平成12年2月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(増田寛也君) 第5回県議会定例会が開催されるに当たり、今後の県政運営の基本方針について、私の所信を申し上げます。
 これに先立ちまして、昨年10月27日から28日にかけて県北部を中心とした大雨により、被害を受けられた住民の方々に心からお見舞いを申し上げます。
 県では、直ちに軽米町に災害救助法を適用する一方、被災市町村と協力して応急措置を講ずるとともに、国に対しても各種の緊急対策を要請し、激甚災害の指定を受けるなど、さまざまな取り組みを行ってきたところでありますが、被災された住民の皆様が、不屈の信念を持って敢然と立ち上がり、再建に取り組んでおられることに対し、深く敬意を表するものであります。
 今後とも、被災地域の一日も早い復興とともに、災害に強い県土づくりを目指し、さらに一層の努力を傾注してまいります。
 さて、私は、2000年という新しい千年紀、ミレニアムの始まりの年を迎え、21世紀を見通したとき、これまでの世紀に比較し、加速度的に進む技術革新により、時代の変化が一層早くなることが予想され、これからの社会がどう変わっていくのか予測は難しく、まさに海図なき新たな航海に旅立ったとの思いを強くしているところであります。
 今、時代の大きな転換期にあって、人々が求めている真に豊かな社会とは、岩手の先人たちが守り、はぐくんできた豊かな人間性や生活の質を大切にする社会であると考えております。こうした新しい時代を迎え、本県の持つ特性や資源の優位性を生かす可能性が大きく広がってきていることを考えたときに、私は、眼前に広がる光景は決して暗く冷たい海ではなく、希望と活力に満ちた輝かしい未来であり、2000年の到来とともに吹く新しい風をしっかりととらえながら、そのかじ取りを行い、豊かで魅力にあふれる岩手づくりに誇りと自信を持って取り組んでまいりたいと考えております。
 世界経済を見ますと、グローバリゼーションの進展により、経済の活性化、生活水準の向上、雇用の創出、技術開発等の一層の発展を遂げてまいりましたが、その反面、アジア経済危機とその世界的な波及に見られるような国際金融面の不安定さの増大や貧富の格差の拡大などが認められ、こうした負の効果への対応が求められております。
 一方、我が国の経済社会状況は、経済成長の停滞基調の中で、経済のソフト化・サービス化の進展、既存産業の成熟化、情報化や技術の進歩、地球環境問題への意識の高まりなど、大きな変化を遂げてきておりまして、さらに、少子・高齢化の一層の進行、情報処理・情報伝達速度の加速化などが予想されるところであり、これまでのような人口が一律に増加し、経済が右肩上がりになることを前提とした社会の仕組みを大きく変革することが求められております。
 また、ボーダーレス化や情報化の進展に伴い、私たちの地域や暮らしが、直接、世界と結ばれることにより、地域の多様な価値を認め合い、それぞれの地域の個性や魅力が重要な意味を持つ社会へ移行していくものと考えられ、このことは、だれでも、どこでも世界の中心になり得ることを意味しております。
 このような社会においては、知識・情報・技術などの知的資本の重要性が高まり、情報ネットワークを生かした地域発展の仕組みづくりやそのような仕組みを活用した多様な個性や文化の創造が求められていくものと思われ、地域や組織などの関係も階層型から水平型へと変化していくなど、個々の人々の生活から社会の構造に至るまで、これまでの前例が通用しない新しい価値観に基づく社会が到来するものと考えております。
 私は、このような時代の大きな流れを世界の中の岩手、日本の中の岩手という広い視野から的確にとらえ、10年先、20年先を見通しながら、地球規模で物事を考え、世界平和や人類の幸せのために岩手県がどのような役割を果たすことができるのかを念頭に置いて、新しい時代に向かって県民の英知を結集し、着実に歩んでいく必要があるものと考えております。
 私は、県政推進に当たって、県民に開かれたわかりやすい県政を基本姿勢として掲げ、新しい総合計画の説明会や県政懇談会などのあらゆる機会をとらえて、県内各地域に足を運び、県民との直接の対話に努めるとともに、地域の視点でともに地域づくりを考え、施策を推進する現場重視の地域経営を進め、地域の個性を最大限に生かす方向で施策の展開を図ってまいりました。
 また、昨年8月、県民の皆さんの参加と協力を得ながら全国高等学校総合体育大会を開催し、本県選手の活躍により過去最高の成績をおさめるなど、成功裏に終了することができました。この機会を通じて、豊かな県土や温かい人情などの岩手のすばらしさを全国にアピールすることができ、県民に新たな自信と連帯が生まれてきています。
 さらに、7月には、今までの行政システムを大きく変える、いわゆる地方分権一括法が成立し、県を初め各市町村は自己決定・自己責任の原則のもとに、分権の担い手として、まさに主役としての活動が求められており、県としても12月議会で関係条例の改正を行うとともに、今議会において、さらに条例の改正案を提案しているところであります。
 私は、昨年8月、このような時代の大きな変化をとらえ、新しい岩手づくりのシナリオとして、また、その実現に向けての経営戦略として岩手県総合計画を策定いたしました。
 この計画では、142万県民が持っているそれぞれの夢、142万通りの夢をこの岩手の大地に実現していくことを目指し、基本目標として、みんなで創る夢県土いわてを掲げているところであり、シナリオの主役である、自立した県民の皆さん一人一人の参加と協力をいただきながら、その実現のため全力で取り組んでまいります。
 計画を進めていく上で大切なことは、行政として何を行ったかということではなくて、その結果として、県民の豊かさや暮らしやすさが、総体としてどのように向上したかという施策の成果を重視する行政の推進であります。
 このため、計画では、2010年の県民の暮らしがどのように変わるのかをわかりやすく示した数値目標を掲げており、この目標の達成に向け、着実に施策を推進していくこととしております。
 具体的には、計画に掲げる目標数値と主要な事業とのかかわりなどを明確にし、事業の推進状況と事務事業の評価等を有機的に関連づけながら、施策や事業について総合的、体系的な評価を行うことができるような政策評価システムを構築してまいります。
 夢県土いわてを実現していくためには、明治以来形成されてきた中央集権型の行政システムが地方分権型へと変化しつつある中にあって、行政運営の仕組みを抜本的に見直し、生活者主権・地域主権の社会を見据えた新しい行政システムを確立していく必要がございます。
 このため、私は、以下、三つの具体的な取り組みを推進してまいります。
 その取り組みの一つ目は、情報公開と県民参画の徹底であります。
 地域がみずからの責任と判断で物事を決めていくためには、行政と県民との間の情報の共有化と県民が地域づくりに参画する仕組みづくりが不可欠であり、行政の保有する情報は住民との共有財産であるという意識の徹底化を進めてまいります。
 既に予算編成や各種審議会等の経過を公開しておりますが、さらに、これらの仕組みを拡充し、新しい岩手づくりのあらゆる過程で県民の総参画を推進していくため、政策立案過程等において、県民から広く意見を求めるパブリック・コメント制度の定着を図ってまいります。
 二つ目は、県民の満足度の高い行政体を構築することであります。
 県民満足度の高い行政運営を進めるためには、顧客である県民志向の重視、成果主義・結果重視の行政運営が求められます。このため、顧客の視点で企業の経営の仕組みを評価する手法を用いた県行政についての外部診断などの結果を受け、現在、県職員が一丸となって行政品質向上運動に取り組んでいるところでございます。
 今後は、さらに職員の意識改革と業務革新が一体となった取り組みを推進し、行政の効率性や有効性を高めるための政策評価システムや、バランスシートの作成とその分析を通じて財政の健全性を明らかにするとともに、コスト意識の醸成を図るための企業会計方式の導入、柔軟性と機動性にあふれた行政組織の再編成、情報技術を活用した行政運営の向上などにより、県民満足度を最大にすることを行動原理とする県行政を進めてまいります。
 三つ目は、現場重視の地域経営の一層の推進であります。
 これまでも、住民の身近なところで物事を決める観点から、地方振興局の内部組織の整備や権限の大幅な委譲などによりまして、地域における総合性・完結性を高める県行政の分社化に取り組んできたところでございます。
 地方分権を進めていくためには、県と市町村との連携がますます重要であることから、地方振興局と市町村との情報の共有化や人事交流の拡大、広域行政の一層の推進とともに、地域特性に応じた施策展開が効率的に行われるよう、地方振興局の地域政策立案機能や予算、人事などの総合調整機能を強化し、その自立性を一層高めてまいります。
 このような具体的な取り組みを強力に推し進め、志を高く持ちながら、夢県土いわての実現に向けて、職員とともに努力をしてまいります。
 今回提案した平成12年度予算は、12年度が岩手県総合計画に基づく新しい岩手づくりの実質的なスタートの年であることから、計画の着実な達成に向け、限られた財源を重点的かつ効果的に活用し、政策評価の考え方によって緊急度と優先度の高い施策を厳選しながら、行政システム改革大綱に掲げる財政健全化目標の達成や財政運営の健全化にも配意をしつつ、各種の施策の本格的な展開が図られ、県民満足度が向上するよう編成をいたしました。
 また、国、地方とも、行財政を取り巻く環境は極めて厳しい状況にあることから、引き続き行財政運営の健全化と行政改革を推進し、多様化かつ高度化する行政需要に積極的にこたえてまいります。
 なお、このたび、公金の不正流用、不適切な補助金支出が行われたことにより、県政に対する県民の信頼を損なったことは極めて遺憾なことでございます。もとより、県政は、県民との信頼の上に成り立つものであり、職員一人一人が改めて県政に対する県民の負託に思いをいたし、これまで以上に厳正な職務の執行と公務意識の高揚に努めることにより、県政に対する県民の信頼の回復に全力を尽くしてまいります。
 以下、岩手県総合計画において、本県が目指す将来像として掲げた五つの社会ごとに平成12年度の主要な施策について申し上げます。
 第1に、自然と共生し、循環を基調とする社会の実現に向けた施策についてであります。
 まず、環境にやさしい地域社会の実現に向けて、地球温暖化防止に向けた取り組みを展開するほか、環境保全に対する投資とその効果を評価する環境会計の導入を目指した調査を実施するとともに、インターネットを活用して本県のすぐれた環境を広く紹介するデジタルエコミュージアムを構築してまいります。
 また、人と自然がともにある環境の保全に向けて、県版レッドデータブックの作成やいわゆる種の保存条例の検討を進め、野生生物の保護対策の充実を図ってまいります。
 さらに、資源循環型社会を形成するため、資源化再利用の促進を図るとともに、廃棄物の適正処理対策やダイオキシン、環境ホルモンなどの化学物質による環境汚染対策に万全を期してまいります。
 また、浄法寺町稲庭地区に風力発電所を建設するなど、新エネルギーの利活用を一層促進するとともに、6月に開催される世界地熱会議については、会議の成果が世界に発信され、新しい利用形態である地中の熱を利用して冷暖房を行う地熱ヒートポンプの活用など、多様な地熱利用が一層促進されるよう、その成功に向けて全力で取り組んでまいります。
 なお、北東北知事サミットの合意事項に基づく子ども環境サミットを9月に本県で開催するほか、環境ミレニアム・フォーラムを通じて環境岩手を内外に発信するなど、日本の環境首都を目指した先進的な取り組みを推進してまいります。
 第2に、快適に安心して暮らせる社会の実現に向けた施策について申し上げます。
 まず、快適な暮らしの実現に向けて、省エネルギーやバリアフリーなど環境と人にやさしい住宅の提供や普及に努めるほか、10月に全国的な住宅祭であるスーパーハウジングフェアin岩手を開催するとともに、上下水道の整備を積極的に進めてまいります。
 また、都市においては、計画的な市街地の形成や慢性的な交通渋滞の解消に努めるほか、盛岡駅西口地区に多機能型の複合施設を整備するための基本設計に取り組むとともに、農山漁村においては、生産基盤の整備を初め、集落排水などの生活環境基盤の整備を進めてまいります。
 次に、健やかで、安心できる暮らしの実現に向けて、地域医療や遠隔医療支援などの情報ネットワークや、環境保健センターの整備を図るほか、福岡病院や沼宮内病院の新築に着手するとともに、磐井病院と南光病院の移転新築に向けた用地の調査を実施してまいります。
 また、就労と育児の両立支援やすこやか子どもランドの整備、男女共同参画意識の啓発など、地域ぐるみで子育てを支え合う結の心により、社会全体で子育てを支援するほか、高齢者の生きがいづくり、健康づくりと社会参加を促進するとともに、高齢者や障害者などの日常生活の支援とひとにやさしいまちづくりを一層推進してまいります。
 さらに、介護保険制度の円滑な実施と各地域において介護サービスや生活支援が適切に実施されるよう、必要な支援を行ってまいります。
 また、新たに重症心身障害児施設の整備を促進するとともに、福祉作業所やグループホームを整備し、障害者の能力に応じた就労の促進に努めるなど、障害者が地域の中で自立して生活できる環境の整備を図ってまいります。
 次に、安全な暮らしの実現に向けて、外国人犯罪や電子機器を利用した犯罪に対して総合的な対応に努めるほか、洪水調節や水資源の有効利用を図るため、新たに津付ダムの整備に着手をしてまいります。
 また、甚大な被害が発生した軽米町雪谷川の河川改修など、緊急を要する災害対策について重点的に取り組むとともに、岩手山の火山活動などに迅速に対応する防災体制の充実強化を図ってまいります。
 第3に、創造性あふれ、活力みなぎる産業が展開する社会の実現に向けた施策についてであります。
 まず、農業については、意欲ある担い手への農地の利用集積と生産基盤の整備による効率的な農業生産体制を確立するとともに、適地適作を基本とし、米、園芸、畜産を基幹とした産地形成を図ってまいります。
 また、いわて農業純情度指標の達成に向けて、自然循環機能を活用した持続的農業の取り組みを進め、安全な食料の生産拡大を図るほか、新たな中山間地域等直接支払制度の円滑な導入を図るなど、中山間地域の多面的機能の維持、増進に努めてまいります。
 林業については、間伐や多様な森林の整備を進めるほか、いわて型住宅の開発等による県産材の需要拡大や林道網の整備を図るとともに、シイタケの生産施設の整備やヤマブドウの優良品種の育成等による特用林産物の主産地化、地域の森林・林業を支える担い手の育成・確保に努めてまいります。
 水産業については、つくり育てる漁業を積極的に推進し、漁業に夢と意欲を持った担い手の育成・確保に努めるほか、安全で機能的な漁港の整備を進めるとともに、ハセップ方式の導入などによる付加価値の高い新鮮で安全な水産物の流通体制の整備を図ってまいります。
 地域産業の振興については、市町村の中心市街地活性化基本計画に基づく商店街の施設整備やイベント等のソフト事業を支援するほか、21世紀のいわてブランドの確立や海外での物産展の開催など、県産品の販路拡大に取り組んでまいります。また、11月の第17回伝統的工芸品月間全国大会の成功に向け、その準備に万全を期してまいります。
 さらに、依然として厳しい経営環境にある中小企業については、金融対策の充実を図るほか、情報ネットワークの進展への対応や国際規格の認証取得の支援を行うとともに、中小企業の振興、創業支援を担う中核的な機関の整備に加え、身近な支援拠点として地域中小企業支援センターの整備を進めてまいります。
 科学技術の振興については、平成12年度を夢県土いわて科学技術年として、第22回宇宙技術及び科学の国際シンポジウム、第11回英国科学実験講座、21世紀夢の技術展を初めとする一連の内外の行事を開催するなど、21世紀に向けた本県科学技術振興の飛躍を期してまいります。
 工業の振興については、本県独自技術の確立に向けた産学官連携による研究開発や独創的なソフトウェア開発などを進め、企業の新分野への進出の支援や新産業の創出に努めるとともに、積極的な企業誘致活動により研究開発型企業や産業支援サービス業、基盤的技術産業などの集積を図り、本県工業の高度化を促進してまいります。また、北東北の物流拠点として、花巻流通業務団地の整備を促進してまいります。
 観光の振興については、地域提案型の旅行企画の支援に努めるとともに、新しい観光標語などを活用した新たな観光イメージの形成、北東北三県の連携によるグリーン・ツーリズムや外国人観光客の来訪などを促進してまいります。
 働く環境の整備とひとづくりについては、緊急地域雇用特別基金の活用により、雇用・就業機会の創出を図るほか、離職者等の職業能力開発に一層努めるとともに、ものづくりを担う人材の育成などを促進してまいります。
 第4に、ネットワークが広がり、交流・連携が活発に行われる社会の実現に向けた施策について申し上げます。
 まず、内外に開かれた交流・連携のネットワークの形成に向けて、新たに創設した市町村総合補助金により市町村等の自主的な地域づくりを積極的に支援するとともに、地域主体のいわて地元学の活動を促進してまいります。また、平庭地区の自然や生活文化を体験できる滞在拠点の整備に向けた調査を実施するとともに、市町村の自主的な広域行政の推進を支援してまいります。
 さらに、インドネシア・バリ州の文化団体を招聘するほか、世界各国からの研修員の受け入れや南米移住者の二世、三世との交流などに努めるとともに、外国人が暮らしやすい環境の整備を進めてまいります。
 次に、交通ネットワークの整備に向けて、東北横断自動車道釜石秋田線の釜石・花巻間、三陸縦貫自動車道などの整備を促進してまいります。
 また、花巻空港滑走路2、500メートル延長の早期完成や東北新幹線盛岡以北の建設促進に努めるほか、並行在来線については、地域の旅客輸送を確保するため第三セクターの設立準備を進めてまいります。さらに、スロープつき低床バスの導入など、バス利用者の利便性の向上に努めてまいります。
 次に、情報ネットワークの構築に向けて、いわて情報ハイウェイの整備を進めるとともに、携帯電話の利用可能エリアの拡大やインターネットの普及の促進など、地域の情報化を図ってまいります。
 第5に、個性が生かされ、ともに歩む社会の実現に向けた施策についてであります。
 まず、学校教育については、創造性豊かな岩手のひとを育てるために、その環境整備に努めるとともに、情報教育や国際理解教育の一層の充実、4月に開校する宮古養護学校への新たな高等部の設置を進めます。また、いじめや不登校などの問題については、生徒指導の充実や相談体制の整備を図り、関係機関と一体となって取り組んでまいります。
 さらに、高等学校の入学者選抜方法の改善や中高一貫教育の導入のあり方の検討を引き続き行うとともに、新しい教育課程で創設される総合的な学習の時間について、環境、福祉などをテーマとした特色ある教育の実践を進めてまいります。
 岩手県立大学については、4月に大学院を設置するとともに、教育研究機能の一層の高度化を図ってまいります。
 次に、文化の振興については、平泉文化の調査研究を進めるほか、平成13年秋の開館を目指した県立美術館の整備を着実に推進するとともに、総合的な文化情報提供システムの開発を進めてまいります。
 スポーツの振興については、総合型地域スポーツクラブの育成や中学生・高校生の競技力の向上に努めるとともに、高田松原野外活動センターに艇庫などを整備してまいります。
 また、男女共同参画の推進については、海外研修等の学習・交流の機会を提供するほか、いわて男女共同参画プランに基づき、男女共同推進月間を中心とした意識改革の啓発や審議会などへの女性の参画を総合的に推進をしてまいります。
 さらに、県民の参画・協働による地域づくりについては、ボランティアやNPOの活動支援の拡充を進めてまいります。
 以上、今後における県政運営の基本方針と平成12年度の施策の概要について申し上げましたが、これからの新しい時代の岩手づくりに向け、県民一人一人が、今まで以上にその主役であるという意識を持って行動することこそが、一層重要になってくるものと考えております。
 今から約50年前、我が国における地震・測地・磁気学そして航空力学の創始者であり、国際的な物理学者として著名な本県出身の田中館愛橘博士は、50年後の夢というその遺稿の中で、21世紀初頭を見据えながら、「求めよ!汝は見いだすであろう」と、このように述べております。
 これは、当時としては夢の実現とも言える無線電信、エックス線、ラジオ、テレビなどが、科学者の長年の苦心と努力により、ついにでき上がったことを取り上げながら、さらに50年後の科学の進歩とそれによる災害対策などへの期待を込めて語られた言葉でございます。
 私は、この言葉は、それぞれの人が夢を持ち、その夢を実現するためにたゆまぬ努力をすることの大切さを意味したものであり、まさにこのことは、総合計画に掲げている、それぞれの夢をみずから見つけはぐくみ、生きる喜びを世代や地域を超えてともに分かち合える、夢をつくり、夢をつなぐ県政にも通じるものがあると受けとめております。
 私は、この2000年という記念すべき年にあって、独創的な研究と真摯な姿勢によって世界に認められた博士の声に耳を傾け、地方分権や行政改革という目下の重要課題の解決に一歩一歩努力を積み重ね、県民としっかりと手を携え、21世紀の岩手像、夢県土いわての実現のため、全力で取り組むべく決意を新たにいたしております。
 どうぞ、議員の皆様と県民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明を終わります。
日程第5 議案第1号平成12年度岩手県一般会計予算から日程第72 報告第2号道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分の報告についてまで

〇議長(山内隆文君) 次に、日程第5、議案第1号から日程第72、報告第2号までを一括議題といたします。
 提出者の説明を求めます。武居総務部長。
   〔総務部長武居丈二君登壇〕

〇総務部長(武居丈二君) 本日提案いたしました各案件について御説明いたします。
 議案第1号は、平成12年度岩手県一般会計予算であります。
 予算編成の基本となる主要な施策につきましては、知事から申し上げたとおりであります。
 この予算の編成に当たりましては、国、地方を通じて引き続き厳しい財政環境下にあることにかんがみ、国の予算編成方針や地方財政計画等に留意するとともに、中期財政見通しを踏まえ、歳出の抑制等の財政健全化目標の達成など、財政運営の健全化に最善の努力を傾注しながらも、県民の豊さや暮らしやすさを向上させるための各般の施策の推進を図ることを基調としたところであります。
 特にも、昨年8月に策定いたしました岩手県総合計画に掲げる施策の着実な展開を基本として重点的な配分を行うとともに、地方分権の実行段階を迎えて、市町村が自主的・自立的な地域づくりを推進できるよう市町村総合補助金を創設したほか、介護保険制度の円滑な施行に向けた諸施策を推進するなど、地域福祉施策の充実にも重点的に取り組んだところであり、さらには、景気の本格的な回復を目指した国の経済新生対策に呼応しての、21世紀に向けた生活関連社会資本の整備の推進、中小企業金融対策及び雇用対策についても積極的な対応を行ったところであります。
 このため、歳入面では、県債の発行を極力抑制しながら、国庫支出金や各種基金の有効活用を図るとともに、使用料・手数料の見直しや未利用地の処分を進めるなどさまざまな財源確保に努め、一方、歳出面では、事務事業評価制度の運用により、事務事業の廃止・縮減等、徹底した歳出の合理化・効率化を図るとともに、優先度と緊急度の高い施策をこれまで以上に厳選するなど歳出の重点化に努め、限られた財源の効果的な活用を図ったところであります。
 以下、その概要について御説明いたします。
 第1条は、歳入歳出予算の総額を、それぞれ8、963億3、485万8、000円と定めるものであります。これを前年度当初予算に比較しますと、266億2、327万9、000円の増となっております。
 次に、歳入について御説明いたします。
 第1款県税につきましては1、233億9、700余万円を計上しており、前年度当初予算に比較しますと50億3、600余万円の増となっておりますが、この見積もりは、平成11年度の税収の最終見込みを基礎として、平成12年度の経済見通しによる経済指標、地方財政計画の収支見込みにおける税収の伸び及び県内経済の動向等を勘案するとともに、税制改正による恒久的な減税に伴う影響分などを見込んだものであります。
 第2款地方消費税清算金につきましては252億2、300余万円を計上しており、前年度に比較して14億3、900余万円の増となっております。
 第3款地方譲与税につきましては32億2、700余万円を計上しており、前年度に比較して4、300余万円の増となっております。
 第4款地方特例交付金につきましては10億1、000万円を計上しており、前年度に比較して4、600万円の増となっております。
 第5款地方交付税につきましては2、828億9、500余万円を計上しており、前年度に比較して207億3、600余万円の増となっております。
 第6款交通安全対策特別交付金につきましては6億8、200万円、第7款分担金及び負担金につきましては115億500余万円を計上しております。
 第8款使用料及び手数料につきましては120億900余万円を計上しており、前年度に比較して3億6、100余万円の増となっておりますが、これは、使用料・手数料の適正化を図ったことなどによるものであります。
 第9款国庫支出金につきましては1、799億3、100余万円を計上しており、これを前年度当初予算に比較しますと61億8、500余万円の増となっております。
 第10款財産収入につきましては20億7、800余万円を計上しております。
 第11款繰入金は217億2、800余万円を計上しておりますが、これは、県債管理基金、公共施設等整備基金及び緊急地域雇用特別基金等からの繰り入れを行うものであり、前年度に比較して58億500余万円の減となっております。
 第13款諸収入につきましては1、106億2、800余万円を計上しておりますが、その主なものは、貸付金の元利収入であります。
 第14款県債につきましては1、220億1、800万円を計上しており、前年度に比較して48億8、000万円の増となっております。
 次に、歳出について御説明いたします。
 第1款議会費につきましては14億9、800万円を計上しております。
 第2款総務費につきましては491億1、100余万円を計上しておりますが、この事業の主なものは、東北新幹線建設促進対策事業費153億3、500余万円、盛岡駅西口複合施設整備事業費1億4、700余万円、いわて情報ハイウェイ推進費6億9、600余万円、地域活性化事業調整費8億円、市町村総合補助金13億円、衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査執行費10億5、000余万円、航空消防防災体制強化推進事業費2億1、200余万円、国勢調査費6億7、200余万円等であります。
 第3款民生費につきましては502億7、500余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、民間社会福祉施設整備等助成費3億8、300余万円、重度心身障害者(児)医療助成費15億9、900余万円、知的障害者更生援護費24億2、400余万円、老人福祉活動推進費10億8、200余万円、老人福祉施設整備費17億6、800余万円、介護給付費等負担金66億2、100余万円、介護保険財政安定化基金積立金9億400余万円、介護予防・生活支援事業費補助5億4、100余万円、国民健康保険事業安定化推進費10億1、100余万円、特別保育事業費10億8、400余万円、乳幼児、妊産婦医療助成費7億3、100余万円、すこやか子どもランド(仮称)整備事業費9億3、700余万円、児童保護措置費53億6、400余万円、重症心身障害児施設整備事業費補助3億4、000余万円、児童扶養手当支給事業費34億8、100余万円、生活保護扶助費42億2、700余万円等であります。
 第4款衛生費につきましては246億2、400余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、母子保健対策費4億8、800余万円、環境保健センター(仮称)整備事業費39億2、300余万円、特定疾患対策費6億2、800余万円、精神障害者入院等措置費6億8、400余万円、老人保健対策費64億4、000余万円、産業廃棄物処理モデル事業推進費12億5、300余万円、合併処理浄化槽整備費補助2億7、900余万円、シーサイドウォーキングロード整備事業費2億5、900余万円、ふれあいトレッキングロード整備事業費2億8、000万円、救急医療対策費7億6、900余万円等であります。
 第5款労働費につきましては39億2、600余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、緊急地域雇用特別基金事業費補助6億1、600余万円、職業能力開発推進事業費4億2、100余万円、公共職業能力開発費4億7、400余万円等であります。
 第6款農林水産業費につきましては1、383億1、100余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、地域農業基盤確立農業構造改善事業費9億5、900余万円、山村等振興対策事業費9億9、800余万円、新いわて農業再編総合対策事業費8億3、400余万円、中山間地域等直接支払事業費19億4、300余万円、いわて純情米生産体制強化総合推進対策事業費10億7、100余万円、農業協同組合経営改善特別対策資金貸付金52億6、000万円、畜産団体育成対策費9億7、500余万円、畜産基盤再編総合整備事業費6億7、600余万円、県営畜産経営環境整備事業費15億3、100余万円、環境保全型畜産エネルギー利用推進事業費3億800余万円、かんがい排水事業費12億9、600余万円、緊急生産調整推進排水対策特別事業費12億100余万円、農道整備事業費38億8、100余万円、ほ場整備事業費122億8、300余万円、土地改良総合整備事業費21億7、300余万円、中山間地域総合整備事業費33億2、400余万円、農村総合整備事業費28億6、900余万円、田園地域マルチメディアモデル整備事業費11億2、000余万円、農業集落排水事業費40億7、900余万円、国営土地改良事業費負担金41億2、600余万円、水土保全森林緊急間伐対策事業費5億3、400万円、造林事業費22億9、800余万円、林道開設事業費30億8、100余万円、ふるさと林道緊急整備事業費56億7、400万円、治山事業費47億5、800余万円、沿岸漁場整備開発事業費15億2、100余万円、漁業協同組合信用事業統合促進資金貸付金23億6、800余万円、漁港修築事業費54億6、900余万円、海岸保全施設整備事業費13億1、000余万円、漁業集落環境整備事業費13億2、500余万円等であります。
 第7款商工費につきましては797億8、100余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、いわて新産業創造支援事業費4億1、800余万円、商工業小規模事業対策費26億7、400余万円、商工観光振興資金貸付金172億8、400余万円、中小企業経営安定資金貸付金270億2、700余万円、いわて緊急経済対策資金貸付金111億2、600余万円、信用組合経営基盤強化資金貸付金38億300余万円、工業立地促進資金貸付金41億9、900余万円、休廃止鉱山鉱害防止事業費7億9、500余万円等であります。
 第8款土木費につきましては1、416億9、400余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、空港整備費44億600余万円、交通安全施設整備事業費24億7、900余万円、道路維持修繕費39億8、000余万円、道路改築事業費105億3、400万円、道路改良事業費39億9、200余万円、緊急地方道路整備事業費117億3、000余万円、地方特定道路整備事業費90億700余万円、新幹線関連道路整備事業費31億2、300万円、地域活性化支援道路整備事業費61億6、000万円、クロスロード整備事業費10億8、000万円、基幹河川改修事業費26億2、500余万円、河川災害復旧等関連緊急事業費30億1、600万円、河川災害復旧助成事業費16億1、600万円、砂防事業費25億7、400余万円、急傾斜地崩壊対策事業費16億4、600余万円、早池峰ダム建設事業費21億7、700余万円、簗川ダム建設事業費37億4、500万円、港湾改修事業費19億5、000万円、土地区画整理事業費20億9、400万円、過疎地域公共下水道整備代行事業費12億6、400万円、公営住宅建設事業費9億1、000余万円等であります。
 第9款警察費につきましては328億4、100余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、警察行政運営費235億1、800余万円、警察情報管理システム開発事業費4億6、700余万円、警察署庁舎整備事業費5億6、800余万円、待機宿舎建設事業費9億2、800余万円、少年非行防止対策及び保安警察費1億6、300余万円、交通安全施設整備費16億7、900余万円等であります。
 第10款教育費につきましては1、885億400余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、外国青年招致事業費4億900余万円、校舎建設事業費8億9、400余万円、校舎大規模改造事業費14億6、200余万円、遠洋漁業実習船代船建造事業費13億9、700余万円、文化財保護推進費3億9、700余万円、美術館整備事業費60億100余万円、高田松原野外活動センター艇庫等整備事業費1億6、500余万円、県立大学運営費55億5、100余万円、私立学校運営費補助48億400余万円等であります。
 第11款災害復旧費につきましては166億4、900余万円を計上しておりますが、その事業の主なものは、団体営農地等災害復旧事業費24億300余万円、林道災害復旧事業費3億8、700余万円、河川等災害復旧事業費124億4、300余万円等であります。
 第12款公債費につきましては1、090億1、200余万円を計上しております。
 第13款諸支出金につきましては598億300余万円を計上しており、その主な内容は、公営企業貸付金63億円、公営企業負担金195億4、300余万円、地方消費税清算金142億7、700余万円、地方消費税交付金126億8、500余万円、自動車取得税交付金30億6、100余万円等であります。
 第14款予備費につきましては3億円を計上しております。
 以上をもって第1条の説明を終わりますが、歳出に充当した一般財源の額は、県税、地方交付税等で4、782億100余万円となっており、その割合は53.4%となっております。
 第2条債務負担行為は、地区合同庁舎管理費に係る機械設備改修工事等64件について、債務負担行為を行おうとするものであります。
 第3条地方債は、職員宿舎建設事業等60件について、起債の限度額、起債の方法、利率及び償還の方法を定めようとするものであります。
 第4条一時借入金及び第5条歳出予算の流用は、それぞれ所要の措置を講じようとするものであります。
 議案第2号から議案第12号までは、平成12年度の母子寡婦福祉資金特別会計予算、農業改良資金特別会計予算、県有林事業特別会計予算、林業改善資金特別会計予算、沿岸漁業改善資金特別会計予算、中小企業振興資金特別会計予算、土地先行取得事業特別会計予算、証紙収入整理特別会計予算、流域下水道事業特別会計予算、港湾整備事業特別会計予算、県民ゴルフ場事業特別会計予算でありますが、これは、それぞれの事業計画等に基づき、その所要額を計上したものであります。
 議案第13号から議案第15号までは、平成12年度の県立病院等事業会計予算、電気事業会計予算、工業用水道事業会計予算でありますが、これは、それぞれの事業計画に基づき、収益収支及び資本収支等の所要額を計上したものであります。
 議案第16号から議案第21号までの6件は、建設事業等に要する経費の一部を受益市町村に負担させることに関し、それぞれ議決を求めようとするものであります。
 議案第22号から議案第65号までの44件は条例議案でありますが、これは、岩手県環境衛生関係営業審議会条例ほか16条例を新たに制定するとともに、岩手県統計調査条例などの一部または全部を改正しようとするものであります。
 なお、このうち岩手県環境衛生関係営業審議会条例ほか15条例は、地方分権一括法の成立に伴い、新たに条例を制定しようとするものであり、また、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う関係条例の整備に関する条例は、同法の施行に伴い教育長の給与及び旅費に関する条例等20条例の一部を改正するなど、所要の整備をしようとするものであります。
 議案第66号は、包括外部監査契約の締結に関し議決を求めようとするものであります。
 次に、報告第1号は、職員による自動車事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 報告第2号は、道路の管理に関する事故に係る損害賠償事件に関する専決処分について報告するものであります。
 以上のとおりでありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださるようお願いいたします。
   

〇議長(山内隆文君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日は、これをもって散会いたします。
   午後2時5分 散 会


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