令和6年2月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇24番(ハクセル美穂子君) いわて県民クラブ・無所属の会のハクセル美穂子です。
 初めに、さきの能登半島地震で犠牲となられた方々の御冥福をお祈りいたしますとともに、被災された皆様へ心からお見舞いを申し上げます。一日も早く復旧、復興が進み、安心して暮らすことができる日々を迎えられますようお祈り申し上げます。
 それでは、会派を代表しまして知事へ御質問いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 最初に、2月定例会初日に行われた知事の所信表明演述を踏まえて御質問いたします。
 達増知事は、今回の所信表明演述の最後に、希望郷いわてのその先について述べられました。
   〔副議長退席、議長着席〕
 知事は、これまでの4期16年で希望郷いわてが既に達成されたとお考えであるのかどうか、御確認いたします。そして、5期目の4年間は、希望郷いわてのその先に進むための政策に取り組む、そういう御認識で間違いないか、このことを知事にお伺いいたします。
 あとの質問は質問席で行いますので、よろしくお願いいたします。
   〔24番ハクセル美穂子君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) ハクセル美穂子議員の御質問にお答え申し上げます。
 いわて県民計画(2019〜2028)では、東日本大震災津波の経験に基づき、復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわてを基本目標として掲げています。これまで、復興の取り組みを初め、さまざまな政策を展開する中で、かなりの程度実現していると県民の皆さんも感じているのではないかと受けとめ、さきの知事選挙において、希望郷いわてその先へというフレーズを用いたところであります。
 5期目におきましても、東日本大震災津波の経験に基づき、復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわては基本目標であり続けますが、その実現をより確かなものとし、さらにその先につながる、その先が見えてくるような施策も盛り込みながら、さらにその先に歩みを進めていきたいと思います。
〇24番(ハクセル美穂子君) はっきりと御答弁いただけなかったと思いますけれども、かなりの程度、希望郷いわてについて、その目標については達成したということは、完全に達成したというような御認識ではないということでよろしいでしょうか。もう一回確認させていただきたいです。
〇知事(達増拓也君) 希望郷いわては、いわて県民計画(2019〜2028)の基本目標の中にまず掲げられて、その具体化については、10の政策分野ごとの政策や11のプロジェクトなどに盛り込まれているところでありまして、それが100%終わったというわけではありません。一方、かなりの程度実現しているのではないかと受けとめております。
〇24番(ハクセル美穂子君) これまでいろいろ、希望郷いわてが達成したということをお話ししていることもありましたので、どちらなのかということをまず確認しておきたいと思って、今、御質問いたしました。
 私も、今お聞きしたとおり、100%終わったわけではないと思っています。完全に希望郷いわてが達成しているのであれば、知事が前に、希望というのは何をすればいいかわかる。そして、それをやっていくことができる状態だと、ユーチューブチャンネルでこういうふうにおっしゃっているのです。
 まだまだ岩手県にはやるべきこと、やらなければならないこと、そして、何をすればいいかわかっていても、まだやっていないことがいっぱいあると私は感じていますので、その点について、これから知事に御質問していきたいと思います。
 それでは、子供の医療費助成制度についてお聞きしたいと思います。
 達増知事の5期目の公約の最初を飾っていたのは、全国トップクラスの子育て支援策スタートの文字でした。そして、県内の子供の医療費助成は、令和5年8月から、県内どこの市町村でも18歳まで助成されるようになりました。このことを耳にしますと、元明石市長の泉房穂さんが、達増知事も明石市と同じく全国トップクラスの子育て支援策をする、そのようにツイートしていた内容は、このことかと思ってしまいます。
 しかし、ふたをあけてみると、子供の医療費助成は、市町村ごとに異なる助成要件であることがわかります。所得制限があるところ、ないところ、受益者負担があるところ、ないところ、また、受益者負担額にも差があり、県内の市町村で一律に無償化という状況には至っていないことは明らかです。
 岩手県の子供の医療費助成が、県内どこに住んでいても同じように助成される仕組みになっていない理由は、この医療費助成の85%余りを市町村が予算措置して支払っているからです。県内市町村で実施されている子供の医療費助成の県全体の総額は25億8、000万円余り。そのうち県は3億6、000万円余、率でいうと14.03%しか負担していません。22億円余りの差額は、県内の市町村がそれぞれ負担しています。
 18歳までの子供の医療費無償化が実現しているのは、市町村が大きく負担してくれているからというのが岩手県の本当の事情ですが、だからこそ、それぞれの市町村によって助成要件がばらばらになってしまっています。そして、子供の多い市町村ほど、18歳までの無償化の実施に苦戦しているのです。
 さて、達増知事は、公約に全国トップクラスの子育て支援策の展開と拡充を掲げられていますが、その内容は、令和5年度から始まった3歳未満児の保育料を第2子から所得制限なしに無料にする事業、在宅で育児をしている世帯への支援金を支給する事業、産後ケア事業を利用する際の交通費や未就学児の一時預かりに要する経費の補助、既存資源を活用した子供の遊び場整備に対する支援です。これらの四つの事業が全国トップクラスの子育て支援策の展開と拡充の全てとお考えなのでしょうか。
 また、知事の公約には、全ての人の希望がかなうように、必要な財源を確保し、市町村の現状把握にも努め、施策のフル稼働と一層の拡充を図るともあります。この公約が本当ならば、多額の財政出動を要する子供の医療費助成の達成に苦心している市町村の状況を把握されているはずの知事が、市町村要望にも挙げられている子供の医療費助成制度の拡充を見逃すはずがないと私は考えています。
 私は、少子化対策の基礎となる子供の医療費の無償化が行われているという前提のもとに、全国トップクラスの子育て支援策を行うからこそ効果が出るのだと思っていますし、そのことは、知事のお立場であれば十分承知しているはずと考えております。
 子育て支援策の一丁目一番地である子供の医療費助成の県内統一的な実施を県がリードして進めるべきと考えますが、知事のお考えをお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 子供の医療費助成の拡充は、少子化対策や子育て支援策の一環として、市町村がそれぞれの政策的判断によって、力を入れて取り組んでいます。
 県は、広域的な視点から、より専門的なサービスの提供を行う役割があることから、周産期医療を含む医療体制の整備のため、例えば県立病院事業に約200億円を繰り出しているほか、結婚サポートセンター―i―サポの開設、運営など、市町村単位では実施が困難な施策を実施してきたところです。
 子供の医療費の受給者負担については、各市町村で助成要件は異なるものの、既に3分の2の市町村でゼロとなっており、その他の市町村においても、外来の場合は1医療機関当たり月最大1、500円で、それ以上の負担はゼロとなっているなど、無償化が進んでいます。
 市町村からは、県の補助対象の拡大について要望をいただいておりますが、ただいま述べたように無償化が進んでいる中で、市町村に対する県の補助を拡大し、市町村の財政負担を県に移行しても、県民サービスの向上に結びつくものではないと認識しております。
 県の助成対象の拡大を行う場合には、重度心身障がい児・重度心身障がい者など他の助成制度との公平性にも配慮する必要があり、県の政策全体の中で総合的に検討する必要があります。
 県としては、先ほど申し上げた周産期医療を含む医療体制の整備や結婚サポートセンター―i―サポを含む子育て支援施策を継続するとともに、岩手県人口問題対策本部会議において、今後の対策の方向性として、各市町村が、それぞれの地域事情に応じた少子化対策に取り組めるような支援を掲げたところであり、令和6年度当初予算案において、地域経営推進費を増額したほか、県が専門家等と連携を図りながら伴走型支援を実施する、地域課題分析型少子化対策支援事業などの事業を盛り込んだところであります。
〇24番(ハクセル美穂子君) これまでも私はこの質問をずっとしてまいりましたが、8年間同じ答弁をいただいております。今回も同じ答弁でございました。
 先日、岩手県議会商工観光政策研究会の研修会で、いわぎんリサーチ&コンサルティング株式会社が行った興味深いリサーチ結果を知る機会を得ました。岩手県内における少子化の要因は、出生率ではなく、女性の社会減が明らかな原因であるということでした。
 また、今、岩手県にいるゼロ歳から4歳の人口を100人として、その100人が35年後にどうなるかという統計調査もされており、岩手県は全国ワースト4位という結果でした。35年後、岩手県に残るのは100人のうち69人です。
 2023年版子育てのしやすさが自慢ランキングで1位の佐賀県は80人残ります。2位の福井県は79人、3位の沖縄県、滋賀県、千葉県はそれぞれ96人、106人、132人です。そして、6位の鳥取県は76人、7位の島根県が79人でした。
 岩手県と人口や地理的条件、財政状況等が似ている県であっても、以前から少子化対策にきちんと力を入れてきたと言われている県と岩手県とは、もう既に10人以上の差が生じています。社会減対策にお金も人もきちんと投資して本気で取り組んだ県は、今、コロナ禍後であっても結果が出ているのです。しかし、岩手県は、少子化を抑制できたという明らかな結果はいまだに出ていません。まだ道半ばの状況だと私は考えています。
 では、これから何をするべきかというのをこれまでも議論していますが、その何をするべきかというのも、こちらのリサーチ結果から推察することができました。この同じような調査を県内市町村を対象にやっていらっしゃいました。その結果では、北上市、紫波町、金ケ崎町と産業振興の取り組みが成功している市町村が残っている人数の上位に並んでいましたが、9番目に野田村が入っていました。野田村は、35年後でも57人が残るという結果を出しています。野田村の57人は、沿岸地域の市町村でトップの数値であり、町村でも、紫波町、金ケ崎町、そして矢巾町に続いて4番目の数値結果です。
 この野田村の結果を分析すると、二つの要因があるというお話でした。一つ目は無償化です。野田村は子育て支援を重点策として長年取り組まれ、医療費、保育料ともに無料をずっと行ってきた村でございます。二つ目は、近くに久慈市があり、働く場が確保されているということだそうです。私は、この野田村の取り組みとその結果に、岩手県が実行するべき政策の大きなヒントがあると思いました。
 子供の医療費と保育料の無償化、これは、これから先、地方自治体では必須で取り組まなければならない政策であると考えています。特に、岩手県は最低賃金も893円と全国最下位であり、全国的に見ても所得水準が低い県と言っても過言ではないと思います。なおさら、この政策は取り組むべきと私は考えます。
 子供の医療費と保育料の無償化をぜひ知事が決断し、実行するべきだと思いますが、いま一度、知事のお考えをお聞きしたいと思います。お願いします。
〇知事(達増拓也君) 保育料無償化については、国の調査によると、子育てや教育に係る経済的負担が出生数減少の主な要因であり、複数の子供を養育するにはさらに負担が増すこと、夫婦の理想の子供数2.25人に対して、最終的な出生子供数は1.90人とギャップがあることなどから、県民が、希望する子供数を実現できるよう、今年度から第2子以降の保育料無償化を実施しているところです。
 議員御紹介の野田村を初め、人口規模が小さい町村を中心に県内12市町村で、県の支援に加え地域独自の子育て支援策として、第1子からの保育料の無償化を行っています。
 子供医療費の無償化については、先ほど答弁しましたとおり、既に3分の2の市町村で受給者負担はゼロとなっており、その他の市町村においても、外来の場合は1医療機関当たり月最大1、500円で、それ以上の負担はゼロとなるなど無償化が進んでいるところですが、さらなる負担軽減を図り、完全無償化を実施したいという声があることは承知しております。
 全国的に子育て支援策の拡充が進む中、子供の医療費や保育料の無償化については、本来、どこの自治体においても同等の水準で行われるべきものであることから、全国の自治体から全国一律の制度の創設が強く求められており、全国知事会としても、今後も粘り強く国に働きかけていきたいと思います。
〇24番(ハクセル美穂子君) 先ほど答弁をされていましたけれども、それでも、あえて子供の医療費については3分の2の市町村が自主的にやっているので、県は全くやる必要がないという御認識だというようなことを2回答弁をいただいたという形になります。
 私は、次の質問でも市町村との関係を質問させていただきますけれども、この子供の医療費助成というのは、市町村にとっても大きな負担になる助成でありますが、やはりここをきちんとやっていかないと、それぞれの市町村でも、少子化に本当に歯どめがかからない状況になっているということで必死に予算をつくって助成している。それを県は、もう市町村がやっているのでやる必要はないと。そのかわり保育料の無償化をしますと。でも、保育料の無償化に関しましても、2分の1は市町村が財源を見つけないとできない事業なわけです。
 子供の医療費助成でも多額の負担を強い、そして、今度は保育料の無償化をします、それについても、また2分の1は市町村できちんと見つけてくださいということを言われながら、必死に財源をつくりながら取り組んでいる市町村。
 そして、それでも、どうしても子供の多いところは、この3分の2の負担がゼロのところに入らない。こういうところにきちんと手を差し伸べるような県こそが、達増知事がおっしゃっている希望郷いわてなのではないかと思うのですが、なぜそういう希望郷いわてのイデオロギーと相反するような形の政策をやられるのか、その点についてお聞きしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 今の、子供の多いところは完全無償化までまだ苦労していて、子供が少ないところは既に完全無償化をやっているというのは、やはり子供が少ないところほど、さまざま工夫をし、努力をしているというか、その部門に集中しているということかと思います。
 先ほど、北上市、紫波町、金ケ崎町など産業振興の取り組みが成功している市町村が人口的に上位に並んでいたけれども、9番目に野田村が入っているというように、それぞれの市町村の規模や産業構成、また、さまざまな歴史経緯など、それぞれ工夫して取り組んでいるということだと思います。
 また、今以上の子供の医療費の助成拡大イコール完全無償化を目指すところについては、そういう声があることは承知しているというのは、先ほど述べたとおりでありまして、否定するものでは全くありません。
 一方、全国の自治体から全国一律の制度の創設が強く求められている分野でもあり、国に対して働きかけをやっているということでありまして、明石市の例にありますように、さまざまな分野において無償化が進めば、出生数がふえたり、また若い世代の人口もふえる、そして経済もよくなるという実例もあるわけであります。
 今は、それを基本的には市町村ごとにやっている状況ではありますけれども、今、日本は国を挙げて子供、子育て支援という状況の中、国が一律に制度の創設を行うべきときが来ているのではないかと思います。
〇24番(ハクセル美穂子君) 知事、今の御答弁だと、大変矛盾していると私は思います。公約にも、市町村の現状把握にも努めて、施策のフル稼働と一層の拡充を図ると書かれているにもかかわらず、市町村からの声もあるというのも否定しませんということで今お話がありました。市町村からの声があるけれども、これは国マターだから県はやらなくてもいい、そういうことになってしまう。
 でも、希望郷いわては、みんなの声を聞いて、それを地方から政策をつくって上げていくことであるというようなことも、先ほど、前の方々が質問された時にもありましたけれども、そういうことを言うのであれば、県がある程度、全てを18歳までというのは難しいというのは私も財政的にはわかりますが、少しずつでも助成要件を上げるとか、やれることはたくさんあると私は思うのです。それについては、例えば、少しずつ上げるとか、そういったことまで考えていらっしゃるのかどうか。今後ですけれども、そういったところはまだこれからの検討なのか、それとももう一切これに関しては国にお願いするというスタンスなのか、最後に確認したいと思います。お願いします。
〇知事(達増拓也君) 子育て世代などサービスを受給する人たちにとって負担減が全くふえないということについては、先ほど指摘したとおりであり、市町村と連携して取り組むことについては、保育料の第2子以降の無償化や、第2子以降の育児支援金給付という子育て支援の拡充について、市町村と協議しながら進めているところであります。来年度予算案で設ける新しい制度も、市町村と調整しながら進めていくところであります。
 そしてまた市町村も、住民の皆さんが受ける、負担がさらに楽になることに着目しているところであり、市町村の負担を県負担にかえさえすればいいということではないと理解しています。
〇24番(ハクセル美穂子君) 今のお言葉、本当に市町村の方々に面と向かって言えますか。私は言えないと思います。
 次の質問は、県と市町村との連携についてですけれども、これも、今までトップミーティングもされていますが、とても市町村の予算措置とか予算査定に、市町村の日程に配慮したような中身ではミーティングはされていないということで、市町村の方々からも、もっと早目に教えていただいたり、一緒にやりたいと思うのだったら、早目にトップミーティングをしたり連携会議を開いてほしかったというような声も私は聞いております。そういうことを、市町村でやればいいのだというので、そういう御答弁をした上で、これから連携をしていくと言って本当の連携ができるのか、私は疑問に思います。
 令和6年度は、さらに市町村との連携に配慮していくかと思いますが、その点についてはどのように知事は考えていらっしゃるのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) しっかり連携を強化していきたいと思います。
〇24番(ハクセル美穂子君) 知事は、連携を強化していきたいというお話をしましたが、それは知事の考えであって、きちんと相手がいるということも考えていただきたいと思います。市町村が同じ考えだったら、私はいろいろな声も全く何も聞かないわけですから。きっと、私は来年はそういった声は聞かないことになるのではないかとは思いますけれども、それに期待して、次の質問に行きたいと思います。
 少子化対策の財源についてということで御質問したいと思います。
 無償化をやらないと言われましたけれども、私も無償化をただただやってくれと言っているわけではございません。そもそも財源もきちんと確保していかなくてはいけませんので、その議論もしていきたいと思います。
 県が独自に税を課して県の政策のために財源を得ることができる手段といたしまして、超過課税というのがあります。この超過課税には、県民の皆様から1年間に1、000円をいただいているいわての森林づくり県民税、また、法人県民税の法人税割の0.8%分を県内企業に御負担いただき、商工労政関係の予算に充当している税などの例がございます。
 私は、今後はこの超過課税の使途についても、しっかりと再投資していけるよう、岩手県が直面する喫緊の課題に柔軟に対応していけるように議論を始めるべきだと考えております。
 特に、いわての森林づくり県民税については、早急に再検討の議論が必要であると考えます。なぜなら、森林整備等に必要な財源として、国の森林環境譲与税が始まるからです。この税負担が、令和6年度、ことし4月から国民に課されます。国から森林環境譲与税が課される中で、県からも似通った事業に利用するための超過課税が令和6年度はダブルで課されることになります。既に予算案も出ていますので、私たちは、国に1、000円、そして県にも1、000円を納めることになるということです。
 森林づくりへの超過課税が県から全国に広まっていったことで、国もこの森林環境譲与税という形で取り組むことになったのですから、いわての森林づくり県民税は、ある意味、その目的を一定程度達成したと考えるべきではないでしょうか。
 今、私は県民の皆さんから貴重な1、000円をいただいて、それを投入していくべき課題というのは、少子化対策であると考えています。少子化対策県民税を創設し、子供の医療費助成の拡充は今否定されましたけれども、ほかにもいろいろな少子化対策、子供子育て支援など、さらなる事業を県内統一で実施するための財源の確保を図るべきと考えますが、知事のお考えを伺います。
〇知事(達増拓也君) いわての森林づくり県民税は、森林の有する公益的機能の維持増進及び持続的な発揮を目的として創設されたものであり、木育の環境整備などにも活用していますが、そのあり方については、これまでの取り組み状況や森林環境譲与税の活用状況などを踏まえ、県民を初め、市町村や関係団体等の御意見なども広くお伺いしながら検討を進めているところであります。
 一方、少子化対策を超過課税で賄う場合、子育て世代も含めて県民生活に影響が及ぶものであり、県民の十分な理解が必要であるため、慎重に検討する必要があると考えるものであります。
 県としては、少子化対策の財源については、あらゆる歳入確保策を講じつつ、さまざまな選択肢から検討を行い、継続的かつ安定的な財源の確保に努めてまいります。
〇24番(ハクセル美穂子君) 憶測なのかもしれませんが、森林づくり県民税については、県民は1、000円を納めることについて納得しているけれども、少子化対策県民税については、それは納得が得られないかもしれないというようなことがあるので、きちんと調査をして、議論の場に出しながら、こういった超過課税を何に投資していくかというのは、議論、それから検討もしっかりと深めていただきたいと思います。
 検討が必要な基金のもう一つでございます、いわての学び希望基金についても御質問したいと思います。
 東日本大震災津波の被害に遭われ、震災孤児となった子供たちが成長するまでの費用を助成するためにつくられましたいわての学び希望基金ですが、これは東日本大震災津波に遭った子供たちを対象としておりますので、東日本大震災津波後に生まれた子供たちは、この基金を活用することが原則できないというものです。
 東日本大震災津波からもうすぐ13年がたちます。令和6年度は、沿岸地域の小学生は皆、この基金活用の対象外になります。そして、助成対象となる子供たちがあと数年で18歳以上に成長することになりますので、この基金のあり方について、いま一度、その使途を議論する時期に来ていると私は考えています。
 福島県では、既に同様の基金の使途を福島県の子供たちの健やかな成長を支える基金へと変更しています。
 私は、いわての学び希望基金を現在対象とされていない12歳未満の沿岸地域の子供たちや社会教育資源の乏しい中山間地域の子供たちへの支援に活用できるような基金にしていくべきではないかと考えておりますが、知事のお考えをお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) いわての学び希望基金は、東日本大震災津波により著しい被害を受けた子供たちの修学の支援、教育の充実等のため、平成23年6月に設置し、これまで、遺児、孤児への奨学金給付、高校生に対する教科書購入費等の給付、児童生徒の部活動への支援に活用してまいりました。
 今後見込まれる活用額は、遺児、孤児への奨学金給付や大学等進学支援一時金給付などで約52億円となっており、令和4年度末の基金残高59億8、000万円余の約9割が活用される見込みとなっています。
 東日本大震災津波から13年を迎えようとする現在も、被災地の子供たちの学びを支え、学びの充実を図るというこの基金の趣旨に賛同された方々から御寄附をいただいているところであり、基金のあり方を検討していく上では、寄附者の御意見を伺う必要があると考えています。
 令和6年度当初予算案には、これまで継続的に寄附をいただいている方々などから意見をお伺いするための経費を盛り込んであり、今後、頂戴した御意見を十分に踏まえ、この基金のあり方を検討してまいります。
〇24番(ハクセル美穂子君) 令和6年度、寄附をしてくださった方々に御意見を聞く予算を計上しているということでございますので、御寄附いただいている方々に、今後どういう形でこれを使っていくのか、使っていきたいのか、そこまで話せるかどうかわかりませんけれども、御意向をお聞きして、しっかりと子供たちの将来につながるような基金にかえていっていただきたいと思います。
 次に、農林水産業について質問をしたいと思います。
 ロシアのウクライナ侵攻から石油価格が上昇、物価も高騰し、農林水産業は大きな打撃を受けています。
 4兆7、000億円の県内総生産のうち、農林水産業は1、500億円で3%のシェアではありますが、沿岸地域、中山間地域の経済を牽引する重要な役割を担っています。農林水産業が上向きになると、地域外からお金が入り地域内で消費されますので、その地域の経済が上向きます。このように、中山間地域の商工業は、地域外から外貨を得る農家の消費活動に支えられていると言っても過言ではありません。したがいまして、農林水産業が振るわない年は、地元の商店街がまず影響を受けるというのが、岩手県の地域のありようでございます。農林水産業の衰退は、地域経済の衰退にも直結していると私は考えております。
 広い県土を持つ岩手県にとって、農林水産業はなりわい以上の意味と価値を持つ産業であり、人口減少が進む過疎地域の経済を支える大切な産業です。だからこそ、岩手県は農林水産業の振興にもっと強力に取り組むべきであると私は考えますが、知事のお考えをお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 本県の農林水産業は、食品産業や観光業など他産業への波及が大きい裾野の広い産業であり、地域経済を支える基幹産業として将来にわたり持続的な発展を図っていくことが重要です。
 本県では、地域農林水産業の核となる経営体を中心として、小規模生産者など多くの生産者が生産活動に携わり、農林水産業が地域社会を支えている実態にあることから、多様な生産者が参画した生産活動や地域活動の活発化を通じて、活力ある農林水産業、農山漁村を実現していくことが重要であります。
 県では、喫緊の課題である生産資材価格の高騰に機動的に対応しながら、地域の核となる経営体の確保、育成や生産性、市場性の高い産地づくり、高付加価値化など、生産者の収益力向上と農林水産業、農山漁村の活性化に向けて取り組んでいます。
 また、今定例会に提案している令和6年度当初予算案には、新たに、県北農業研究所を拠点とした(仮称)いわてグリーン農業アカデミーの開講による環境負荷を低減する農業生産の推進や、スマート農業技術を活用した高収益園芸作物の生産性向上、全国植樹祭のレガシーを継承するいわての森林の感謝祭の開催、漁村の活性化に向けた海業のビジネスモデルづくりへの支援などに要する経費を盛り込んでおり、今後とも、農林水産業、農山漁村の活性化に向け積極的に取り組んでまいります。
〇24番(ハクセル美穂子君) 喫緊の課題等には、今御答弁してくださったとおりやっているということですけれども、農林水産業というか、特に農業は、成果が出るまで非常に時間がかかる産業でもあると思っています。そういう中で、私は、岩手県の農林水産業政策は、他県に比べて進度が遅いのではないかと感じております。
 例を出しますが、特に畜産です。特に、岩手県の和牛に関する政策を見ても、いわて牛の評価は、前沢牛のノウハウが蓄積されている県南の和牛枝肉はよい価格がつくのですけれども、同じいわて牛であっても、県央地域とか県北地域では、賞をとったとしても高値がつきにくくて、岩手県としての底上げが不十分ではないかと、この間の東京圏の市場の結果を見ても感じました。畜産経営者は、今も本当に大変苦戦しております。
 ただ、その反面、隣県の宮城県を見ますと、全国和牛共進会の自県開催を契機に、仙台牛で県産和牛を統一して、ロットの確保等、いろいろと適切な政策を進めていくことによって、そのブランド地位を今はもう確立しているように見えます。
 県有種雄牛造成では、ここ5年間を見ますと、毎年4、000万円以上の予算をかけて事業を行っていますけれども、凍結精液の販売収入といえば約2、000万円です。4、000万円使って、リターンが2、000万円、これが岩手県の現状です。本来であれば、県行政といえども、私は経営だと思っていますので、事業に投資して、そこから収入を得て、また再投資できるような、そういうよい循環を保ちながら事業をすることは本当に大切なことだと思っています。
 鳥取県の例を出すと、県有種雄牛、大変いい牛がいるため、凍結精液の販売額は2億円にも及びます。この凍結精液の販売で得られた2億円の収入を、今度は、次に活用して、県が独自にゲノム解析の機器を導入して、また農家に還元して次のステップにつなげている。こういうような活動をしている県もあります。
 言うまでもなく、県が行っている事業は、県民からいただいている税金を原資にしてやっておりますので、やはり結果が伴うようにしっかりと工夫を重ねていかなければならないと私は思います。
 どうしてこんなに農林水産業振興政策の進みが遅いのかとずっと考えてきたのですけれども、私は、いわて県民計画(2019〜2028)における農林水産業の位置づけに課題があるのではないかと思っています。
 いわて県民計画(2019〜2028)の産業部門に農林水産業がなりわいの一つ、たった一つとして組み込まれてしまっていて、プロジェクトとしては、先ほど御答弁いただいたようなことはやっているのですけれども、岩手県として農林水産業の目標設定、どこを目指していくのだというのがすごく曖昧である。これは、いわて県民計画(2019〜2028)策定の際にも、こういうふうになるのではないかとすごく心配しまして、議会でも提言した内容ですが、それが今、本当に現実になってしまったと私は感じております。
 このことについて知事はどのように感じていらっしゃるのか、お考えを伺いたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 農林水産業における目標設定のあり方についてでありますが、いわて県民計画(2019〜2028)は、市町村を初め、関係団体等との意見交換や議論を重ねながら策定したところであり、農林水産業では、地域の核となる経営体の確保、育成や生産性、市場性の高い産地づくり、高付加価値化などを政策推進の基本方向として掲げております。
 いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランでは、農業、林業、水産業各分野の経営体当たりの産出額、農林水産物の輸出額などを幸福関連指標として、新規就業者数や水稲オリジナル品種の作付面積、肉用牛繁殖農家1戸当たりの飼養頭数、サケ、マス類の海面養殖の生産量など、具体的推進方策指標と合わせ設定し、取り組んでいるところです。
 これまでの取り組み等により、農林水産物の輸出額は約30億円から約55億円に、県オリジナル水稲品種の作付面積は約5、000ヘクタールから約6、600ヘクタールに、計画策定前に比べて増加しているところであります。一方、水産分野では、主要魚種の不漁等の影響により、経営体当たりの産出額や新規就業数は目標を下回っております。
 県としては、従事者の減少、高齢化、生産資材価格の高騰、主要魚種の不漁など農林水産業を取り巻く環境が大きく変化する中、現下の課題に的確に対応し、必要な施策の拡充を図りながら、関係機関や団体等と力を合わせ、生産者が意欲を持って生き生きと働き、暮らすことができる農林水産業を実現するため、積極的に取り組んでまいります。
〇24番(ハクセル美穂子君) 前の答弁で、農林水産業は裾野の広い産業であると知事は答弁されたと思います。裾野の広い産業ということは、たくさんの方がかかわっているということで、そういった方々が同じ方向を向いていろいろなことに取り組んでいくときに、指標、それも厚いいわて県民計画(2019〜2028)の指標でこうやっていきますと言って、どれだけの方がそれを本当に理解して実行に移すのか、私は甚だ疑問に感じております。
 農林水産業のどこに向かっていくのかというビジョンや計画、こういったものを、これまでもいろいろな方が御質問していますけれども、私は、県民に明確に示して、ともに取り組んでいく体制をしっかり強化していかないと、生産現場がどんどん疲弊していってしまうと考えますが、もう一度、今後の農林水産業の振興に対するお気持ちを改めてお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) いわて県民計画(2019〜2028)では、意欲と能力のある経営体の育成、収益力の高い食料・木材供給基地づくり、農林水産物の付加価値を高め販路を広げるという基本的な考え方を政策推進の基本方向として示し、そして、具体的な数値目標としては、先ほど申し上げたような数値目標をいわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランの中に指標として掲げているところであります。
 また、そのほか、分野ごとに、例えば岩手県野菜生産振興計画、岩手県花き振興計画、岩手県果樹農業振興計画、岩手県酪農・肉用牛生産近代化計画、林業では、岩手県県産木材等利用促進基本計画、水産業では、岩手県内水面漁業振興計画や岩手県藻場保全・創造方針というものがあり、それぞれの分野で生産者と関係団体、そして県が一緒になってそういう計画を立て、目標に向かって進んでいるところであります。
 一方、議員御指摘の農林水産業振興の中長期的な目標を定め、発展させていくような方向性を示すことについては、生産者や関係機関、団体等の意見を伺いながら、必要性も含めて研究していきたいと思います。
〇24番(ハクセル美穂子君) 検討していくということを最後にお話をしていただきましたので、ぜひ検討していただきたいと思います。
 いろいろな計画のことを先ほど御答弁の中でお話をしてくださいましたけれども、その計画を本当に関係する農家の方、漁家の方々が、細かく、一人一人がそこまで本当に理解してできているのかというと、本当に難しいと思うのです。計画を見ながら自分の生産もやりますとやっている方がどれくらいいるのかは、調査されて、確認したほうがいいのではないかと思います。もう少し明確なわかりやすいものを示すのが、私はリーダーの仕事だと思っておりますので、ぜひその点も御考慮に入れながら、県民と今後の計画についての検討のときは、調査もしていただきたいと思います。
 最後に、国道46号の高規格化について御質問します。
 三陸沿岸道路の全面開通によって、道路改良の効果を私たちは目の当たりにしてまいりました。本当に道路がよくなるというのは、地域の生活など、いろいろなことが劇的に変化していくなということを、沿岸地域の方々からもいろいろなお話をお聞きいたしました。
 さて、秋田県と岩手県を結ぶ道路は、西和賀町から横手市に向かう秋田道と、そして、私の地元の国道46号があります。この二つの主要道路があります。秋田県側では、主要道路であるこの国道46号を盛岡秋田道路と位置づけて、整備を着実に進めるために、県知事を筆頭に精力的な活動を積み重ねて、結果として、高規格化がかなり着実に進んできています。しかし、岩手県側は、震災復興が優先ということで、それは私も理解をしておりますが、今のところほとんど進んでおりません。
 昔から変わらず仙岩峠は交通の難所で、特に冬場は、道路利用者の足をとめるような状態でございます。ただ、この国道46号を使って秋田県の方々が、実は盛岡市に多数の方がお買い物にいらっしゃったり、盛岡市の商圏というのは、岩手県境を越えて秋田県側に広く広がっています。私は、一番遠くで、北秋田市の人が、週に1回冷麺を食べに来るというのを聞いたことがある、そのぐらいいろいろな方が通っている道路であるということでした。
 また、インバウンド等の観光を考えても、秋田港には多くのクルーズ船が寄港されて、道路がよくなることで、90分圏内にだんだん岩手県側も入ってくる可能性があるのではないかというお話もお聞きします。
 以上の理由から、私は、岩手県も秋田県とともにこの国道46号の高規格化と、あとは仙岩トンネルの再整備等を国に訴えて、北東北のさらなる発展に寄与するべきと考えますけれども、知事の御所見を伺います。
 また、あわせて、東北の拠点としての機能を担っている地域に盛岡広域圏がなるためにも、しっかりとこの高規格道路を進めていくことが大切だと思いますので、その点について知事の御見解をお伺いしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 国道46号は、盛岡市と秋田市を結び、東北地方の連携、交流の骨格となる格子状骨格道路ネットワークを構成し、人流、物流の円滑化や活性化によって経済活動を支える極めて重要な路線です。
 盛岡秋田道路のうち盛岡市から秋田県境までの区間を、令和3年に策定した岩手県新広域道路交通計画に高規格道路として位置づけております。
 盛岡秋田道路については、現在、国が、秋田県仙北市内の生保内―卒田間において、事業の必要性や事業内容の妥当性を検証する計画段階評価を行っているところであります。
 岩手県側における盛岡秋田道路の整備については、雫石町など沿線の市町や秋田県の意向も確認しながら、国の動向を注視してまいります。
 盛岡市について、ニューヨークタイムズ紙に記事を書いたクレイグ・モドさんは、もともと田沢湖に用事があって田沢湖に行き、そして、帰りに盛岡駅まで戻ったけれども、結構時間があったので、駅から歩いて行ける範囲を歩いたところ、非常に魅力的だったので、また盛岡市に来ようと思ったということがあります。
 田沢湖から盛岡駅に戻ってきて、まだ時間があるということはクレイグ・モドさんの場合あったようではありますが、一方、そのような人の行き来が、非常に大きなまちの発展にもつながるという一つの逸話でもあると思いますので、やはりインフラ整備が地域の未来にとって非常に重要だということで、努めていきたいと思います。
〇24番(ハクセル美穂子君) 最後にクレイグ・モドさんのお話もいただきましたけれども、本当に地域を結ぶ道路、特に、これからはもう県境を越えて、観光なども隣県と一緒にやっていかなくてはいけない時代になってきていると思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 これで終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(工藤大輔君) 以上をもってハクセル美穂子さんの一般質問を終わります。
   
〇議長(工藤大輔君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時46分散会

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