平成27年2月定例会 第18回岩手県議会定例会会議録

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〇16番(郷右近浩君) 希望・みらいフォーラムの郷右近浩でございます。
登壇の機会を与えていただきました先輩、同僚議員の皆様に心から感謝を申し上げ、会派を代表して質問させていただきます。
最初に、知事の県政運営についてお伺いします。
達増知事の2期目の知事就任は、未曾有の東日本大震災津波が発生し、その復旧、復興に向け、県民が最も苦しく厳しい時期でありました。そのような状況下において、達増知事は、岩手県民の先頭に立ち、復旧、復興のために、国、他の地方自治体、そして関係機関に対し積極的に協力と支援を呼びかけ、制度改正を初め多くの協力と支援を実現してまいりました。
その姿勢は、報道機関が年末に行った県政世論調査において、政策面への期待、リーダーシップへの期待など県民から高い評価を得、県民は、達増知事の着実かつ課題に積極的に取り組む県政運営をしっかりと見ているものと私は実感しております。
本県は、今後も東日本大震災津波からの復興、さらには、その先にある希望郷いわての実現に向けて、長期的な視点に立ち、いわて県民計画と岩手県東日本大震災津波復興計画を着実に進めていかなければなりません。
達増知事は、2期目の就任から3年6カ月を迎えますが、このような県民からの高い評価を得たこと、そして、厳しい環境下においても着実に進めてきた県政運営について、どのような思いをお持ちか所感をお伺いします。
次に、県内経済の動向についてお伺いします。
我が国の経済の動向は、円安の追い風を受けた大手企業が業績を回復させているものの、輸入原材料や身近な食料品などの値上がりにより、地方の産業、中小企業、そして我々県民には、景気の回復を実感できる状況にはない現状にあります。
安倍政権は、大手企業の賃金引き上げや下請企業の取引価格の上昇などによりアベノミクスの効果を地方にも行きわたらせると明言しておりますが、その効果を感じている地方の住民は、ほんの一部と言っても過言ではないと思います。
先日発表された2014年の実質賃金も2.5%の減少であり、リーマンショックの影響で2.6%減少した2009年に次ぐ過去2番目の大きな減少であることが、アベノミクス効果の不十分さを証明しているのではないでしょうか。
県内経済の状況に目を移せば、一昨年から続いた持ち直しの動きが、消費税増税後は悪化の傾向をたどり、輸入原材料費や人手不足による人件費の上昇が企業経営を圧迫するなど、全体として景況感が停滞したまま年を越したと感じた1年でありました。2015年こそは、この停滞感が払拭され我々県民にも景気の回復を感じることができる年になるのでしょうか。賃金は幾らか伸びたとしても、消費税増税と物価の上昇により家計はかなり厳しい状況が続くのではないでしょうか。
そこで伺いますが、知事は、ことしの県内経済の動向をどのように見ているのか所感をお伺いします。
次に、平成27年度当初予算案についてお伺いします。
平成27年度当初予算案は、4年連続で1兆円超えとなり、うち震災対応分は、瓦れき処理分を除くと過去最高の予算額であります。本格復興に最優先に取り組むべく予算を最大限確保しつつ、あわせて喫緊の課題である、ふるさとを消滅させないための人口減少対策にも積極的に取り組むなど、予算規模やその内容とも、まさしく知事が掲げる本格復興邁進年にふさわしい予算案であると思われます。
一方で、県の財政状況は、公債費の負担が依然として高い水準で推移するなど、公債費負担適正化計画に基づき、財政の健全化にも配慮しなければならないという難しい予算編成であったと思われますが、知事は、どのような思いで予算編成に臨み、予算の重点化を図ったのか、その思いをお伺いします。
そして、平成27年度当初予算編成においては、震災対応分の財源は、現在のところ復興交付金と震災復興特別交付税の措置により県の負担はほとんど生じていないと思われますが、問題は、集中復興期間が終了する平成28年度以降の国の財源負担であります。国は、集中復興期間後の復興予算に係る財源措置についての議論はこれからであり、単純な延長ではなく、一つの区切りをつけるべきと言っているようでありますが、この国の対応は、被災県がまだ復興途上にあるという状況の理解不足であり、今後、復興状況に応じたさらに柔軟な財源措置が必要と考えますが、知事の所感をお伺いします。
次に、地方創生についてお伺いします。
さきに示された国の2015年度予算案において、安倍政権が看板政策に掲げる地方創生関連事業予算として192事業で7、225億円を計上するとともに、まち・ひと・しごと創造事業費を新たに創設し、地方分として1兆円を計上したとの報道がありました。農林水産業や観光などのサービス業の可能性を最大限に引き出し、地方を新しくつくり直すとの理念があるようですが、統一地方選対策のばらまきとの批判もあります。
予算額から見れば手厚い措置がなされたようにも見えますが、問題は、その事業の実効性と事業内容、そして事業効果の検証であり、今後、地方自治体がいかに自立的に動いていくかが重要なのではないでしょうか。
本県では、沿岸部を中心に人口減少が待ったなしの状況にあり、若い人や女性の力を生かし、雇用の創出と所得の向上による地域の活性化への取り組みが喫緊の課題であります。国では、このような地方創生に取り組もうとしておりますが、東日本大震災津波の被災県である本県としての評価をお伺いします。
また、このような国の取り組み方針を踏まえ、現在のところ、本県としてはどのような取り組みを重点的に推進しようとしているのかお聞かせ願います。
次に、東日本大震災津波からの復興についてお伺いします。
東日本大震災津波から4年がたとうとしておりますが、まだまだ多くの被災者が不自由な生活を余儀なくされております。
平成26年第4回いわて復興ウォッチャー調査の結果では、被災者の生活の回復度について、回復したと、やや回復したの合計が52.3%と前回調査より3.0ポイント下回った結果となっております。地域別でも、沿岸北部で4.5ポイント、沿岸南部で1.8ポイント下回っております。
その調査結果の概要には、高台移転地の造成などが進んだという声がある一方、応急仮設住宅での生活の長期化による精神的な疲弊や住宅再建に向けた資金繰りを不安視する声もあったと一くくりにまとめて記載されておりますが、このような被災者の生活の回復に対する実感について知事の所感をお伺いします。そして、この調査結果に基づき、県が取り組むべき短期的な課題と中長期的な課題をどのように捉えているのかお伺いします。
また、災害に強い安全なまちづくりの達成度に関する調査結果では、複数の被災者から、避難訓練など防災訓練への参加者の少なさや地域ぐるみによる防災意識の向上への取り組みが足りないなど、時間とともに防災意識が希薄化しているのではないかという懸念の声が挙げられております。
県としても、市町村と連携をしながら取り組みを行っているとは思われますが、震災のあの脅威と悲しみを決して遠い記憶にしてはならないと思うのであります。県は、この喫緊の課題に対して、さらにどのような対策を講じていこうとしているのかお伺いいたします。
昨年11月に行った県土整備委員会の県外調査において、阪神・淡路大震災から20年になる兵庫県を調査してまいりました。阪神・淡路大震災からの復興の教訓は、東日本大震災津波からの復興にも生かされ、特にも住宅再建への公的支援金の支給や自治体間の広域的な連携は、阪神・淡路大震災が契機となったものであります。
一方で、大都市の再生をなし遂げたかに見える兵庫県においても、なお課題があるとのことで、その最たるものは、災害公営住宅の入居者の高齢化に伴うコミュニティの維持とのことでした。
兵庫県における災害公営住宅では、65歳以上の高齢世帯が69%と高く、平均年齢70歳を超える住宅もあり、高齢化の進行によりコミュニティの維持が困難な住宅もあるとのことであり、そのような住宅には、若手の入居者を入れて活性化を図っているとのことでした。
本県においても、現在、応急仮設住宅から災害公営住宅に移転している被災者が多く、来年度にピークを迎えることと思われますが、阪神・淡路大震災の教訓をもとに、中長期的なコミュニティの維持も視野に入れた入居の促進等の考慮が必要になると思われますが、県の考え方及び方策についてお伺いいたします。
次に、農業政策についてお伺いします。
まず、米政策についてでありますが、農林水産業・地域の活力創造本部では、平成25年12月に農林水産業・地域の活力創造プランを策定し、この中で、平成30年産以降の主食用米については、行政による生産数量目標の配分に頼らず、生産者や集荷業者、団体が中心となって円滑に需要に応じた生産が行える状況となるよう、行政、生産者団体、現場が一体となって取り組むこととしております。
しかしながら、平成26年産米は、国が全国の生産数量目標を前年より26万トン減らしたものの、平成25年産米の過剰在庫が解消されなかったことなどから、本県の主力品種であるひとめぼれで見ると、概算金は60キログラム当たり8、400円と過去最低の金額となり、農林水産省が公表した平成26年12月末現在の相対取引価格は60キログラム当たり1万1、836円と対前年比で81%となっております。
国の主食用米の需給見通しによれば、平成26年産米の生産量が789万トン、平成25年産米の在庫量と合わせた供給量が1、009万トンとなったことから、平成27年6月の民間在庫量は230万トン程度と見込まれ、過去10年で最大の水準になるとされております。
国では、平成26年産米の緊急対策の一つとして、民間による売り急ぎ防止支援事業で主食用米20万トン程度を対象に、産地の長期計画的な販売のための保管料等を支援することとしておりますが、今後、この取り組みにより稲作農家の再生産が可能な米価が実現できるかどうかは不透明であります。
このような中、国では、米の需給の安定のためには、主食用米の需給を安定させ、かつ、米価を回復させるためには、主食用米から需要のある飼料用米等への転換が不可欠であり、平成27年産の飼料用米等の一層の拡大に向けて対応することが重要であるとしておりますが、専用品種での飼料用米の作付には、多くの課題や将来への担保がなく不安だけが募っております。
先般、県と農業団体では、平成29年度を目標とした米の生産販売戦略を策定されましたが、今後、本県産米の価値をどのように高めていこうとしているのか、また、どのように飼料用米への転換を推進していこうとしているのか、県の考えをお伺いします。
次に、肉用牛の生産振興についてでありますが、近年、担い手の高齢化等により、全国的に繁殖雌牛の飼養戸数、頭数の減少に歯どめがかからない状況であります。
平成25年度の国の統計によりますと、本県の肉用牛飼養戸数は5、660戸、頭数は9万1、600頭で、平成25年の肉用牛の農業産出額は200億円強を産出し、本県産出額の約8%を占めてはいるものの、1戸当たりの飼養頭数は16頭で、全国の45頭に比べ少ない状況にあります。
また、家畜市場に上場される肉用子牛頭数の減少を背景に、本県の肉用子牛価格は、平成24年度平均43万2、000円であったものが、平成25年度には50万5、000円、今月の県南市場では61万6、000円余と高騰しております。そのため、肉専用種1頭当たりの生産コストは、配合飼料価格の高どまりと相まって大幅に上昇しており、枝肉価格は回復基調にあるものの、肉用牛肥育農家の経営は非常に厳しい状況にあると伺っております。
県は、肉用牛の産地を維持拡大していくために、そして農家が安心して経営を維持できるように、今後の肉用牛の振興をどのように進めようとしているのかお伺いします。
次に、地域医療についてお伺いします。
いわゆる改正医療法に基づき、今後、県では、構想区域単位で地域医療構想を策定していくこととされています。将来の地域の医療ニーズを踏まえながら、医療、福祉、介護の連携を一層促進し、県民が、住みなれた地域で安心して医療を受けられる体制を構築していくことが求められ、今後、関係機関、地域の声も踏まえながら、地域医療構想の策定を初め、本県の医療提供体制のあり方について議論を尽くしていく必要があると考えております。
また、医療提供体制のあり方の中で、地域での救急対応をどのようにしていくのか、改めて検討する時期に来ていると私は考えます。
救急車での搬送、休日や夜間の救急外来等、ふえ続ける救急患者に対応するために、現場では、担当医師、看護師の配置をふやし工夫はしているものの、病院自体の医師、看護師を増員しなくては、使命感で頑張っている医師、看護師の勤務意欲も、もうもたないのではないかという状況であります。
将来にわたって県民に必要な質の高い医療を提供していくための一番大きな課題は、絶対数が不足する医師の確保であり、この課題は、地域的偏在や診療科の偏在にもつながるものであります。
県では、これまでもさまざまな医師確保対策に取り組んでいることは認識しておりますが、今後の医師の確保等に向けた取り組みについてお伺いします。
そして、県民に質の高い医療を提供することはもとより、研修医の確保や医師の定着など、この医師確保という観点からも、内視鏡手術ロボット―ダヴィンチなど、最先端の医療機器を導入していくことは非常に有意義ではないかと考えておりますが、県立病院へのこうした先端の医療機器の導入について、どのように考えているのかお伺いします。
次に、少子化対策についてお伺いします。
本県における人口の自然増減は、出生数の減少、死亡数の増加により1999年に減少に転じ、以降は減少が拡大傾向にあります。
〔副議長退席、議長着席〕
その大きな要因は出生率の低下が挙げられますが、本県の合計特殊出生率は、80年代以降、人口置換水準の2.07以下に低下し、2013年には1.46となっており、全国平均の1.43は上回っているものの、決して高い水準にあるわけではありません。
この合計特殊出生率の低下は、未婚率の上昇、晩婚化といった直接的要因のほか、子育て世代の所得の低下、子育てと仕事の両立の就労環境の問題などが考えられますことから、行政として、結婚支援の側面と子育てしやすい環境をつくる側面の両面からの支援が必要と思われます。
結婚支援については、平成27年度当初予算にいわての子どもスマイル推進事業を計上し、県が結婚支援センターを設置する経費などが盛り込まれており、全県を対象とした広域的な取り組みの展開に大いに期待するものであります。
そして、子育てしやすい環境をつくる施策については、県としても強力に取り組んできたことは理解しており、仕事と子育ての両立支援など男女がともに働きやすい職場環境づくりに取り組む企業等を県が認証する制度では、これまで17社が認定され、着実にふえていると聞いております。
そして、乳幼児医療費助成事業についても、県民から強い要望のあった窓口負担について、償還払いから現物給付へ変更することとあわせ、医療費助成の対象も拡大することとしたことは、県の子育て支援に対する積極的な姿勢と評価するものであります。
しかし、子育ての現場にはまだまだ課題が多く、昨年12月に安心して子育てができる社会の実現に向けてというテーマで行われた県民と県議会との意見交換会において、現在子育てにかかわる方々から、産婦人科、小児科不足、保育士の不足や保育士にかかわる課題、子育てに優しい企業をふやす必要性、医療費助成の必要性、子育てに関する情報不足と一元化の必要性など、さまざまな御意見をいただきました。
知事は、さきの演述において、子ども・子育て支援に社会全体で取り組むため、いわての子どもを健やかに育む条例を今議会に提案したと意欲を示しておられました。まさに、子育てしやすい岩手と言われるような思い切った施策を期待するものでありますが、今後、県としてどのように少子化対策を進めようとしているのかお伺いいたします。
次に、いわての森林づくり県民税についてお伺いします。
言うまでもなく岩手県の県土の77%は森林であります。そして、その森林は、豊富な水源になり、土砂の流出を防ぎ、二酸化炭素を吸収する公益的機能を有する県民共有の財産であり、これからも、この森林を守っていかなくてはならないと考えます。
しかし、現在、森林の手入れは、従事者の高齢化の進行などにより整備が進まず、まだ整備すべき森林として1万ヘクタール余が残っている状況と聞いており、これでは、全国各地で起こっている土砂災害の発生への危惧など、県土の保全にも大きな影響を及ぼすと考えるところであります。
本県では、2006年4月に導入したいわての森林づくり県民税事業が、間もなく10年目を迎え、来年度が第2期目の最終年度となります。2013年度までの税収は56億円余、この財源をもとに1万ヘクタール余の森林を整備したと伺っておりますが、これまでの成果をどのように捉えているかお伺いします。
また、今までの課題をどう捉え、今後の継続についてどのように考えているのかお伺いします。
次に、再生可能エネルギーについてお伺いします。
東日本大震災津波の原発事故により、今も福島県では10万人以上が避難生活を余儀なくされております。国民の多くも、この事故を契機に節電や省エネ、そして再生可能エネルギーの普及した社会を構築していく方向に向かっていると考えるものであります。
本県における再生可能エネルギーの導入状況については、メガソーラー等の太陽光発電を中心に導入量は着実に増加していると感じており、それを数値的に見ますと、平成32年度までの導入目標に対する平成26年10月末現在の実績では、太陽光発電は121.4%、バイオマス発電は323.8%、水力発電は99.8%となっておりますが、これに対し風力発電は11.7%、地熱発電は63.3%にとどまっています。
そこで伺いますが、このように本県において風力発電と地熱発電が進まない原因をどのように捉えているのか、そして、本県のポテンシャルが高い風力発電と地熱発電の導入を促進していくためにどのように取り組んでいくのか、具体策をお伺いします。
次に、自殺対策についてお伺いします。
本県における自殺者については、以前から全国と比較して高い状況にあることから、平成23年度に岩手県自殺対策アクションプランを策定し、県、市町村、民間関係団体等が一体となって、さまざまな対策が講じられてきたことは承知しております。
しかし、近年は深刻さが増し、人口10万人当たりの自殺者数を示す自殺死亡率は、平成24年に25.3であったものが平成25年には26.4と上昇し、全国ワースト2位であり、平成26年は秋田県を抜いて全国1位になる可能性もあると聞いております。
本県における自殺対策を講じる上で、まずは、改めて自殺者の傾向を分析する必要があると思われますが、本県における自殺者の年齢別の状況及び要因について、震災関連による自殺者も含めどのように分析しているのかお伺いいたします。
また、本県では、久慈モデルによる効果などが認められておりますが、このように自殺死亡率が高くなってきている状況を踏まえ、これまでの対策に加え、どのような対策を講じる必要があると考えているのかお伺いします。
自殺で大切な人を失うことは本当に悲しいことであります。そのような悲しいことがなくなるよう、この岩手に住む全ての人が希望を持って安心して暮らしていけるよう、達増知事におかれましては、これからも県政運営に邁進していただきますよう御期待し、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 郷右近浩議員の御質問にお答え申し上げます。
これまでの県政運営についての所感についてでありますが、東日本大震災津波の発災以来、間もなく4年がたとうとしています。この間、震災からの復旧、復興を最優先に、被災地及び被災者の生活を第一に考え、一人一人の被災者に寄り添いながら、市町村、国、県が一体となって、また、民間と行政が連携を強めて取り組んでまいりました。
例えば、復興事業用地の取得迅速化のため、特例制度の創設を国に働きかけ、東日本大震災復興特別区域法の一部改正が実現しました。昨年12月には、この特例制度を活用した初めての緊急使用許可申し立てを行っております。
このような岩手における復旧、復興の取り組みは、地方の主体性が国を動かす自治の新しい可能性を切り開いたものと考えております。
また、第2期アクションプランに掲げる県政課題についても、1人当たり県民所得の3年連続の向上や人口の社会減の縮小、求人不足数の改善など、着実に成果が出てきております。
今後におきましても、県政運営に全力で取り組んでまいります。
次に、県内経済の動向についてでありますが、昨年の県内経済は、復興需要や内陸部を中心とした製造業の生産活動が活発化していることなどを背景として上向いてきたところですが、実質賃金については、円安に伴う物価上昇や消費税率引き上げの影響により低下したところであります。
ことしの県内経済については、企業収益の改善による賃上げが期待されるとともに、本県の主要産業である自動車関連産業などが好調であり、引き続き経済の牽引役となるものと考えております。さらに、県としても過去最大級の予算を編成し、本格的な復興に邁進することとしております。このようなことから、これらの効果が相まって、県内経済が一層活発化していくことを期待しております。
次に、平成27年度当初予算編成についてでありますが、平成27年度当初予算は、東日本大震災津波からの本格復興に向かって邁進する取り組みを最優先に、目の前の危機である人口減少問題に県の総力を挙げて取り組むための予算として編成しました。
復興予算については、第2期復興実施計画に掲げる参画、つながり、持続性の視点を引き続き重視しつつ、復興の量の確保と質の向上に努めました。
人口減少対策については、復興の先の希望あふれる岩手を実現するため、子育て支援、若者・女性の活躍、地域や産業の振興など、各種施策を総合的に展開するための予算を措置しました。
また、ILCの実現や国体・障害者スポーツ大会の成功など、復興を後押しする取り組みも盛り込んだところです。
本県財政は、公債費が依然として高い水準にあるなど厳しい状況にありますが、限られた財源の有効活用に努めるなど創意と工夫により予算の重点化を図ったところであり、復興とふるさとを消滅させないための人口減少対策にしっかりと取り組んでまいります。
次に、国の地方創生への取り組みに対する評価についてでありますが、今般、国が、まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定し、東京一極集中の是正や地方に仕事を創出するための関連予算を編成したことは、本県の人口問題に対する考え方とも軌を一にするものであり、一定の評価をしているものであります。
同時に、本県は東日本大震災の被災県であり、これから復興道路や災害公営住宅の整備等、復興事業がピークとなる期間を迎えます。こうしたことから、地方創生関連予算のみならず、本格復興を進めるための十分な復興財源の確保についても強く要請してまいります。
次に、地方創生への本県の取り組みについてでありますが、県では、先般取りまとめました人口問題に関する報告(案)において、ふるさとを支える基盤の強化を進める、仕事を創出し、人口の社会減を食いとめる、社会全体で子育てを支援し、人口の自然減を食いとめるの三つを基本目標に掲げ、人口減少対策の総合的な展開を図ることとしております。この目標の達成のためには、若者を中心としたいわゆる人口流出と、若者、女性の生きにくさの解消を重点とし、国際競争力の高いものづくり産業の振興や就業支援、ワーク・ライフ・バランスや男女共同参画の推進など、あらゆる施策を総動員して、県民はもとよりあらゆる方々が住みたい、働きたい、帰りたいと思える岩手をつくってまいります。
次に、被災者の生活の回復に対する実感についてでありますが、復興計画に掲げる三つの原則に基づく取り組みは着実に進んでいる一方で、いわて復興ウォッチャー調査の結果などを見ますと、応急仮設住宅での生活が長期化する中、災害公営住宅の整備や復興まちづくり事業などが、被災地の方々にとって生活の回復を実感できるという程度までは進捗していないということが、回復の実感が停滞している要因と考えています。このため、一日も早く全ての方々が恒久的な住宅に転居することができるよう災害公営住宅を整備し、市町村が行う高台移転住宅団地整備への支援に取り組み、また、企業誘致や新産業の創出などの産業振興と一体となった安定的な雇用の場の確保に全力を注いでまいります。
さらには、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、恒久的な住宅における新たなコミュニティへの支援や、高齢者を中心とした見守り、専門的な心のケアなどに長期的に取り組んでいく必要があると認識しておりまして、より一層被災者に寄り添いながら、復興を実感していただけるよう本格復興に邁進してまいります。
次に、防災意識の希薄化についてでありますが、県ではこれまでも、市町村等と連携し、住民参加型の総合防災訓練や自主防災組織の育成、強化、岩手の復興教育と連携した防災教育などに取り組み、ふだんから災害に備える人の割合が高まるなど、県民の防災意識の高揚に一定の成果を上げてきているところであります。
一方で、東日本大震災津波から間もなく4年が経過し、防災意識の低下が懸念される中にあって、大震災津波の教訓を地域で受け継ぎ、地域の防災活動により一層生かしていくことが重要であると認識しております。このため、大震災津波の教訓を伝え続ける津波伝承施設の整備に向けた調査を進めるとともに、新たに創設された地区防災計画の活用を促して地域の自発的な防災活動を推進するなど、地域ぐるみで防災意識を高められるよう取り組みの充実、強化を図ってまいります。
次に、災害公営住宅におけるコミュニティの維持についてでありますが、災害公営住宅の整備に当たっては、コミュニティの形成や維持が図られるよう、廊下等の共用部分のバリアフリー化や一般の公営住宅より広い集会所の設置に取り組んでいます。また、入居者の募集に際しては、グループ募集や周辺地域に住んでいた方々への配慮などの取り組みを行っています。さらに、市町村向けの手引きの作成や勉強会の開催により、災害公営住宅等でのコミュニティ形成について市町村の支援を行ってきたところです。将来的には、災害公営住宅は、通常の公営住宅と同様に自力での住宅確保が困難な子育て世代等の入居が進むものと考えておりますが、県としても、将来にわたって災害公営住宅のコミュニティが維持されるように、今後も適切に対応してまいります。
次に、米政策についてでありますが、県産米は、日本穀物検定協会の食味ランキングで県南ひとめぼれが特Aを平成26年産も含め20回獲得するほか、1等米比率が10年連続で90%を超えるなど、食味、品質ともに全国トップクラスであります。しかし、全国的に米の需給が緩和していることから米価が大幅に下落し、平成27年産以降も価格の低迷が懸念されるため、これまで以上に高品質、良食味米の生産や販売対策の取り組みを強化することが必要となっています。このため、いわての美味しいお米生産・販売戦略を策定し、生産者や農業団体等と一丸となって、県産米のさらなる評価向上などの取り組みを進めることとしています。
具体的には、県オリジナル品種岩手118号をフラッグシップとして全国最高水準の食味を確保し、県産米全体のブランド化を図るとともに、食味関連成分の分析によるおいしさの見える化や県産米の魅力の発信などにより、評価と知名度の向上を図ってまいります。
また、飼料用米については、国の助成制度を最大限活用し、畜産経営体とのマッチングや専用品種の種子確保等を支援してきたところです。平成27年産からは、こうした取り組みに加えて、国の産地交付金を活用した作付への団地化や生産コスト低減の取り組みなどを促進するとともに、市町村や農協と連携しながら、米の需給動向や飼料用米の需要調査に基づき、これまで以上に飼料用米への転換を進めてまいります。
次に、肉用牛の生産振興についてでありますが、本県の肉用牛生産は、飼養頭数や産出額において全国トップクラスの地位にありますものの、小規模経営が多く、生産コストも高いことから、経営体質の強化に向けて規模拡大や生産性の向上を図っていくことが重要であります。このため、繁殖経営においては、優良繁殖素牛の導入や低コスト牛舎等の整備に加え、公共牧場と預託施設であるキャトルセンターとの一体活用を促進するとともに、新たに県単独で牛舎周辺の放牧地を活用した周年放牧の導入を支援していきます。
また、肥育経営においては、粗収益と生産費の差額を補填する国の経営安定対策に加えて、県単独で肥育農家が繁殖部門を導入する一貫経営をモデル的に進めるとともに、新たに増頭意欲のある担い手に対し肥育素牛の導入を支援していきます。こうした取り組みにより規模拡大や低コスト生産を図り、肉用牛生産地の維持、拡大を図ってまいります。
次に、医師確保等への取り組みについてでありますが、県ではこれまで、医師確保対策アクションプランに基づいて、奨学金による医師の養成や即戦力医師の招聘など医師の絶対数の確保に取り組んでまいりました。また、これらの取り組みで養成、招聘した医師の県内定着を図るために、訪問面談による招聘医師のフォローアップに重点的に取り組んでいるほか、奨学金養成医師の育成支援を目的として今年度配置した医師支援調整監による養成医師との面談やキャリア形成支援を行っております。今後は、奨学金養成医師の配置調整に係る協定に基づいて適切な配置調整を進めて、関係機関と一体となって良医を育て、質の高い地域医療の確保に努めてまいります。
次に、先端医療機器の導入についてでありますが、県立病院においては、医療の高度化の進展を踏まえ、県民ニーズに応えるため、必要性等を総合的に判断し、その導入を進めてきました。
御提言のあった内視鏡手術支援ロボットについては、患者負担の軽減など医療の質の向上を図るため国の交付金を活用して整備することとし、今後提案を予定している2月補正予算案に盛り込んだところです。導入については、診療体制や地域バランスを考慮して県立胆沢病院を考えており、将来医学を目指す人材へのアピールや、医療機器関連産業創出への波及等の効果も期待しています。今後とも、良質な医療の提供に向けて、必要性、緊急性及び経済性等を総合的に判断し、整備時期を見計らいながら先端医療機器の整備を図ってまいります。
次に、少子化対策についてでありますが、昨年、人口減少に向けた取り組みをさらに強力に、また、従来と異なる次元で推進するため、人口問題対策本部を設置して、社会減、自然減の両面から対策を検討してきたところであり、先般発表した人口問題に関する報告(案)では、自然減対策として、出会い、結婚、妊娠、出産、子育てまでライフステージに応じた切れ目のない支援の充実を図ることとしています。これを踏まえ、子供の権利を尊重しながら、子供を健やかに育むことの重要性について認識し、社会全体で県民の就労、結婚、妊娠、出産及び子育てを支えていくことにより、誰もが子供を健やかに育みやすいと実感できる岩手の実現を目指して、子供、子育て支援の基本理念や施策の基本的方向、県の責務、各主体の役割、市町村との連携などを定めたいわての子どもを健やかに育む条例を今議会に提案しております。
また、来年度は、子ども・子育て支援新制度による保育の量の拡充及び質の向上とあわせて、いわての子どもスマイル推進事業による結婚支援センターの設置を初め男性不妊治療への助成、子供医療費助成の対象拡大、現物給付化などに新たに取り組む予定であり、今後も広く県民の声を聞き、子供や子育てをめぐる環境変化を踏まえつつ、少子化対策に取り組んでまいります。
次に、いわての森林づくり県民税についてでありますが、いわての森林づくり県民税は、平成18年4月に課税期間5年として創設し、その後、内容の一部を見直し、平成23年度から平成27年度までの第2期がスタートし、現在に至っています。
制度創設時点では、緊急に整備が必要な森林を県内全域で約2万6、000ヘクタールと見込んでおり、このうち、平成25年度までに約1万1、900ヘクタールについて、混み合った森林を高い割合で間伐し、針葉樹と広葉樹が入りまじった森林へ誘導する森林整備を実施したところです。また、県民が行う森林を守り育てる活動などを支援するソフト事業についても、これまでに延べ3万6、000人余りの参加があったところです。こうした取り組みによりまして着実に森林整備が進むとともに、森林環境保全に対する県民理解の醸成が図られてきています。
一方、第2期の終了時においても、依然として整備が必要となる森林が約1万ヘクタール残されていますことから、現在、今後の森林整備のあり方などについて、いわての森林づくり県民税事業評価委員会で議論いただいておりまして、今後、評価委員会からの提言を踏まえて、広く県民の皆様の意見なども伺いながら、第3期への継続の必要性を含め、幅広く検討してまいります。
次に、再生可能エネルギーについてでありますが、風力発電や地熱発電は、風況などの資源調査のために時間とコストがかかるほか環境影響に対する調査を行う必要もあるなど、開発までに一定程度時間を必要としているところです。
本県では、現在、一戸町で企業局が風力発電の事業化に向けた取り組みを進めているほか、八幡平市では民間企業が地熱開発調査を行うなど新たな取り組みが進められているところです。県としては、現在検討が進められている開発計画の着実な実現に向けて支援を行っていくとともに、新たな事業の掘り起こしに向けてセミナーや勉強会の開催などによる普及啓発等を進めていきます。
さらには、風力について、さきに中間報告を発表した開発可能性が高い地域等を明らかにする導入構想を本年度中に策定する予定としておりまして、今後、市町村や事業者と連携して事業推進体制を構築しながら、具体的導入が図られるよう努めてまいります。
次に、本県における自殺者の年齢別の状況及び要因に関する分析についてでありますが、平成21年から平成25年までの国の自殺統計によりますと、年齢別では、男性は50歳代、女性は70歳以上で自殺者が多くなっており、原因、動機別では男女ともに健康問題が最多で、次いで男性では経済、生活問題、女性では家庭問題が多い状況となっています。また、平成23年6月から平成26年12月までの東日本大震災津波関連の自殺者は32人であり、宮城、福島を含む被災3県の中では最も少ない状況となっています。
次に、これまでの対策に加えた自殺対策についてでありますが、本県ではこれまで普及啓発、相談支援、関係機関のネットワークなどの包括的な自殺対策プログラム、いわゆる久慈モデルを全市町村で実施できるよう人材養成や推進体制の構築等に取り組んできたところです。今後は、これまでの取り組みに加えて、年齢別及び原因、動機別の状況を踏まえて、男性については働き盛り世代への普及啓発活動の強化、女性については介護予防面からの心身の健康チェック等の取り組みを強化するほか、男女共通の対策としては、健康問題を理由とする自殺者が多いことから、内科医などのかかりつけ医と精神科医との連携の強化及び多様な相談機関のネットワークによる相談のワンストップ化に取り組んでまいります。また、被災地においては、今後の災害公営住宅への転居等の生活環境の変化に対応して、心のケア対策に引き続き取り組んでまいります。
失礼しました。集中復興期間後における国の財源措置について答弁させていただきます。
集中復興期間は平成27年度で一つの区切りを迎えますが、必要な復興は必ずやり続けなければならないという基本認識のもと、平成28年度から5年間の復興の進め方、財源のあり方の議論を検討していくという考えが復興大臣から示されています。
県では、これまで、復興交付金や震災復興特別交付税などの国の特例的な財政支援措置を受けて、地方負担を抑えつつ復旧、復興事業を実施しているところであり、一日も早い復興を実現するために、集中復興期間を延長して平成28年度以降も同様の措置を継続し、新たな地方負担が生じることのないよう、あらゆる機会を捉え、市町村や他県とも連携しながら、引き続き国に強く要望してまいります。
〇議長(千葉伝君) 次に、高橋元君。
〔21番高橋元君登壇〕(拍手)

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