平成19年6月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(達増拓也君) 本日、ここに第2回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
 私は、このたび、県民の皆様の信託をいただき、県政を担当することとなりました。地方自治法施行60周年を迎え、地方のあり方が改めて問われているこの重要な時期に、地方自治体の首長として、私に課せられた責任の重さに身の引き締まる思いがいたします。
 岩手県知事として、県民の負託にこたえ、ふるさと岩手の自立と発展のために全力を尽くしてまいりたいと思いますので、県議会議員各位、並びに県民の皆様の御支援と御協力をよろしくお願い申し上げます。
 現在の我が国においては、大都市圏とその他の地方における所得や雇用の格差の拡大が大きな課題となっています。
 本県におきましても、産業の集積が進む県央・県南地域と、産業基盤が脆弱な県北・沿岸地域では、市町村民所得や有効求人倍率などの面で格差が広がってきております。
 また、所得や雇用の面での格差の問題に加え、教育や医療・福祉の面においても、多くの県民の皆様から、悩みや不安が寄せられております。
 グローバル化が進み、企業や個人、あるいは地方などが国境を越えて活動するようになり、地方や地域も、世界市場における厳しい競争に直接さらされています。
 世界に通用するものを持っている地域は繁栄し、世界に通用するものを持っていない地域は急速に衰えていきます。しかし、いわゆる勝ち組も、いつ負け組になるかわからない不確実な時代です。
 私は、日本と岩手における格差や不安の拡大は、グローバル化に十分に適応できていない我が国の姿を反映していると考えております。
 バブル崩壊後の長期不況とグローバル化の急速な進展の中で政府が唱えたのは、経済活動の規制や公共投資、地方交付税や補助金といった地方への再配分の方法など、それまでの政治経済システムを変えるべきだという、1980年代から訴えられていた構造改革論でした。
 そうして、いわゆる聖域なき構造改革によって、規制緩和を含む市場原理の拡大と行政サービスの縮小、競争参加の奨励が進められるとともに、一方において、医療や福祉、社会保障など生活にかかわる分野では、自己負担が拡大されました。
 バブル崩壊以前の日本経済に大きな余力のある時期に、地方分権改革とともに、内需主導の経済構造を目指した改革が行われていれば、豊かで自立した地方が実現していたはずです。
 しかし、バブル崩壊で、日本経済に余力がなく、地方分権の進まない中で推し進められた市場原理優先型の経済財政政策や、いわゆる三位一体改革は、大都市圏とその他の地方との経済格差や地方の疲弊をもたらしました。
 本県においても、平成13年度に1人当たりの県民所得が7.6%減少し、その後も県民所得は減少を続けております。平成12年度の1人当たりの県民所得と各年度の1人当たり県民所得の差に基づいて試算すると、累積で、平成12年度以降に約2兆円の県民所得の縮小が生じた計算になります。
 これは、本県の県民所得の総額が、平成17年度速報値で約3兆3、000億円であることを考えると、非常に大きな損失であると言えます。耐えがたい痛みに見舞われたと言えるでしょう。
 もちろん、幸福は経済的な価値のみではかるものではありませんが、所得が減少する一方で、医療・福祉など社会保障費の負担が増大し、多くの方々が不安に直面しているこの現状を、私は、本県における危機であると認識しております。
 危機を直視するのは勇気の要ることです。しかし、危機から目をそむけ、危機が去ることを願うだけでは、危機から逃れることはできません。
 危機から目をそむけることなく、その本質を理解し、今までできなかった本当の改革を行えば、危機は希望に変わります。
 グローバル化に対して、国も地方もそれぞれ主体性を失っていることが、危機の本質です。
 我を失って過剰反応に走るのでもなく、我を張って過剰防衛にこもるのでもなく、心を強く持ち、自分を失わず、戦略的に危機に対処することが必要なことであります。
 岩手の歴史は、人として正しい道を歩もうとする志を持った先人たちの歴史であり、人と人とのつながりの中で地域を守ってきた歴史であります。
 私は、そうした岩手の歴史を踏まえ、高い理想と豊かな愛情が一つになった岩手の心を失わずに、グローバル化の時代に必要な改革を力強く進め、「希望王国岩手」と呼ばれるようなふるさとづくりを行ってまいりたいと思います。
 国の中央集権的な仕組みのもとで、保護や既成の枠組みに組み入れられてきた地方行政や地域経済を取り巻く環境は、グローバル化によって一変しつつあります。
 これは、本県にとっても大きな脅威となっていますが、一方、地方の得意分野が世界に直結していくという意味では、好機であるとも言えます。
 今、求められているのは、確かな地域経済基盤を構築するとともに、その優位性を世界に発信していくことにより、グローバル化の時代に適合した力強い産業構造とすることであります。また、若者などの雇用の場を確保し、県外への人口流出を抑制することも急務であります。
 同時に、安定した財政基盤のもとで、少子・高齢社会における医療・福祉、教育など、県民生活の基本となるサービスを、地域で主体的にかつ良質に提供していくことができる仕組みをつくっていかねばなりません。
 この岩手の地でそれらを実現するため、公正、自立そして共生という理念のもと、二つの戦略を用意し、県民の皆様とともに取り組んでまいります。
 一つ目の戦略は、新地域主義戦略であります。
 グローバル化が進展した今日、地方自治や地域の産業、あるいは文化においても、世界と直結し競争・共存する中で、地域の自立性や独自性を高めていく新しい地域主義の考え方が必要です。
 県民本位と地域主権という考え方のもとに、真に自立した地方自治を確立し、地方自治体としてまた地域として、力をつけていかなければなりません。
 私は、将来的には、県内4広域振興圏に、より多くの権限を移譲し行政の完結性を高めるとともに、それぞれの広域振興圏が、地域の実情に応じた政策を、NPOなどの民間との連携のもとに実行していくことができるようにしてまいりたいと考えています。
 同時に、市町村を構成している行政区や町内会・自治会などといった住民自治の基礎となる草の根の地域を支援し、守ることにより、本当の意味での豊かでゆとりのある地域をつくっていきたいと考えています。
 本県の四つの広域振興圏が自立していくことと、県と市町村が協力して草の根の地域を守っていくことが、私の考える新地域主義戦略であります。
 この戦略においては、行政と民間との垣根を越えた、開かれたネットワークの構築により広域振興圏を運営するとともに、他県や他圏域との連携を密にし、地域の可能性を最大限に引き出せるよう努力してまいりたいと思います。
 この新地域主義戦略のもと、分権型社会にふさわしい行政システムの構築に取り組むため岩手県分権推進会議を設置し、行政の適切な役割分担のもとに、地域への分権を進めてまいります。また、本県の産学官の関係者が岩手の将来的な発展方向を共有し、産業の振興や県民生活にかかわる幅広い知恵と行動力を結集するための場を設置したいと考えております。
 県北・沿岸広域振興圏の振興については、県南・県央広域振興圏と比べて経済的に厳しい状況にあることを踏まえ、特に重点的に取り組んでまいります。
 二つ目の戦略は、岩手ソフトパワー戦略であります。
 ソフトパワーとは、ハーバード大学の国際政治学者であるジョゼフ・ナイ教授が提唱している、文化的魅力と道義的信頼によって相手を動かす力のことであります。
 私は、本県には、石川啄木や宮澤賢治に代表される自然と一体となった文学世界や、原敬先生や新渡戸稲造博士らが持つ国際的で民主的なリーダーシップ、高野長英先生や後藤新平先生らが持つ先進性、さらには、奥州藤原文化に代表される平和に対する価値観といった、岩手の文化、岩手の心があると思います。
 こうした岩手の文化、岩手の心を積極的に情報発信し、日本国内はもとより、世界じゅうに定着させていくことによって、岩手県の文化的魅力、道義的信頼を高めていこうとするものが、私の考える岩手ソフトパワー戦略であります。
 平泉の文化遺産については、この秋に国際記念物遺跡会議の現地調査が予定されていることから、平泉の文化価値の理解や世界遺産登録に向けての機運醸成を図っているところであり、今後も官民が連携しながら、平成20年の世界遺産登録の実現を目指してまいります。
 この世界遺産登録により、平泉の平和の精神を世界にアピールするとともに、岩手県民のまじめさ、勤勉さをベースとして、岩手ブランドをさらに発展させ、岩手の魅力を発信していきたいと思います。
 また、本県における文化や芸術の振興を図るため、いわゆる文化芸術振興基本条例の制定について検討を進め、本県の文化・芸術振興の基本理念を明らかにし、総合的に施策を推進してまいりたいと考えています。
 さらに、実直で温かな県民性や、文化や伝統などの本県の魅力を最大限に発信することを視野に入れ、平成28年開催の第71回国民体育大会を本県に招致したいと思います。
 また、行財政運営の健全化を図っていくことは、本県に対する道義的信頼を高めることとなります。
 このため、ソフトパワーを強化するものとして、行財政改革にも取り組んでまいります。
 この中では、行政の簡素・効率化を進めるための事業の見直しや、プライマリーバランスの均衡を維持することに注力するとともに、積極的な情報の収集と共有を進め、政策決定過程をさらに明確にするなど、県民本位の行政となるために実りある改革を実行してまいります。
 また、単年度収支が赤字となった場合には廃止することを原則としている競馬事業については、開催競馬場が変わる時期をめどに、年間を5期に分け、経営計画を厳しく見直しながら、経費の削減、売り上げの増加に努め、関係者と協力し、ともに努力することで経営の再建を図ってまいります。
 私は、これからの4年間の県政を、今述べました新地域主義戦略と岩手ソフトパワー戦略を基本として運営していくこととしておりますが、この戦略を踏まえた上で、各分野における政策を6本の柱として、重点的に、かつ、県民本位という視点で取り組んでまいります。
 第1に、県民総参加の教育立県を基本理念として、自立した岩手を担う人材育成のための教育に取り組み、ふるさとづくりをその基本である人づくりから始めてまいります。
 第2に、子育て中の方や勤労者、高齢者や障害者など、すべての県民が安心して地域で生活できるよう、医療・福祉などの充実に取り組み、ともに生きる岩手を実現してまいります。
 第3に、本県の安全、安心な農林水産物の産地づくりや高付加価値化を進めるとともに、対外的な情報発信の強化に努め、日本の食を守る食料供給基地岩手を確立してまいります。
 第4に、ものづくり人材の育成などの地場産業支援と、企業誘致による産業集積、観光の振興などに取り組み、地域に根差しながら、世界に羽ばたく産業を育成してまいります。
 第5に、二酸化炭素の排出削減による地球温暖化の防止や、リデュース、リユース、リサイクルのいわゆる3R運動など、環境政策に積極的に取り組み、世界に誇れる岩手の環境をつくってまいります。
 第6に、近い将来、発生が予測される宮城県沖地震などの自然災害に備え、防災対策を充実するとともに、地域の安全を守るため、防犯・消防などの危機管理を強化し、県民の皆様が安全に安心して暮らすことのできる地域をつくってまいります。
 これまで述べました戦略や政策のより着実で効果的な実行に向け、これから4年間の基本政策とそれを進める仕組みを県民の皆様にお示しするため、今年度中に新しい地域経営の計画を策定いたします。
 この計画は、現在の岩手県総合計画の後期実施計画として位置づけ、官民を問わず、地域社会を構成するすべての主体の力を最大限に引き出していく地域経営という考え方を基本とするほか、広域振興圏ごとの地域振興のための計画と、質の高い行政サービスを提供するための行財政改革に関するプログラムについても、一体的に策定していくこととしております。
 私は、この計画を県民の皆様の声に十分耳を傾けながら策定するとともに、任期4年間、県民の皆様とともに推進し、その成果を上げてまいりたいと考えています。
 「希望王国岩手」の主権者は県民一人一人です。140万県民とともに、自治の王道を歩んでいきたいと思います。
 次に、今回提案いたしました補正予算について申し上げます。
 この補正予算では、厳しい財政環境のもと、プライマリーバランスの均衡を維持し、将来に負担を先送りしないよう留意しながらも、さきに述べました二つの戦略と6本の政策の柱を踏まえ、県民が直面している諸課題の解決に向けた取り組みや、県民生活の向上が図られ、安心して暮らせる環境の整備について配慮をし、積極的に予算を計上したところであります。
 特に、県内でも景気回復がおくれている県北・沿岸圏域の産業振興に資する事業について重点化したところであり、今後、その着実な執行と成果の早期発現に努めてまいります。
 以下、平成19年度の主要な施策について、6本の政策の柱に沿って、その概要を申し上げます。
 第1に、人づくりを進めるための教育の施策についてであります。
 まず、本県の未来を担っていく児童生徒を、心身ともにバランスよく、地域に誇りと愛着が持てるようはぐくんでいくためには、これまで以上に学校と地域が連携した取り組みが必要であると考えます。
 このため、県内のすべての小・中学校が、開放的で個性的な学校を目指して、保護者や地域とともに取り組む岩手型のコミュニティスクールの導入を進めてまいります。
 また、小・中学校においては、児童生徒が身につけるべき学力・体力・生活習慣等の達成目標を設定し共有する、まなびフェストの取り組みや、すぐれた指導法の普及による授業力の向上、少人数教育の充実などにより、教育の質の保証を図るとともに、高等学校においては、将来の本県の地域社会を支える人材を育成するための学習環境の整備を進めてまいります。
 なお、県立大学については、県内大学との連携を図りながら、教育・研究の向上と地域貢献を進めてまいります。
 さらに、これから本県を担う人材が国際社会で活躍するためには、英語力の向上が重要な課題であることから、小学校から英語に親しませるための実践的な取り組みを行う拠点校を今年度から設置し、段階的に全県に広げてまいります。Girls and Boys、 be ambitiousであります。
 私は、学校教育においては、児童生徒が明確な目的意識を持って日々の学業に取り組む姿勢や、社会の変化に対応し、主体的に自己の進路を選択・決定できる能力、そして、しっかりとした勤労観・職業観を身につけ、将来、社会人・職業人として自立していく力を育成することが必要であると認識しております。
 こうしたことから、児童生徒の発達段階に応じて、地域社会や産業への理解を深めるキャリア教育を、学校と地域が一体となって推進してまいります。
 また、専門高校と地域産業界が連携し、将来の本県のものづくり産業を支える専門的職業人や、産業界のニーズに応じた職業人を育成するため、企業関係者による実践指導やインターンシップなどを実施してまいります。
 さらに、本県におけるスポーツの振興や競技力の向上を図るため、素質ある児童生徒の早期発掘と、能力開発、継続的な育成強化を進めていくこととしております。
 第2に、県民が安心できる暮らしを支え、ともに生きる岩手を実現するための医療・福祉などの充実についてであります。
 県民の皆様が、地域で安心して医療が受けられる体制を確保するためには、医師を確保することが最優先の課題であります。
 このため、医師確保対策アクションプランに基づき、医学生への修学資金の貸付制度や、臨床研修医の受け入れ体制の整備・充実を図るとともに、国の医師確保対策による岩手医科大学医学部の定員増の実現に向けた取り組みを推進するほか、即戦力となる医師の招聘を進めるなど、医師の養成・確保に積極的に取り組んでまいります。
 また、急性期から回復期を経て自宅に戻るまで、切れ目のない医療サービスを提供する医療機能連携の仕組みの構築や、在宅での療養を支援するための医療と保健、福祉の連携を推進してまいります。
 このほか、がん診療の拠点病院を中心とした、県民にひとしく質の高いがん医療を提供する体制の確立、総合周産期医療センターの充実や地域における周産期医療体制の整備、小児救急医療体制の確立に向けた広域的な取り組みの推進など、医療サービスの充実に努めてまいります。
 本県は、4人に1人が65歳以上という高齢社会を迎えており、これに伴い、介護を必要とする高齢者が増加しています。また、障害者の自立意識の高まりにより、施設での生活から地域での生活に移行することを望む方が増加しています。
 こうした状況のもと、高齢者や障害者など、だれもが住みなれた地域で安心して生活できるよう、相談支援体制の充実や、住まいや就労の場の確保を進めるほか、地域住民やNPO、ボランティアなどの地域福祉力を生かし、高齢者や障害者一人一人の生活をきめ細かく支援する仕組みづくりを進めてまいります。
 また、本県では、すべての県民が心身ともに健康で生活できるよう、総合的な健康づくりに取り組んでおります。
 特に、自殺については全国の死亡率を上回っていることから、ボランティアなどの地域住民や関係各機関相互の連携を図るほか、同様の問題を抱える北海道、北東北各県とも連携しながら、心の健康に関する知識の普及啓発などの予防対策を重点的に推進してまいります。
 さらに、出生率の低下により、本県のこれからを担う子供の数は減少傾向にありますが、私は、県民の皆様が、子供を安心して産み育てられる環境を整備することで、人口減少に歯どめをかける希望を生み出したいと考えております。
 そこで、子育て環境の整備として、男性の育児参加や企業による子育て支援など、働き方の見直しの面からの取り組みを強化するとともに、子育て支援隊の組織化や地域での子育てネットワークの構築など、地域が一体となって子育てを支える仕組みづくりを推進してまいります。
 第3に、日本の食を守る食料供給基地岩手を確立するための施策についてであります。
 本県の農林水産業は、農林水産物価格の低迷や従事者の高齢化の進行などにより、産出額が減少傾向で推移し、地域経済の低迷や農山漁村の活力低下が懸念されています。
 このため、経営感覚にすぐれた担い手の育成と経営のレベルアップを集中的に支援し、足腰の強い生産構造の構築に努めるとともに、園芸部門における先進的な技術の普及体制の整備、県産の木材を供給する経営体が行う製品開発や販路拡大への支援、ナマコの種苗の量産化に関する研究や養殖技術の開発など、生産性、市場性の高い産業づくりを促進してまいります。
 また、消費者の安全、安心志向の高まりに対応し、今年度から新たに環境支払制度がスタートすることから、これを活用した環境保全型農業への支援や、環境に優しい農業技術の開発と普及により、環境と共生する産地を確立するとともに、農業生産工程管理手法、いわゆるGAPの策定と普及を促進してまいります。
 本県の農林水産物は、全国に誇れる食味・品質にすぐれた品目が数多くあるものの、ブランドの確立や多様化する流通チャネルへの対応がおくれている状況にあります。
 このため、新たに流通や外食産業等に精通した専門家による支援チームを組織し、新商品の開発や外食産業等への販路開拓を促進してまいります。
 また、近年は、本県が誇るリンドウや米、ナマコなどの農林水産物の輸出への関心が高まっていることから、アジアを中心とした販路開拓を図るなど、岩手の良質な農林水産物を世界に発信してまいります。
 加えて、地域住民など多様な主体が参画し、農地・農業用水等を保全する共同活動への支援により、農地等生産基盤の保全を図ってまいります。
 第4に、地域に根差しながら、世界に羽ばたく産業を育成するための産業振興・観光の施策についてであります。
 本県のものづくり産業については、自動車関連産業を初めとして一定の集積が進んでおりますが、国内有数の産業集積地を形成するまでには至っていないことから、ものづくり基盤技術の高度化とすぐれたものづくり人材の育成などを進め、国際競争力のある高度部材供給基地を形成してまいりたいと思います。
 特に、自動車関連産業については、この5月に、とうほく自動車産業集積連携会議が東北全域に拡大されたことから、広域的な連携を図りながら、国内の新たな自動車産業集積地域を形成するよう、着実な取り組みを行ってまいります。
 また、半導体関連産業についても、全県的な産学官の連携体制を強化しながら、その集積を促進してまいります。
 さらに、幅広い分野で、本県の産業基盤を強固なものとするため、市町村と連携を図りながら、完成品メーカーや高い基盤技術力を持つ企業の誘致を着実に進めるほか、基盤技術の高度化を支える科学技術の振興を進めてまいります。
 次に、観光産業については、分野や地域の枠を超えた幅広い連携を進めるとともに、国内外に誇れる自然や歴史・文化など、本県の豊かな財産を生かしながら、体験やいやしといった近年の観光ニーズへの対応を促進してまいります。
 特に、平泉の世界遺産登録を千載一遇の機会ととらえ、去る5月14日に設立したいわて世界遺産観光推進会議を中心として、他地域との広域的な観光ルートの設定や旅行商品の企画造成など、平泉を訪れた観光客の全県への誘客を進めてまいります。
 また、自然や文化などの豊かな資源を活用した都市との交流による活性化のため、民間主導の推進体制への移行促進など、グリーンツーリズムの取り組みを一層推進するとともに、岩手ファンの拡大や、それらの人々との交流・定住を促進してまいります。
 次に、中心市街地の活性化については、まちづくりの主体の育成強化や、まちの機能、魅力の向上を図るモデル的な取り組みを支援するほか、大規模集客施設の適切な立地を図る条例の制定に取り組んでまいります。
 なお、県北・沿岸圏域については、農林水産物の生産拡大を図るとともに、高付加価値化に向け、生産から加工・販売までの一体的な取り組みの強化など、食を核とした産業クラスターの形成を目指すほか、新規事業活動や起業への支援、企業誘致といった産業基盤の確立に対する取り組みを強化すると同時に、雇用創出に向けた支援体制の強化や、観光客の誘客などの取り組みを強力に推進してまいります。
 こうしたさまざまな分野の産業振興を、県、市町村及び民間が一体となって全県的に推進するため、新たに地域活性化を図るためのいわて希望ファンドを組成し、地域の意欲ある取り組みの支援を一層強化してまいります。
 第5に、世界に誇れる岩手の環境を実現するための環境施策についてであります。
 本県には豊かな自然が今日まで残されており、そのすばらしい自然や環境をしっかりと守りながら、将来の世代に引き継ぐとともに、地球温暖化の進行や廃棄物の増大などのさまざまな問題に対し、積極的な取り組みを展開していくことが重要であると考えております。
 そのためには、県民の方々一人一人が、こうした問題を身近なことととらえて、環境に配慮した行動を実践していただく必要があることから、県内各地において、地球温暖化防止行動の普及啓発や、岩手らしい環境素材を活用した環境学習などの取り組みを強化してまいります。
 また、最近、世界的に評価されているもったいないという古くからの知恵を生かして、家庭や事業所などにおける廃棄物のリデュース、リユース、リサイクルの普及啓発に取り組むとともに、廃棄物の適正処理を一層促進してまいります。
 さらに、間伐材等を活用した燃料チップの安定的かつ効率的な供給システムの確立など、木質バイオマスの利活用を促進するとともに、そうしたバイオマスや風力資源などの新エネルギーの導入に向けた取り組みを進めてまいります。
 第6に、県民が安全に安心して暮らすことのできる地域を形成するための防災・安全に関する施策についてであります。
 近い将来、発生が予測される宮城県沖地震に対する地震・津波対策のほか、近年、頻発する豪雨などによる洪水や土砂災害に対する対策なども重要となっております。
 このため、緊急輸送道路の橋梁耐震補強工事を推進するとともに、木造住宅の耐震診断の支援や、急傾斜地からの住宅移転に対する支援を引き続き行ってまいります。
 また、ハード・ソフト両面における公的な防災体制を整備する公助、地域の安全は地域で守るという共助、災害発生時にはみずからの身を守るという自助、この三つの分野における事業を積極的に展開するとともに、防災関係機関における連携の一層の強化など、地域防災力のさらなる向上に努めてまいります。
 最近は、全国的な凶悪犯罪の増加により、本県でも地域の安全に関する県民ニーズが高く、安全で安心なまちづくりも喫緊の課題の一つであります。このため、本年4月には、岩手県犯罪のない安全で安心なまちづくり条例を施行し、県民の防犯意識を向上させるための取り組みを推進しているところであります。
 また、警察施設の整備等を初め、子供や高齢者などの安全対策、大学生ボランティアを活用した少年サポート隊による勉学支援など、少年の再犯防止対策を進め、安全で安心なまちづくりを推進してまいります。
 以上、今後における県政運営の基本方針と、平成19年度の主要施策の概要について申し上げました。
 私は、これからの地域経営においては、市町村合併による基礎自治体の体質強化と同時に、県と市町村がこれまで以上に連携を推し進めることが必要であり、県と市町村は対等なパートナーとして、その果たすべき役割を再確認し、ともに住民と向き合うことが重要であると認識しております。
 そして、連携が進んだ県・市町村と県民の皆様が協働することによって、地域が有する潜在力を最大限に発揮させることになると信じております。
 また、平泉などの文化的魅力や、安全・安心な農林水産物を初めとした岩手ブランドのほか、本県の官民協働による地域経営を情報発信することによって、本県の伝統や文化の魅力、信頼感というものを国内外に定着させ、グローバル化に適応した地方自治の形をつくり上げてまいりたいと考えております。
 このような地方自治の形は、21世紀のローカル・ガバナンスとして世界に通用するものになると考えております。
 昭和45年、私が物心つくころ、岩手国体が開催され、テレビからも、映画館でも岩手県民の歌が流れていました。
 この岩手県民の歌の最後には、「岩手、岩手、ふるさと岩手、大空に描く望みよ」と歌われております。この明るい歌詞やメロディーとともに、大人たちは力強くふるさと岩手の発展に邁進しており、周囲は希望にあふれ、私も確かな希望を抱くことができました。
 私がいただいた希望を、次の世代につないでいかなければなりません。これまでの岩手県勢の発展を築いてこられました偉大なる先人、歴代の知事や県議会議員を初めとします先輩各位のたゆまぬ御努力と御尽力に深甚なる敬意と謝意を表し、私も、これからの任期4年間、岩手県知事として、県民の方々の先頭に立って、将来の岩手を担っていく子や孫の世代も、大空に希望を描けるような、金色に光り輝く岩手づくりに邁進してまいることをここに誓います。
 最後に、議員の皆様の御理解、御協力と、県民の皆様の県政への積極的な参加を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   日程第4 議案第1号平成19年度岩手県一般会計補正予算(第2号)から日程第36 報告第7号道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分の報告についてまで
〇議長(渡辺幸貫君) 次に、日程第4、議案第1号から日程第36、報告第7号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。川窪総務部長。
   〔総務部長川窪俊広君登壇〕
〇総務部長(川窪俊広君) ただいま議題とされました各案件について御説明いたします。
 議案第1号は、平成19年度岩手県一般会計補正予算(第2号)であります。
 これは、衆議院議員選挙執行費であり、衆議院岩手県第1区選出議員の補欠選挙執行に要する経費1億9、975万円を増額補正しようとするものであります。
 なお、本議案につきましては、投票用紙等の印刷を初め執行日程が迫っている経費があることから、本日の議決をお願いしたいと考えております。
 議案第2号は、平成19年度岩手県一般会計補正予算(第3号)であります。
 御案内のとおり、当初予算は、統一地方選挙が予定されていたため、いわゆる骨格予算として編成したところであり、今回の補正は、新規事業または政策的な経費等を中心としたいわゆる肉づけ予算として、総額で300億7、334万5、000円を増額補正しようとするものであります。
 歳出予算の補正の主なものは、市町村総合補助金7億8、000万円、医師確保対策費1億6、300万円余、環境と共生する産地づくり確立事業費1億1、200万円余、経営体育成基盤整備事業費5億3、600万円余、森林整備事業費3億6、400万円余、広域漁港整備事業費3億5、600万円余、いわて希望ファンド組成・推進事業費45億100万円余、地方特定道路整備事業費13億9、400万円余等であります。
 また、債務負担行為の補正は、岩手県信用保証協会が行う県北・沿岸地域中小企業振興特別資金についての信用保証契約の履行に伴う損失補償について、その限度額を変更しようとするものであります。
 地方債の補正は、柳之御所遺跡整備調査事業ほか2件を新たに追加するとともに、土地改良事業ほか20件の限度額を変更しようとするものであります。
 議案第3号は、平成19年度岩手県港湾整備事業特別会計補正予算(第1号)でありますが、これは、事業計画の変更等に基づいて所要の補正をしようとするものであります。
 議案第4号から議案第10号までの7件は、予算の補正に伴う建設事業に要する経費の一部負担及び一部負担の変更に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第11号から議案第20号までの10件は、条例議案でありますが、これは、情報公開条例及び個人情報保護条例の一部を改正する条例、岩手県の事務を市町村が処理することとする事務処理の特例に関する条例の一部を改正する条例など、10件の条例改正を行おうとするものであります。
 議案第21号は、工事の請負契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第22号は、財産を支払手段として使用することに関し議決を求めようとするものであります。
 議案第23号は、財産の処分に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第24号は、損害賠償請求事件に係る和解及びこれに伴う損害賠償の額を定めることに関し議決を求めようとするものであります。
 議案第25号は、公平委員会の事務の受託の協議に関し議決を求めようとするものであります。
 議案第26号は、盛岡市の中核市指定に係る申出の同意に関し議決を求めようとするものであります。
 報告第1号から報告第4号までは、平成18年度一般会計及び特別会計の繰越明許費の繰越し及び事故繰越しについて報告するものであります。
 報告第5号は、公営企業予算に係る支出予算の繰越額の使用計画について報告するものであります。
 報告第6号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について、また、報告第7号は、道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について、それぞれ報告するものであります。
 以上のとおりでございますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださるようお願いいたします。
   日程第4 議案第1号平成19年度岩手県一般会計補正予算(第2号)について
〇議長(渡辺幸貫君) この際、お諮りいたします。
 ただいま議題となっております議案のうち、日程第4、議案第1号平成19年度岩手県一般会計補正予算(第2号)は、選挙経費の執行日程の関係がありますので、先議いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(渡辺幸貫君) 御異議なしと認めます。よって、日程第4、議案第1号平成19年度岩手県一般会計補正予算(第2号)は、先議することに決定いたしました。
 これより、質疑に入るのでありますが、通告がありませんので、質疑なしと認め、質疑を終結いたします。
 ただいま議題となっております議案第1号平成19年度岩手県一般会計補正予算(第2号)は、総務委員会に付託いたします。
〇議長(渡辺幸貫君) この際、暫時休憩いたします。
   午後1時48分 休憩
出席議員(47名)
1 番 木 村 幸 弘 君
2 番 久 保 孝 喜 君
3 番 小 西 和 子 君
4 番 工 藤 勝 博 君
5 番 岩 渕   誠 君
6 番 郷右近   浩 君
7 番 高 橋   元 君
8 番 喜 多 正 敏 君
9 番 高 橋 昌 造 君
10 番 菅 原 一 敏 君
11 番 小野寺 有 一 君
12 番 熊 谷   泉 君
13 番 高 橋 博 之 君
14 番 亀卦川 富 夫 君
15 番 中 平   均 君
16 番 五日市   王 君
17 番 関 根 敏 伸 君
18 番 野 田 武 則 君
19 番 三 浦 陽 子 君
20 番 小田島 峰 雄 君
21 番 高 橋 比奈子 君
22 番 高 橋 雪 文 君
23 番 嵯 峨 壱 朗 君
24 番 及 川 あつし 君
25 番 飯 澤   匡 君
26 番 田 村   誠 君
27 番 大 宮 惇 幸 君
28 番 千 葉 康一郎 君
29 番 新居田 弘 文 君
30 番 工 藤 大 輔 君
31 番 佐々木 順 一 君
32 番 佐々木   博 君
33 番 工 藤 勝 子 君
34 番 平 沼   健 君
35 番 樋 下 正 信 君
36 番 柳 村 岩 見 君
37 番 阿 部 富 雄 君
38 番 斉 藤   信 君
39 番 吉 田 洋 治 君
40 番 及 川 幸 子 君
41 番 佐々木 一 榮 君
42 番 伊 藤 勢 至 君
43 番 渡 辺 幸 貫 君
45 番 千 葉   伝 君
46 番 佐々木 大 和 君
47 番 菊 池   勲 君
48 番 小野寺   好 君
欠席議員(1名)
44 番 小野寺 研 一 君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後2時22分 再開
〇議長(渡辺幸貫君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
報告
〇議長(渡辺幸貫君) 総務委員長から、委員会報告書が提出されておりますが、後刻詳細に報告を求めますので、朗読を省略いたします。
   日程第4 議案1号平成19年度岩手県一般会計補正予算(第2号)について(続)
〇議長(渡辺幸貫君) 日程第4、議案1号平成19年度岩手県一般会計補正予算(第2号)の議事を継続いたします。
 本案に関し委員長の報告を求めます。工藤総務委員長。
   〔総務委員長工藤大輔君登壇〕

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