令和6年12月定例会 第7回岩手県議会定例会会議録

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〇6番(村上秀紀君) ただいま一般質問の許可をいただきました自由民主党の村上秀紀でございます。
 通告に従い順次質問いたします。これまでの皆様の御質問と重なる部分もございますが、知事を初め当局の皆様には、前向きな御答弁をお願いいたします。
 初めに、就職氷河期世代への支援について伺います。
 バブル崩壊後の1990年代半ばから2000年代前半の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った、いわゆる就職氷河期世代の中には、若い時期に良好な雇用機会に恵まれず、現在も不本意ながら不安定な就労を余儀なくされるなど、さまざまな課題に直面している方々がいます。
 国は、令和元年6月の骨太の方針において、就職氷河期世代支援プログラムを取りまとめるとともに、就職氷河期世代活躍支援プランを策定し、この世代が抱える課題や人材ニーズ等を踏まえ、令和2年からの3年間で集中的な支援に取り組む方針を決定しました。
 その後、コロナ禍による雇用情勢の悪化を受け、令和5年からの2年間を第2ステージと位置づけ、毎年、行動計画の改定を行い、この世代の就労や社会参加を支援する施策を講じています。
 県においても、令和2年7月に、県や岩手労働局、関係団体等を構成員とするいわて就職氷河期世代活躍支援プラットフォームを設置し、平成29年の国の就業構造基本調査をもとにした推計により、非正規など不安定な就労状態にある方6、200人、長期にわたり無業の方3、498人を支援対象者とし、5年間で正規雇用者数を3、300人以上ふやす目標を掲げています。
 目標の達成状況を見ると、令和2年からの3年間の目標3、300人以上に対し、実績は3、639人、令和5年からの2年間の目標2、426人以上に対し、現時点の実績は1、534人となっており、取り組みは順調のように見えます。
 しかし、国の調査では、岩手県内の就職氷河期世代の総数における非正規労働者数は、平成29年の3万3、300人から令和4年は3万1、600人と1、700人減少していますが、正規労働者数も9万1、300人から8万9、000人と2、300人減少しており、むしろ無業者数は1万7、200人から1万8、200人と1、000人増加しています。
 こうした世代総数の5年間の推移と平成29年の調査をもとに推計した本県の支援対象者数を比べると、大きなギャップを感じます。そこには、潜在的なニーズを把握し切れていないことが考えられます。
 また、この世代があと5年たつと、親介護の問題も切実です。国の調査では、令和4年の40歳から49歳までの就職氷河期世代の非正規労働者のうち親介護を行っている割合は5.1%ですが、一つ上の50歳から59歳までの世代では13%と大きく上昇しており、この世代も5年後に同様の傾向になると考えられます。
 それぞれ異なる経緯や事情を抱え、生きづらさと孤立などによるひきこもり状態の長期化を要因とし、親へ経済的に依存している場合、本人や御家族にとって、将来への不安は増すばかりです。
 一方、この世代が社会で活躍することは、本人たちの経済的安定や将来への不安解消が社会全体の消費や税収増加につながりますし、労働力不足の解消にもつながります。この失われた世代ではなく、社会に大きな可能性を秘めた眠れる世代の潜在力は、社会を再び活気づける鍵となります。
 そこで、今後、この就職氷河期世代とどのように向き合い、この世代が活躍できるよりよい社会をどのようにしてつくっていくのか、知事の御所見を伺います。
 また、この世代とともにつくる社会に向けて、個人のスキルアップや雇用者側とのミスマッチを解消するため、プラットフォームではさまざまな事業を行っており、実績として実施件数や参加人数などが示されていますが、各種事業で得たスキルなどがどのように企業側に評価され、雇用の後押しにつながったのか、具体的な成果と課題、今後の支援の方向性について伺います。
 次に、商工業の振興について伺います。
 先月受け付けが終了した県の物価高騰対策賃上げ支援金は、予算額21億円で、2、000件分、1件当たり20人で、4万人の枠で実施しましたが、現時点の実績は、申請件数は2、896件と見込みを上回ったものの、人数は2万414人で半分程度にとどまりました。
 業種別の申請件数では、建設業が20.5%と最も多く、製造業16.4%、卸、小売業15.6%と続いています。また、地域別では、県南圏域が40.5%と最も多く、次いで県央圏域が37.4%、沿岸圏域14.2%、県北圏域6.1%などと承知しています。
 過去最大の最低賃金の引き上げに対し、人件費の引き上げ分を転嫁できない中小企業は依然として多く、実際に支援金を申請した事業所からは、今後の見通しがつくよう継続事業としてほしい、上限20人に対して事務作業の負担が大きいなど、事業の継続や活用のしやすさを求める声が上がっています。
 このたび、この支援金の今後に関する一般質問に対して、補正予算案について年内をめどに提案できるよう準備を進めているとの御答弁がありましたが、改めて、今回の実績に関し、業種別及び圏域別における事業者の総数に対する利用割合や想定の人数、予算規模に対する達成度、また、支援金を利用した事業者の声などを踏まえた、総合的な評価と今後の賃上げ支援事業の方向性について伺います。
 このほか、県が行う中小企業者等賃上げ環境整備支援事業費補助や岩手労働局における賃上げや生産性向上を行う場合の各種支援策とあわせ、県内の中小企業を取り巻く環境の改善は進んでいるのか、その成果と今後新たに取り組むべき点について伺います。
 令和5年9月、地理的表示、いわゆるGIに岩手の清酒が指定され、また、今般、日本の伝統的酒造りが、ユネスコの無形文化遺産に登録される見通しとなりました。
 こうした動きは、国内外ともに岩手の清酒のさらなる振興への追い風となるものと認識し、県でもこれを好機と捉え、日本酒の消費拡大に資するイベントやニューヨークの食品見本市に初出展するなど、販路拡大や知名度向上に向けた取り組みを進めていますが、まずは、これまでの取り組みの成果と今後の課題について伺います。
 また、日本の清酒づくりにおいては、本県の南部杜氏、新潟県の越後杜氏、兵庫県の丹波杜氏は日本三大杜氏と呼ばれ、南部杜氏の杜氏数は185人と、越後杜氏の102人、丹波杜氏の45人を上回る全国最大の杜氏集団です。南部杜氏は、北は北海道から南は九州の佐賀県まで全国各地で活躍し、最近は海外に拠点を持つ方もおります。
 そこで、伝統的酒造りのユネスコ無形文化遺産登録を契機とし、取り組みのさらなる加速化に向けて、日本最大の杜氏集団を抱える本県がイニシアチブを発揮し、首都圏で日本三大杜氏サミットを開催するなど、酒づくりの文化や魅力を全国や世界にPRすることが、業界全体の知名度向上や販路拡大、ひいては清酒の消費拡大につながると考えますが、これについて知事の御所見を伺います。
 県内各地の商店街や組合等は小規模事業者の集合体で、共助の枠組みを持ち、地域の生活、コミュニティーや地域経済を支える重要な役割を担っていますが、その一方で、空き店舗の増加や経営者の高齢化など、さまざまな課題を抱えています。
 県では、商店街ににぎわいを創出するため、個店に対し、経営力向上を図るための専門家派遣や複数の企業、団体が連携して行う新ビジネスの創出や販路開拓等への支援を行っていますが、これに加え、商店街を共助の枠組みとして捉え、エリアとしての価値の向上に取り組み、地域の持続的な発展を推進する必要があるのではないでしょうか。
 中小企業庁は、地域の持続可能な発展に向けた政策の在り方研究会における商店街の位置づけを、買い物の場から地域コミュニティーの維持のために必要な、地域の住民やコミュニティーのニーズに応える役割、機能を高めることを目的とする方向へ転換すべきであるとの考えに基づき、今年度の新規事業として、中心市街地や商店街などの活性化に係る経済活力やエリアの価値向上に向けた取り組みに対し、専門家派遣や伴走支援を行う中心市街地・商店街等診断・サポート事業を実施しており、全国で18件が採択されていますが、本県では、まだ採択実績はありません。
 各地の商店街は、人の流れが変わって衰退の一途であり、商店街として再生しようとしても難しい場合もあるのではないでしょうか。商店街としてだけでなく、エリアとしての価値の向上を念頭に置いて再生を図る取り組みも必要ではないかと考えますが、国事業の本県からの申請の有無や、申請があったのであれば、採択されなかった要因も含め県の考えを伺います。
 次に、農林業の振興について伺います。まず、農業の振興について伺います。
 農業は、自然との共存を求める重要な産業であり、地域経済、食料安全保障、環境保全に寄与しています。しかし、同時に、常に厳しい自然条件と隣り合わせとも言えます。
 近年の気候変動によって、台風や大雨、凍霜害に加え、猛暑、高温などの自然災害のリスクが一段と高まっていますが、高温の影響は、農産物の収穫量の減少や品質の低下をもたらしており、農家の収入減は避けられず、経済的負担を増大させています。
 また、ことし8月の台風、大雨災害や昨年の凍霜害によって収穫量が大きく減少した生産者もおり、農業生産の継続にも大きな影響を及ぼしかねない状況です。
 気候変動は、農業生産にさまざまな影響を与え、食料安全保障にもかかわる問題であり、我が国の食料供給基地としての役割を担う本県として、こうした気候変動に対する適応力をさらに高めていく必要があるのではないでしょうか。
   〔議長退席、副議長着席〕
 そこで、これからの農業が自然と共存し、持続的な岩手県の農業生産を実現するため、こうした気候変動にどのように向き合っていくか、知事のお考えを伺います。
 県では、台風や大雨、地震などの自然災害による農作物の被害の未然防止や軽減などのための対策を推進し、農作物の生産確保や再生産を図り、農業経営と農家生活の安定に資するため、農作物災害復旧対策事業を実施しています。
 その事業実施要件は、二つ以上の市町村における農作物の被害額が1億円以上の場合、または同程度の被害が予測される場合、そして、被害率が31%以上の被害を受けた農作物がある場合、または同程度以上の被害の発生が予測される場合などの要件全てに該当する場合に実現されます。
 しかし、局地的な災害が頻発している現在、ことし8月下旬の大雨被害では、三つの市町で合計1億8、600万円余の農作物被害のうち、一つの町でおよそ94%を占めた案件が発生しました。
 本県には1、000平方キロメートルを超える市もあり、今後、一つの市町村で被害額が要件を上回る可能性もある中、現行の要件では、今後の産地形成に向けて支障を来すおそれがあります。事業実施要件の見直しが必要と考えますが、御所見を伺います。
 次に、林業の振興について伺います。
 本県は、本州一の森林面積を有し、アカマツや杉などの針葉樹やクリ、ナラなどの広葉樹といった豊富な森林資源に恵まれ、素材生産量は全国3位、森林面積の約5割を占める広葉樹の生産量は全国2位であり、森林県として大きな役割を担っています。
 森林の資源量を示す森林蓄積も増加して利用期を迎えており、こうした森林資源を有効利用することは、CO2の排出抑制や炭素の貯蔵を通じ循環型社会の実現に大きく寄与するものです。
 また、県産木材の需要を安定的に確保することができれば、切って、使って、植えて、育てるという循環利用が促進されるとともに、森林整備の促進や林業従事者の所得向上が図られ、林業の成長産業化の実現につながります。
 しかし、農林水産省がことし7月に公表した調査によれば、岩手県内の製材工場や合板工場等における原木の利用量を示す素材需要量は、令和5年は100万立方メートルとなり、コロナ禍で木材需要が大幅に減少した令和2年の112万立方メートルを下回り、過去10年間で最も低い水準となりました。
 その主な原因は住宅着工戸数の減少と聞いていますが、素材需要量の減少による県内の事業者への影響をどのように捉えているか、また、県内の木材価格の動向と市場動向についてもあわせて伺います。
 素材需要量の減少とともに、長期的に見れば、人口減少などに伴い木材需要の減少が見込まれますから、今後、県産木材の利用を一層促進していかなければなりません。
 県では、住宅分野での利用拡大を図るため、令和3年度から、いわて木づかい住宅普及促進事業を実施しており、募集を開始すれば約半年で予算額に達するほど好評で、毎年130件程度の実績があり、林業、木材関係者や工務店からも期待が大きい事業と承知しています。
 しかし、今年度は想定件数140件に対し、11月22日現在、新築62件、リフォーム2件と、申請率は5割程度にとどまっており、年度末までの住宅完成が要件のため、制度が十分に活用されないのではないかと懸念しています。
 申請が少ない理由として、住宅着工戸数の減少による影響が大きいと考えますが、制度面で見れば、新築とリフォームの区分が統合され、要件となる県産木材使用量の基準が引き上げられたため、木材使用量が少ないリフォームでの申請が難しくなったこと、また、県産木材利用量や子育て世帯への加算など補助額が最大85万円から30万円に引き下げられたことなどが、理由の一つとして挙げられます。
 住宅取得への支援は、木材の利用拡大だけでなく、住宅需要の喚起や若い世代の移住、定住につながるものであり、宮城県では、木材住宅新築の支援として、構造部分での県産木材の活用のほか、内装や木製品の配備などで最大90万円、子育て世帯や県外からの移住世帯には、上限額を引き上げ、最大130万円を支援しています。
 事業効果をより高めるための工夫が求められています。そこで、次年度に向けて、リフォームでも使いやすくするための工夫や宮城県の取り組みも参考にした補助額の見直しなど、制度の見直しを検討すべきと考えますが、御所見を伺います。
 また、県産木材の需要拡大の余地がある県外にも目を向けて取り組みを推進することも重要です。県では、県外への販路拡大の取り組みとして、全国規模の木材製品展示会への出展支援などを実施していますが、予算規模を見れば、県外向けの事業がやや少ないと感じます。今後は、地域外貨獲得のためにも、国産材の活用が期待される首都圏など県外をターゲットとした取り組みを一層進める必要があるのではないでしょうか。
 日本の木材自給率は依然として約4割の水準にあり、半分以上を輸入材に頼っているのが現状です。ことし3月、日本政策投資銀行などが、岩手県及び秋田県の関係企業、団体へのインタビュー調査をもとにまとめた東北地方における森林産業の現状と今後の方向性報告書でも、今後の国際的な木材需給等の変化を踏まえると、国内林業にとって、輸入材からのシェア奪還により国内の成長機会は広がると考えられると言及しています。
 本県の品質の高い木材は、全国でも、はりや内装材、家具などさまざまな用途に利用され、評価も高いと聞いています。広葉樹を初め樹種が豊富で、素材生産量が全国でも上位の本県の優位性を生かし、首都圏を初め県外への販路拡大を戦略的に進めるべきと考えますが、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
 豊富な森林資源を有する本県にとって、エネルギー需要の多くを輸入された化石燃料に頼っている現状から、エネルギーの地域内循環を一層高めていくためには、木質バイオマスの利用も重要な取り組みの一つです。
 一方、木質バイオマス発電におけるエネルギー変換効率は、通常20%から30%程度と言われており、木質バイオマスエネルギーを効率的に利用するためには、発電だけでなく、発電の際に発生した廃熱もそのまま利用する熱電併給システムが有効とされています。
 県は、令和5年3月に策定した、いわて木質バイオマスエネルギー利用展開指針(第3期)に、熱電併給システムの普及啓発を新たに盛り込み、取り組みを進めていますが、農林水産省の調査によると、木質バイオマス発電に使われている発電機のうち廃熱も利用している発電機は、全国では177基導入されているのに対し、県内では、介護福祉施設など2基の導入にとどまっています。
 熱電併給は、エネルギー変換効率が高く、地域の間伐材などを活用して小規模施設や小さなコミュニティーでも賄うことができるとされており、脱炭素化の観点からも普及が期待されます。
 今後、地域の拠点となるような施設に木質バイオマスを利用した熱電併給システムの導入を図るなど、普及に向けた取り組みを一層進めるべきと考えますが、課題をどのように捉え、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
 次に、地域医療について伺います。
 県立病院は、県下にあまねく良質な医療の均てんをとの創業精神のもと、70年以上にわたり、県民福祉の増進のため、最も重要な社会基盤の一つを提供してきました。
 また、近年では、医師偏在指標が全国最下位となる医師不足や災害などに直面しつつも、全国でも例のない県立病院のネットワークを生かし、さまざまな課題に対応してきました。
 一方で、取り巻く環境は大きく変化し、年少人口、生産年齢人口の減少に加え、高齢者人口も減少に転じています。収益的収支決算の状況は、新型コロナウイルス感染症に係る補助金等が大幅に減少した令和5年度の経常損益は約32億円の赤字となり、令和6年度も約90億円の赤字を見込んでいます。
 県が公表した次期県立病院等の経営計画(最終案)は、このような環境の変化に対応しながら、県民への良質な医療の提供と持続可能な経営基盤の確立を図るために策定するものですが、このたびの計画の中で、医師不足を解消するための医師の確保、育成と魅力ある勤務環境の整備については、確保と魅力ある環境整備に比べて、育成の方策は具体性に乏しいと感じます。果たして研修医師のニーズを捉えることができるのか、現役の中堅医師からは懸念の声が聞かれます。
 例えば、沖縄県立中部病院は、屋根瓦研修方式の確立と総合診療の指導が充実しており、全国的に有名な研修医教育のメッカと言われ、充実した環境を求めて全国から研修医がやってくるそうです。また、ことし10月に医師臨床研修マッチング協議会が公表した令和6年度の臨床研修医マッチング結果によると、本県の61人に対し、沖縄県は150人と約2.5倍の開きがあります。なお、沖縄県の医師偏在指標は全国5位です。
 そこで、全国の先進事例を踏まえ、本県が医師から選ばれる病院を目指すため、本経営計画の医師育成について、具体的にどのような方法で行い、医師から選ばれる病院を目指し医師不足を解消していくのか、御所見を伺います。
 次に、教育における課題について伺います。
 文部科学省の調査によると、本県の小、中、高等学校で30日以上欠席した不登校の児童生徒が、令和5年度は3、052人となり、前年度に比べ17.9%増加し過去最多となりました。報道によれば、県教育委員会は、新型コロナウイルス感染症の影響が続いていることや、不登校への理解が広がり保護者の意識が変わっていることが要因と分析しています。
 さて、昨年12月定例会の一般質問でも取り上げた星北高等学園は、義務教育または高等学校段階において、不登校など何らかの理由で普通教育の機会を十分に得られなかった子供たちを受け入れており、一般の高等学校と同様の卒業資格を得ることができる高等専修学校ですが、生徒数は、令和4年度の56人から、令和6年度は73人と、およそ30%増加しております。先ほどの国の調査を見る限り、ニーズが年々高まっていくことが予想されます。
 県では、星北高等学園に対する補助について、令和4年度まで生徒1人当たりの補助単価を3万5、960円だったところ、令和5年度から倍額の7万1、920円を措置しています。東北で比べてみると山形県と並ぶ高い補助額ですが、私立高等学校運営費補助金は35万656円とおよそ5倍もの開きがあります。
 昨年の一般質問では、国に対して国庫補助制度の創設と十分な普通交付税の措置について要望していると御答弁をいただきましたが、全国には、県独自に予算を確保し、私立高等学校に迫る補助を行っているところがあります。
 例えば、佐賀県では、高等専修学校の学びのセーフティネットとしての機能の充実を図るため、私立高等学校に準じた支援となるよう運営費補助単価を見直し、平成30年度まで1万2、500円だったところ、令和元年度に29万2、179円へ大幅に増額し、令和2年度以降は、高等学校の補助単価の伸び率に応じて毎年度見直し、令和5年度は30万6、155円を措置しています。
 そこで、本県でも教育の機会均等や教育環境の充実を図るため、佐賀県のように、星北高等学園に対する補助額を私立高等学校に準じたものとする必要があると考えますが、御所見を伺います。
 ことし7月、文部科学省は、小学6年生と中学3年生を対象に毎年4月に行っている全国学力・学習状況調査について、令和9年度から紙の問題冊子を廃止し、学習用端末を活用してオンラインで出題、解答する新方式に全面移行する方針を示しました。来年度は中学理科での先行導入が決まっており、令和8年度からは中学英語で導入されます。
 新方式により、動画や音声を使った幅広い出題が可能となる、児童生徒の解答データの収集、分析がしやすくなるなどの利点があり、指導の充実につなげられるとのことです。
 このように、全国的に教育のDXが進展する中、本県でも、全国に先駆けて、全市町村の公立小学校、中学校、義務教育学校、県立中学校を対象に、どこの学校でも同じシステムが使える統合型校務支援システムの運用を段階的に開始しています。これは、主に学校現場の業務改善を図る観点で有効なものです。
 そこで、校務支援システムの導入によって、どのように業務改善が図られ、働き方改革にどの程度有効なものと想定しているか伺います。
 また、現在は小中学校が対象ですが、生徒が県内各地に進学する高等学校との連携を図ることができたなら、さらにこの利点を発揮することができるのではないでしょうか。今後、高等学校との連携は検討されているのか、また、その先にある校務と生徒の学習との連携をどのように考えているか、今後の方向性について伺います。
 以上で私の一般質問を終わります。御答弁によっては再質問いたします。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 村上秀紀議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、就職氷河期世代が活躍できる社会の実現についてでありますが、全国的に人口減少が急速に進む中、本県においても、産業人材の確保が大きな課題となっております。
 人口減少に歯どめをかけ、産業人材を確保していくためには、若者や女性の県内定着、U・Iターンの促進はもとより、あらゆる世代の方々が、ライフスタイルに応じた新しい働き方などを通じて、一人一人の能力を発揮できるようにしていくことが重要であり、特に、就職氷河期世代で、みずからの希望やスキルに見合った就職ができなかった方々の働き方の見直しなどに意を払っていく必要があると考えております。
 このような考え方のもと、岩手労働局や市町村と連携し、経済団体に対して、人への投資や若者や女性に魅力ある雇用、労働環境の構築などを含めた安定的な雇用の確保等に関する要請を行っているほか、就職氷河期世代を含む働き盛りの年齢層の正規雇用を望んでいる労働者を対象に、経済団体や労働団体等と連携し、実態やニーズに沿ったスキル習得や資格取得の支援など、キャリアアップにつながる取り組みなどを行っております。
 こうした取り組みを通じて、就職氷河期世代を含め、あらゆる世代の人々が、一人一人の能力を十分に発揮し、活躍できるようにすることで、人口減少に伴う労働力不足の解消につなげていきたいと考えております。
 次に、酒づくりの文化と魅力の発信についてでありますが、一昨年のカナダ、また、昨年のマレーシア、シンガポールへのトップセールスを通じて、世界の国々に日本食レストランがふえ、日本酒に対する関心が高まっている状況を実感いたしました。
 今般、伝統的酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録される見通しとなったことは、こうした流れに拍車をかけ、南部杜氏の酒づくり文化と岩手県の日本酒を世界に発信して売り込む大きなチャンスであると考えております。
 また、岩手の清酒が地理的表示、いわゆるGIに指定されている強みを生かした取り組みの展開も必要であり、昨年12月のトップセールスに際し、国税庁の主催のもと、マレーシアにおいて、現地の飲食店経営者やメディアなどを集めたPRイベントを開催しているほか、年明けに予定しているニューヨークにおけるトップセールスにおいても、岩手県酒造組合と連携したレセプションなどを行うこととしております。
 今後、ユネスコ無形文化遺産の本登録後には、国による大規模な記念イベントの開催が見込まれ、また、今年度、全国知事会において海外国際見本市への出展も行っており、こうした取り組みと連動しながら、岩手県の酒づくり文化と日本酒の魅力を広く世界に発信していきたいと考えております。
 次に、気候変動への対応についてでありますが、本県の農業者は、生産条件が不利な中山間地域や厳しい自然環境の中で、たゆまぬ努力と創意工夫により、国内はもとより海外からも評価の高い農産物を生産してきました。
 平成5年には、翌年の種もみが不足する大冷害に見舞われましたが、沖縄県石垣市において、県オリジナル水稲品種かけはし等の種もみを緊急増殖し、確保したところであり、こうした過去の自然災害も、そのたびに農業者の皆様と力を合わせて乗り越えてきたところであります。
 農業は、気候変動の影響を受けやすい産業であり、近年では、夏期の高温や大雨災害など、気象災害が頻発化していることから、国と地方が連携して、気候変動の影響に的確かつ効果的に対応していくことが重要であります。
 このため県では、国に対し、高温等の気候変動に適応した品種開発等への支援の強化を要望しているほか、全国知事会の農林商工常任委員長として、気候変動に対応した品種や生産技術の開発、新たな品目導入への支援など、計画的な対応策の推進について要望しています。
 また、高温、豪雨による農作物被害の未然防止に向け、今年度から、農協等の指導者を対象とした高温等による農作物等被害防止技術対策会議を開催したほか、温暖化への適応に向け、高温登熟耐性を持つ水稲品種や着色不良の少ないリンゴ品種の開発、桃の作付実証などを進めています。
 こうした取り組みにより、気候変動への適応力をさらに高め、今後も、食料自給率が100%を超え、我が国の食料供給基地としての役割を果たす本県農業の持続的発展に向け、生産者や農業団体等と力を合わせながら取り組んでまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔企画理事兼商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) まず、就職氷河期世代への支援についてでありますが、県においては、就職氷河期世代のキャリアアップや成長を促す環境構築に向け、企業の採用、育成担当者を対象としたセミナー開催のほか、この世代の資格、スキル取得を目的とした個別カウンセリングやeラーニングなどを実施しているところでございます。
 また、経済団体や労働団体などとの連携のもと、いわて就職氷河期世代活躍支援プラットフォームを設置し、先ほど知事が答弁申し上げたとおり、就職氷河期世代を含む働き盛りの年齢層の正規雇用を望んでいる労働者のキャリアアップにつながる取り組みを幅広く実施しております。
 こうした取り組みを通じ、本県の59歳以下の働き盛り世代の労働者に占める非正規雇用者の割合は改善傾向にあり、就職氷河期世代にあっても同様の傾向となっております。
 さらに、仕事についていない人の割合についても、他の世代との差異は生じていない状況でありますが、正規雇用者の割合をさらに高めていく必要があると考えております。
 引き続き、就職氷河期世代の潜在的なニーズ把握に努め、eラーニング講座の内容の見直しを行うなど、一人でも多くの方が希望する仕事につくことができるよう取り組んでまいります。
 次に、物価高騰対策賃上げ支援金の評価と今後の方向性についてでありますが、事業者総数に占める申請事業者の業種別実績については、電気、ガス、熱供給、水道業が26.5%、鉱業、採石業、砂利採取業が20.0%、製造業が13.6%、建設業が11.2%と多く、不動産業、物品賃貸業が0.8%と最も低くなっております。
 また、同じく事業者総数に占める申請事業者の圏域別の実績については、県央圏域が5.3%、県南圏域が5.7%、沿岸圏域が4.7%、県北圏域が3.7%となっております。
 なお、1事業所当たりの平均対象者数は7人、したがって、1事業所当たりの平均支給額は35万円となっております。
 この事業については、全国にも例のない事業であり、また、少しでも多くの事業者の方々に活用していただきたいといった考えのもと、余裕を持った予算規模としたところであり、金額ベースでは予算額の半分程度となったものの、申請事業所数では見込みを上回る多くの事業所に活用いただき、賃上げの促進に効果を上げたと考えております。
 現在、さらに踏み込んだ支援策の検討に着手しているところであり、今般の実績を踏まえつつ、例えば、単価の見直し等も念頭に制度の検討を進めております。
 次に、中小企業支援の成果と今後の取り組みについてでありますが、令和5年度から開始した中小企業者等賃上げ環境整備支援事業費補助のフォローアップ調査では、昨年度の支援先51者のうち約4分の3の38者が、給与支給総額年率2%以上の引き上げを達成する見込みとしております。
 また、申請要件としている経営革新計画の承認企業数は、令和4年度の44件から令和5年度は59件、本年度は上期で41件と着実に増加しており、さらに、同じく申請要件のパートナーシップ構築宣言企業数も、令和5年7月12日時点の127社から先月28日時点では322社と、東北地方で最も高い増加率となっているなど、中小企業の生産性向上と適切な価格転嫁の実現に向けた環境整備に結びついていると考えております。
 物価高騰や最低賃金の大幅な引き上げなどを踏まえ、持続的な賃上げに向けた環境整備が喫緊の課題である中、中小企業を伴走型で支援する商工指導団体の体制強化を図り、引き続き、中小企業の経営力強化に向けた取り組みをしっかり支えるとともに、次世代の地域経済を牽引する中小企業者の創出に向け、創業や事業承継支援にも重点的に取り組んでいきたいと考えております。
 次に、清酒の振興に係る成果等についてでありますが、海外において日本酒への関心が高まる状況を踏まえ、これまで、中国や台湾、東南アジア、欧米へのトップセールスなどを通じて、継続的に日本酒の販路拡大に取り組んできたところであり、岩手県の日本酒の輸出額は、2012年の1億円弱から2022年には約4億9、000万円に大きく伸びているところです。
 特に、コロナ禍において国内の消費が大きく落ち込む状況において、こうした輸出の伸びによって経営を持続できたといった声を聞いております。
 日本酒は、全国各地に有名な酒蔵が数多く存在するほか、スパークリングタイプのような新商品やパッケージのデザイン開発による差別化が求められるなど、販路拡大に向けた激しい競争環境にあると受けとめております。
 このような状況を踏まえ、引き続き、輸出拡大に向けたトップセールスの実施や国際見本市への出展支援などを行いつつ、こうした機会を通じて関係を構築したバイヤーを岩手県に招聘して、酒造会社との商談を行うことや、地方独立行政法人岩手県工業技術センターなどと連携した新商品開発支援、さらには、いわて希望応援ファンドを活用したデザイン開発支援などの取り組みを展開してまいります。
 次に、商店街の再生についてでありますが、商店街は、地域を支える商業機能を初め、防犯、防災活動や地域の祭り、イベント等の地域の場としての機能も有するなど、地域の生活、コミュニティーや地域経済を支える重要な役割を担っておりますが、一方で、人口減少や郊外への大型店の展開、ネット通販の普及等により、その位置づけが、買い物の場から多世代がともに暮らし、交流する場に変化し、商店が集まるまちから生活を支えるまちへの変革も求められているところです。
 そのような中、御指摘のエリアとしての価値の向上という考え方は、医療や介護、子育て支援など、商業需要以外の住民ニーズに対応した商店街への転換に向けた有効な手法の一つであり、今年度、国が開始した中心市街地・商店街等診断・サポート事業のパッケージ型支援は、面的地域価値の向上を後押しする有効な取り組みであると考えております。
 今年度の公募には、県内からも1件申請があったものの、採択に至らなかったと伺っており、その理由は公表されておりませんが、今後、国や市町村、商工指導団体とも連携し、本事業の活用も促しながら、地域の住民やコミュニティーが期待する多様なニーズに応える場としての商店街の振興を図ってまいります。
   〔農林水産部長佐藤法之君登壇〕
〇農林水産部長(佐藤法之君) まず、農作物災害復旧対策事業についてでありますが、本事業は、村上秀紀議員御指摘のとおり、2以上の市町村において農作物被害が1億円以上の場合などを要件とし、市町村単独での対応が難しい大きな被害を支援するという観点から、市町村と連携して事業を実施しております。
 県では、本事業による復旧対策支援を行うとともに、被害の防止対策として、排水対策や適期収穫等の技術指導、被害の軽減に有効な施設整備への支援を行うほか、被害の発生に備え、収入保険や農業共済への加入を促進するなど、生産者の経営が安定するよう取り組んでいます。
 近年、全国でゲリラ豪雨が発生し、局地的な農作物被害が発生するおそれもあるところですが、広域的な行政を担うという県の役割から、2以上の市町村に被害があった場合を事業の対象としておりまして、御提案の事業実施要件の見直しについては、慎重な対応が必要と考えております。
 次に、木材需要の減少による影響についてでありますが、本県の令和5年の素材需要量は前年から約17%減少しており、県内の合板工場では、原木の受け入れ制限が続くなどの影響が見られ、素材生産業者の一部では、製材や合板向けの素材生産から、木材チップ向けの素材生産や保育間伐等への移行により事業量を確保している状況と承知しています。
 本県の木材価格は、ウッドショック時から低下しているものの、国の木材価格統計調査によれば、令和6年10月現在をコロナ禍前の令和元年10月と比べると、杉、アカマツ素材価格は約1割、カラマツは2割から3割、木材チップ向けの素材は約1割、それぞれ高い水準となっています。
 また、県内10カ所の木材流通センターにおける本年4月から10月までの素材取扱量は、前年同期比10%減となっており、杉やカラマツの製材向け一般材の引き合いは弱いものの、広葉樹材は引き合いが強い状況となっています。
 次に、住宅での県産木材の利用拡大についてでありますが、県ではこれまで、いわて木づかい住宅普及促進事業により、令和3年度から令和5年度までの3年間で、県産木材を利用した住宅の新築372件、リフォーム37件を支援してまいりました。
 令和6年度は、これまで本事業を活用した住宅における木材利用実績を踏まえ、補助対象とする県産木材の使用量の下限を5立方メートルから10立方メートルに引き上げるとともに、補助金額の算定根拠となる輸入製材品と県産木材製品の価格差が、輸入製材品の値上がりにより縮小したことから、本事業の補助金額を見直したほか、これに伴い、子育て世帯への加算額も見直しとなったところです。
 今年度の申請件数は昨年度と比較して少ないことから、工務店に対し事業活用の働きかけを行ったところ、これまでに27件の追加申請があり、この過程の中で本事業の課題について聞き取り調査を行ったところ、工務店からは、床や壁への県産木材の利用に対する支援が必要などの意見があったところです。
 県としては、こうした意見や他県の類似制度を参考とするとともに、関係団体等とも意見交換しながら、住宅での県産木材の利用拡大に向け、本事業の今後の対応を検討していきます。
 次に、県産木材の販路拡大についてでありますが、県ではこれまで、関係団体と連携しながら、東京2020オリンピック・パラリンピック選手村施設への県産木材製品の提供や全国植樹祭でのお野立所などへの県産木材の活用など、本県の品質の高い木材製品のPRを進めてまいりました。
 また、岩手県県産木材等利用促進基本計画及び同行動計画に基づき、県外消費地の開拓など販路拡大を進めていくこととしており、首都圏で開催される全国規模の木材製品展示会、ウッドコレクションや県産木材製品のパンフレットの配布などに取り組んでいます。
 さらに、アカマツと広葉樹材の高付加価値化に向け、民間企業と連携し、県林業技術センターにおいて、輸入製材品の代替となる強度の高いアカマツツーバイフォー材や高品質な広葉樹材の製造に不可欠な乾燥技術の開発に取り組み、ツーバイフォー材は、大手住宅メーカー等で実用化されています。
 今後は、こうした本県が独自に開発した広葉樹材やツーバイフォー材などの県産木材製品を強力にPRするなど、首都圏を初めとする県外への販路が拡大するよう積極的に取り組んでいきます。
 次に、木質バイオマスを活用した熱電併給システムについてでありますが、木質バイオマスエネルギーの利用は、本県の豊富な森林資源の有効活用による林業、木材産業の振興、地域経済の活性化などに大きく寄与するとともに、脱炭素社会の形成を進める本県にとって重要な取り組みです。
 このため県では、木質バイオマスエネルギーの利用拡大に取り組み始めた当初から、熱供給を目的とする木質バイオマスボイラーの導入支援を行っており、近年、全国的に導入が進み始めた熱電併給システムについても、その普及に向け、セミナーの開催によるシステム活用事例の紹介や熱利用が見込まれる医療施設等への導入可能性調査を実施してきたところです。
 今後、熱電併給システムの県内への普及に向けては、医療施設等の管理者に対するさらなる周知に加え、システム導入に向けた技術指導や導入後の管理運営を担う人材の育成が重要と考えています。
 このため県では、これまでのセミナーの開催や県が委嘱している木質バイオマスコーディネーターによる個別指導を継続して行っていくほか、今年度から新たに、熱電併給システムの管理、運営を担う人材育成研修を実施しています。
 今年度の人材育成研修では、多くの事業者が参加するなど木質バイオマスエネルギーの利用への関心が高いことから、今後も、熱電併給システムを含む木質バイオマスエネルギーの利用拡大に向け、積極的に取り組んでまいります。
   〔医療局長小原重幸君登壇〕
〇医療局長(小原重幸君) 県立病院における医師の育成等についてでありますが、これまで県立病院では、県内の大学病院や公的病院により構成される、いわてイーハトーヴ臨床研修病院群に参画し、病院の枠を超えて、内陸部や沿岸地域、県北地域の多様な病院での研修や医師としての視野拡大等を目的とした海外研修など、特色ある取り組みを通じて、将来の地域医療を担う臨床研修医の確保を図ってきたところであります。
 また、臨床研修修了後の専攻医の育成に当たりましては、県立病院のネットワークを生かした専門研修プログラムにより、症例の豊富な病院での研修や特色ある地域医療の経験ができるほか、奨学金養成医師にあっては、専門研修と奨学金の義務履行を両立することが可能となっているところであります。
 次期経営計画においては、医療の高度、専門化や人口減少等による医療需要の変化に的確に対応するため、がんや心血管疾患等の疾病ごとに医療機能を集約し、症例数、手術数の集積を進めることとしており、県立病院の専門研修においても、専門的な症例や高度医療器械による手術を経験できる体制になると考えているところであります。
 さらに、今後増加が見込まれる奨学金養成医師について、毎年度面談を行い、きめ細かく要望を聞きながら、医師としてのキャリア形成に配慮した配置調整に努めるなど、義務履行が終了した後も、引き続き県立病院に定着してもらえるよう取り組んでおり、こうした取り組みにより、引き続き必要な医師の確保に努めてまいります。
   〔ふるさと振興部長村上宏治君登壇〕
〇ふるさと振興部長(村上宏治君) 星北高等学園についてでありますが、同学園は、大学入学資格を取得できる本県唯一の高等専修学校であり、不登校経験のある生徒等を積極的に受け入れるなど、個々の状況に応じた学びの機会を確保する重要な役割を担っていると認識しております。
 県では、こうした学校の教育環境の充実のため、令和5年度には人件費などの経常経費の補助単価を倍増したほか、令和6年度には、スクールカウンセラーの配置などの経費について、本県独自の支援制度を創設したところであり、同学園に対する支援総額は、令和4年度実績の5倍を超える額となっております。
 村上秀紀議員御指摘の佐賀県の例は承知いたしておりますが、高等学校と高等専修学校とでは、教育課程、教員数や施設等の基準が異なり、学校運営に要する経費水準にも違いがあることから、国による地方財政措置にも大きな差が生じております。
 このため、財政状況が厳しい本県において、県の一般財源負担により両者を同様に取り扱うことは難しいものと考えており、県では、国に対して補助制度の創設と十分な普通交付税措置について要望しているところでございます。
 引き続き、国や他県の動向を注視するとともに、拡充した県の支援措置の効果やその後の運営状況なども踏まえ、星北高等学園との意見交換等も行いながら、丁寧に対応してまいります。
   〔教育長佐藤一男君登壇〕
〇教育長(佐藤一男君) まず、統合型校務支援システムについてでありますが、このシステムは、児童生徒の出欠席や成績の管理を初め、心身の健康状態など多様な情報を一元管理し、データを分析して指導改善等に役立てることや、教職員の業務の軽減と効率化を図ることを目的として構築したものであり、本年4月から、県立中学校と11の市町村の小、中、義務教育学校に導入し、令和8年度までには、県内全ての市町村において導入を予定しているものです。
 システムの導入効果としては、手書きや手作業で行われてきた業務が減少し、業務の正確性の向上や作業時間の短縮が期待できるほか、通知表や健康診断票などの各種様式の標準化やデータの統一化などにより、児童生徒の転学や進学時、教職員の異動時などにおける業務の負担軽減が図られると想定しているところです。
 今年度、システムを先行して導入している学校からは、教職員間の連絡事項等をペーパーレスで共有することにより、朝会などの時間が削減でき、児童生徒と接する時間がふえたといった声も寄せられており、今後も、市町村教育委員会と連携しながら、システムの円滑な導入や活用促進に取り組んでまいります。
 次に、高等学校との連携についてでありますが、小中学校等で導入を進めている統合型校務支援システムでは、将来構想として、既に県立高校に導入している校務支援システムとの間でデータ連携できる仕様としておりますが、この実現のためには、県立高校の校務支援システムを運用している通信ネットワークシステムの大幅な改修等が必要となることから、その課題の整理や方策等の検討に当たっているところです。
 国では、次世代の校務DXにおける目指す姿として、統合型校務支援システムと児童生徒がデジタル教材を利用した学習履歴のデータ等を連携し、可視化できるようにすることなどを示す一方で、実現に向けたさまざまな課題も提起していることから、今後、国や先進自治体の取り組みを注視しながら研究してまいります。
〇6番(村上秀紀君) ただいま御答弁いただきましたが、御答弁いただいた順に2点、再質問させていただきます。
 まず、地域医療について医療局長に伺いたいのですが、先ほどの、育成についてさまざま取り組んできているというのは、十分承知いたしました。その中で、さきに沖縄県の事例も申し上げたところですけれども、その沖縄県から、どのようなことをこれから岩手県は学ばなければならないのかという点について伺いたいと考えています。
 例えば、沖縄県と岩手県は、人口はさして変わらないところで、医学部はそれぞれ一つであること、定員も国家試験合格者数もおよそ同数であること。また、どちらも全国に比べて地理的には不利である。むしろ沖縄県のほうが不利かもしれません。それにもかかわらず、卒後マッチングの研修医の人数におよそ2.5倍の開きがある。この現実についてどのように考えているか。改めて申し上げますが、そこから岩手県は何を学ばなければならないのか、これについて伺いたいと思います。
 もう一点ですが、星北高等学園について、こちらは、ぜひ知事に対して再質問申し上げたいと存じます。
 先ほども御案内しましたとおり、佐賀県では、高等専修学校に対して、およそ私立高等学校に準じた金額を措置しております。これは佐賀県の山口知事が、生徒たちから多様な学びを求められている現在において、就任当初からこの分野に高い関心と強い思いを持っていた中、佐賀県内の高等専修学校に足を運んだ際、先生方が、生徒一人一人に対し全力で寄り添っている姿を目の当たりにして、学校によって生徒たち及び先生方に不公平感があってはならない、もっと心おきなく寄り添っていただきたいとの考えから措置されたものです。
 余談ですが、星北高等学園を運営している方々は、佐賀県の高等専修学校である佐賀星生学園を訪問し、目指すべきモデルにしたいとの思いから、星生の星の字をいただいて学校名が名づけられています。
 1事業の見直しと考えれば知事答弁というのはなじまないものなのでしょうけれども、この案件は、県、そしてまた知事の、子供たちが能力に応じてひとしく教育を受ける権利、あらゆる差別なく公平に教育を受ける権利に対する姿勢が大きく反映されるものと私は考えております。
 これまでも、たび重なり先輩議員がこの件について質問してきた思いも含めて、改めまして、星北高等学園の支援に対する今後の方向性について、知事にお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 我が国の教育について、村上秀紀議員御指摘のように、全ての人が、どこにいても自由に教育を受けられるようにするには、初等教育はもちろん、就学前教育から無償化して、大学も無償化するという、国によってはそのようにしているわけでありますが、日本の場合は、基本的には授業料というものがそれぞれに存在する中、政策的な無償化が進められているところであります。
 そういった流れの中で、できるだけのことをしたい、不登校対策を進めたいという答弁を先ほど担当部長から申したところでありまして、私もそういう考えで対応していきたいと思います。
〇医療局長(小原重幸君) 沖縄県とどういう点が違って、学ぶべきところはないかというような御質問だったかと思いますけれども、やはり沖縄県につきましては、例えば観光客が多いですとか移住者が多いということで、基本的に地域に、まずは沖縄県で臨床研修を受けたいと思っている医師も多いというような意向があるやにも伺っているところでございます。
 そういう中で、本県の魅力といたしましては、まず、先ほど申しましたように、複数の病院のネットワークを持っていて、それは沖縄県以上の病院群ということですので、そういう魅力を伝えるですとか、奨学金の義務履行を果たしながら、さらに専門医の資格を取れるプログラムを組んでいるというような魅力もあるところでございます。
 そういうものの発信をより具体的にしていく必要があろうかと思いますが、沖縄県と比べてとなると、その点は少し難しい部分はあろうかと思っています。
 御紹介があった屋根瓦方式についてでありますが、2年次研修医が1年次研修医を指導し、さらに指導医が2年次研修医を指導するというような仕組みは、それに近いような形でしっかり連携をとりながら交流を図っているところでございます。
 病院の魅力を伝えるということで、先輩の話を聞いて研修医も手を上げるというようなお話も聞いておりますので、まずはしっかり病院の魅力を伝えていく必要があろうかと思っています。そういうことに対しまして力を入れていきたいと考えているところでございます。
〇6番(村上秀紀君) では、医療局長に、今の御答弁に対してもう一つ。その地域の魅力ということのほかに、指導医とか、そういう指導される環境について、どのような点で学ぶべきところがあるのかをぜひ伺いたいと思います。
 というのは、医師を確保しようと、医師に限らず、確保しようとすると、人というのは逃げていくのではないかと私は思うのです。育成に力を入れれば自然と集まってくる、そこに呼ばれてくるというものではないかと思っています。これは実際に医師の方から伺ったことでもあります。
 ぜひ、確保ではなく、選ばれるような岩手県にするために、改めて沖縄県の指導、地域の環境ではなく、指導の環境の面から、どのようなところが学ぶべきところかということを再度伺いたいと思います。
〇医療局長(小原重幸君) まず、前提といたしましては、県立病院自体が、次期経営計画の最終案の中でもお示ししましたように、中堅層、指導医が非常に少ない層に今なっている。それにつきましては、奨学金制度が一度途絶えた時期がありまして、指導医、中堅層が少なくなっているところもございます。
 そういう中で、中堅層をこれからどう確保していくかにつきましては、奨学金養成医師がどんどんふえていって、ある程度、大学の医局にも人がふえるという形で、県立病院にも指導医層を派遣していただくというようなことをまずしていく必要があろうかと思っています。
 その中で、今お話があった沖縄県のどういう点を学ぶかにつきましては、今、私としてもそういう整理をしておりませんので、沖縄県の情報等も参考にさせていただきながら、学ぶ点につきましては、しっかりと参考にさせていただければと思っております。
〇副議長(飯澤匡君) 以上をもって村上秀紀君の一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
   午後4時3分 休憩
   
出席議員(47名)
1  番 田 中 辰 也 君
2  番 畠 山   茂 君
3  番 大久保 隆 規 君
4  番 千 葉 秀 幸 君
5  番 菅 原 亮 太 君
6  番 村 上 秀 紀 君
7  番 松 本 雄 士 君
8  番 鈴 木 あきこ 君
9  番 はぎの 幸 弘 君
11  番 村 上 貢 一 君
12  番 工 藤   剛 君
13  番 小 林 正 信 君
14  番 千 葉   盛 君
15  番 上 原 康 樹 君
16  番 菅野 ひろのり 君
17  番 柳 村   一 君
18  番 佐 藤 ケイ子 君
19  番 高 橋 穏 至 君
20  番 佐々木 宣 和 君
21  番 臼 澤   勉 君
22  番 福 井 せいじ 君
23  番 川 村 伸 浩 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 高 田 一 郎 君
26  番 木 村 幸 弘 君
27  番 佐々木 朋 和 君
28  番 吉 田 敬 子 君
29  番 高 橋 但 馬 君
30  番 岩 渕   誠 君
31  番 名須川   晋 君
32  番 軽 石 義 則 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城 内 愛 彦 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 郷右近   浩 君
41  番 小 西 和 子 君
42  番 高 橋 はじめ 君
43  番 五日市   王 君
44  番 関 根 敏 伸 君
45  番 佐々木 順 一 君
46  番 岩 崎 友 一 君
47  番 千 葉   伝 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(1名)
10  番 高橋 こうすけ 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後4時22分 再開
〇副議長(飯澤匡君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
   
〇副議長(飯澤匡君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
〇副議長(飯澤匡君) 日程第1、一般質問を継続いたします。木村幸弘君。
   〔26番木村幸弘君登壇〕(拍手)

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