平成16年2月定例会 第6回岩手県議会定例会 会議録

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〇知事(増田寛也君) 初めに、お許しをいただきまして、先日、御逝去されました故及川幸郎先生に対し、心から哀悼の誠をささげたいと存じます。
 本日、ここに第6回県議会定例会が開催されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
 私は、今、時代の大きな転換の潮流のただ中にあって、改めて岩手の将来を見据え、その備えを今からしっかりと構築していくことが、私の責務であると考えております。
 さて、イラク戦争は、速やかに戦闘が終結し平和が訪れるかに見えましたが、治安の回復の兆しは見えず、イラクへの駐留軍や関係各国等を標的としたテロが多発しており、戦争による災禍は依然として続いております。そうした中、国民的な議論が十分になされないまま、政府は、イラク復興支援のため自衛隊を派遣いたしました。
 私は、世界で唯一の被爆国である日本が、戦後の混乱から立ち上がり発展した経験を生かし、イラクの復興と新たな民主国家の制度づくりを強力に支援していく必要があると考えております。その際、それは、関係各国や国際機関の関与のもとで戦後処理を進めていくことを、アメリカに強く働きかけるなど、外交面において独立した影響力を行使することで果たしていくべきであります。
 一方、我が国の経済状況に対する最近の政府の見解によりますと、景気は、設備投資と輸出に支えられ、着実に回復しているとされておりますが、本県においては、一部に持ち直しに向けた動きが見られるものの、依然として低迷状態が長引き、厳しい状況が続いております。
 政府においては、特に地方の景気回復に向けた経済対策に、全力で取り組んでいただきたいと考えております。
 さて、国・地方を通じた厳しい財政環境のもと、昨年、国庫補助負担金の廃止・縮減、それに伴う税源移譲及び地方交付税の見直しをセットで行う三位一体改革への具体的な取り組みがスタートしたところであります。
 しかし、その初年度の成果を見ると、国庫補助負担金の廃止・縮減については、公共事業を中心に単なる補助金額の削減などに終始しており、また、税源移譲については、新たに所得譲与税が創設されたものの、国庫補助負担金の削減額に比べると地方への移譲額は大幅に下回っており、さらに、地方交付税については、その改革の見直しの方向すら示されないまま、大幅に削減されております。
 三位一体改革とは、地域社会で営まれるさまざまな人々の生活に対応して、自治体が多様な行政サービスを供給することができるようにするために、行政サービスの供給と負担についての自己決定と自己責任の原則を自治体に確立するものでなければなりません。
 ところが、今回の改革は、地方交付税の大幅な削減に見られるように、地方の自己決定権を拡大するのではなく、単に自己責任の確立のみを押しつける結果に終わったことは、まことに残念であります。
 真の三位一体改革の実現なくして、地方の自立はあり得ません。私は、地方が、みずからの判断と責任で、みずからの税財源に基づき自治体経営を行えるように、地方から具体的な改革案を提言し、引き続き政府に対しその実現を強く求めてまいります。
 郷土の先人後藤新平は、常に先を見据え、後世に何を残すかということを基本に、さまざまな改革を進めました。
 私も、将来を見据えたこのような姿勢を常に持ち続けながら、県政を担ってまいりたいと考えておりますが、今後の施策の推進に当たっては、とりわけ、将来を担う子供たちに、限りない豊かさの可能性に満ちたこの大地、この美しい岩手を引き継いでいくために、私たちは何をなすべきか、そして何を残すべきかという視点を大事にしていきたいと考えております。
 こうした考えのもと、私は、次のことを進めてまいります。
 第1に、美しい岩手のかけがえのない環境の保全とさらなる創造に取り組むことであります。
 第2に、不断に改革を進め、負の遺産を次世代に極力残さないことであります。
 第3に、子供たち一人一人が、将来に夢を持って、その実現に希望が持てるような社会をつくることであります。
 あわせて、県民の皆様にも、今、何をなすべきか、そして次世代に何を残せるかということを、お一人お一人、それぞれの立場で、改めて真剣に考えていただきたいと思っております。
 これからは、自立した自治体が、それぞれ、その経営手腕を競う時代であります。
 今後深刻化する少子・高齢化や急激な人口減、国・地方を通じた厳しい財政状況を考えたとき、私たちは、住民サービスの提供をすべて行政に求めるやり方や、自治体の量的な拡大を前提とする財政運営など、今のような行財政運営のシステムが、将来にわたっても持続していくことは、もはやできないということに思いをいたすべきであります。
 そういうときこそ、地域の資源をもう一度よく見直して、いわば自治体の身の丈に見合ったより的確なサービスを提供できるような経営を行っていくことが求められてくると考えております。
 このような視点から、岩手が持つさまざまな地域資源を、改めて見詰め直してみると、他には見られない岩手ならではの利点、すなわち岩手らしさが見えてまいります。
 例えば、農業の分野では、良質の土壌で栽培されたさまざまな食材を、安定的に消費者のもとに届けることができます。また、消費者と生産者の距離の近さが、食の安全と安心につながってまいります。さらに、福祉の分野では、地域の持っている介護力を引き出していくことで、公的な支援を基調としつつも、より人間性を兼ね備えた福祉の実現が可能となります。
 このように、自分たちが住む地域のよさ・特性に光を当て、地域の潜在力をより一層引き出すことを積み重ねていくことで、コストをかけなくても、さらに質の高い住民サービスを提供できる社会を実現し、そして、そのことにより地域の誇りを住民の皆様に取り戻す、そのような志ある地域づくりの取り組みを、岩手にしっかりと定着させてまいりたいと考えております。
 我が国のこの50年間に及ぶ経済の成功をもたらしたものは、国の中央省庁を頂点とする強固で中央集権的な行政システムでした。このシステムは、今も社会のあらゆる分野をリードし続けていますが、政府みずから民間にできることは民間に、地方にできることは地方にというキーワードで構造改革に取り組んでいるように、国全体が大きな転換期を迎えており、さまざまな分野で新たな制度や政策の再構築が求められております。
 地方の側からそれを考えていくときの基本的な視点は、住民との距離であります。福祉、医療、教育などの分野では、求めるもの、期待するものの内容は、地域によっても異なりますし、住民一人一人によっても異なります。これからは、国の統一的、画一的な基準による施策の推進によっては、そうした住民一人一人の期待や要望に必ずしも十分にはこたえることができないものと考えます。
 そこで、住民に一番身近な基礎的自治体である市町村に、福祉や教育、まちづくりなど住民の生活にかかわる権限を、可能な限り移譲することが必要となってまいります。
 また、多様な人間生活のニーズに合わせたきめ細かいサービスの提供ということを考えた場合、行政だけでそのすべてを提供することは到底不可能であります。一律平等に対応するという行政の原則そのものが、きめ細かな個別対応の障害となってきます。これを克服するためには、NPOなどの民間組織の力をかりることが、ぜひとも必要となってまいります。
 したがって、これからは、県民、NPO等の民間組織、そして県・市町村という行政、それら三者が、対等のパートナーシップのもとで、ともに手を携えて公共サービスを提供していく新しい関係をつくり上げていくことが、何よりも肝要であります。
 また、そのためには、行政事務をNPOなどの民間組織で行えるような規制緩和をさらに推進することや、税財源の地方への移譲などの三位一体改革の実現と、市町村合併などによる広域行政の推進を通じて市町村の自主性、自立性をさらに高めていくことが、どうしても必要になるものと考えております。
 さらに、市町村合併が進み、市町村が行財政体制をより充実させていく過程で、現在の都道府県の役割の再構築をもまた検討していくことが必要になってくると考えており、道州制なども視野に入れた国の地方制度調査会におけるこれからの検討を見守ってまいりたいと考えております。
 このように、自治体の行政運営のあり方は、今後大きく変化していくものと思われますが、その基本となるものは、やはり、県民、NPO等の民間組織、そして県・市町村という行政の三者の間の連携が、これからの新しい行政運営の原理であるということであり、それが地域に多様な社会をつくりながら、県土全体が総体として発展していくための原動力になっていくものと考えております。
 私は、昨年、県民の皆様にお示ししたいわゆるマニフェストを、県民との約束と位置づけ、そこに掲げた政策の達成に向け、県の政策として、誇れるいわて40の政策及び行財政構造改革プログラムを取りまとめました。
 本県では、これまで国の景気対策に呼応して社会資本整備に積極的に取り組んでまいりましたが、結果としてその整備は進んだものの、景気の面では必ずしもその効果は十分に発揮されず、歳入面では、平成15年度6月現計予算における県税収入は、ピーク時の平成12年度決算額に比べて18.4%の減となりました。また、国の財政悪化に伴い、地方交付税についても、ピーク時の平成12年度に対して15年度は14.9%の減となるなど、いずれも平成2年度決算額の水準にまで落ち込んでおります。
 一方、歳出面では、平成2年度歳出決算額と平成15年度6月現計予算額を比較すると、平成15年度予算額が3割程度上回っていて、財政規模が肥大化しており、このままの財政運営を続けた場合には、平成15年度から平成18年度までの4年間で約1、750億円の財源不足が見込まれるという、極めて厳しい財政状況に立ち至ったところであります。
 これは、国の補助金や償還に交付税措置のある起債に誘導された財政運営、今回の地方交付税の大幅カットに大きく左右されるような国依存の歳入構造など、まさに、県の財政が国から自立していないこともその要因の一つでございます。
 このため、一刻も早くこのような危機的な状況から脱却し、自立した財政運営を行うため、昨年10月に策定した行財政構造改革プログラムに基づき、各種の歳出削減策と歳入確保策に努めることといたしました。しかし、プログラム策定時点での平成18年度までの中期的な財政見通しのもとでは、なお150億円程度の財源不足額が見込まれたところであり、その解消に向け、さらなる歳出削減と財源の確保に取り組んでおります。
 このような中にあって、国の平成16年度予算においては、三位一体の改革の名のもとに、約1兆円の国庫補助負担金の廃止・縮減等が行われるとともに、地方財政計画の見直しにより、突然一方的に、地方交付税総額と臨時財政対策債とをあわせて実に12%の減と大幅に抑制されたところであり、財源不足額がプログラム策定時の見込みからさらに拡大し、一層厳しい財政運営が強いられる状況に陥りました。
 このため、平成16年度予算については、誇れるいわて40の政策及び行財政構造改革プログラムを踏まえ、より一層の選択と集中と持続可能な行財政構造の構築への第一歩という予算編成方針のもと、総人件費の抑制、補助金・負担金等事務事業や投資的経費の見直しによる歳出規模の適正化に向けた取り組みや、県税収入の確保、受益者負担の適正化などの歳入確保に向けた取り組み、さらには、県債発行の抑制などの公債管理の適正化により、総額7、798億3、000万円の自立と構造改革元年予算として編成したものであります。
 誇れるいわて40の政策については、これまで以上に政策評価を徹底し、しっかりとした進行管理を行いながら、重点的、優先的に実施してまいります。
 とりわけ、40の政策の中でも、雇用対策と青森県境産業廃棄物不法投棄事案への取り組みと循環型社会の形成、この二つの緊急課題のほか、飛躍するたくましい産業の振興、次代を担う人づくり、心から信頼できる安全・安心の確保の三つの事項に重点的に取り組んでまいります。
 まず、二つの緊急課題についてであります。
 第1に、雇用対策についてであります。
 本県の有効求人倍率はやや改善の兆しはあるものの、完全失業率は高水準で推移するなど、依然として厳しい状況が続いていることから、雇用対策については、最優先で取り組み、特に、若年者の雇用対策を強力に推し進めてまいります。
 そのため、若年者が働く意欲を持ち、職業能力を高めながら、希望する仕事につくことができるよう、いわてヤングジョブサポートセンターを中心に、働くことの動機づけから就職活動の支援まで、一貫したサービスを提供するなど、若年者の就職支援の一層の強化を図ってまいります。
 また、サービス関連産業での1万5、000人の雇用創出目標の達成に向けて、情報、環境など本県の特性を生かせる成長分野での企業誘致に取り組むとともに、NPOなど新たな事業活動の担い手を育成しながら、介護、子育てなど地域に密着したビジネスの創出を図ってまいります。
 さらに、構造改革が求められている建設業については、相談機能を強化しながら、企業連携や協業化などによる経営基盤の強化や、農業、福祉、環境など新たな分野への進出を支援し雇用の確保に努めるとともに、障害者の雇用対策については、県内3カ所のチャレンジド就業支援センターを核とした職場実習や障害者の職業訓練の実施などにより、障害者雇用の支援に取り組んでまいります。
 第2に、青森県境産業廃棄物不法投棄事案への取り組みと循環型社会の形成についてであります。
 県外産業廃棄物の搬入に係る事前協議等に関する条例や岩手県産業廃棄物税条例が、本年1月1日から全面的に施行され、また、岩手・青森県境不法投棄事案における特定産業廃棄物に起因する支障の除去等の実施に関する計画に対する国の同意も得られるなど、青森県境における産業廃棄物の不法投棄事案をきっかけに検討してきた本県の新たな産業廃棄物行政の仕組みが、すべて動き出しました。
 今後、この実施計画に従い、行政代執行により、万全な汚染拡散防止対策を講じながら、不法投棄廃棄物等の全量撤去を進めてまいります。
 さらに、産業廃棄物税等を活用し、廃棄物の発生抑制やリサイクルの取り組みを支援するなど、環境保全と産業育成の両立を促進することにより、産業廃棄物を利活用する環境関連産業を新しい産業として芽生えさせ、それにより県の産業構造をより厚いものにしてまいります。
 次に、重点的に取り組む三つの事項についてであります。
 第1に、飛躍するたくましい産業の振興についてであります。
 生き生きとした県民生活を支えるためには、岩手が有する産業技術や産業集積、豊かな自然環境や地域地域で特色のある農林水産資源を生かし、産業の振興を図っていくことが最も重要であります。
 そこで、県内の大学、企業などに蓄積された技術や知識を事業化に結びつけ、新たな産業の創出を図るため、産学官の連携による戦略的な技術開発や大学等のポテンシャルを生かした競争型の研究開発支援を行うほか、チャレンジ精神に富んだベンチャー企業の育成に取り組んでまいります。
 また、誘致企業と地場企業の連携を強化し、自動車関連産業を中心としたものづくり産業の集積を高めるとともに、これまで地域経済を支えてきた意欲のある中小企業の新たな分野への挑戦を積極的に支援するなど、地域産業の競争力の強化を図ってまいります。
 観光は、すそ野の広い、経済波及効果が高く地域経済の活性化につながる重要な産業でございます。そこで、世界に開かれた観光大国を目指す我が国の中で、岩手を黄金の国イパングと位置づけ、官と民のしっかりとした連携のもとに、国内外からの観光客の誘致拡大に取り組みながら、世界が注目する国際観光文化県を目指してまいります。
 そのため、まず、12世紀に奥州藤原氏が築いた平泉の文化遺産の平成20年の世界遺産登録に向けた運動や、平成17年にNHKで放映予定の大河ドラマ「義経」とタイアップして、国際観光都市・平泉を、国内外に情報発信してまいります。また、北東北三県の連携事業や海外事務所などを活用しながら、東アジアとの観光交流に積極的に取り組んでまいります。
 環境に優しい新エネルギーの活用は、循環型社会の形成、新産業の創出、さらには林業・畜産業の振興に大きく貢献することが期待されます。そこで、県内に豊富にあるバイオマス資源や地域の技術等を活用し、環境に配慮した農林水産資源の循環システムの形成に取り組み、農林水産業における廃棄物や副産物の有効な活用を図るとともに、森林の再生に努めてまいります。
 また、国内はもとより、国際的な産地間競争が激化する中で、本県農林水産物のブランド化を進め、新たな市場の開拓に向け県産農林水産物の輸出促進に取り組むとともに、本県農林水産業の知的財産の確立を目指し、本県の独創的な特産品や創意工夫された技術の特許取得・商標登録などを進めてまいります。
 第2に、次代を担う人づくりについてであります。
 人づくりこそ郷土づくりの根幹であります。
 私は、岩手に生まれそして育った人には、いつも大きな夢を持ち、どんな環境・状況にあっても強い信念と気概を持って、その夢の実現に向け粘り強くチャレンジし、新たな道を切り開いていく、そのような人物になることを期待しております。
 将来を担う人たちを、そのようなたくましい人に育てることが、私たちの最も重要な責務であり、そして郷土の発展に向けた基盤づくりとして、未来に残す最大の財産であります。
 岩手は、厳しい風土の中で、勤勉実直、また個性あふれる人材をあまた輩出しております。日本初の本格的な政党内閣首相である原敬、国際的な物理学者の田中館愛橘、国際連盟事務次長などを歴任し国際平和に尽力した新渡戸稲造、詩人の石川啄木や宮澤賢治など、これまで幾多の人材をはぐくんでまいりました。
 私は、地域のあすをつくりしっかりと支えていくひと、世界を舞台に活躍するひと、歴史の新しいページをつくっていくひとなど、岩手を個性が輝きその実力を遺憾なく発揮できる多彩な人材の宝庫にしていきたいと考えております。
 こうした人材を育成していくためには、次代を担う子供たちが自己を見詰め、不断に努力や工夫をしていくことの大切さを学ぶとともに、基礎基本に裏づけされた学力を確実に身につけていくことが必要であります。
 そのために、教員の実践的な指導力を磨くための研修の充実や、地域の声が学校運営に確実に反映される仕組みの定着などの支援を進め、県民のだれもが心に描き、求めている学校の姿を実現してまいりたいと考えております。
 平成16年度においては、これまでの、児童生徒に各教科の基礎基本を定着させることを目指す学力向上プロジェクトに加え、社会のリーダーとして国際的に通用するような能力をはぐくむことを目的とする日本の次世代リーダー養成塾へ高校生を派遣するとともに、中・高生などを対象にコンピューターによる画像処理技術の研修を実施して、将来の情報サービス産業を支える創造性と感性豊かな人材を育成してまいります。
 さらに、児童生徒の学力の向上を図るため、学習の理解の度合いをより正確に把握し、習熟の程度に応じたきめ細かな指導、特に中学校英語教育の充実・強化の支援に取り組みます。
 また、少人数指導を一層充実させ、多人数の学級を有する学校にサポート教員を配置するすこやかサポート推進事業を、これまでの小学校1学年から小学校2学年及び複式学級まで拡大するとともに、現行の少人数指導の検証を進め、今後の新しい少人数教育のあり方を検討してまいります。
 第3に、心から信頼できる安全・安心の確保についてであります。
 農林水産業は、人のいのちを支える食料を供給するという重要な使命を担っています。そこで、本県は、我が国の主要な食料供給基地として、その責務を果たしていくため、食品の安全の確保について一層の徹底を図り、消費者の信頼を裏切らない日本でトップクラスの安心できる食料・食品の供給を目指します。
 まず、食の安全・安心に関する基本方針に基づき、食品表示の点検指導の強化、食に関する学習機会の提供等を通じた県民理解の浸透など、消費者の視点に立った総合的な施策を推進してまいります。
 また、新たな機器を導入して食品における残留農薬検査の充実強化を図るとともに、事業者の食品衛生意識のさらなる向上に努めてまいります。
 さらに、県産農林水産物の生産履歴情報を開示するトレーサビリティーシステムの積極的な導入を図るとともに、地産地消運動を一層推進してまいります。
 また、食と農、消費と生産の距離を縮め、首都圏と本県との顔の見える関係を構築していくため、首都圏を対象にモデル校を選定し、いわての食材給食や岩手の食文化の紹介等を通じた食育出前授業の取り組みを展開してまいります。
 高齢者や障害者が健康で生きがいを持ち、自立しながら安心して暮らすことが、すべての県民の願いです。そこで、住みなれた地域や自宅で切れ目なく介護等の必要なサービスを安心して受けられる仕組みづくりなどに取り組むことにより、真に質の高い福祉サービスの提供に努めてまいりたいと考えております。
 そのため、計画的に介護保険施設等の整備を進めるほか、身近なところで介護サービスが受けられるよう、ご近所介護ステーションの設置や民家の改修等による介護サービスを利用しやすい高齢者共同住宅モデルの整備を進めるとともに、高齢者の幅広い地域貢献活動を支援してまいります。
 さらに、障害者が就労しながら自立した生活ができるよう、グループホームや障害者福祉作業所等の整備を拡大してまいります。
 患者の視点に立った医療が受けられる環境を整えるため、県民医療相談センターを中心とする総合的な医療相談体制の円滑な運営を図るとともに、ホームページ等による適切な医療情報の提供に努めてまいります。
 さらに、安心できる小児救急医療体制の確立や乳幼児医療の確保のため、IT機器を活用した小児救急の遠隔診療支援や看護師等による夜間の電話相談、内科医を対象とした小児救急医療に関する研修を進めるとともに、乳幼児医療費助成の対象を拡大してまいります。
 また、県民医療の確保のため、医師確保は重要な課題であることから、市町村と共同して新たな医師養成事業を推進してまいります。
 男女共同参画社会の形成に向けて、男女共同参画サポーターなどの人材育成や地域活動に対する支援を進めるとともに、関係機関・団体間のネットワークを構築し、女性がさまざまな分野で活動しやすい環境の整備に取り組んでまいります。
 安全で安心な生活を送ることが、県民全体の願いです。そこで地震・津波や大雨などによる各種の自然災害に対応するため、防潮堤の整備や河川改修などの施設整備を進めるとともに、浸水予測図や携帯電話を使った情報提供など、県民への防災情報の効果的な提供に努めてまいります。
 県出資等法人は、それぞれの時代の要請を受けて設立され、これまで幅広い分野において、県民サービスの向上や、県内産業の振興等のため、多様な役割を担ってきております。しかし、近年、社会情勢が大きく変わっていく中で、それらの法人の果たすべき役割もまた大きく変化してきているにもかかわらず、抜本的な見直しが行われないまま現在に至っている法人もあります。
 そこで、行財政構造改革プログラムに基づき、すべての県出資等法人にメスを入れ、県住宅供給公社など6法人の廃止を含む岩手県出資等法人改革推進プランを策定したところであります。
 今後は、このプランに基づき、所期の目的を達成した法人は廃止等の整理を進め、また、経営上問題を抱えている法人や県が財政面での支援を行っている法人は事業の徹底した見直しを行い、経営改善計画を策定して、早急に経営の改善に取り組むこととしております。
 今後、県の施策推進における法人の位置づけを明確にした上で、具体的な経営に関する目標の設定とその成果を検証する新たな運営評価制度を構築して、出資等法人の使命達成と経営の自立化が図られるよう取り組んでまいります。
 行財政構造改革プログラムを確実に実行することは、従来に比べて県民の皆様の痛みを伴う改革となりますが、これを進めることによって、平成18年度には、いわゆるプライマリーバランス均衡の実現、すなわち新規の県債発行額を県債元金償還額以下に抑えるなどの財政再建を実現することができます。
 また、誇れるいわて40の政策を着実に実施していくことで、量的には縮小された中でも、より質を重視した健全な財政運営のもとに、子供たちが健康で生き生きと暮らし、しっかりとした家庭が築かれ、若者が誇りの持てる仕事につくことができる社会を実現してまいります。
 職場、学校、地域、家庭、その他の社会のあらゆる分野において、男女が喜びと責任を分かち合う、いわゆる男女共同参画社会を実現してまいります。
 さらに、例えば、いわて型ペレットストーブのように、木質バイオマスと南部鉄器を組み合わせるなど、地域の資源や技術を活用していくことで地域産業を興すとともに、資源やエネルギーの消費を抑制し、しかも廃棄物を減少させる21世紀型のモデルとなる社会を実現してまいります。
 こうした社会の実現は、もちろん行政の力だけでなし得るものではありません。県民、NPO等の民間組織、そして県・市町村がそれぞれの役割を明確にしながら、連携し合っていくことが大事であり、そのため、県民、NPO等の民間組織、そして県・市町村が対等の協調・協力関係を基調とする社会を実現してまいります。
 以上、今後における県政運営の基本方針と誇れるいわて40の政策のうち特に重点的に取り組む事項について申し上げました。
 岩手には、全国に、いや世界に誇れる豊かな自然や歴史、文化があります。
 それは、たおやかな山並み、そこに咲き誇る花々、田畑の間を縫ってゆったりと流れる川、穏やかな家並みやたたずまい、それが心のふるさとや原風景、ついの住みかにつながっていきます。
 私は、そのような美しい岩手を、次の時代を担う子供たちにしっかりと残すとともに、将来、彼らが、強く、明るく、生き生きと暮らしていけるような社会の土台をつくっていくことが、私たち大人の責務であると考えております。
 浅田次郎氏の小説「壬生義士伝」の中で、南部藩士吉村貫一郎は、子供たちに、「盛岡の桜は石を割って咲き、辛夷は北に向かって咲くように、南部の武士ならば、ぬくぬくと春が来るのを待たずに、みごと石を割って咲け、北に向いて咲け」と諭しております。
 さらに「春に先駆け、世にも人にも先駆けて、あっぱれな花こば咲かせてみろ」と教えております。
 私は、岩手の子供たちが、決しておもねることのない気概が息づいているこの地に、きっと夢県土という全国に誇れる見事な黄金の花を咲かせてくれるものと信じております。
 議員の皆様、そして県民の皆様には、夢県土いわての実現に向けて、これからの新しい岩手づくりに積極的に御参加いただきますよう心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   
   日程第5 議案第1号平成16年度岩手県一般会計予算から日程第59 報告第2号道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分の報告についてまで

〇議長(藤原良信君) 次に、日程第5、議案第1号から日程第59、報告第2号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。時澤総務部長。
   〔総務部長時澤忠君登壇〕

〇総務部長(時澤忠君) 本日提案いたしました人事案件以外の各案件について御説明いたします。
 議案第1号は、平成16年度岩手県一般会計予算であります。
 この予算の編成に当たりましては、極めて厳しい財政環境下において、国の予算編成方針や地方財政計画等に留意するとともに、中期財政見通しのもと、事業のより一層の選択と集中により、歳入に見合った歳出規模となるよう歳出の抑制に努めたほか、持続可能な行財政構造の構築を目指し、自主財源の確保や県債発行額の抑制、公債費負担の平準化など、将来にもわたる財政運営の健全化に努めたところであります。
 また、予算の内容につきましては、県民一人一人がみずからの地域や暮らしに誇りを持てるような自立した地域社会の形成を目指し、40の政策を中心として、平成18年度までに特に重点的に取り組むべきとされた緊急課題と重点施策について、最優先で措置をしたところであります。
 以下、その概要について御説明いたします。
 第1条は、歳入歳出予算の総額を、それぞれ7、798億2、991万4、000円と定めるものであります。これを前年度当初予算と比較いたしますと4.6%の減となっております。
 次に、歳入の主なものについて御説明いたします。
 第1款県税につきましては、1、089億5、400万円余を計上しており、前年度当初予算と比較いたしますと32億8、300万円余の増となっております。
 第5款地方交付税につきましては、2、355億8、200万円余を計上しており、前年度に比較して88億7、300万円余の減となっております。
 第9款国庫支出金につきましては、1、282億1、000万円余を計上しており、前年度に比較して114億7、100万円余の減となっております。
 第12款繰入金は、123億5、400万円余を計上しておりますが、これは、自治振興基金、県債管理基金、緊急地域雇用創出特別基金等から繰り入れを行うものであり、前年度に比較して265億7、800万円余の減となっております。
 第15款県債につきましては、1、486億8、600万円を計上しておりますが、前年度に比較して105億2、500万円余の増となっております。
 次に、歳出の主なものについて御説明いたします。
 第2款総務費につきましては、411億4、500万円余を計上しておりますが、その主なものは、盛岡駅西口複合施設整備事業費96億4、300万円余、市町村総合補助金15億9、000万円等であります。
 第3款民生費につきましては、482億9、700万円余を計上しておりますが、その主なものは、重度心身障害者(児)医療助成費16億3、400万円余、介護給付費等負担金83億4、800万円余、児童保護措置費54億9、900万円余等であります。
 第6款農林水産業費につきましては、877億2、700万円余を計上しておりますが、その主なものは、ほ場整備事業費65億円余、治山事業費27億3、800万円余、広域漁港整備事業費25億4、300万円余等であります。
 第8款土木費につきましては、936億3、000万円余を計上しておりますが、その主なものは、空港整備費21億円余、道路改築事業費76億5、600万円、砂防事業費13億5、300万円余等であります。
 第10款教育費につきましては、1、672億8、500万円余を計上しておりますが、その主なものは、すこやかサポート推進事業費4億7、900万円余、県立大学運営費51億3、900万円余、私立学校運営費補助52億8、100万円余等であります。
 第12款公債費につきましては、1、526億4、600万円余を計上しております。
 第13款諸支出金につきましては、560億3、800万円余を計上しておりますが、その主な内容は、公営企業負担金181億7、200万円余、地方消費税交付金132億8、100万円余等であります。
 第2条債務負担行為は、盛岡駅西口複合施設情報システム整備事業ほか52件について、債務を負担しようとするものであります。
 第3条地方債は、盛岡駅西口複合施設整備事業ほか42件について、限度額、起債の方法、利率及び償還の方法を定めようとするものであります。
 第4条一時借入金及び第5条歳出予算の流用は、それぞれ所要の措置を講じようとするものであります。
 議案第2号から議案第12号までは、平成16年度岩手県母子寡婦福祉資金特別会計予算ほか10件の特別会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画等に基づき、その所要額を計上したものであります。
 議案第13号から議案第15号までは、平成16年度岩手県立病院等事業会計予算ほか2件の公営企業会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画に基づき、収益的収支及び資本的収支の所要額を計上したものであります。
 議案第16号から議案第21号までの6件は、建設事業等に要する経費の一部を受益市町村に負担させることに関し、それぞれ議決を求めようとするものであります。
 議案第22号から議案第51号までの30件は、条例議案でありますが、これは、政治倫理の確立のための知事の資産等の公開に関する条例、岩手県職員定数条例などの一部を改正しようとするものであります。
 議案第52号は、権利の放棄に関し議決を求めることについてでありますが、これは、中小企業設備近代化資金貸付金に係る債権の回収が不可能であるため、当該権利を放棄しようとするものであります。
 議案第53号は、包括外部監査契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 次に、報告第1号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 報告第2号は、道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 以上のとおりでありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださいますようお願いいたします。
   
   日程第60 議案第54号副知事の選任に関し同意を求めることについて

〇議長(藤原良信君) 次に、日程第60、議案第54号副知事の選任に関し同意を求めることについてを議題といたします。
 提出者の説明を求めます。増田知事。
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 本日提案いたしました人事案件について御説明いたします。
 議案第54号は、副知事の橋洋介君が、去る12月22日をもって退職いたしましたので、新たに副知事として、竹内重徳君を選任するため、議会の同意を求めるものであります。
 よろしく御審議の上、原案に御同意くださるようお願いいたします。

〇議長(藤原良信君) お諮りいたします。ただいま議題となっております議案は、人事案件でありますので、会議規則第34条第2項の規定及び先例により、議事の順序を省略し、直ちに採決いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(藤原良信君) 御異議なしと認めます。よって、これより議案第54号副知事の選任に関し同意を求めることについてを採決いたします。
 ただいま議題となっております議案第54号副知事の選任に関し同意を求めることについては、これに同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

〇議長(藤原良信君) 起立多数であります。よって、議案第54号副知事の選任に関し同意を求めることについては、これに同意することと決定いたしました。
   

〇議長(藤原良信君) この際、暫時休憩いたします。
   午後1時52分 休 憩
   

出席議員(50名)
1  番 亀卦川 富 夫 君
2  番 中 平   均 君
3  番 ザ・グレート・サスケ 君
4  番 木戸口 英 司 君
5  番 関 根 敏 伸 君
6  番 野 田 武 則 君
7  番 平 野 ユキ子 君
8  番 高 橋 雪 文 君
9  番 嵯 峨 壱 朗 君
10  番 平   澄 芳 君
11  番 工 藤 勝 子 君
12  番 平 沼   健 君
13  番 柳 村 典 秀 君
14  番 飯 澤   匡 君
15  番 田 村   誠 君
16  番 大 宮 惇 幸 君
17  番 千 葉 康一郎 君
18  番 新居田 弘 文 君
19  番 工 藤 大 輔 君
20  番 川 村 農 夫 君
21  番 樋 下 正 信 君
22  番 照 井 昭 二 君
23  番 柳 村 岩 見 君
24  番 阿 部 静 子 君
25  番 阿 部 富 雄 君
26  番 斉 藤   信 君
27  番 田 村 正 彦 君
28  番 佐々木 順 一 君
29  番 佐々木   博 君
30  番 及 川 幸 子 君
31  番 阿 部 敏 雄 君
32  番 吉 田 昭 彦 君
33  番 小野寺 研 一 君
34  番 千 葉   伝 君
35  番 小野寺   好 君
36  番 伊 沢 昌 弘 君
37  番 瀬 川   滋 君
38  番 吉 田 洋 治 君
39  番 佐々木 一 榮 君
40  番 伊 藤 勢 至 君
41  番 渡 辺 幸 貫 君
42  番 高 橋 賢 輔 君
43  番 藤 原 良 信 君
44  番 佐々木 大 和 君
45  番 藤 原 泰次郎 君
46  番 菊 池   勲 君
47  番 工 藤   篤 君
48  番 小 原 宣 良 君
50  番 佐 藤 正 春 君
51  番 佐々木 俊 夫 君

欠席議員(なし)
   

説明のため出席した者
休憩前に同じ
   

職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   

午後1時56分 再 開

〇議長(藤原良信君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
   
   新任者の紹介

〇議長(藤原良信君) この際、竹内副知事を御紹介いたします。
   〔副知事竹内重徳君登壇〕

〇副知事(竹内重徳君) ただいま県議会の御同意を賜りまして副知事を拝命いたしました竹内でございます。
 もとより微力ではございますが、県勢の発展と県民福祉の向上のため、誠心誠意努めてまいりたいと存じております。何とぞ御指導、御鞭撻のほどをよろしくお願い申し上げます。(拍手)
   

〇議長(藤原良信君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後1時57分 散 会


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