令和5年12月定例会 第3回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(川村伸浩君) 自由民主党の川村伸浩でございます。一般質問の機会を与えていただきました先輩議員、そして、同僚議員に感謝を申し上げ、一般質問をさせていただきます。
 まず、農業振興について伺います。
 我が国においては、基幹的農業従事者の約7割が65歳以上であり、49歳以下の若年層の割合は11%と、農業農村では農業者の著しい高齢化、減少という事態に直面しております。
 そして、これから10年、20年後に、現在、担い手として農業を牽引している60代以上の農業者の多くが高齢のため離農され、農業者人口が急速に減少すると想定されております。
 こうした中、本県の基幹産業である農業の振興を図るためには、新規就農者の確保が非常に重要であります。本県における新規就農者数は、令和元年度以降、目標数である260人を上回っており、令和4年度においては291人となっているとのことですが、より一層の新規就農者の増加に向けて、県内のみならず、県外に向けた就農相談活動の強化の取り組みが必要と考えます。
 県においては、今年度から新規就農者確保に向けて、メタバースを活用した就農希望者等への学びの場を提供しているとのことですが、現在の取り組み状況と実際の就農相談につなげていく取り組みについて伺います。
 達増知事が掲げているマニフェストプラス39では、本県の安全、安心で高品質な農林水産物の生産を促進し、関係団体と連携したトップセールスにより全国的な販路拡大と戦略的な輸出促進を図ることとしております。
 トップセールスについては、例えば、米では、本年9月に全国農業協同組合連合会岩手県本部と連携して、東京都内において知事が新米をPRしたほか、新米の新CMがテレビで放映されるなど、県産米に関しては印象が残っているものの、ほかの農林水産物のPRももっと行うべきではないかと感じております。
 トップセールスは、本県農林水産物を消費者にPRすることにより一層の消費拡大につながる絶好の機会であり、また、生産者にとっても大きな励みにつながることから、首都圏などの消費地に出向いたトップセールスを積極的に行うべきと考えます。
 また、消費者へのPRだけでなく、日ごろから岩手県の農林水産物を取り扱っている市場関係者に対して御礼することも大切ではないでしょうか。
 そこで、これまでの県産農林水産物の県外でのトップセールスの実施状況はどうなっているのか、また、本県は全国に誇れる多くの農林水産物があることから、首都圏などの市場を初めとして県外の消費地に出向いたトップセールスを行うべきと考えますが、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
 国は、農林水産物、食品の輸出促進に向け、令和7年までに2兆円、令和12年までに5兆円とする目標を設定し、その取り組みを進めてきたところであり、国全体の輸出額は、令和2年の9,860億円から、令和4年に1兆4,148億円に増加しております。
 また、本県の農林水産物の輸出は、令和2年が約36億円、令和3年が約43億円となり、令和4年には約55億円と過去最高の輸出額でありました。
 今後、いわて県民計画(2019〜2028)の第2期アクションプランにおいては、輸出の目標値をさらに引き上げて輸出促進に取り組んでいくこととしております。
 その一方で、本年8月の東京電力福島第一原発ALPS処理水の海洋放出に伴い、中国政府が日本産水産物の輸入を停止したことにより、中国への水産物の輸出が見込めないことなど、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランの輸出の目標値を達成するためには、これまで取り組んできた輸出先国、地域以外も見据えた販路拡大の取り組みが必要と考えます。
 このような国際情勢を鑑みて、これまでのいわて農林水産物国際流通促進協議会を中心とする輸出促進の取り組みについて、さらに強化していく必要があると考えますが、知事によるトップセールスも含め、県の方針を伺います。
 次に、いわて花巻空港の利用促進について伺います。
 国際線の状況についてですが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、令和2年3月から国際線の全発着便が運休していましたが、本年5月に台北線が運航再開となりました。その後の台北線の利用実績は、運航再開の5月から10月までで、台湾からの訪日需要の高まりもあり、利用率88.5%と、コロナ禍以前の平成30年を上回って推移しており、非常に好調な状況であります。
 上海線の運休が続く中、いわて花巻空港の利用促進、本県のインバウンド、アウトバウンドを増加させていくためには、現在、唯一の国際線である台北線を一層活用していくべきではないでしょうか。台湾との人的交流を促進していくためには、台北線について、便数増加も視野に入れ、好調なインバウンドの維持、また、岩手県からのアウトバウンドの利用促進が必要と考えますが、今後、どのように取り組んでいくのか伺います。
 いわて花巻空港は現在、札幌線、名古屋線、大阪線、神戸線及び福岡線の計5路線が運航されております。この既存の路線の維持のため、利用促進に取り組んでいくのはもちろんですが、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類に移行し、人の動きが活発化している今を機会と捉え、本県への一層の観光客の誘客、県民の仕事や観光のための利便性の向上のため、新たな航路の開拓も考えていかなければならないと思います。
 例えば、札幌丘珠空港であれば、現在の新千歳空港よりも札幌市へのアクセスが容易となるほか、新潟空港であれば、移動に係る所要時間の短縮にもつながるとともに、新たな需要の掘り起こしにつながるのではないかと考えます。
 このような新規路線の開拓のため、航空会社など関係各所に働きかけを積極的に行っていくべきと考えますが、現在の状況と今後の方針など、県の考えを伺います。
 羽田線再開に向けた取り組みについて伺います。
 いわて花巻空港と羽田空港を結ぶ路線は昭和60年に休止され、40年近く経過しております。これまでもたびたび運航再開に向けた取り組みを県に提言し、重要な路線と認識し、航空会社への働きかけを行っていくとの答弁をいただいておりますが、いまだに再開は実現しておりません。
 羽田空港は単に首都圏に移動することだけを目的とするのではなく、国内線の乗り継ぎが可能であり、また、国際線の就航もあり、国内外のアクセスが容易な空港であります。東北地方では青森県、秋田県及び山形県で定期便が就航しております。先ほどの新規路線の開拓のところでも申し上げたとおり、新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、国内外の人流が活発化している今がチャンスと考えます。
 インバウンド、アウトバウンドを促進していくためにも、ぜひ羽田線の再開に向けて積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、今後の方針について伺います。
 いわて花巻空港の利用促進の最後に、県職員の利用について伺います。
 いわて花巻空港の利用率向上のためには、県職員が出張時にいわて花巻空港発着便を積極的に利用することも大切な取り組みと考えます。確かに、競合する新幹線との費用の面での差があり、予算上の制約はあるかと思いますが、休日や時間外での移動が必要な場合、所要時間の短縮による職員の負担軽減のほか、勤務時間内での移動であれば、短縮された時間を活用して別の業務を行うことが可能となるといった働き方改革の側面もあります。また、職員による利用率の向上により便数の増加や路線の開拓が図られ、その結果、県民の利便性の向上などの効果も期待できると考えます。
 職員の出張時にいわて花巻空港を利用する意識を高めていく必要があると考えますが、職員の利用促進に向けて、どのような取り組みを進めていくのか伺います。
 観光産業振興について伺います。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、観光消費の減少が長期化してきましたが、ハロウインターナショナルスクール安比ジャパンの開校や、ニューヨークタイムズ紙で盛岡市が2023年に行くべき52カ所の2番目に選ばれたこと、また、本年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、県内への観光客の入り込み数は回復傾向にあります。
 一方で、インターネット普及による情報収集手段の変化やコロナ禍を受け、密を避けた旅行や近隣地域での観光の増加など、観光を取り巻く環境が変化してきているところであります。
 このような環境変化に対応していくために、データ等の継続的な収集、分析とデータに基づく戦略の策定、地域の魅力向上に資する観光資源の磨き上げなどを担う観光地域づくりの体制強化が必要と考えますが、現在の県内におけるDMОの設立状況を伺います。
 また、地域ごとに取り組むのではなく、広域エリア、あるいは県全体が連携して取り組んでいくことも検討するべきではないでしょうか。県内への観光客入り込み数のさらなる増加に向け、DMО同士の連携や県内全域を対象とするDMОの設立を促進していく必要があると考えますが、県の取り組み状況について伺います。
 海外からの観光客の誘致のために、現地海外事務所と連携した取り組みが必要と考えます。現在、韓国との関係が良好である中、韓国からの誘客も見込めると思いますが、ソウル事務所と連携した知事のトップセールスが不足していると感じております。知事が現地に赴き、岩手県の魅力を発信することで本県の海外からの誘客に対する意気込みを示す場となり、ソウル事務所を初めとする関係者のモチベーションを向上させる機会になります。また、知事自身が現地の方々と直接意見交換をすることにより現地のニーズを知る機会となるなど、本県の観光産業振興に大きな効果が期待されます。
   〔副議長退席、議長着席〕
 知事は、さきの9月定例会の演述において、これからの4年間は、岩手県の価値や魅力を全国、海外の人と共有するため、世界に打って出るとおっしゃっています。観光産業におけるトップセールスを積極的に行っていただきたいと思いますが、今後の方針を伺います。
 今年度は台北線の運航再開と連動したメディアファムツアー、メディアによる現地視察のツアーを実施したとお聞きしました。現地を訪れていただき、観光資源などに触れ、サービスを実際に体験してもらい、生の声を聞くことで商品開発へのフィードバックとともに、メディアを通じた情報発信、イメージアップにつながることが期待されるものであります。
 このような取り組みは、羽田線の再開も含め、いわて花巻空港の新たな路線開拓にもつながることから、台湾に限らず、今後も積極的に実施していくべきと考えますが、今年度の実施状況とその成果をどう捉えているのか、また、今後の取り組み方針について伺います。
 インターネットやスマートフォンが普及し、旅行客が旅先を決める手段は、インターネット上のホームページが主となってきており、紙のパンフレットを手に取ることは少なくなってきていると思います。また、インターネットでは、家にいながらさまざまな旅行先のサイトを数多く見ることができ、旅行客が得る情報は多様かつ膨大なものとなっております。
 そのような中で、岩手県を旅先として選択してもらうためには、インターネットを活用した情報発信に当たって、他の都道府県、観光地との差別化を図るとともに、サイトの見やすさ、観光コンテンツの質の高さが必要と考えます。
 今後、インターネットを活用した情報発信の充実、強化、スマートフォンで閲覧することを前提としたサイト構成の工夫を図っていくべきと考えますが、県の考えを伺います。
 GX―グリーントランスフォーメーションの推進について伺います。
 県では、本年3月に改定した第2次岩手県地球温暖化対策実行計画において、令和12年度の温室効果ガス排出量を平成25年度比57%削減する目標を掲げ、省エネルギー対策の推進や再生可能エネルギーの導入促進などに取り組むことにしております。この削減目標は、全国では鳥取県に次いで2番目の高さと聞いております。意欲的な目標設定は評価するところですが、高い目標を設定して達成できないのであれば、意味がありません。
 目標達成に向けては、事業者の取り組みが大きな要素と考えます。県独自の取り組みとして、いわて脱炭素化経営企業等認定制度を導入していますが、認定を受けた事業者にとってのメリットは、県営建設工事における競争入札参加資格での加点や環境関連物品購入の際の優先取り扱い、省エネ設備の導入に対する融資や補助の優遇などが挙げられているものの、その効果は大きくないのではと感じております。
 また、地球温暖化対策計画書制度―いわて脱炭素経営カルテも導入していますが、事業者が設定する目標値は任意であることから、事業者はどう取り組んだらいいかわからないのではないでしょうか。例えば、業種、事業規模に応じた目標値や取り組み内容のモデルを提示する、また、取り組んだ場合の効果、メリットの具体的な情報を提供するなど、事業者が意欲的に取り組める環境づくりが必要と考えますが、県の認識を伺います。
 昨今の台風や大雨被害などのたび重なる自然災害の発生や東日本大震災津波による原子力発電所事故を契機としたエネルギー構造の転換への対応など、脱炭素の取り組みが喫緊の課題である一方で、地域経済の活性化のためには、産業振興、企業誘致も不可欠であり、これらに伴い炭素排出量が増加することが考えられます。
 知事のマニフェストプラス39では、グリーンイノベーションによる経済と環境の好循環社会を目指しますとしていますが、地域経済の活性化と環境問題への対応の両立に向け、具体的にどのように取り組んでいくのか伺います。
 また、脱炭素社会の実現に向けた課題に対し、若者の視点で検討する温暖化防止いわて県民会議若者ワーキンググループを設置しており、これまで4回のミーティングを行い、過日提言をまとめたとの報道がありました。次世代を担う若者が我が事として考え、その意見をもらうことは大変有意義であり、県として提言をしっかりと受けとめる必要があると考えます。このワーキンググループの活動状況と提言内容及び県の対応について伺います。
 DX―デジタルトランスフォーメーションの推進について伺います。
 知事のマニフェストプラス39では、DXの推進として、大規模災害時の避難、誘導や捜索活動におけるドローン活用、小規模集落へのドローン物流など、デジタル技術を活用した持続可能で安全、安心な地域づくりと新産業の創出を進めるとしております。
 このうちドローン物流に関しては、多くの中山間地域を抱える本県にとって、住民の利便性の向上に加え、災害時における物資の輸送にも活用できるなど、持続可能な中山間地域の実現に向けて期待されるところであります。
 県では、令和元年度から社会実装に向けた実証実験が行われてきており、5年が経過するところですが、現在の実証実験の段階はどこまで来ており、今後の見込みはどうなっているのでしょうか。また、今後、県内全体への波及、展開の構想はあるのでしょうか、県の考えを伺います。
 また、社会実装の実現に向けては、ドローン物流を担う事業者による自立、自走による事業展開が理想でありますが、過疎化が進む中山間地域においては、採算性の面で懸念があると聞きます。県では、この課題解決に向けてどのように対応していくのか、あわせて伺います。
 野生鳥獣の捕獲について伺います。
 まず、ツキノワグマの捕獲について伺います。熊による人身被害が全国的に増加しており、被害人数は過去最多を更新しております。本県においても、秋田県に次ぐ被害人数となっており、12月3日現在、45件48人と、過去最多であった令和2年度の27件29人を大幅に上回っております。また、八幡平市と一戸町では、熊に襲われ死亡するという痛ましい事案も発生しております。この場をおかりして、亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。
 ツキノワグマについては、生息数の適正管理の観点から、県が定めるツキノワグマ管理計画において捕獲上限数を毎年設定の上、捕獲しておりますが、近年の人身被害の状況等を踏まえて、上限数を段階的に引き上げていると聞いております。今年度のツキノワグマによる人身被害の状況を踏まえると、被害の防止のため捕獲上限数の引き上げは当然の対応ですが、その一方で、一定の個体数を維持していくことも必要と考えます。この捕獲上限数と実際の捕獲数の状況、捕獲上限数の引き上げによる影響について伺います。
 次に、鹿の捕獲について伺います。野生鳥獣による農作物被害額の推移を見ますと、平成25年度の約5億600万円をピークに被害額は減少していきましたが、令和元年度に増加に転じ、令和4年度は、速報値でありますが、約4億6,500万円とピーク時に迫る被害額となっております。このうち鹿による被害額は、令和4年度が約2億7,300万円であり、被害額全体の6割を占めていることから、鹿による被害をいかに防ぐかが農作物被害対策の重要なポイントと考えられます。
 この鹿による被害を防ぐためには、個体数の適切な管理が必要となってきます。県では指定管理鳥獣捕獲等事業実施計画を定め、ニホンジカの捕獲事業を実施していますが、県の推計によりますと、ニホンジカの個体数は、平成30年時点で10万頭とされ、毎年2万5,000頭以上捕獲することとしています。これにより個体数は減少していくとの見込みですが、実感として個体数はむしろ増加していると感じております。ニホンジカの捕獲頭数を増加させる必要があるのではないかと考えますが、県の考えを伺います。
 有害鳥獣の捕獲のためには、わな猟や銃猟といった狩猟免許の所持者の確保が必要となります。先ほど申し上げたとおり、近年、鳥獣による人身被害と農作物被害が増加する一方で、ハンターのなり手不足や高齢化などが進んでいるとの報道もあり、新たな狩猟免許取得者の確保、育成が必要と考えます。また、狩猟免許を取得していても、経済的な面、あるいは時間的な制約から、実際には捕獲、駆除に参加していない、いわゆるペーパーハンターの方も多いのではないかと思います。このペーパーハンターにも協力していただく方策の検討も必要ではないでしょうか。
 県内の狩猟免許所持者数の状況と免許所持者を確保、維持しつつ、ペーパーハンターとなっている方々を捕獲活動へ誘導していく取り組みについて伺います。
 以上で登壇しての質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 川村伸浩議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、県産農林水産物のトップセールスについてでありますが、トップセールスは県産農林水産物の直接的な販売効果に加え、認知度やブランド力の向上、市場関係者等とのこれまでのつながりの強化や新たなネットワーク構築など、販売拡大の基盤づくりにつながる重要な取り組みであります。
 新型コロナウイルス感染症の影響により、昨年度まではトップセールスを中止せざるを得ない状況もあったところですが、今年度は県産野菜について、7月に岩手県農業協同組合中央会会長や各農業協同組合の組合長等と、東京都の大田市場で市場関係者に対し、日ごろの取り扱いへの感謝を伝えるとともに、本県の産地や野菜の魅力を積極的にPRしたところであります。
 また、9月には金色の風、銀河のしずくなど、県産米の認知度や評価を主要消費地で高めていくため、東京都内でマスコミを対象にテレビコマーシャルを発表する新米トップセールスを行ったほか、先月には、国内の主要な米卸売業者に直接県産米の取り扱いのお礼や継続的な取り扱いのお願いなどを行ったところです。
 さらに、来月には東京都内で開催を予定している、いわて牛の集いにおいて、市場関係者やいわて牛の取り扱い業者に対しトップセールスを行うこととしており、トップセールスも含め、より高い効果が期待できるプロモーションを展開しながら、県産農林水産物の付加価値を高め、販路が拡大していくよう取り組んでまいります。
 次に、海外からの誘客拡大に向けたトップセールスについてでありますが、これまで、いわて花巻空港への定期便やチャーター便の誘致と連動して、中国や台湾、香港などにおいて、航空会社や旅行会社の訪問や観光交流レセプションの開催、また、牛肉、米、リンゴなどの農林水産物や日本酒の輸出拡大に向けた取り組みと連動して、東南アジアや北米などにおいて観光PRを行うといったトップセールスを展開してまいりました。
 今般の盛岡市のニューヨークタイムズ紙への掲載や本県出身のスポーツ選手の海外での活躍など、岩手県の知名度が欧米を初め世界で高まってきているところから、この契機を生かして、さらなる海外からの誘客拡大を図っていきたいと考えております。
 これまで誘客拡大に向けたトップセールスは、団体旅行を取り扱う航空会社や旅行会社への働きかけを中心に行ってきたところですが、今後は個人旅行客の伸びが期待できる国や地域へのアプローチも進めていきますほか、近年、韓国からスキーやゴルフといった特定の目的を持った旅行者が増加している状況などを踏まえ、北東北三県・北海道ソウル事務所と連携したトップセールスの実施についても検討してまいります。
 次に、脱炭素化と地域経済活性化の両立についてでありますが、脱炭素に向けた取り組みを進めるに当たっては、温室効果ガスの排出削減という環境面に加えて、地域経済の活性化や県民の暮らしの向上といった社会、経済面での効果につなげることが重要です。
 本県では、県市町村GX推進会議を立ち上げて市町村への支援を強化する中、東北6県で最多となる県内3カ所が脱炭素先行地域に選定されており、地域の産業振興や公共交通の確保といった地域課題の同時解決を目指して、それぞれのプロジェクトが動き出しています。
 また、世界的な潮流として、再エネ電力を現地調達できるかどうかが企業立地の新たな決定要因になりつつあるほか、県内でも世界約60カ国で販売される新型車の製造に早池峰ダムのグリーン電力の利用が計画されるなど、既に新たな動きが生まれています。
 本県の再生可能エネルギーの導入ポテンシャルは、エネルギー消費量の18倍以上と言われていますので、地球温暖化対策をむしろチャンスと捉えて、地域経済と環境の好循環をもたらす脱炭素社会の実現を目指してまいります。
 次に、ドローンの活用についてでありますが、ドローンは農業分野における農薬散布や鳥獣被害対策、工場における生産管理、災害現場における被害状況の確認、危険な場所での測量、インフラ点検など、社会の多様な分野で活用されています。今後、ドローン技術の進化や規制緩和が進むことによって新たな活用方法が生まれ、さまざまな分野でイノベーションが創出されることが期待されています。
 お尋ねのドローン物流については、県内で買い物困難者の割合が最も高い岩泉町をフィールドとして、令和元年度からさまざまな条件下での実証実験を重ね、令和4年度からは実用化に向けた実証実験を大手物流会社の参画も得ながら行っているところです。
 このドローン物流事業は、先端技術やデジタルを導入し、地域の課題解決を図ろうとするものであり、この実証で得られた知見も活用しながら、過疎地域においても日常の生活サービスが享受できる持続可能な地域づくりに取り組んでまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔農林水産部長藤代克彦君登壇〕
〇農林水産部長(藤代克彦君) まず、新規就農者の確保についてでありますが、県では、今年度、新規就農者の新たな掘り起こしの取り組みとして、参加者が対面に近い感覚でコミュニケーションが可能なインターネット上の仮想空間であるメタバースを活用し、新規就農者等への学びの場の提供を行っております。
 具体的には、メタバースを活用した生産者と実需者との商談の開催に合わせ、メタバースの中に就農希望者向けのコーナーを設置し、生産者と実需者との商談状況の見学や、就農希望者と生産者や実需者との交流、先般新規就農者との意見交換などを行ったところです。
 メタバースの取り組みには、県内を初め、九州地方など遠隔地からも参加があったほか、参加者からは、移動にかかる時間やコストをかけずに有効な情報がさまざま得られたとの声があったところです。
 さらに、今月中旬には、メタバースを活用し、就農希望者と実需者や消費者との交流とともに、就農に向けた相談対応を行うこととしており、引き続き、メタバース等を活用した就農希望者の掘り起こしなど、より多くの新規就農者が確保できるよう積極的に取り組んでまいります。
 次に、県産農林水産物の輸出促進についてでありますが、県では、いわて農林水産物国際流通促進協議会を中心として、アジアや北米地域をターゲットに県産農林水産物の輸出拡大に取り組み、令和4年の輸出額は約55億円と過去最高額となったところですが、今年度はALPS処理水の海洋放出の影響等により、中国への輸出が一部において困難となっているところです。
 このため、県産水産物の販路開拓拡大に向け、これまで輸出を行ってきたアジア、北米地域に加え、新たにフィリピンやドバイからのバイヤー招聘を行い、商談会を開催するとともに、これまで構築してきた輸出先国等とのネットワークを生かし、現地量販店と連携した岩手フェアの開催などに取り組んでいるところです。
 また、今年度は日本食の需要が拡大しているマレーシアやシンガポールでのトップセールスを計画しており、県産水産物を初めとする農林水産物のさらなる販路拡大を図るなど、今後とも関係機関、団体と連携しながら、県産農林水産物の輸出が拡大するよう積極的に取り組んでまいります。
   〔ふるさと振興部長熊谷泰樹君登壇〕
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) まず、国際線の状況についてでありますが、運航再開した台北線について、好調なインバウンド利用を維持していくため、円安などによる訪日需要の高まりを好機と捉え、引き続き、関係機関と連携して現地でのプロモーション等を実施していくほか、旅行者に直接的にアプローチできる航空会社のウェブサイト等での広告、宣伝などに積極的に取り組んでまいります。
 また、アウトバウンドについては、今後、台北線を維持し、さらに拡大を図っていくためには、台湾、岩手県の双方向の利用が重要であることから、岩手県からのアウトバウンドの利用者数をふやしていく必要があると認識しております。
 このため、県民へのパスポート取得費用の助成のほか、アウトバウンドの旅行商品を造成する旅行会社への支援、メディアを活用した広報やPR、SNSによる台北線、台湾の観光情報の発信など、アウトバウンドの利用促進に積極的に取り組んでまいります。
 次に、新たな路線開拓についてでありますが、いわて花巻空港の航空需要は、新型コロナウイルス感染症の影響から回復基調にあるものの、コロナ禍前の水準には至っておらず、県としては、まずは現在運航中の5路線の維持、拡充を図っていくことが重要と考えております。
 その上で、定期便が就航していない空港についても、定期便からの乗り継ぎの活用やチャーター便の運航により航空需要の喚起を図ることとしております。
 そのため、ダイヤ改正の時期などを捉え、航空会社に対し、定期便から他空港への円滑な乗り継ぎが可能となるダイヤの設定や直行便が就航していない地域からの観光需要に応じたチャーター便の運航を要望しているところであります。
 今後におきましても、運航中の路線の維持、拡充を基本としながら、新規路線の開拓を含めた交通ネットワークの充実を図っていきたいと考えております。
 次に、羽田線再開に向けた取り組みについてでありますが、羽田線については、国内外とのアクセスの向上やインバウンド誘客拡大のほか、災害時等における首都圏との交通アクセス確保の面においても重要な路線と認識しており、航空会社に対し、ダイヤ改正要望などの機会を捉え、運航について継続的に働きかけを行っております。
 先日、11月24日に、航空会社の本社を訪問いたしまして、ニューヨークタイムズ紙掲載の効果や本県出身のスポーツ選手の活躍など、国内外に広く岩手県をPRする好機となっていることを踏まえ、改めて羽田線の運航を要望してきたところでございます。
 羽田線の運航に向けては、新幹線との競合による航空需要の見通しや羽田空港の発着枠の確保等が課題となっているところでありますが、航空会社との関係強化も進めながら、引き続き、航空会社へ働きかけてまいります。
 次に、県職員の利用についてでありますが、いわて花巻空港の利用促進に向けては、職員が率先して出張等で利用することが必要と考えており、空港時刻表を各所属へ配付するなど、路線やダイヤの周知を図っているところでございます。
 これまでも職員が路線の就航している各方面へ出張する際には、ほかに用務地がない場合等にあっては、いわて花巻空港発着便が利用されているものと考えておりますが、より積極的な利用が図られるよう、県庁内のグループウェアの掲示板を活用し、乗継便を含めたダイヤや割引運賃等の周知を強化するなど、今後も職員の一層の利用の働きかけを行ってまいります。
 次に、ドローンの社会実装の実現に向けた課題についてでございますが、川村伸浩議員御指摘のとおり、法的規制や機体性能等により飛行ルートや積載量に限界があることなどから、現時点ではドローン単体では採算性の面で課題があると認識しております。
 一方、令和6年度から物流事業者の時間外労働時間について上限規制が適用され、陸送による物流の停滞など、日常生活への影響も懸念されているところでございます。
 このため、陸上配送とドローン配送を組み合わせた配送モデルの検討や、生活支援、福祉といったさまざまなサービスを組み合わせるなど、ドローン物流の効果的な活用について、引き続き検討を進めてまいります。
   〔商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) まず、DMОの設立状況等についてでありますが、現在、平泉町・一関市、八幡平市、釜石市を初め、6法人が登録DMОとなっており、また、遠野市や大船渡市などの5法人が候補DMОとして登録DMОに向けた準備を進めております。
 これらのDMОに対しましては、昨年度、岩手県観光協会に観光地域づくり支援チームを設置し、専門人材を配置した上で、例えば、候補DMОとしての登録に必要となる観光地域づくり法人形成・確立計画の策定などの支援を実施しております。
 また、候補DMОの5法人のうちの一つである岩手県観光協会は、全県を対象エリアとしたDMОとしての登録を進めているところであり、今後、各地域のDMОの連携を図る役割を担うほか、引き続き、新たなDMОの立ち上げなど、市町村や地域が取り組む観光地域づくりを支援していくこととしております。
 さらに、東北観光推進機構がDMО同士の連携を目的に開催している東北域内DMО会議に各DMОが参加し、国際観光振興機構や東北運輸局との情報交換、また、DMОの取り組み事例の情報共有を図っており、こうした取り組みを通じまして、県内のDMОが連携して岩手県全体の観光地域づくりを進めていく体制を確保していきたいと考えております。
 次に、メディアファムツアーについてでありますが、ことし5月の花巻台北線の運航再開に際し、現地のテレビ局を初めとしたメディアのほか、旅行代理店、現地で活躍しているユーチューバーなどを招待し、観光地のみならず、食や伝統工芸品の製作などを体験していただき、広く発信していただいたところでございます。
 また、10月上旬には、秋から冬の観光PRにつなげるため、台湾からブロガー等を招待したほか、国際観光振興機構や東北観光推進機構と連携して、マレーシア、香港、インドネシアからのインフルエンサーの招待を行ったところでございます。
 台湾から本県への外国人観光客延べ宿泊者数について、コロナ禍前の令和元年度同期比で、本年3月から5月が平均で54.2%であったのに対し、メディアファムツアー後の6月から9月は平均で108.5%となっており、また、運航再開後の花巻台北線の搭乗率は過去最高を維持しております。
 今後も、国際観光振興機構や東北観光推進機構とも連携しながら、現地のメディア等を活用し、台湾以外の国や地域も含め、積極的に本県の観光情報の発信に取り組んでまいります。
 次に、インターネットを活用した情報発信についてでありますが、県が実施している観光統計では、本県を旅行先として選定する際の情報源として、初めて岩手県を訪れた人などに限定すれば、約70%の方々がインターネットやSNSを挙げております。
 このため、県では、今年度、岩手県観光ポータルサイトいわての旅の改修を進め、情報の伝わりやすさやコンテンツの見やすさ、検索のしやすさなどの機能を高めるとともに、訪問者の閲覧データの分析も行えるようなサイトにしていくこととしております。
 また、多くの外国人がスマートフォンやタブレットでみずから行き先を検索しながら街歩きなどを行っていることから、そうした状況に的確に対応した情報発信の取り組みを強化していきたいと考えております。
 さらに、東北観光推進機構と連携し、外国人観光客の行き先や消費に関するデータを多角的に分析、活用するなどにより、国内外からの誘客促進に加えまして、円安を背景とした県産品の販売促進にもつなげていきたいと考えております。
   
〇議長(工藤大輔君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
   〔環境生活部長福田直君登壇〕
〇環境生活部長(福田直君) まず、事業者の脱炭素化についてでありますが、脱炭素経営の認定企業からは、光熱費や燃料費の削減といった効果のほか、取引先の拡大、知名度の向上、人材獲得力の強化といった追加的な効果が見込まれるとの声をいただいております。
 一方、脱炭素経営カルテについては、御指摘のとおり、削減目標の設定や検証を行う専門人材が内部で不足しているとの声もいただいており、今月1日には、環境省の認定資格である脱炭素アドバイザーを従業員が取得することについて、企業認定制度の新たな要件に加えたところです。
 また、脱炭素経営カルテはこれまで公表しておりませんでしたが、今月中を目途にその一部を県のウェブサイトで公表する予定にしており、企業が相互参照を行うことで、優良事例の横展開につなげたいと考えております。
 さらに、企業における省エネ設備等の導入を支援する場合、具体的に何年で投資を回収できるのか、また、利益が投資をどの程度上回るのか、今後、このような点もあわせて周知できるように検討してまいります。
 次に、若者ワーキンググループについてでありますが、現在の若者世代は、これまでの世代と異なる価値観を有すると言われておりまして、脱炭素に対する関心度も大幅に向上しつつあります。
 そのため、温暖化防止いわて県民会議のもとに若者ワーキンググループを設け、脱炭素の視点から将来世代が住み続けたいと思える地域社会はどのようなものか、ことしの夏ごろから議論を始めていただき、先月、その結果が提言として取りまとめられたところです。
 提言にはさまざまな内容が盛り込まれましたが、大きく区分すると、暮らし、仕事、行政の三本柱であり、暮らしの分野では、暖房費がかさんで、いわゆる暖房貧乏にならないために省エネ住宅を整備していくこと、仕事の分野では、若者が就職を希望する脱炭素経営企業をふやしていくこと、行政の分野では、自治体の補助金支出を脱炭素経営企業に絞り込んでいくことなどが含まれております。
 この提言を踏まえた今後の対応については、県民会議でも改めて議論したいと考えておりますが、県としてはまず、脱炭素経営の企業認定に伴う各種優遇措置を拡充することが必要ではないかと考えており、その実現に向けて関係部局と調整を図ってまいります。
 次に、ツキノワグマの捕獲についてでありますが、本県のツキノワグマ管理計画では、科学的な知見による個体数の管理を図り、人とツキノワグマとの共存関係を構築するとしている中、捕獲上限数については、専門家などで構成するツキノワグマ管理検討協議会において、推定生息数などを勘案の上、毎年度設定することとしております。
 令和4年度は上限数626頭に対して、捕獲実績が419頭、今年度は上限数686頭に対して、先月20日時点の速報値で820頭となっております。
 昨年度は捕獲実績が上限数に達しておらず、今年度は逆に上限数を上回っておりますが、捕獲頭数を複数年度で調整することで、人とツキノワグマの適正な共存関係を実現していきたいと考えております。
 次に、鹿の捕獲についてでありますが、本県のシカ管理計画では、年間2万5,000頭以上の鹿を捕獲することとしており、昨年度は2万6,000頭余りを捕獲したところですが、今年度はさらに2万7,000頭の捕獲を目標として捕獲強化に取り組んでおります。
 また、捕獲を促進するためには、ジビエとして活用することも有効と考えられますが、原発事故の影響で、本県の野生鳥獣肉のうち、鹿肉や熊肉に出荷制限がかけられていることがその制約となっております。
 この出荷制限を解除するためには厳しい条件がありますが、その緩和を図ることができないか、改めて政府に対して要望を行ってまいります。
 次に、担い手の確保についてでありますが、狩猟免許について、本県では予備講習会の開催などを通じた積極的な取得促進を図っており、この10年間で県内の免許所持者を2,495名から昨年度末には4,024名にまで引き上げることができております。
 その内訳についても、40歳未満の割合が6.4%から16.7%にまで上昇するなどしておりますが、狩猟免許の取得が必ずしも実際の捕獲能力を担保するものではないため、捕獲作業は引き続き、高齢の熟練狩猟者によって支えられている面もあります。
 一方、県内には令和のマタギと呼ばれる意欲ある20歳代の若いハンターも存在するところであり、県としてもスキルアップのための研修会を開催することで、実際に捕獲作業に従事できる次世代の担い手の確保、育成を図ってまいります。
〇議長(工藤大輔君) 以上をもって川村伸浩君の一般質問を終わります。
   
〇議長(工藤大輔君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時0分 散 会

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