平成23年8月臨時会 第24回岩手県議会臨時会 会議録

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〇22番(小田島峰雄君) 民主党・ゆうあいクラブの小田島峰雄でございます。
 議案第1号平成23年度岩手県一般会計補正予算(第5号)について質疑を行います。
 去る3月11日の東日本大震災津波発災後、もうすぐ5カ月が過ぎようとしております。発災直後から、達増知事を初め執行部におかれましては、文字どおり、日夜を問わず懸命な復旧、復興作業に御尽力いただいており、心から敬意と謝意を表する次第であります。私も、一日も早い復旧、復興を願う1人でありますが、ここに来て新たな問題が生じてまいりました。ほかならぬ原発事故による岩手県産肉牛の汚染問題であります。暫定基準値を超える放射性セシウムを含む稲わらを給与した肉牛が出荷されるという事態が発生し、このことにより、原発事故以来下落している県産牛の市況にさらに追い打ちをかける結果となったことに加え、去る8月1日、政府の原子力災害対策本部は、原子力災害対策特別措置法に基づき、本県に対し、県内全域からの肉牛の出荷制限を指示したところであります。
 申し上げるまでもなく、今、生産現場では、このことに伴う混乱、怒り、不安などが極限に達しており、今後の本県畜産経営の存続すら危ぶまれる深刻な事態となっております。今回の補正予算にも、肥育農家を対象にした肉牛の検査費用や被害農家に対する利子補給など、関連経費が盛り込まれておりますが、このことについて順次質問いたします。
 第1に、本県の汚染牛肉が流通された事例は、きょう現在7例と聞いておりますが、7月下旬には、秋田県、山形県、新潟県など、隣県においてはいち早く全頭検査体制を表明するなどの対応を行っており、事態発生後の本県初動体制に反省すべき点がなかったか、知事にお聞きいたします。
 第2に、本県においても、県内屠畜場で屠畜される牛についての全頭検査、それ以外の農家の全戸検査などの対策を打ち出した点については一歩前進と評価するものではありますが、その矢先に出された政府の出荷制限についてどう考えておられるのか、知事にお聞きいたします。
 第3に、対策の中身についてお聞きいたします。
 近年における本県肉牛の出荷頭数は年間約3万6、000頭前後であり、うち、県内屠畜場で処理される頭数は約3割、圧倒的多数が東京食肉市場等で処理されております。すなわち、7割の農家については、全頭検査ではなく、農家ごとに最初の出荷牛のうち1頭を検査する全戸検査で十分としておられるようでありますが、果たしてこれで市場や消費者の信頼を得られるとお考えか、知事にお聞きいたします。
 第4に、全頭検査体制に係るお考えの有無についてお聞きいたします。
 過日開催された県と市町村、農協など関係機関、団体による緊急会議の席上、県におきましては、圧倒的多数の県外出荷分についても全頭検査を検討している旨の報道がありましたが、早急に実施すべきと考えます。現行の対応策でも、出荷制限解除スキームに合致するとのお考えのようでありますが、そういう問題ではなく、全国に誇る畜産王国岩手が今後も国民の信頼を得られるかどうかの、今、重大な瀬戸際にあるという問題なのであります。
 全頭検査を行うためには、県外食肉市場の検査体制、多頭数に対応する検査機器、人的体制など、解決すべき問題が存在していることは承知いたしておりますが、市場や消費者の信頼を回復するとともに、不安と動揺のきわみにある県内畜産農家のためにも、今こそ全国の消費者に向けて、県産牛肉の安全・安心の確保のための県の取り組みを積極的にアピールしていくべきと思いますが、知事の御所見をお聞きいたします。
 第5に、出荷制限解除に向けた対応についてお聞きいたします。
 政府の出荷制限によって、出荷月齢に達しながらも出荷できない肉牛も、今後相当数に上るものと思います。出荷月齢を超過した肉牛の品質低下とともに、飼養コストの問題が、今、農家に重くのしかかっております。さらに、他県産稲わらを購入している農家にとっては、えさの確保も大きな課題であります。
 そこで、これらの対策とともに、出荷制限解除に向けた今後の見通しについてお聞きいたします。
 第6に、補償の問題についてお聞きいたします。
 過日、暫定基準値を超えるセシウムが検出された牛肉について、国が買い上げ焼却処分する、買い上げ価格は現在の値段ではなく、以前の市場価格とする旨の報道がありましたが、詳細は明らかになっておりません。いつ時点の価格を適用し、いつから買い上げると国が考えているのか、お聞きをいたします。
 また、暫定基準値を下回った牛についてはどういう取り扱いとなるのか、風評被害により暴落している市場価格に対する補償はどうなっているのか、さらに、現行の肉用牛肥育経営安定特別対策事業は、全国平均値を下回った場合に発動するシステムとなっておりますが、今回のケースは、西側の他県産牛肉が価格を維持していることから、この際、各県ごとの地域別算定法式の導入や、下落分の全額国庫による差額補てんなど、制度の見直しを国に求めていくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 第7に、高濃度の放射性セシウムが含まれる可能性のある堆肥等の取り扱いについてお聞きいたします。
 このことについては、つい先ごろ、肥料、土壌改良剤、培土中の放射性セシウムの暫定許容値が、キログラム当たり400ベクレルと発表されたところでありますが、これまたその後の具体の取り扱いについては不明であります。このことが、いたずらに農家の不安や不信を増幅していることから、早急に、だれが、いつ、堆肥等の検査を行うのか、また、許容値を超えたものについては、一体、だれが、どこに、どのように保管、処理すべきか、現時点でおわかりの範囲でお答え願います。
 第8に、以上申し上げたことについて、県におかれては、県内市町村や農協等に対して随時に説明されておられるようでありますが、農家に対しては何らの説明もなされておりません。県が行わなければ市町村や農協等に対し、その旨要請をすべきと考えますが、御見解をお聞きいたします。
 関連して、肉牛以外の農産物に関しお聞きいたします。
 県は、このほど、米の放射性物質調査を行うとのことでありますが、調査対象地域は、空間放射線量率0.1マイクロシーベルトを超える県南4市町に限定して実施するとしております。しかしながら、この調査の前提となります放射線測定日は6月時点のものであり、今後における4市町以外の量率の安全を担保するものではありません。隣県青森県では、いち早く全県調査を行うと聞いておりますが、事は国民の主食にかかわることでもあり、この際、牛肉と同様、県内悉皆調査を行い、本県産米の安全を全国に対しアピールしてはいかがかと提案するものでありますが、御見解をお聞きいたします。
 以上で質問を終わります。
〇知事(達増拓也君) 小田島峰雄議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、本県の事態発生後の初動体制についてでありますが、本県では、福島県での稲わらを原因とする牛肉の暫定規制値超過事案の発生を受け、直ちに汚染の疑いのある稲わらの利用の注意喚起をするとともに、県独自で、牧草の利用自粛を要請している県南地域及び滝沢村の畜産農家を対象とした稲わらの給与実態調査などの取り組みを進めたところであります。
 肉用牛の検査体制等の構築についても、関係団体との調整を図りながら、畜産農家に対する経営支援も含めた総合的な対策として、他県と同様、事案全体に対する対策という観点から適切に対応してきたものと考えております。
 次に、政府の出荷制限の指示についてでありますが、本県では、牛肉からの放射性セシウムの検出を踏まえ、独自に暫定規制値を超過する県産牛肉を流通させない仕組みを構築し、まさにスタート直前に今般の出荷制限の指示が出されたところであり、まことに残念と感じております。県としては、一日も早い出荷制限の指示の解除に向けて、畜産農家や関係機関、団体等と協力し、全力で取り組んでまいります。
 次に、全戸検査についてでありますが、現在、出荷制限の解除に向けて策定中の検査計画では、国が定める暫定許容値を超過した稲わらを給与した農家等の牛については全頭検査、それ以外の農家は、最初に出荷する1頭を検査する全戸検査の方向で検討を進めております。これは、同じ飼養環境で管理されている牛については、そのうちの1頭を検査することで、他の牛についても同レベルの安全性を確認できるという考え方からでありますが、市場や消費者に安心を強く訴えていくためには、全頭検査がより望ましいと考えており、県外屠畜もできる限り全頭検査が可能となるよう、関係機関と調整しております。
 次に、全国の消費者に向けての安全・安心のアピールについてでありますが、本県の検査体制は、全国の消費者の信頼にこたえ得る水準であると考えており、この仕組みにより出荷される県産牛肉の安全性をPRしていくことが極めて重要であると考えております。このため、牛肉の放射線に関する正しい知識や本県の検査体制をテーマにしたシンポジウムの開催、新聞、テレビ等のメディアを活用した積極的アピールのための予算を、このたびの補正予算に盛り込んでいるところであります。
 また、首都圏の食肉市場の買参人にも県産牛肉の検査体制を説明するとともに、10月に本県が当番県となって開催されます東京食肉市場まつりの場を最大限活用しまして、首都圏消費者にも広く安全性をアピールしてまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので御了承をお願いします。
〇農林水産部長(東大野潤一君) 出荷遅延対策と出荷制限の指示の解除に向けた対応についてでありますが、まず、出荷遅延対策につきましては、肥育期間延長に対応するため、昨日から肥育農家全戸を対象といたしまして、事故や疾病の発生の予防、飼料の給与方法など、当面の飼養管理のポイントを市町村、農協と連携しながら巡回指導を開始しているところでございます。
 また、かかり増し経費など飼養コストの増加などに対応するためJAグループと連携し、無利子、原則無担保、無保証人の融資を創設し、利子補給に要する経費を今回の補正予算に盛り込んだところでございます。
 さらに、稲わら等の飼料を確保するため、国や関係団体と協力しながら、飼料供給情報の提供やマッチングの支援などに取り組んでいるところでございます。
 次に、出荷制限解除に向けて、現在、適切な飼養管理の徹底と牛肉の検査による安全管理体制の確立を内容とする検査計画の策定に取り組んでおり、今週中の計画申請を目指して国と協議を進めているところでございます。
 次に、補償問題についてでありますが、さきに報道があった既に流通している汚染稲わらを給与された牛の肉及び出荷遅延牛の買い上げについては、価格設定、買い上げ開始時期や対象範囲などの事業内容を国に照会してございますが、詳細が明らかにされておらず、引き続き国からの情報収集を急ぎ、県としても適切に対応していく考えでございます。
 また、肉用牛肥育経営安定特別対策事業について、今回の枝肉価格下落の要因は東京電力の原発事故という特殊な要因によるものであり、平常時を前提とする既存の制度の枠組みを超えて、枝肉価格に加えて、子牛価格の下落による損失も全額補てんするよう、国に要望しているところでございます。
 次に、放射性セシウムが含まれる堆肥等の取り扱いについてでありますが、農林水産省は、今般、堆肥等に含まれる放射性セシウムの暫定許容値の設定及びその検査主体、検査方法を定めたところです。
 これによりますと、畜産農家等がみずからの農地に還元施用する場合は検査を不要とし、一方、暫定許容値を超えた粗飼料などを給与した牛に由来する堆肥等につきましては、堆肥製造業者または県が検査をすることとされたところであります。このため、県では、8月12日に堆肥製造業者を対象に説明会を開催し、早急に検査実施態勢を構築していく予定でございます。
 なお、汚染稲わらや暫定許容値を超えた堆肥等の処分方法や保管場所等につきましては、現在、政府で引き続き検討するとしており、その結果が示され次第、迅速に対応していく考えであります。
 次に、農家に対する説明についてでありますが、県では、これまでも、牧草の利用自粛等の要請や稲わらの問題、国の出荷制限指示などの事案が発生した都度、全市町村や農協等を対象とした対策会議を開催し、今後の対応を示すとともに、生産者に周知するよう要請してきたところでございます。また、各広域振興局におきましても、管内の市町村や農協と連携した畜産農家への説明会を開催しているところでございます。
 さらに、昨日からは、畜産農家に対する戸別指導を開始しており、今後とも、畜産農家へ的確に情報が伝わるよう取り組んでまいります。
 次に、県産米の放射線影響対策についてでありますが、本県におきましては、さきに米の調査計画を公表したところであり、その内容は、当初、本県を含まない14都県に対して国が示した枠組みに準じて、収穫前の予備調査と収穫後の本調査の2段階で実施すること、予備調査については、県が調査した空間放射線量率の最大値が1時間当たり0.1マイクロシーベルトを超える県南地域の4市町を対象とすること、本調査については、検査体制の整備とあわせて調査地域の追加を検討することといたしておりました。今般、政府から、本県にも農林水産物の検査計画の策定を求められましたことから、予備調査の対象市町村は最新の空間放射線量率の調査結果を反映させるとともに、本調査におきましては、県内すべての市町村を対象とすることとし、関係機関、団体と調整してまいります。
〇22番(小田島峰雄君) 詳細なお答えをちょうだいいたしました。一つ申し上げたいのは、確かにいろいろ検査を行うに際しましては、国の検査基準、要領等に沿って本県におきましても適切に検査等を実施されていると思いますけれども、大きな観点から、その国の基準、要領を超えた判断も時には必要になるのではないかと、こういうふうに私は思うわけであります。ぜひその点について、さらに御検討をいただきたいと思います。
 この放射線、放射能に汚染された農畜産物の問題につきましては、今後どのような展開をしていくのか、どういうさらなる影響を及ぼしていくのか、皆目予断を許さない状況であります。そういうことから、今後におきましても、迅速かつ適切な御対応をされますようお願いを申し上げ、質問を終わります。ありがとうございました。
〇議長(佐々木一榮君) 次に、柳村岩見君。

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