては、120億8、700余万円を計上しておりますが、その主なものは、団体営農地等災害復旧事業費14億4、600余万円、河川等災害復旧事業費85億5、000余万円等であります。
 第12款公債費につきましては、1、467億8、000余万円を計上しております。
 第13款諸支出金につきましては、550億7、300余万円を計上しておりますが、その主な内容は、公営企業負担金179億5、300余万円、地方消費税清算金116億6、700余万円、地方消費税交付金126億8、500余万円等であります。
 第14款予備費につきましては、3億円を計上しております。
 以上をもって、第1条の説明を終わりますが、歳出に充当した一般財源の額は、県税、地方交付税等で4、897億2、100余万円となっており、その割合は59.9%となっております。
 第2条債務負担行為は、公営企業金融公庫及び市中金融機関が岩手県土地開発公社に融通した資金についての債務保証ほか59件について、債務を負担しようとするものであります。
 第3条地方債は、地区合同庁舎建設事業ほか49件について、限度額、起債の方法、利率及び償還の方法を定めようとするものであります。
 第4条一時借入金及び第5条歳出予算の流用は、それぞれ所要の措置を講じようとするものであります。
 議案第2号から議案第12号までは、平成15年度岩手県母子寡婦福祉資金特別会計予算等11件の特別会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画等に基づき、その所要額を計上したものであります。
 議案第13号から議案第15号までは、平成15年度岩手県立病院等事業会計予算など3件の公営企業会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画に基づき、収益的収支及び資本的収支の所要額を計上したものであります。
 議案第16号から議案第21号までの6件は、建設事業等に要する経費の一部を受益市町村に負担させることに関し、それぞれ議決を求めようとするものであります。
 議案第22号から議案第49号までの28件は、条例議案でありますが、これは、新エネルギーの導入の促進及び省エネルギーの促進に関する条例、いわて子どもの森条例など3条例を新たに制定するとともに、情報公開条例、岩手県職員定数条例など25条例の一部を改正しようとするものであります。
 議案第50号は、権利の放棄に関し議決を求めることについてでありますが、これは、中小企業設備近代化資金貸付金に係る債権の回収が不可能であるため、当該権利を放棄しようとするものであります。
 議案第51号及び議案第52号は、全国自治宝くじ事務協議会及び関東・中部・東北自治宝くじ事務協議会にさいたま市を加え、及びこれに伴い同協議会規約の一部を変更することの協議に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第53号は、包括外部監査契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 次に、報告第1号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 報告第2号は、道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 以上のとおりでありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださるようお願いいたします。
   

〇議長(谷藤裕明君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日は、これをもって散会いたします。
   午後1時53分 散 会


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