令和5年9月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

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〇32番(軽石義則君) このたび、9月3日に投開票されました岩手県議会議員選挙を経て、新たに構成された会派希望いわての軽石義則です。
 コロナ禍を乗り越えて、原材料やエネルギーなどの物価高騰により、厳しい環境の中で懸命に努力されている県民の皆様に敬意を表し、託された議席の役割をしっかりと自覚した上で、現場の声を発信するため、今後の議会活動に取り組む決意であります。
 今任期の最初となる会派を代表しての質疑をさせていただく機会をいただきました皆様に感謝を申し上げ、代表質問をさせていただきます。
 初めに、今回の知事選挙の結果の受けとめと知事が果たすべき責任について、知事のお考えをお伺いいたします。
 去る9月3日に行われた岩手県知事選挙において、達増知事は33万6、000票余りを獲得、新人候補に10万票以上の大差をつけて5期目の当選を果たされました。市町村別に見ても、28市町村で達増知事が勝利し、多大な支持を得たというべき内容でありました。
 インターネット調査で明らかになりましたが、達増県政について全体の86%が肯定的に評価しており、その任期のほとんどが、震災復興や新型コロナウイルス感染症拡大への対処という危機続きの局面と重なる中、現場に寄り添った施策の積み重ねにより、達増知事が発揮されてきた手腕を県民が高く評価していたことが証明された結果と考えます。
 また、いわて県民計画(2019〜2028)アクションプランに加え、今回県民に示したマニフェストプラス39の着実な実行への期待感もあったことと思います。
 これら施策の詳細については、以下、詳しくお聞きしますが、5期目を迎える知事は岩手県政で初めてのことであり、全国知事会での役割もより重要になるのではないのでしょうか。
 選挙期間中、知事も多くの県民の声を聞いてきたと思います。復興需要減少後の建設業の苦境や記録的不漁に苦しむ漁業、水産業の苦境に加え、一向におさまる気配のない物価高への対策、所得の向上を求める声は、私の耳にも多く届いています。
 まず、岩手県政初の5期目の知事としての今回の選挙結果の受けとめと、これら切実な諸課題に代表される県民の声にどのように応えていくお考えか、あわせて伺います。
 次に、今回の知事の選挙公約マニフェストプラス39について伺います。
 現在の県政の最上位の計画は、いわて県民計画(2019〜2028)であり、その実行計画としてアクションプランがあると認識しており、いずれも達増知事の任期中に策定されたものであります。
 今回、知事は、希望郷いわて、その先へをキャッチフレーズに、マニフェストプラス39を公約に掲げ論戦を交わされたわけですが、知事の任期中につくられたいわて県民計画(2019〜2028)とこのマニフェストは、どのような関係にあるのでしょうか。
 私の理解では、いわて県民計画(2019〜2028)やアクションプランに盛り込まれている施策のうち、今回の選挙後4年の間に、特に推進する施策について具体的に記載し、わかりやすく解説したものと認識しておりますが、今後の政策の推進にこのマニフェストがどのように反映されていくのか、いわて県民計画(2019〜2028)の変更等も想定されるのか、知事の考えを伺います。
 次に、財政面について幾つか伺います。
 計画を施策に落とし込み実行していくためには財源の裏づけが必要でありますが、9月28日に公表された令和9年度までの岩手県中期財政見通しでは、極めて厳しい財政状況が明らかにされております。今後、収支不足が拡大を続け、収支不足を埋めるための財政調整基金は、令和8年度には10億円にまで減少し、令和9年度には今年度の71億円の倍以上の153億円もの収支不足となり、財政調整基金も枯渇することが想定されています。
 国に対して、人口減少が進む地方を支えるための地方財政制度の見直しを求めていくことは必要ですが、制度の見直し、または人口減少局面の転換は近々には難しく、現行の地方財政制度を前提に推計する以上、人口減少を要因とする税収の伸び悩みや地方交付税等の減少は、避けがたいものであることも事実です。
 いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランが対象とする令和8年度までは何とか財源確保できる見通しではありますが、マニフェストプラス39には多額の財政負担を要する施設整備も多く盛り込まれており、今回の中期財政見通し以上に収支不足が拡大するのではないかと懸念しております。
 どのように財源確保を行い、これらの施設整備を進めながら、令和9年度以降も将来的に安定的な行財政運営を行うための財政基盤を構築していくお考えか伺います。
 また、同日に公表された令和6年度予算編成通知によれば、昨年度に引き続き、人口減少対策を初め、GX、DX、安全・安心な地域づくりに重点的に取り組むとされていますが、5期目となり最初の予算編成となる令和6年度当初予算編成は、マニフェストプラス39の最初の検証を受ける機会でもあります。
 このマニフェストの中でも特に県民が求めているのは、物価高への対応や所得向上が実感できる施策だと考えますが、令和6年度当初予算編成において重点化する項目について、知事のお考えを伺います。
 次に、人口減少対策について伺います。
 3歳未満の保育料を第2子から所得制限なしに無料とするため、令和5年度当初予算に4億6、400万円余を計上するなど、全国トップクラスの子育て支援策が実施されています。子育て世帯の可処分所得増加につながる本施策は、多くの県民が関心を持ち、期待を高く寄せるもので、本県の人口減少対策に大きく寄与するものと評価するところです。
 知事がマニフェストプラス39に掲げるとおり、さらなる拡充が望まれますが、必要な財源の確保など課題もあると思います。市町村などを通じて現状把握に努めていると思いますが、知事は、現在実施している全国トップクラスの子育て支援策をどう評価し、今後の拡充につなげていくお考えか伺います。
 いわて県民計画(2019〜2028)の人口減少対策を推進するふるさと振興総合戦略について、計画期間を2年延長する方向であり、社会減ゼロの達成目標を令和8年に先送りするという報道もありますが、社会減対策は待ったなしの課題であり、強力に施策を展開していく必要があると考えます。
 計画期間変更の意図するところとあわせて、社会減ゼロの達成に向けた知事のお考えを伺います。
 県民所得向上が社会減対策を進める上で重要であり、働きたい人が働ける社会を実現することで、所得が上がり、企業が収益を上げて、労動力の確保と所得向上で社会減をどう食いとめるかが人口減少対策の重要なポイントと考えます。働きたいけどすぐには子供を預かってくれるところがない、所得の差があって保育士などの人材が県外に流出しているという声も聞こえてきます。子育てを支える保育士、介護を担う介護職員の確保が重要です。
 現場の実態の一例として、県私学振興会の調べでは、令和5年9月26日現在の認定こども園の教職員新規加入者数は85人、退職者数は88人で、退職者のほうが多い現状にあるほか、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、保育士や介護職員の本県の平均年収は全国平均より低い傾向にあるようです。賃上げや福利厚生の充実といった労働条件の改善や、現場を離れている有資格者など潜在的な労働力の掘り起こしに、国や市町村と連携して取り組む必要があるのではないでしょうか。
 暮らしを支えるエッセンシャルワーカーである保育士や介護職員について、年収や離職率など現場の実態を把握、分析し、人材確保や所得向上につなげる施策を展開していくべきと考えますが、知事の御所見を伺います。
 次に、誰もが安心して暮らすための医療体制の構築について伺います。
 高齢化に伴い、医療ニーズがピークを迎えつつある中、人口減少や医療の高度化、医療従事者の不足など、社会環境の変化に対応した医療体制の構築が喫緊の課題となっています。
 本県の人口10万人当たりの医師数は、全国と比較して低い水準にあり、県北、沿岸地域の医師不足や、特定診療科の医師不足が続いていますが、質の高い医療サービスを提供するためには、医師確保対策はもとより、医療機関の機能と役割に応じた地域医療連携体制や救急医療体制、周産期医療体制などの整備を進めていく必要があると考えます。
 このような現状を踏まえ、知事が目指す持続可能で希望ある医療体制の構築とはどのような姿なのか、お示し願います。
 有識者に県の行財政の構造的、中長期的課題を分析していただく、持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会において、県立病院は、県民の生命や健康、生活に直結する本県の強みであり、地域医療の確保に主導的な役割を果たしているとした上で、県民の健康や暮らしの安全・安心を守ることを重視して多くの病院等を維持することを選択し、毎年度200億円を超える繰出金を一般会計から支出してその経営を支え、その中で効率化の努力がなされてきたと評価されています。
 新型コロナウイルス感染症対応においても、相談、診療等への対応に医師会や他の医療機関とともに県立病院が大きな役割を担い、関係者の努力などによりコロナ禍を乗り越えてきたところであり、医師不足や地域偏在の状況、限られた医療資源、広大な県土を有する本県において、全国1位の20の病院数を有する県立病院の果たす役割は、今後ますます重要になってくるものと思います。そのような中、厳しい経営状況にありながらも、病院事業のハード面への投資も含めて推進する必要もあるのではないでしょうか。
 知事は、マニフェストプラス39において、県立病院の計画的な更新とあわせ、症例数や手術数が多い病院、いわゆるハイボリュームセンターの整備を進めるとしていますが、その狙いと今後の整備方針について伺います。
 次に、岩手県福祉総合相談センターと岩手県立県民生活センターの合築について伺います。
 この施策についてはマニフェストプラス39に盛り込まれており、早速実現に向けて動いていただいたと思いますが、活用が望まれていた旧県立盛岡短期大学跡地への建設により、さきに公表されていた盛岡市の山王児童センターと山王老人福祉センター、母子生活支援施設とあわせ相談機能のワンストップ化が進むこととなり、県と市それぞれの施策の相乗的効果の発揮が期待され、県民にも市民にも目に見えるわかりやすい事業として実施されることが期待されます。特に、児童相談所の相談件数の増加への対応は喫緊の課題であり、人的体制の充実も含め早期の施設完成が望まれます。
 県と市の施策の相乗効果により福祉の拠点化を図っていくことが重要であると考えますが、県としての施設の合築、盛岡市との施策連携、建設地の選定など、将来を見据えた知事の判断が求められる本事業において、知事が込めた思いと期待について伺います。
 前段申し上げた福祉拠点の完成は令和9年度に予定され、周辺地区には既に昨年10月に盛岡バスセンターが開業しており、市街地再開発事業として国、県、市が財政支援を行っている複合商業施設monakaが令和6年度に開業予定です。
 知事が令和5年2月県議会定例会において、ニューヨークタイムズ紙に盛岡市が取り上げられたことを絶好のチャンスと捉え、これまで行ったことがないような誘客促進を展開し、盛岡市のみならず、県北地域、沿岸地域、県南地域と岩手県全域に波及させていくと述べられているとおり、広域的な視点からの効果を全県に波及させていく視点が欠かせません。
 まず、複合商業施設monakaへの財政支援における県のスタンスについて伺います。
 また、市街地再開発事業が進む城南地区は、官公庁とも至近であり、県内全域につながる交通アクセスの拠点、福祉、消費生活分野の拠点、商業の拠点が集中した地域として新たな人流が生まれることが想定されます。加えて、盛岡駅から内丸地区と城南地区にかけての人の流れやさまざまな都市機能のつながりをつくることが重要と考えており、将来的なまちづくりを見据え、その中心である内丸地区のあり方の検討も進められています。これらは県庁舎の場所も含めた市街地の今後のあり方にも影響するのではないでしょうか。
 市街地再開発、都市計画ともに、一義的には盛岡市の所管となることは理解していますが、県庁、市役所の建てかえを含めた市街地の今後のあり方が注目を集める中、県庁所在地として、県都盛岡市で進められているこの市街地の再開発や内丸地区のあり方の検討について、県庁舎の方向性も含めて、知事はどのような思いをお持ちでしょうか。
 次に、市町村と連携した県政について伺います。
 知事は、マニフェストプラス39において、市町村と連携した県政の推進を掲げ、税務、保健福祉、土木など、小規模自治体において専門職員が不足しているなどの課題を示し、各市町村が特色あるまちづくりを進められる体制づくりを進めるとともに、広域振興局を拠点とし、域内市町村と連携した一体感あるふるさと振興を推進するとしています。
 本年度から、知事が広域振興局長とともに市町村の要望の場に出席していますが、これまで以上に全庁的に市町村の課題等を共有した上で、次年度の予算編成や政府への提言等に反映させるなど、市町村との連携を重視して県政運営を行ってきたものと認識しています。
 知事は、さきの臨時会で、人口規模の小さな町村に特に配慮しながら、市町村相互や県、市町村との連携、協働を一層進めると述べられましたが、人口規模の小さい町村を重視する意図と、市町村の特徴を踏まえた連携、協働の具体的方策について、知事のお考えを伺います。
 県民生活に身近な商店街が活性化することによって、地域が活性化していくことも重要です。商店街は、買い物弱者対策、子供や高齢者の見守りや地域文化の継承、地域雇用など多面的な機能を担っており、歩いてアクセスできる地域住民の交流の場としての強みもあります。
 県の令和3年度商店街実態調査において、経営者の高齢化、後継者難が問題点に挙げられており、事業承継などの課題への対応と、生活を支える地域の商店街の意欲ある取り組みを市町村と連携して支援することで、地域経済やコミュニティーの活性化を図ること、また、地域の強みや特徴を生かした商店街振興を図ることが大切な時代であると考えますが、商店街支援における県のスタンスについて伺います。
 次に、県営スポーツ施設のあり方について伺います。
 県営スポーツ施設の多くは盛岡市の青山、みたけ地区に集中しており、老朽化が進んでいます。陸上競技場を初めとする県営運動公園や県営体育館など、施設の多くは昭和40年代に整備され、60年近くが経過しており、県営スケート場や県勤労身体障がい者体育館についても建設から50年近くが経過するなど、今後のあり方を示す時期が既に到来しています。
 冒頭述べたとおり、岩手県中期財政見通しで示された厳しい財政局面でこれらの施設を一度に更新することが難しいことは理解しますが、本年4月に開場したきたぎんボールパークは、県と市が共同で整備、所有し、その設計段階から運営を担う民間事業者の創意が生かしやすいPFI方式で整備されるなど、人口減少社会において、費用面、運営面で工夫を凝らし、経費を節減しながら高機能な施設を整備した好事例もあります。
 また、整備構想を示す際には、各競技団体との連携、調整はもちろんですが、県民の健康増進施設としての視点も不可欠です。両方の視点を大切にしつつ整備を進めてもらいたいと考えます。
 今後、どのような形で老朽化施設の整備を進めていくのかについて、構想を示した上で、競技団体や県民の声を整備方針に反映させ、県議会も含め県民的な議論の俎上に上げていくことが必要だと考えます。この4年間の任期でどのように進めていかれるのかお伺いいたします。
 最後に、マニフェストプラス39にも記載されているスポーツ医・科学センターについて伺います。
 この施設については、本県での国体開催を契機とした競技力向上のために、平成22年3月に多目的屋内練習施設等整備基本構想まで取りまとめられており、県営運動公園サッカー、ラグビー第2グラウンドに整備する予定でありました。東日本大震災津波の発災により計画は凍結されておりますが、平成29年12月の県営スポーツ施設のあり方に関する懇談会報告でも、県営の施設として整備が望ましいこと、改めてその整備のあり方について検討を行うことが望ましいとして取りまとめられています。
 現在は県営スケート場内に拠点を設置し測定機器等を保有しておりますが、他県の施設の状況に比較して測定機器、スペースとも大きく見劣りし、ハイパフォーマンススポーツセンターとの連携機関としての要件も満たしていないなどの課題もあります。
 今回、一定の役割を終えた県営体育施設を整理、統合しながら、新たな機能を持った施設としてスポーツ医・科学センターを建設するとマニフェストプラス39に具体的に記載されたことにより、整備の進捗を期待するものですが、全体の施設計画の中で設置場所などが検討されていくのではないかと考えます。
 スポーツ医・科学センターの整備目的を明確にする必要があると考えますが、いかがでしょうか。また、設置場所や規模、整備時期をどう想定しているのか、検討状況についてもお示し願います。
 以上をもちまして会派を代表しての質問とさせていただき、今後は、今回の選挙戦で実感した県民の皆様から寄せられた現場の声に誠実に取り組み、次世代を担う子供たちにすばらしい岩手県をつないでいくため、二元代表制を尊重して全力を尽くしてまいります。
 御清聴ありがとうございます。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 軽石義則議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、知事選の結果の受けとめと県民に対する責任についてでありますが、このたびの知事選挙では、いわて県民計画(2019〜2028)の基本目標であります東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現に向けたアクションプランなどへの理解をいただき、県民の広範な支持を得て当選を果たしました。
 選挙中は県内全ての市町村、各地域を回り、県民の皆さんと直接触れ合いながら、県民生活や地域経済に大きな影響を及ぼしている物価高騰等のさまざまな課題を伺い、また、岩手県のあるべき姿を共有することができました。そして、激励の言葉、また、感謝の言葉をいただき、今後の県政に対する期待の大きさを強く実感したところであります。
 県政初の5期目の知事として、いわて県民計画(2019〜2028)の遂行を基軸とし、県民一人一人に寄り添った施策を迅速に展開するなど、希望郷いわての実現に向けて、県民本位の県政を力強く進めてまいります。
 次に、マニフェストプラス39の位置づけについてでありますが、このたびの選挙に臨むに当たり、現職の知事として、いわて県民計画(2019〜2028)や第2期アクションプランの推進を公約にするとともに、さらに新たな施策を求める声に応えるべく、39項目の政策を加える形でマニフェストプラス39を掲げたものであります。
 現在、マニフェストプラス39の各項目について、財源の問題や既存の施策との関連等を全庁で検討しているところであり、市町村を初め、関係団体とも連携、調整を進めながら、その具体化を図ってまいります。
 次に、中期財政見通しと第2期アクションプラン、マニフェストプラス39の関連についてでありますが、今回公表した中期財政見通しにおいては、県の実質的な一般財源が縮小傾向にある一方で、人件費や社会保障関係費、公債費が増加傾向であることに加え、老朽化に伴う大規模施設の改修、更新経費も大幅に増加することを見込んでおり、今後の財政運営は、一層厳しい状況に置かれるものと認識しております。
 そのため、引き続き政策の裏づけとなる財源の確保や事務事業の精査を通じためり張りある予算編成などにより、限られた財源の重点的かつ効果的な活用に努めていく必要があります。
 さらに、マニフェストプラス39の実現に向けて、県有資産や各種基金の有効活用、ふるさと納税や使用料の見直しなど、これまでの取り組みを一層強化しつつ、環境債の発行など全国をリードする新たな財源確保手法についても積極的に導入を進め、将来にわたり安定的な行財政運営を行うための財政基盤を構築してまいります。
 次に、重点的に取り組む施策についてでありますが、令和6年度当初予算編成におきましても、第2期アクションプランに基づき、県が直面する最大の課題である人口減少問題に最優先で取り組むこととし、四つの重点事項を中心に、新たな施策の企画立案を行うこととしております。
 特に、人口減少対策については、先般開催した人口問題対策本部会議において、一人一人の生きにくさを生きやすさに変えるため、若年層を中心とした所得の向上、仕事と子育ての両立を実現するための働き方の改革、そして、女性の雇用労働環境の安定と活躍できる職場の創出などの方向性を示し、各部局に対して、来年度の効果的な事業の立案を指示したところであります。
 また、現下の危機である物価高騰に対しては、現在、全国知事会を通じて国に対策を働きかけており、今後明らかになる国の経済対策の動向などを踏まえながら、県民一人一人に寄り添った必要な支援策を機動的に講じてまいります。
 次に、子育て支援の評価と拡充方針についてでありますが、人口減少に立ち向かうためには、要因となっているさまざまな生きにくさを生きやすさに変えていく施策の展開が必要であり、特に、子育てに関しては、経済的負担の軽減が重要な課題であるという認識のもと、県としては、国の施策を待たずに、財源を確保しながら、積極的に県独自の支援策に取り組んでいるところです。
 今年度は、市町村との連携により、他県でも例の少ない第2子以降の3歳未満児を対象とした所得制限を設けない保育料無償化や、在宅育児支援金の創設など新たな取り組みを展開しており、これまで以上に子育て世帯の経済的負担の軽減が図られるものと考えております。
 今後の支援策の拡充に向けては、先月、岩手県人口問題対策本部会議を開催し、本県における少子化要因の詳細な分析結果等を踏まえ、仕事と子育ての両立に向けた子育て支援サービスの充実などを今後の取り組みの方向性として掲げたところであり、現在実施している事業の効果や課題等を検証しながら、施策の一層の充実を図ってまいります。
 次に、社会減対策についてでありますが、社会減対策は、人口減対策とともに人口減少対策の根幹であり、地方の社会減に歯どめをかけるためには、地方の創意工夫による取り組みとあわせて、全国的な課題である東京一極集中の是正が不可欠であります。
 国は、平成26年度以降地方創生に取り組んできた一方で、東京圏と地方との転出入均衡がいまだ達成できていないことから、昨年改訂した国の総合戦略では、転出入均衡の達成時期を令和6年度から令和9年度に変更し、人口減少や少子高齢化などの社会課題解決を図ることとしています。
 そのため、県では、これらの改訂や第2期アクションプランの内容を踏まえて、岩手県第2期ふるさと振興総合戦略の改訂を進めているところであり、社会減ゼロについては、社会減対策を一層強化させることで、国よりも1年早い令和8年度の達成を目指すとしているところであります。
 東京一極集中の是正と地方重視の経済財政政策を国と地方自治体が一体となって取り組めば、本県の社会減ゼロは可能と考えておりまして、いわて県民計画(2019〜2028)や岩手県第2期ふるさと振興総合戦略のもと、市町村等と連携しながら、オール岩手で人口減少対策を強力に推進してまいります。
 次に、保育士や介護職員の現状と処遇改善の必要性についてでありますが、令和4年の県内の保育士及び介護職員の年収は、保育士が332万円余、介護職員が324万円余となっており、全産業と比較すると約1割低くなっています。
 また、本年3月の県内保育士養成施設卒業者の県内就職率は68.4%であり、令和4年度の県内の介護職員等の離職率は10.2%となっています。
 このため県では、保育や介護の人材確保や環境の整備に向け、直近では、令和4年に新型コロナウイルス感染症対応の経済対応策として、保育士や介護職員の収入を3%程度引き上げる処遇改善加算への対応を行いましたほか、修学資金の貸し付け、新卒者や潜在有資格者の就職マッチング支援、市町村への保育補助者等の配置や介護施設等へのICT導入による業務負担軽減に取り組んでおります。
 また、国では、こども未来戦略方針に保育士の配置基準の改善、そして、さらなる処遇改善を盛り込んだほか、介護職員についても、社会保障審議会において、令和6年度の介護報酬改定に向けた議論が進められているところであります。
 県といたしましては、保育や介護人材の確保や処遇改善について、引き続き国に対して要望していくとともに、市町村や関係団体等と連携して一層の施策の推進を図り、働きたい人が安心して働き続けることができる環境整備に取り組んでまいります。
 次に、持続可能で希望ある医療体制の構築についてでありますが、本県医療を取り巻く環境は、少子高齢化や人口減少に伴う患者数の減少、医療の高度化、専門化、新型コロナウイルス感染症への対応のほか、医師不足、偏在の中で、令和6年度から医師の時間外労働時間の上限規制が開始されるなど、大きく変化しております。
 現在策定を進めている次期岩手県保健医療計画では、このような環境の変化を踏まえ、疾病、事業別の医療圏として、周産期医療や精神科救急に加え、がんや脳卒中、心血管疾患などについて、県民に提供する高度、専門的な医療のさらなる質の確保を図るため、専門人材や高度医療機器の配置の重点化などによる広域的な医療圏の設定について検討を進めております。
 二次保健医療圏については、疾病・事業別医療圏の検討を踏まえ、少子高齢化と人口減少に対応しつつ、県民が身近な地域で安心して医療を受けられる体制を引き続き確保できるよう検討を進めております。
 これらの検討に当たっては、医師不足、偏在の解消が不可欠であり、奨学金による医師養成などの都道府県レベルでの取り組みだけでは限界がありますことから、地域医療を守るための実効性のある仕組みを早急に創設するよう、国に対し強力に要請しております。
 こうした取り組みにより、県民が、居住する地域で必要なときに適切な医療が受けられるよう、急性期医療から在宅医療に至るまで切れ目のない持続可能な医療体制の構築を進めてまいります。
 次に、県立病院におけるハイボリュームセンターについてでありますが、人口減少や医療の高度、専門化等、医療を取り巻く環境の変化の中で、身近な医療を地域で受けられる体制を確保しつつ、限られた医療資源を効率的に活用していくという視点が、県立病院においても求められていると考えております。
 マニフェストプラス39で取り上げましたハイボリュームセンターの整備については、県内で高度、専門的な医療を安定的に提供できる体制を確保していくため、まずは、中核となる病院に疾病・事業別医療圏の設定等に対応して一定の機能集約を図り、症例数や手術数を確保していくことを検討します。
 このような取り組みを進めながら、将来のさらなる施設整備について検討してまいります。
 次に、岩手県福祉総合相談センターと岩手県立県民生活センターの合築についてでありますが、両施設は、これまでの間、本県の福祉、消費生活分野における相談支援業務の中核的な機関として役割を担ってきました。しかし、建設から相当年数が経過し、施設の老朽化が著しく、相談室の不足や執務スペースの狭隘化など、現有施設に関するさまざまな課題が生じているところであり、近年増加傾向にある各種相談や複雑化、困難化する事例に的確に対応するため、移転、改築により設備の充実等の機能強化を図ろうとするものであります。
 建設地の選定に当たりましては、軽石義則議員御紹介のとおり、同一敷地内に盛岡市所管施設が整備される予定であり、公的福祉機関の集積が図られるほか、医療機関等との連携体制が維持され、緊急時の迅速な対応が可能であることから、旧盛岡短期大学跡地としたものであります。
 個人の価値観や生き方が多様化し、住民の悩みや不安が複雑化する現代社会において、地方行政による相談支援体制の整備は、県民一人一人に寄り添った施策を展開する中で、県が広域自治体として果たす極めて重要な使命であると考えております。
 今回の合築による相談支援機能の一元化では、福祉、消費生活分野の両面からのアプローチによる支援や、隣接する盛岡市施設と一体となった公的福祉の拠点形成により、相談者の抱える複合的な問題の解決に資する相乗的効果が発現できるものと期待しております。
 次に、複合商業施設monakaへの財政支援についてでありますが、monakaの整備が進められている盛岡市中ノ橋通地区は、旧来から公共交通の結節点であるとともに、肴町商店街などを含むにぎわいの拠点であり、現在、持続的なにぎわいと魅力ある都市空間の形成を図るため、老朽化した建物やテナントビルの集約化等による市街地再開発事業が行われています。
 この事業は、観光情報の発信や県産品販売を行うmonaka等の整備により、中心市街地の活性化や価値向上を図るとともに、盛岡バスセンターと一体となって、県内外の人や物が行き交う広域的な拠点を目指しているものであります。
 この整備により、県内全体の交流人口や関係人口が拡大し、観光や経済面等で県内全ての市町村への波及効果が期待されますことから、令和3年度から毎年度、交付金を支出しているところであり、引き続き、県として財政支援をしてまいります。
 次に、盛岡市のまちづくりについてでありますが、盛岡市は、県都として歴史と文化、自然と調和しながら発展を続け、東北地方における拠点機能を担う都市であると認識しております。
 こうした中、盛岡市中ノ橋通地区では、昨年度新たに盛岡バスセンターが開業し、また、現在も市街地再開発事業が進められており、城南地区のにぎわいや新たな交流の創出、地域の活性化が図られることが期待されています。
 また、内丸地区については、現在、昨年3月に策定した内丸地区将来ビジョンの具体化に向け、(仮称)内丸プランの策定が進められているところであります。
 県といたしましては、引き続き、その検討の場である内丸地区再整備検討懇話会に参画し、市や関係機関と連携を図りながら、内丸地区のあるべき将来像の実現に向けて、県としての役割を果たしてまいります。
 次に、県庁舎についてでありますが、耐震診断の結果による具体的なデータや科学的知見に裏づけられた技術的な論点に加え、現在の県庁舎が内丸地区に建てられた経緯も考慮した上で、整備財源など他のさまざまな論点とあわせ、中長期的な視点での県庁舎のあるべき姿を整理し、将来にわたって県民にとって必要なサービスが提供できるよう検討を進めてまいります。
 次に、小規模町村への支援等についてでありますが、人口の少ない小規模な町村は、財政面や人員体制の制約から、単独の人材確保や事業実施が困難な場合など、重要課題の解決や住民サービスの維持、確保等のため、県が重点的に支援を行っていく必要があると認識しております。
 市町村との連携については、これまでも滞納整理機構による事務の共同処理や、相互交流の枠組みを活用した技術職員の派遣などの取り組みを進めてまいりました。
 また、各広域振興局では、市町村と連携して、それぞれの特性を生かした人口減少対策を進めるためのワーキンググループなどを開催しているほか、地域経営推進費などを活用して、地域課題の解決に取り組む市町村を支援してきたところであります。
 こうした取り組みに加え、現在、県では、県と複数の市町村による電子申請システムの共同利用の取り組みを進めているほか、特に小規模町村に対しては、専門職員が不足する分野への新たな人的支援策や、自治体DX推進計画に基づく情報システムの標準化に向けた技術的支援などについて検討を進めております。
 今後とも、本庁、広域振興局が一丸となって、市町村個々の状況を踏まえた連携、協働の取り組みを強化してまいります。
 次に、商店街支援における県のスタンスについてでありますが、県が毎年実施している県の施策に関する県民意識調査において、商店街のにぎわいに対するニーズ度が常に高いことなどから、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおいて、多様な主体の連携によるまちのにぎわい創出を掲げて、市町村を初めとしたさまざまな主体と取り組みを進めることとしております。
 具体的には、商店街における祭りや消費喚起イベントの開催に対する市町村の支援と連動する形で、今年度、県独自に飲食店・商店街利用促進費補助金事業を実施し、各地の商店街等に活用していただいているところです。
 また、後継者不足に対応するために、市町村や商工指導団体を構成員とするいわてスタートアップ推進プラットフォームを立ち上げるなど、起業、創業による新規出店や事業承継の促進に向けた取り組みの強化を図っております。
 さらに、地域の強みを生かした商店街の魅力向上を図っていくためには、個々の店舗の経営力向上や環境変化に対応した新分野進出を促進していく必要があることから、専門家派遣による伴走型支援や成功事例の普及拡大を進めることなどにより、商店街のにぎわい創出を図ってまいります。
 次に、県営スポーツ施設の今後のあり方についてでありますが、将来にわたり県民が安心してスポーツ活動ができる場を提供するため、計画的な更新や長寿命化を進めることが重要であります。
 県では、こうした考えのもと、安全・安心の確保、施設規模、配置、機能等の適正化、コスト縮減、財政負担の平準化の公共施設管理の基本方針に基づいて、令和6年度までを計画期間とする県営スポーツ施設の個別施設計画を策定して、計画的な修繕、改修を行いながら長寿命化を図っているところであります。
 県営スポーツ施設の整備においては、アスリートの競技力向上の視点に加え、生涯を通じて健康に暮らすことのできる健康づくりの視点のほか、ユニバーサルデザイン化や脱炭素化などの新たな機能の整備も必要であると考えておりまして、現在、県営スポーツ施設の今後のあり方について、各施設の利用状況、市町村との役割分担、競技団体の意見等を踏まえ、外部有識者から、県民の健康増進の観点からも専門的な御意見を伺いながら、総合的に検討を行っているところであります。
 こうした検討結果を踏まえて、来年度、次期個別施設計画を策定して、計画的な長寿命化に取り組むとともに、整理統合等が必要な施設については、パブリックコメント等、県民の声を広く聞きながら、さらに検討を深めていきたいと考えております。
 次に、スポーツ医科学の拠点の整備についてでありますが、県では、競技力向上等を図るため、県営スケート場内にスポーツ医科学の測定研修拠点を設置し、スポーツ医・科学サポート事業を実施しております。この事業では、大学、医療関係団体等と連携し、選手強化のためのトレーニング指導や体力測定などを実施しており、これらの取り組みがスーパーキッズ修了生の全国大会での上位入賞や、本県出身選手の国内外の大会での活躍につながっているものと考えております。
 また、市町村、学校、企業等の健康教室に講師を派遣し、老化や障がい防止などのプログラムに実技を取り入れながら研修を行い、県民の健康増進に取り組んでおります。
 スポーツ医科学拠点の整備については、こうした事業の目的を前提として、老朽化した県営スポーツ施設の整理統合とあわせて検討することとし、今行っております県営スポーツ施設のあり方検討や県財政の状況を踏まえ、最先端の医科学の動向や他県等の事例などを分析しながら、今後、整備の目的や場所、規模、時期などを具体的に検討してまいります。
〇議長(工藤大輔君) 次に、臼澤勉君。
   〔21番臼澤勉君登壇〕(拍手)

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