平成29年2月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(達増拓也君) 本日、ここに第8回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
冒頭、昨年8月に本県及び北海道地方を襲った台風第10号により犠牲になられた方々の御冥福をお祈りいたしますとともに、応急仮設住宅等で不自由な暮らしを余儀なくされている方々を初め、被害を受けられた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
希望郷いわて国体・希望郷いわて大会の開催直前の被災に、天皇皇后両陛下を初め皇室の方々より、温かいお言葉を賜るなど被災された方々をお励ましいただきました。また、全国からお見舞いや多大な御支援をいただきましたことに、改めて御礼申し上げます。
台風第10号による被害額は、宮古市、久慈市、岩泉町を中心に1、441億円に上り、生活インフラや農林水産業、商工業等、地域の社会経済に甚大な被害が生じました。
昨年の9月補正予算においては、災害対応分として東日本大震災津波を除き過去最大となる予算を編成したところであり、今議会に提案している平成29年度予算案とあわせ、切れ目なく対応します。
一日も早く安心して暮らせる環境を取り戻すことができるよう、生活の再建と商工観光事業者及び農林漁業者の経営再建を支援します。また、甚大な被害を受けた河川、道路等の復旧、改修と水位周知河川の指定拡大を進め、ハード、ソフト両面から復旧、復興を着実に進めます。
台風第10号災害の教訓を踏まえ、地域防災計画に避難勧告等の発令に関する市町村への助言体制を位置づけるなど、地域防災力の強化を図り、県民の命を守り、被害を軽減させる防災体制を整備してまいります。
平成23年3月11日から間もなく6年になろうとしています。改めて、東日本大震災津波でとうとい命を落とされた方々に対し、謹んで哀悼の意を表します。また、被害を受けられた皆様に心からお見舞いを申し上げます。
本格復興期間に当たる第2期復興実施計画においては、災害廃棄物処理分等を除く実質的な事業費ベースで、第1期の基盤復興期間を上回る予算規模で事業を推進し、復興道路や湾口防波堤、海岸保全施設の整備などを進めました。また、基盤復興を土台とし、地域の社会経済活動を支える復興まちづくり、被災者の生活の安定と住宅再建、地域産業の再生に取り組み、この間に被災事業所の約8割が営業を再開し、商店街の再建が本格化しています。
一方、今なお1万3、000人以上の方が応急仮設住宅等での生活を余儀なくされています。地域コミュニティーの再生、活性化や、販路回復と担い手不足など復興の状況に応じた課題も生じています。被災者イコール復興者一人一人に寄り添った支援を進めてまいります。
さらなる展開への連結期間のスタートとなる平成29年度は、策定を進めている第3期復興実施計画に基づき、多様な主体の参画や交流、連携により、復興事業の総仕上げを視野に、復興の先も見据えた地域振興にも取り組みながら復興を推進します。
安全の確保については、防災文化を醸成、継承しながら、災害に強い安全な多重防災型まちづくりの実現を目指します。
暮らしの再建については、恒久的な住宅への移行とコミュニティーの再構築を支援し、お互いに支え合い、安心して心豊かに暮らせる生活環境の実現を目指します。
なりわいの再生については、地域資源を活用した産業振興や交流人口の拡大により、地域のなりわいの再生と地域経済の回復を目指します。
さらに、三陸創造プロジェクトを進め、長期的な視点に立ち、多くの人々を引きつけ、多様な人材が育まれる、将来にわたって持続可能な新しい三陸地域の創造を目指します。
今後、宮古-室蘭間のフェリー航路の開設、三陸鉄道による久慈-盛間の一貫経営、ラグビーワールドカップ2019の釜石開催が予定されています。復興のさらなる展開に向けた好機となりますので、準備に万全を期してまいります。また、JR山田線の移管開業にあわせ開催する、仮称ではありますが、三陸防災復興博の具体的な検討を進めます。
平成23年4月のがんばろう!岩手宣言から5年後の昨年4月、新がんばろう!岩手宣言を発表しました。発災から時を重ね記憶の風化が言われる中で、改めて誓いを確認し、復興に携わる全ての方々に連携を呼びかけました。
復興の大きな原動力となっているのは、日本全国、世界に広がるさまざまなつながりの力と岩手県民の地元の底力です。復興を通して培ったつながりと地域の力で、いのちを守り海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造を目指します。震災前の姿に戻すのではなく、ビルド・バック・ベター、すなわち震災前より強靱な社会へ復興する三陸のよりよい復興の取り組みを進めてまいります。
また、東日本大震災津波の被災県として、津波の教訓や復興の取り組みを国内外に発信し、日本、世界の防災力向上に貢献してまいります。
東日本大震災復興の架け橋、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会が、大きな感動のうちに終了し、希望郷いわて国体では天皇杯、皇后杯ともに第2位、希望郷いわて大会では139個のメダル獲得という輝かしい成果を上げました。
両大会は被災地で初めて開催されたものであり、東日本大震災津波及び台風第10号からの復旧、復興に全力で取り組む中、全国からの御支援と県民の皆様の強い思いが開催を支え、成功へとつなげることができました。改めて御協力いただいた皆様に御礼申し上げます。
都道府県応援団、復興支援感謝団による応援や歓迎、被災3県合同合唱団の歌声、勇壮な伝統芸能などにより、全国から寄せられた御支援に対する感謝や、復興に励む本県の姿をお伝えすることができました。
両大会のスローガン、広げよう感動。伝えよう感謝。のもと、高められたスポーツの力や全国の方々から評価いただいた伝統芸能を初めとする文化芸術の力、そして、応援、歓迎、おもてなしの力など、ソフトパワーの高まりをレガシーとして次世代に継承してまいります。
希望郷いわて大会では、みずからの可能性に挑戦する選手の姿に感動と共感が広がりました。また、多くのボランティアが大会運営を支え、全国から訪れた選手団に声をかけ、寄り添う姿は、本県に共生とボランティア精神が根づいていることを実感させました。人と人との共生、人と自然との共生を理念とする平泉の文化が築かれた岩手から、障がいのある人もない人も互いに尊重し、ともに支え合う姿を全国に発信し、共生社会の実現に向けて大きく貢献することができたと思います。
昨年10月、障がい者の文化芸術活動の振興を目指す知事連盟において、障がいのある人もない人も共に学び共に生きる岩手県づくり条例を初めとする共生社会の実現に向けた本県の取り組みや、全国でも先駆的ないわて・きららアート・コレクション、るんびにい美術館の取り組みを紹介したところです。
県内では、すぐれたアール・ブリュット作品が数多く創作されており、県民理解の促進や芸術活動に対する支援を進め、志を同じくする自治体と連携し、地方が主役となるような障がい者の文化芸術活動を推進してまいります。
文化、スポーツの振興により、個人の感性、創造性が発揮され、心のつながりを育み、多様性を理解し尊重し合える社会の形成が図られます。また、文化、スポーツの振興は、地域コミュニティーの活性化や観光振興を初めとする経済分野への波及も期待され、新たな需要や人の流れを創出し、復興とふるさと振興につながります。
こうした文化、スポーツの力を生かし、県民一人一人の個性と創造性が輝く地域づくりを進めるため、本年4月、知事部局に文化スポーツ部を設置します。文化スポーツ部においては、現在策定を進める岩手県文化・スポーツ振興戦略に基づき、文化、スポーツに関する施策の充実に加え、県民の健康づくり支援や観光振興との連携を推進します。また、ラグビーワールドカップ2019の成功に向け、受け入れ態勢の整備、充実に取り組みます。
希望郷いわて国体・希望郷いわて大会で培ったネットワークを活用し、市町村、関係団体を初めとする多様な主体と連携、協働し、復興とふるさと振興の力にしてまいります。
復興をなし遂げ、人口減少に立ち向かっていくためには、若者、女性の活躍が重要です。復興の現場では、柔軟な発想や行動力を持つ多くの若者が活躍しています。復興を力強く推進し、岩手の未来を創造していくためには、こうした若者の力が不可欠であり、県では、若者の活躍を後押しする施策の充実を図っています。
昨年9月に開催したいわて若者文化祭では、情熱を傾けて取り組んだパフォーマンスや作品の数々が発表されるとともに、若者同士の交流が広がりました。また、先日のいわて若者会議では、復興支援や地域活動に携わる若者の団体が参加し、若者の力でさらに岩手を盛り上げていくため、さまざまな視点から熱い議論が交わされました。次代を担う若者の活躍は、岩手の未来の礎となるものであり、若者が主役となるような地域振興を進めてまいります。
女性が社会のあらゆる分野で活躍することは、女性も男性も誰もが生きやすい社会につながります。本県では、平成26年にいわて女性の活躍促進連携会議を設置し、国に先駆け官民連携の取り組みを進めてきました。産業団体や経済団体との連携のもとで女性の活躍推進の輪は広がり、モノづくりなでしこiwate、牛飼い女子グループ、北いわて仕立て屋女子会など、女性のネットワークが活発化しています。
こうした活動をさらに展開していくため、本年4月、促進連携会議に、けんせつ小町部会や農山漁村で輝く女性部会など五つの部会を設置し、横断的取り組みを進め、多様な分野で女性が活躍できる環境づくりを支援します。
若者、女性の活躍を一層促進することにより、復興やふるさと振興をリードする人材を育み、将来にわたって創造性と多様性が発揮され、活力ある社会の実現を目指してまいります。
国際情勢は、不確実性が増す一方、世界経済が緩やかな回復基調にあることに加え、アジアにおいては、これまでの高成長により中間層の拡大が見られます。このようなグローバルな購買力を取り込むことは、本県経済にとって大きなチャンスとなります。
また、2010年の上海万博、2015年のミラノ万博と2度の万博への出展を契機に培った海外とのネットワークを生かしながら、さらに世界とのつながりを深めていくため、今年度策定するいわて国際戦略ビジョンに基づき海外展開を進めてまいります。
成長が見込まれる海外市場への展開を促進するため、まず、海外展開事業者の拡大と、ターゲットとする市場の特性に応じた販路拡大を推進します。県産品を観光資源として一層活用し、観光誘客と消費拡大の相乗効果を図ります。
こうした海外展開の基盤を強固にするため、本県とゆかりのある専門人材、現地企業、海外県人会との連携を強化し、世界と岩手をつなぐ重層的なネットワークを築いてまいります。
さらに、産学官連携によるグローバル人材の育成や、青少年交流など多面的な交流の推進と多文化共生への理解促進を図ります。
昨年12月に開催されたリニアコライダーワークショップ2016においては、世界中の研究者に北上サイトの優位性や地元の熱意をお伝えすることができました。ILCは、国際学術研究拠点の形成や研究施設の運用による雇用の創出、その他、経済波及効果が期待される国際プロジェクトです。世界に開かれた岩手の象徴ともなるILCの実現に向け、県の総力を挙げて官民一体で取り組んでまいります。
本年7月、本県で初めて全国知事会議が開催されます。職員派遣を初めとする支援への御礼と復興の歩みを発信する絶好の機会でもあり、準備に万全を期してまいります。
現在、全ての都道府県においては、まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定し、地方創生に取り組んでいます。本県においても、岩手県ふるさと振興総合戦略に掲げた岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすの三つの柱に基づき、施策を総動員し、ふるさと振興を本格展開しています。
こうした地方の動きに対応し、東京一極集中の是正、地方重視の経済財政政策の推進を他の都道府県と連動し訴えていきます。地方創生なくして日本の未来はなく、県内外の主体と連携し、強い地方経済に支えられた強い日本経済の実現をともに目指してまいります。
平成29年度の当初予算案は、未来につなげる復興ふるさと振興予算として、第3期復興実施計画に基づく復興と台風第10号からの復旧、復興を最優先に、いわて県民計画第3期アクションプラン、ふるさと振興総合戦略を着実に推進する予算として編成しました。
中期財政見通しにおいては、公債費が低減する一方、高齢化に伴う社会保障関係費の自然増などにより、厳しい財政状況が見込まれています。事業効果が高い施策への一層の選択と集中を進めるとともに、あらゆる手法で歳入確保を図り、財政の健全化に努めてまいります。
東日本大震災津波や台風第10号からの復旧、復興の中、専門的知識を有する人材の確保に引き続き取り組みます。
また、第3期復興実施計画やいわて県民計画第3期アクションプラン、ふるさと振興総合戦略の推進に当たっては、県民、企業、NPO、市町村など地域社会を構成する多様な主体が連携し、総力を結集していく地域経営の視点が不可欠です。職員の資質向上と組織体制の整備を推進し、県民、行政が一体となって地域課題の解決に向けて取り組んでまいります。
平成29年度における具体的な施策についてでありますが、復興とふるさと振興の取り組みを、いわて県民計画に掲げる七つの政策に基づいた施策と一体的に推進してまいります。
以下、具体的な施策の内容について申し上げます。
初めに、東日本大震災津波からの復興の取り組みについてであります。
まず、復興計画の3原則の第1、安全の確保であります。
津波により再び人命が失われることがないよう、防潮堤、水門などのハード整備とソフト対策により多重防災型まちづくりを進めます。
安全なまちづくりの前提となる湾口防波堤の復旧、整備は、国によりかつてないスピードで進められています。平成29年度中に釜石港の完成が予定されており、復興道路と港湾施設の整備を踏まえ、港湾の利活用を促進してまいります。
安全・安心なまちづくりに向け、被災地対策隊の継続設置や釜石警察署を初めとする警察施設の復旧、整備を進めます。
また、市町村の復興まちづくりが本格化し、防災集団移転促進事業や土地区画整理事業が進んでいることから、引き続き、早期完成を支援します。
復興道路を軸に復興支援道路、復興関連道路の整備を進め、災害に強く信頼性の高い道路ネットワークを構築します。復興道路は、平成29年度中に三陸沿岸道路山田宮古道路など3区間の開通が予定されており、引き続き、国に全線の早期完成を働きかけます。
また、復旧工事が進められているJR山田線の円滑な経営移管を支援するため、国や沿線市町と調整を進め、まちづくりと一体となった交通ネットワークを構築します。
放射線影響対策に引き続き取り組み、農林業系副産物等の早期処理に向け関係市町を支援します。あわせて、市町村等と連携しながら、東京電力に対し必要な損害賠償請求を行います。
復旧、復興の状況や津波の教訓を次世代に伝え、防災力向上に生かしていくため、高田松原津波復興祈念公園や震災津波伝承施設の整備を進めます。
次に、暮らしの再建であります。
内陸部に避難されている方も含め、一日も早く安定した生活を取り戻すことができるよう災害公営住宅を整備します。また、住宅再建に対する資金面での支援や被災者相談支援センター、いわて内陸避難者支援センターにおける相談体制を継続します。
あわせて、新しい居住環境におけるコミュニティー形成のため、市町村を支援するコーディネーターの配置や、被災者の参画による生きがいづくりなどに対する支援を行います。
被災地における介護、福祉サービスの充実、健康の維持、増進、心のケアに引き続き取り組みます。きめ細かなケア活動を推進するため、岩手県こころのケアセンターでの相談対応などのほか、生活支援相談員による見守りや相談支援を行います。
また、県立高田病院の再建を着実に進め、平成29年度中の開院を目指すとともに、医療機関や社会福祉施設の再建を支援します。
岩手の未来を担う人材を育むため、学校施設の復旧、整備、いわての復興教育や心のサポートなどを進め、安全で安心な教育環境の整備、充実を図ります。今後も、被災児童の心のケアや相談に対応するため、いわてこどもケアセンターにおけるサポートや、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置を継続します。
被災地における人手不足の解消に向け、市町村、関係機関等と連携し、人材の確保、定着支援や安定的な雇用の創出を推進します。
次に、なりわいの再生であります。
地域に根差した水産業の再生に向け、被災施設の早期復旧や漁港の耐震、耐津波強化とあわせ、漁業収入の確保、増大のための新たな生産体制の構築や、担い手の確保、育成に取り組みます。また、台風第10号により、東日本大震災津波と二重で被害を受けたサケ、マス増殖体制の早期復旧に取り組みます。さらに、県産水産物の競争力、販売力を強化するため、高度な衛生品質管理体制の構築やカイゼンの導入、商品開発から販路開拓まで一体的な支援を行います。
生産性、収益性の高い農業の実現に向け、農業生産基盤の復旧、整備や復旧農地の営農再開を支援します。あわせて、農地海岸保全施設の整備や海岸防災林の早期再生を進めます。
原木シイタケの産地再生を図るため、栽培管理技術の徹底や原木の安定供給、価格高騰対策に取り組みます。また、首都圏でのフェア開催や効果的な広報展開により、安全・安心で、おいしい県産食材の魅力を発信します。
被災地域の経済を支える中小企業や商業機能の再生、復興に向け、引き続き、事業再開や仮設店舗から本設店舗への移行を支援します。あわせて、復旧後の持続的な発展に向け、フォローアップの強化や起業、第二創業等の支援に取り組みます。
港湾の利活用を促進するため、釜石港におけるコンテナ取扱量の増加に対応しガントリークレーンの整備を進めます。また、宮古-室蘭間のフェリー定期航路の開設にあわせ、フェリーターミナルなど関連施設を整備します。
沿岸地域の観光振興を図るため、世界遺産橋野鉄鉱山を初めとする観光資源を生かした誘客促進や、外航クルーズ船の誘致に向けた調査、検討を行います。また、再認定審査を予定している三陸ジオパークは、世界ジオパーク認定も視野に来訪者の受け入れ態勢の強化を進めます。さらに、高田松原等の砂浜再生や、三陸DMOセンターと連携した観光資源のさらなる磨き上げに取り組みます。
次に、いわて県民計画に基づく取り組みについて、ふるさと振興の取り組みとあわせ申し上げます。
まず、第1は、産業創造県いわての実現であります。
国際競争力の高いものづくり産業の振興に向け、企業誘致や県内企業の一層の業容拡大を支援します。自動車、半導体関連産業や医療機器関連産業など成長分野への県内企業の参入を促進し、産業技術の高度化を通じて新産業の創出を図ります。
あわせて、三次元デジタル技術やIoT活用によるものづくり革新の取り組みを支援し、生産性向上、高付加価値化の促進を図ります。また、個人が物のつくり手、メーカーとなることで、豊かな社会を目指すメーカームーブメントを推進します。さらに、地元企業のニーズと大学等の研究シーズとのマッチングや海洋など地域資源を生かした研究開発プロジェクトの導入を進め、科学技術によるイノベーションの創出につなげてまいります。
地域経済の担い手として重要な役割を果たしている中小企業の経営力向上を図るため、経営革新や新規創業、若手経営者等の人材育成の取り組みを支援します。また、商品開発や販路拡大の取り組みへの支援を通じ、地場産業の振興を図ります。
国内外からの観光客の誘致を促進するため、魅力的な観光地づくりと効果的な情報発信を行います。特に、国際観光においては、東北各県と連携したプロモーション展開や、無料公衆無線LANの環境整備など受け入れ態勢の充実に取り組みます。
産業人材の確保、定着を図るため、地域ものづくりネットワークと連携した人材育成、首都圏の大学生等を対象にしたインターンシップの実施や、奨学金の返還支援など産学官金が連携した施策を展開します。
また、いわてで働こう推進協議会を核として、若者、女性の県内就業の促進や働き方改革運動を推進します。企業が主体となった事業所内保育事業に対する支援を初め、やりがいがあり、安心して働くことができる雇用、労働環境の整備に関係機関、団体と連携し取り組んでまいります。あわせて、障がいのある方の就労を支援し、多様な就労の場の確保を図ります。
第2は、食と緑の創造県いわての実現であります。
意欲と能力のある生産者が、効率的で安定した経営を展開できるよう経営の高度化や規模拡大の取り組みを支援し、岩手の農林水産業を担う経営体を育成します。特に、林業においては本年4月、いわて林業アカデミーを開講し、将来的に林業経営の中核となる人材を養成します。
また、農林水産業の持続的発展に向け、圃場の大区画化や排水対策、低コスト再造林技術の普及定着など基盤整備の推進や、新たな栽培魚種として有望なサクラマスの資源造成に取り組みます。
若者や女性が参入しやすく、生産性、市場性の高い農業の実現に向け、ICTなど先端技術を活用したスマート農業を推進します。また、本県の気候や土壌の特性を生かした高品質なワインを生み出す、いわてワインヒルズプロジェクトを展開します。
本年9月、和牛のオリンピックとも称される全国和牛能力共進会が宮城県で開催されます。総合優勝を目指し、生産者を初め、関係機関、団体と一丸となり出品候補牛の育成を進めるとともに、優良な肉用牛の生産拡大に取り組みます。
県産農林水産物の高付加価値化を図るため、地域ならではのストーリー性や発信力のある商品開発を支援し、地域ぐるみの6次産業化を進めます。また、国内外において、商談、交流機会の創出や効果的なプロモーションを展開し、岩手ブランドの確立と販路拡大に取り組みます。
昨年の銀河のしずくに続き、本年秋には県産米の最高級品種金色の風が本格デビューします。全国の消費者から長く愛される米産地の確立に向け、徹底した品質管理や良食味米の生産体制を強化します。平成30年産から見直される米政策への対応も見据え、二つの品種の相乗効果を図りながら、生産者や関係団体等と連携し、県産米のブランド価値の向上に努めます。
こうした本県のすぐれた農林水産物を育む活力ある農山漁村の創造に向け、引き続き、いわて農業農村活性化推進ビジョンに基づく、地域が主体となった活性化の取り組みを支援します。
第3は、共に生きるいわての実現であります。
医療を担う人材の確保、定着を図るため、奨学金による医師養成や勤務環境の改善支援、看護職員の県内定着や潜在看護職員の復職支援等に取り組みます。あわせて、医師偏在の解消に向け、新たな制度構築を国などに働きかけてまいります。
また、ICTを活用した医療機関の役割分担と連携を進め、周産期母子医療センターを中心とする総合的な周産期医療体制を充実させます。さらに、救急医療体制の充実、強化や災害時の医療確保に取り組みます。
医療提供体制の構築や健康寿命の延伸に向け、地域医療を支える県民運動や、岩手県脳卒中予防県民会議によるいわて減塩・適塩の日の普及活動など、県民総参加型の取り組みを進めます。
高齢者が住みなれた地域で安心して暮らすことができるよう、地域包括ケアシステムの構築支援や、介護人材の確保、育成に取り組みます。
安心して子供を産み育てられる環境の整備に向け、結婚支援、安心・安全な出産環境の充実、多様な保育サービスの提供支援に取り組みます。特に、若者の出会い、結婚支援の充実を図るため、“いきいき岩手”結婚サポートセンターの拠点を増設するほか、出張サービスを拡充します。
地域の子ども・子育て支援体制の充実に向け、保育士等の人材確保に取り組むとともに、市町村が実施する放課後児童健全育成事業や子育て支援拠点事業を支援します。また、子供たちの健やかな成長を支えるため、児童虐待の発生予防、早期発見、早期対応を行い、いわての子どもの貧困対策推進計画に基づき、教育や生活を支援します。
自殺死亡率の低下に向け、医療、介護との連携、相談支援体制の強化など総合的な自殺対策に取り組みます。
障がいのある方が必要なサービスを利用しながら安心して生活できるよう、市町村や事業者と連携し、施設整備や相談支援体制を一層充実させてまいります。
本年10月、新たな障がい児療育拠点として、県立療育センターと県立盛岡となん支援学校の完成を予定しています。超重症児の受け入れなど新たなニーズに対応し、医療、福祉、教育が一体となった総合的な支援体制を強化します。また、医療的ケアを必要とする在宅の超重症児、超重症者を介助する家族の負担軽減を図ってまいります。
第4は、安心して、心豊かに暮らせるいわての実現であります。
本県に甚大な被害をもたらした台風第10号、4月の熊本地震、10月の鳥取県中部の地震など、昨年、日本列島はたび重なる大きな災害に見舞われました。大規模自然災害が発生しても、致命的な被害を負わない強さと速やかに回復するしなやかさを持った安全・安心な地域社会の構築に向け、岩手県国土強靱化地域計画に基づく施策を総合的かつ計画的に進め、岩手の強靱化を推進します。
県、市町村、関係機関、地域が連携、協力し、みずからの身をみずから守る意識の醸成、地域の安全を地域が守る体制の整備、実効的な防災体制の整備に取り組み、地域防災力の強化を図ります。
安全・安心なまちづくりに向け、地域の実態に即した警察施設の整備や、県民、企業、行政が連携した犯罪防止、犯罪が起きにくい環境づくりに取り組みます。また、高齢者の交通事故防止対策を重点的に進めます。さらに、消費者被害を未然に防止するため、市町村の消費生活相談体制に対する支援や消費者教育など、消費者行政の充実に引き続き取り組みます。
男女がともに尊重し合い、個性と能力を発揮できる地域社会の形成に向け、引き続き、男女共同参画の意識啓発や女性に対する暴力の根絶に努めます。
多様な主体の連携による地域コミュニティーの活性化を図るため、市町村、NPO、関係団体と連携し、地域コミュニティー活動を担う人材の育成を進めます。また、NPOの運営基盤の強化を支援し、多様な市民活動を促進します。
本県には、地域おこし協力隊や復興支援員を初め、県外から移り住み、地域づくりの中心として活躍している方々がいます。人の流れを創出し、移住者が地域活動や経済活動の担い手として活躍する環境づくりに向け、積極的な情報発信や移住、定住相談体制の充実に加え、定住促進に取り組む市町村への支援を拡充してまいります。
第5は、人材・文化芸術の宝庫いわての実現であります。
岩手の未来を担う人材の育成に向け、岩手県総合教育会議を活用し、知・徳・体を備え調和のとれた人材を育んでまいります。また、私立学校の特色ある教育活動を支援します。
教育環境の充実に向け、県立久慈高等学校の改築を初め学校施設の計画的な整備を進めます。また、特別支援学校の整備や、ICT機器を活用した実践的、効果的な学習を推進し、特別支援教育の充実に取り組みます。さらに、県民理解の醸成に努めながらインクルーシブ教育を推進します。
児童生徒が目指す進路を実現し、社会人、職業人として地域で活躍することができるよう、産業界と連携しキャリア教育の充実に取り組みます。
いじめの未然防止や早期解決を図るため、学校における教育相談体制の充実、関係機関、地域との連携体制を強化します。
多彩な文化芸術が創造、継承され、広く発信されるよう、引き続き、文化芸術活動への支援を行います。海外とのきずなも生かしながら、県民がすぐれた文化芸術に触れ、参加する機会を創出します。
また、一戸町の御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録、平泉の文化遺産の拡張登録に向けた取り組みを促進します。
希望郷いわて国体・希望郷いわて大会を通じて高まった競技力や県民のスポーツに対する関心を維持、発展させるため、計画的な選手育成や指導者の養成、スポーツ医・科学サポートの充実に取り組みます。
また、県民誰もがスポーツを楽しむことができる環境づくりを進め、ラグビーワールドカップ2019や復興五輪を理念に掲げる東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の機運醸成を図ってまいります。
第6は、環境王国いわての実現であります。
低炭素社会や循環型地域社会の形成に向け、温暖化防止いわて県民会議を中核とした県民運動の展開や、再生可能エネルギーの導入促進に取り組みます。一戸町の高森高原風力発電所、盛岡市の簗川発電所の建設を進めるとともに、岩手県風力発電導入構想の具体化に向け、市町村と連携し事業者への導入支援に取り組みます。
公共関与による産業廃棄物処理体制を構築し、適正処理と県内処理を促進するため、次期産業廃棄物最終処分場の整備を進めます。
野生動物を取り巻く環境変化を踏まえた個体数管理に取り組み、自然生態系や農林業に影響を及ぼす野生鳥獣の捕獲体制の整備を進めます。
多様で豊かな環境の保全に向け、自然公園の整備や保全対策の推進、県民の環境学習、環境保全活動への主体的な参画を促進してまいります。
第7は、いわてを支える基盤の実現であります。
被災したインフラの復旧、整備に最優先で取り組むとともに、全国的に多発している豪雨災害から県民の生命、財産を守るため、治水対策、土砂災害対策を推進します。
県内産業の振興や地域間交流の促進に向け、道路ネットワークの構築やスマートインターチェンジの整備を進めます。また、交通隘路の解消や防災対策、橋梁の耐震化に取り組み、日常生活を支える安全な道づくりを推進します。
いわて花巻空港の国内路線の維持、拡充、国際定期便の就航に向け、受け入れ態勢の強化や国際チャーター便の誘致、拡大に取り組みます。また、地域の生活を支える公共交通の維持、確保を図ります。
豊かで快適な生活環境の確保に向け、汚水処理施設の整備に関する構想の策定や、公民連携による空き家の利活用促進に取り組みます。
必要な社会資本が将来にわたって機能し続けるよう、計画的な維持管理や長寿命化に取り組みます。また、こうした社会資本を支える建設業従事者は、年齢構成が50代以上に偏っていることから、担い手の育成、確保のため、女性技術者のネットワークの構築や、若者、女性が働きやすい職場環境の整備を支援してまいります。
さらに、いわて県民計画の七つの政策に加えて、各広域振興圏において地域の創意が発揮された取り組みを進めてまいります。特に、県北圏域においては、食、漆、アパレルなど、すぐれた地域資源を生かした産業振興や交流人口の拡大に取り組みます。
希望郷いわて国体・希望郷いわて大会の成功で、私たちは岩手の歴史の新しいページを開きました。国体の招致を表明したのは、今から9年8カ月前の知事演述においてです。当時、地方は財政の逼迫や経済の停滞に直面し、県民所得の低迷や雇用情勢の回復のおくれなどにより大都市圏と地方との格差が深刻化し、人口の社会減が拡大するなど危機のさなかにありました。
岩手はさらに、東日本大震災津波という未曾有の大災害に襲われましたが、大きな衝撃と甚大な被害の中から、県民の底力が発揮され、全国、海外からさまざまなつながりの力をいただきながら、復興という大事業に県民一丸となって取り組んでまいりました。
そして、昨年、東日本大震災復興の架け橋を冠称に掲げた、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会では、選手の活躍や県民の参画を通じ、やればできるという自信、誇り、そして希望を私たちは手にしました。
ウエイトリフティング競技に出場した岩泉町出身の内村湧嬉選手は、台風第10号で甚大な被害を受けたふるさとへの思いを込めてライバルに競り勝ち、7年ぶりの優勝を飾りました。ふるさとへの思いが困難を打開し、勝利を導きました。そして、それは地方の危機や大災害を乗り越え、国体を成功裏に開催することができたという危機を希望に変えた瞬間でした。
希望郷いわて国体・希望郷いわて大会は、私たち岩手県民が、岩手の過去、現在、未来に思いをいたす機会となりました。
平成29年度は、次期総合計画の策定に向け、岩手のあるべき姿とその実現のために、私たち岩手県民がなすべきことを考える年でもあります。その中で、幸福をキーワードに、所得などの経済的要素に加え、岩手が持つ多様な豊かさやつながりの価値などにも着目しながら、県民みんなで新しい岩手の姿を描いていければと思います。
今議会に提案しております未来につなげる復興ふるさと振興予算により、復興とふるさと振興に取り組み、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会のレガシーを生かしていけば、私たち岩手県民は、必ずや子や孫の世代のためにも確かな未来を切り開くことができると信じます。
ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解とさらなる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明といたします。
ありがとうございました。(拍手)
日程第4 教育委員会教育長の演述
〇議長(田村誠君) 次に、日程第4、教育委員会教育長の演述であります。高橋教育長。
〔教育長高橋嘉行君登壇〕
〇教育長(高橋嘉行君) 第8回県議会定例会が開会されるに当たり、平成29年度の教育行政推進の基本的な考え方と施策の大要について申し上げます。
東日本大震災津波の発災から間もなく6年を迎えようとしています。6年という歳月は、大震災直後の4月に大混乱の中で小学校に入学した児童が卒業を迎え、中学校に入学した生徒は高校を卒業し、進学や就職でそれぞれの新たな社会へと巣立つ時間の長さであります。
被災地では、復興に向けた歩みが進展し、元気に学校生活を送る児童生徒がいる一方で、長期化する仮設住宅での生活を余儀なくされていたり、校庭が十分に使えないなど、いまださまざまな困難や制約を受けている子供たちもおります。昨年8月の台風第10号災害への対応も含め、被災地における復旧、復興の取り組みをより一層力強く進めていかなければなりません。
教育委員会といたしましては、現在策定中の第3期復興実施計画に基づき、引き続き、学びの場の復興に全力で取り組んでまいります。
また、人を育む教育は社会形成の礎であるという認識のもと、いわて県民計画第3期アクションプランや岩手県ふるさと振興総合戦略に基づき、確かな学力、豊かな心、健やかな体を備え調和のとれた人間形成に向け、現下の課題に適切に対応しつつ、中長期的な展望も見据えながら、学校教育、生涯学習の推進などに取り組んでまいります。
本県では、新しい教育委員会制度に完全に移行して2年目を迎えますが、今後におきましても、総合教育会議の場などを活用し、知事と教育委員会との一層の連携を深めながら、本県の教育の振興に努めてまいります。
平成29年度においては、特に、知事部局における文化スポーツ部の設置を機に、学校教育の課題解決に向け、これまで以上に重点的に取り組んでまいります。そのため、事務局の組織体制の整備も行いながら、児童生徒一人一人に向き合い寄り添う教育の充実と、切れ目のない学びの保障などに取り組んでまいります。
また、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会のレガシーを継承していくため、文化、スポーツの振興の基盤となる学校教育における文化芸術活動や学校体育の振興を図るとともに、文化スポーツ部への移管業務の円滑かつ適切な遂行にも十分な連携を図ってまいります。
以下、教育施策の重点事項について申し述べます。
まず、東日本大震災津波からの教育の復興について申し上げます。
第1に、きめ細かな学校教育の実践と教育環境の整備、充実についてであります。
本県独自の取り組みであるいわての復興教育の推進に当たりましては、引き続き、特色ある復興教育の実践事例の普及や、復興教育副読本を効果的に活用した教育活動に取り組んでまいります。
また、学校相互や学校、家庭、地域の連携による児童生徒の発達段階に応じた防災教育のほか、高校生に対する避難所運営の体験を充実するなど、実践的な防災教育を推進してまいります。
児童生徒の心のサポートにつきましては、全児童生徒を対象として実施する心とからだの健康観察の活用とあわせ、多様化する支援ニーズにきめ細かに対応していくため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を充実するなど、中長期的なサポート体制を構築してまいります。
児童生徒の安全で安心な教育環境の確保につきましては、高田高校の実習施設やグラウンド整備を推進するとともに、市町村立学校施設の復旧、整備の完了に向けて、引き続き支援してまいります。
また、いわての学び希望基金を活用し、震災により親御さんを亡くした児童生徒に対する奨学金の給付や沿岸地域の高校の産業教育設備の整備を行うなど、被災児童生徒への支援にも継続して取り組んでまいります。
心のサポートや学習支援などに対応するため、加配教職員を配置するほか、放課後や週末における学習支援などを行う居場所づくりも推進してまいります。
第2に、文化芸術環境の整備や伝統文化等の保存と継承についてでありますが、引き続き、被災児童生徒の文化活動の大会参加などを支援するとともに、復興道路などの整備に伴う埋蔵文化財調査、被災地の文化財、美術品などの修復や適切な保存、管理の支援に取り組んでまいります。
第3に、社会教育、生涯学習環境の整備についてでありますが、引き続き、被災市町村の公民館、図書館、博物館などの社会教育施設の復旧、再開を支援するとともに、地域住民による子供の学習支援を通じた学習環境の充実、学びを通じた地域コミュニティーの復興などにも取り組んでまいります。
第4に、スポーツ・レクリエーション環境の整備についてでありますが、地域の皆様の御理解、御協力をいただきながら、陸前高田市における県立野外活動センターの復旧、整備を進めてまいります。また、被災児童生徒の大会参加の支援や、自校のグラウンド等での活動が十分に行えない学校に対する練習場所への移動支援などにも継続して取り組んでまいります。
次に、いわて県民計画第3期アクションプランの着実な推進について申し上げます。
第1に、学校教育の充実についてであります。
岩手の子供たちが、人口減少やグローバル化の進展、高度情報化の進行など、変化の激しい社会を生き抜いていく力を身につけていくため、社会的に自立していく基礎を学校教育においてしっかりと培うとともに、一人一人の適性や進路希望などに応じた能力を最大限に伸ばしていくことが重要であります。
まず、児童生徒の学力向上につきましては、全国学力・学習状況調査や本県独自の学習状況調査の結果分析に基づいた授業改善などに一層取り組んでまいります。学習目標の明確な設定や、能動的な授業展開の充実などにより、わかる授業を推進するとともに、家庭の御理解、御協力をいだたきながら、家庭学習の充実にも取り組んでまいります。
また、平成32年度から段階的に導入される新しい学習指導要領の実施に向け、各学校への改訂内容の周知とあわせ、一部の教科の先行実施も視野にその導入に万全を期すとともに、現在検討が進められている高大接続改革の動向にも適切に対応してまいります。
さらに、少人数学級の推進につきましては、思春期を迎え不安定な年代における学習指導や生徒指導の充実を図るため、教員定数の確保に努めながら、新年度から新たに35人学級を中学校3年生にも拡充し、中学校全学年に少人数学級を導入することといたします。
次に、キャリア教育につきましては、いわてキャリア教育指針に基づき、学校教育活動全体において、小・中・高の発達段階に応じた計画的かつ組織的な取り組みを通じて、社会人、職業人として自立するための基礎的素養を育むとともに、主体的に人生計画を立て、進路実現を目指す能力と意欲の育成を図ってまいります。
また、ふるさと振興を推進する中で、生徒一人一人の多様な進路希望の実現や本県の次代を担う人材の育成を図るため、産業界の力もおかりしながら、産業界と協働した取り組みも継続してまいります。
次に、豊かな心を育む教育の推進についてでありますが、児童生徒一人一人が、自他の命と他者の人権を尊重し、大事にすることを基軸に据えた教育を推進するとともに、学習指導要領に特別の教科として位置づけられた道徳教育の充実にも取り組んでまいります。
本県で発生した痛ましい事案などを教訓に、いじめや学校不適応の未然防止、早期発見、早期対応のため、各学校における組織的な対応の強化に引き続き取り組むとともに、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置などにより、児童生徒や保護者が相談しやすい環境づくりを推進してまいります。
また、スマートフォンの普及などにより、子供たちがインターネットを介したさまざまなトラブルに巻き込まれる事例や、さまざまなリスクが増大してきていることを踏まえ、学校ごとに情報モラルの中核となる教員を養成するなど、情報モラル指導の工夫、改善や教員研修、啓発活動にも積極的に取り組んでまいります。
次に、健やかな体を育む教育の推進についてでありますが、平成27年度から取り組んでいる希望郷いわて元気・体力アップ60運動の一層の定着を図るとともに、児童生徒の望ましい生活習慣の確立や肥満の予防など、学校、家庭、関係機関の連携による健康教育の推進などにも努めてまいります。
また、希望郷いわて国体・希望郷いわて大会のレガシーの継承とあわせ、ラグビーワールドカップ2019や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、子供たちのスポーツへの興味、関心を高めるための取り組みなども推進してまいります。
次に、昨年3月に策定した新たな県立高等学校再編計画につきましては、前期計画を着実に推進しながら、生徒一人一人の希望する進路の実現や自己実現ができる教育環境の整備に努めるとともに、学区のあり方の検討なども進めてまいります。
次に、特別支援教育についてでありますが、特別支援教育コーディネーターの活用や個別の教育支援計画に基づく指導、タブレット端末を活用した実践的、効果的な授業などを通じた特別支援教育の質の向上に引き続き取り組むとともに、交流籍を活用した小中学校、義務教育学校の児童生徒との交流や共同学習の実施などを通じてインクルーシブ教育を推進してまいります。
また、新たに特別支援学校技能認定制度を創設し、生徒個々が有する技能の認定を行うほか、企業との連携協議会や就労サポーター制度の活用促進などにより、特別支援学校における就職支援の強化にも取り組んでまいります。
特別支援学校の狭隘化などの改善につきましては、盛岡となん支援学校の移転新築や前沢明峰支援学校の増築を推進するとともに、釜石祥雲支援学校の移転整備に向けた具体的な検討、盛岡となん支援学校移転後の空き校舎を活用した新たな特別支援学校の設置などに向け、鋭意取り組んでまいります。
次に、家庭、地域との協働による学校経営の推進についてでありますが、各学校の学校経営計画における取り組みに関する学校評価の実施、公表を推進するとともに、その結果を活用した学校経営の改善に向けた取り組みを支援してまいります。
また、教育振興運動と連動した取り組みを一層推進するとともに、地域学校協働本部等の設置を進め、地域人材の参画や社会教育施設の活用による教育活動の支援にも取り組んでまいります。
次に、学校施設の整備についてでありますが、教育環境の充実、向上を図るため、全県立学校の維持修繕のほか、久慈高校、福岡工業高校の耐震改築、種市高校の潜水作業実習船種市丸の建造などにも取り組んでまいります。
第2に、社会教育の充実と生涯を通じた学びの環境づくりについて申し上げます。
教育振興運動につきましては、半世紀にわたる本県独自の実践活動としての実績を踏まえながら、全県共通課題に設定している情報メディアとの上手なつき合い方の取り組みの充実に向けて、地域の自主的な運動の活性化に取り組んでまいります。
また、家庭教育への支援を充実するため、保護者に対する学習情報の提供や相談体制の整備、ブックリストを活用した児童生徒の読書活動の推進、放課後や週末における子供たちの安全・安心な居場所づくりに取り組んでまいります。
さらに、高校生などの教育の機会を確保するため、引き続き、就学支援金や奨学給付金を支給し、保護者の経済的負担の軽減にも取り組んでまいります。
第3に、文化芸術の振興について申し上げます。
世界遺産平泉につきましては、構成資産の適切な保存とともに、柳之御所遺跡の発掘調査や史跡公園の整備を推進するとともに、設計に着手する平泉ガイダンス施設の展示機能や研究機能の充実に向け、文化スポーツ部との連携のもとに取り組んでまいります。
また、来月、文化庁に推薦書案を提出することとしている御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群については、関係自治体などと連携しながら、世界遺産登録を実現するため、これまで指摘されている課題の解決に努め、今度こそはという思いのもとに取り組んでまいります。
さらに、文化財の保存管理と活用を推進するため、文化財指定に向けた調査に取り組んでまいります。
本県の子供たちは、文化芸術の宝庫いわての名を一層高めてくれています。不来方高校音楽部の全日本合唱コンクール文部科学大臣賞や、盛岡第三高校、盛岡第四高校、花巻北高校文芸部の全国高校文芸コンクール最優秀賞、文部科学大臣賞、小中学校の児童生徒が中心となって活動する北上市の煤孫ひな子剣舞保存会、道地ひな子剣舞保存会の文化庁地域文化功労者表彰の受賞など、個性と創造性にあふれるすばらしい活躍を見せてくれています。
学校や地域での文化活動は、未来の文化芸術を担う人材の育成に大きな役割を果たしており、総合文化祭の開催など、文化芸術活動を行う環境の整備に取り組んでまいります。
第4に、豊かなスポーツライフの振興について申し上げます。
希望郷いわて国体において本県選手団は、天皇杯、皇后杯ともに輝かしい成績をおさめることができました。少年の部においても多くの生徒たちが選手として出場し、スキー少年男子を初め、なぎなた少年女子、山岳少年男子、カヌー少年女子、レスリング少年男子、剣道少年女子で見事に優勝するなど、大活躍を見せてくれました。また、先般のながの銀嶺国体におきましては、スケート、アイスホッケー競技の総合順位が第7位と、昨年を上回る活躍を見せてくれています。
3月に開催される選抜高校野球大会には、本県初となる盛岡大学附属高校と不来方高校2校の出場が決定しました。
岩手のスポーツの未来には、ラグビーワールドカップ2019の釜石開催や、東京オリンピック・パラリンピックなど大きな可能性が広がっております。希望郷いわて国体・希望郷いわて大会のレガシーを継承する観点からも、すぐれた指導者の育成、配置や部活動へのアスレティックトレーナーの派遣などにより、中学生、高校生の競技力の向上を支援しつつ、トップアスリートの輩出にもつなげてまいります。
また、学校体育や部活動を通じ、子供たちの成長段階に合わせたスポーツライフの振興にも、引き続き取り組んでまいります。
最後に、業務推進の基本姿勢について申し上げます。
教職員は、子供たちの人格形成に大きくかかわる存在であり、子供たちは、その姿を目にしながら成長していきます。岩手の教育は、日々情熱を持って子供たちに向き合い、誠実に職務に精励している多くの教職員の力によって支えられています。
県民の皆様の本県教育に対する信頼と期待に応えるため、全ての教職員に対し、教育に携わる職業人としての倫理観、使命感の一層の醸成に努めるとともに、さまざまな機会を捉えてコンプライアンスの徹底に取り組みながら、教職員一人一人の自覚と責任ある行動によって、その期待に応えてまいります。また、総合教育センターにおける教員研修の充実などにも努めてまいります。
このような取り組みを行う一方で、教職員が心身ともに健康で意欲を持って教育に携わることができる環境の整備もまた極めて大事でありますので、児童生徒のバランスのとれた学校生活の確保の観点を踏まえつつ、全県での部活動における適切な休養日の設定の徹底や、さまざまな業務の大胆な見直しに取り組んでまいります。
以上、教育行政の推進に当たっての基本的な考え方と施策の大要について申し上げました。
これからの岩手の地域地域、日本の未来を担う岩手の子供たちを健やかに育てることは県民の願いであり、教育には、それを実現していく使命があります。
小学生は目を輝かせ、将来の夢を思い切り語りながら学校生活を送り、中学生は高校受験を意識しつつ部活動などを通じて社会性を一層育み、高校生は社会人として歩み出すときを身近に意識しながら、それぞれの進路実現に向けた学力の蓄積や専門技能の習得、部活動などに一生懸命取り組んでおります。
岩手の宝、そして日本の宝である子供たちは、これからの社会の形成者であります。岩手の子供たちが、急速に変容するこれからの時代をしっかり生き抜いていく力を身につけていくことができるように、今後より一層、学校、家庭、地域、行政が一体となって、岩手の教育の復興と発展に向けて全力で取り組んでまいりますので、議員の皆様並びに県民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。
ありがとうございました。(拍手)
日程第5 議案第1号平成29年度岩手県一般会計予算から日程第56 報告第2号道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分の報告についてまで
〇議長(田村誠君) 次に、日程第5、議案第1号から日程第56、報告第2号までを一括議題といたします。
提出者の説明を求めます。風早総務部長。
〔総務部長風早正毅君登壇〕
〇総務部長(風早正毅君) 本日提案いたしました各案件について説明申し上げます。
議案第1号は、平成29年度岩手県一般会計予算であります。
この平成29年度当初予算は、岩手県東日本大震災津波復興計画第3期復興実施計画に基づく東日本大震災津波からの復興と台風第10号災害からの復旧、復興に最優先で取り組むとともに、文化、スポーツ振興施策や国際関連施策に取り組むほか、若者、女性の活躍支援や科学技術振興の取り組みに引き続き力を入れ、ふるさと振興総合戦略を推進し、未来につなげる予算として編成したものであります。
以下、予算の概要について御説明申し上げます。
第1条は、歳入歳出予算の総額をそれぞれ9、797億3、200万円余とするものであります。これを前年度当初予算と比較しますと8.1%の減となっております。
次に、歳入の主なものについて御説明申し上げます。
第1款県税につきましては1、327億3、500万円を計上しておりますが、法人事業税の増などの増収が見込まれることなどにより、前年度と比較して40億7、000万円の増となっております。
第5款地方交付税につきましては2、956億8、100万円余を計上しておりますが、東日本大震災津波の復旧、復興事業の進捗に伴う震災復興特別交付税の減などにより、前年度と比較して118億3、000万円余の減となっております。
第9款国庫支出金につきましては1、728億1、400万円余を計上しておりますが、東日本大震災津波の復旧事業の進捗に伴う災害復旧事業が減少することなどにより、前年度と比較して586億3、500万円余の減となっております。
第12款繰入金につきましては646億8、000万円余を計上しており、前年度と比較して213億1、400万円余の減となっております。
第14款諸収入につきましては1、576億2、500万円余を計上しており、前年度と比較して6億6、200万円余の減となっております。
第15款県債につきましては742億1、400万円余を計上しており、前年度と比較して29億6、400万円余の増となっております。
次に、歳出の主なものについて御説明申し上げます。
第2款総務費につきましては279億3、400万円余を計上しておりますが、その主なものは、震災津波伝承施設整備事業費7、800万円余、いわてへの定住・交流促進事業費1億400万円余、ラグビーワールドカップ2019開催準備費4億2、000万円余などであります。
第3款民生費につきましては1、008億9、700万円余を計上しておりますが、その主なものは、地域子ども・子育て支援事業交付金13億1、600万円余、療育センター整備事業費50億3、300万円余、被災者住宅再建支援事業費補助13億5、200万円余などであります。
第4款衛生費につきましては319億3、000万円余を計上しておりますが、その主なものは、被災地こころのケア対策事業費4億7、500万円余、再生可能エネルギー利用発電設備導入促進資金貸付金16億9、000万円、県立病院再建支援事業費補助40億5、600万円余などであります。
第6款農林水産業費につきましては681億5、200万円余を計上しておりますが、その主なものは、食肉処理施設整備事業費補助20億円、経営体育成基盤整備事業費26億9、100万円余、いわての森林づくり推進事業費14億5、500万円余、さけ、ます増殖費7億1、700万円余などであります。
第7款商工費につきましては1、358億7、400万円余を計上しておりますが、その主なものは、中小企業災害復旧資金貸付金24億1、300万円余、中小企業東日本大震災復興資金貸付金884億5、300万円余、地域産業活性化企業設備貸与資金貸付金55億5、900万円余、いわてインバウンド新時代戦略事業費4億9、900万円余などであります。
第8款土木費につきましては1、638億円余を計上しておりますが、その主なものは、地域連携道路整備事業費379億7、200万円余、河川激甚災害対策特別緊急事業費39億400万円、港湾高潮対策事業費44億8、200万円、災害公営住宅整備事業費94億9、700万円余などであります。
第10款教育費につきましては1、496億4、200万円余を計上しておりますが、その主なものは、児童生徒健全育成推進費3億8、300万円余、校舎建設事業費2億8、400万円余、公立大学法人岩手県立大学運営費交付金37億2、500万円余、私立学校運営費補助40億2、200万円余などであります。
第11款災害復旧費につきましては715億3、900万円余を計上しておりますが、その主なものは、漁港災害復旧事業費137億8、800万円余、中小企業等復旧・復興支援事業費86億4、600万円余、河川等災害復旧事業費287億5、800万円余、港湾災害復旧事業費77億9、200万円余などであります。
第12款公債費につきましては1、210億3、700万円余を計上しております。
第13款諸支出金につきましては759億1、200万円余を計上しておりますが、その主なものは、公営企業負担金199億8、000万円余、地方消費税清算金210億4、200万円余、地方消費税交付金223億9、000万円余などであります。
第2条債務負担行為は、県民会館施設整備ほか55件について、債務を負担しようとするものであります。
第3条地方債は、地区合同庁舎管理ほか52件について、限度額、起債の方法、利率及び償還の方法を定めようとするものであります。
第4条一時借入金及び第5条歳出予算の流用は、それぞれ所要の措置を講じようとするものであります。
議案第2号から議案第11号までは、平成29年度岩手県母子父子寡婦福祉資金特別会計予算ほか9件の特別会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画に基づき、その所要額を計上したものであります。
議案第12号から議案第14号までは、平成29年度岩手県立病院等事業会計予算ほか2件の公営企業会計予算でありますが、これらは、それぞれの事業計画に基づき、収益的収支及び資本的収支の所要額を計上したものであります。
議案第15号から議案第19号までの5件は、建設事業等に要する経費の一部を受益市町村に負担させることに関し、それぞれ議決を求めようとするものであります。
議案第20号から議案第35号までの16件は条例議案でありますが、これは、岩手県国民健康保険運営協議会条例を新たに制定するとともに、岩手県国民体育大会・全国障害者スポーツ大会運営基金条例を廃止するほか、個人情報保護条例など、14条例の一部をそれぞれ改正しようとするものであります。
議案第36号から議案第38号までの3件は、権利の放棄に関し議決を求めようとするものであります。
議案第39号から議案第49号までの11件は、災害弔慰金等支給審査会の委員の任命及び平成23年東北地方太平洋沖地震及び津波に係る災害弔慰金等支給審査会の運営に関する事務の受託の廃止の協議に関し議決を求めようとするものであります。
議案第50号は、包括外部監査契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
報告第1号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分につきまして、報告第2号は、道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分につきまして、それぞれ御報告するものであります。
以上でありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださいますようお願い申し上げます。
〇議長(田村誠君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
本日はこれをもって散会いたします。
午後2時30分 散 会

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