令和5年6月定例会 第26回岩手県議会定例会会議録

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〇41番(関根敏伸君) 希望いわての関根敏伸でございます。今任期中最後の登壇の機会を頂戴いたしました。
 急激に顕在化した人口減少に対し、その効果的な対応策を早急かつダイナミックに図っていくことは、もちろん必要であります。一方、今後数十年に及ぶ人口減少社会の現実を真正面から受けとめ、地域として今から準備をしていかなければならないことも必然であります。
 このような意味において、人口減少下の公共交通のあり方、地域医療の方向性、生産年齢人口が減る中での人材確保と県内経済の活性化、地方の新しい時代の幕あけを予感させるGXへの対応、そして、いわて県民計画(2019〜2028)の一層の推進の観点に立って、順次質問をさせていただきます。
 最初に、地域公共交通政策についてお伺いいたします。
 ことし4月に地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律が成立し、これにより自治体や事業者が参加する再構築協議会制度が導入され、国が積極的に関与する形で地域公共交通の再構築に向けた動きが加速することになります。
 この改正法の衆議院の附帯決議には、再構築協議会のあり方について、廃線ありきではないこと、地域公共交通が失われることにより新たに生じる医療機関へのアクセスコスト、観光業への打撃、地価の下落等を十分検討することなどが盛り込まれており、JRローカル線維持への期待感が強くにじむ内容となっております。
 鉄道ネットワークの維持は、災害時の物資の輸送、国土強靱化、地方創生の推進の観点からも極めて重要であると言えますが、JR発足から35年以上が経過する中で、急激な人口減少やモータリゼーション等の社会経済情勢が劇的に変化し、経営的に大きな打撃を受けている路線が数多く存在しているのも現実であります。
 先ごろ行われましたJR北上線利用促進協議会の場において、事業者側から現状の厳しい現実を直視すべきとの声も出され、協議会の場が緊張感に包まれました。今後の話し合いは相当難航するとの認識を強くいたしております。
 そのような中、今回の改正法では、地域の関係者の連携、協働、共創を通じて、利便性、持続可能性、生産性の高い地域公共交通ネットワークへの再構築―リデザインを進めることとしており、さまざまな取り組みの方向性も示されております。
 以前、県では、今回の動きに対し、JRローカル線の維持を求め、沿線市町や関係道府県と連携して、国やJR東日本に働きかけていく方向性を県議会で答弁しておりますが、改めて、今回の法改正等の動きを踏まえた県としての協議会への向き合い方と対応方針を知事にお伺いいたします。
 今回の法改正では、鉄道事業者とともに、バス、タクシーを含めた事業者と地方公共団体が再構築の仕組みを柔軟につくり上げていく方向性が盛り込まれており、一定の区域、期間について、交通サービス水準、費用負担等を定めた協定を締結していけるよう、地域公共交通利便増進事業が拡充されることになりました。
 令和4年度の補正予算でも、異業種との連携や同業種同士の協力を後押しし、共創型交通、いわゆるともにつくり上げていく交通をつくるための実証実験に係る補助上限額が1億円まで増額されております。
 公共交通を取り巻く市場そのものが大きく縮小する中、県は、この動きにどのように対応していこうとしているのでしょうか。
 地域公共交通の再構築に当たっては、その担い手である運転手の確保が大きな課題であります。人材を確保できず、路線の撤退や便数の減少に結びついている現実もあるようでありますが、県は、その実態をどのように把握しているのでしょうか。
 また、県は、岩手県地域公共交通網形成計画において、5年間でバスの運転手を新たに208名確保するとの目標を掲げ、取り組みを進めてきておりますが、県内の現状と、目標達成に向けてどのような支援策を講じていくのかお伺いいたします。
 近江鉄道株式会社を有する滋賀県では、ことし4月に滋賀県税制審議会が、交通税の導入を求める答申を知事に提出いたしました。答申を受けた三日月知事は、国の税金や補助金に頼る、また利用する人たちだけが負担をする、民間企業の努力に頼るということだけではない新しい選択を持てるとするならば、地域の将来にとって希望の光を見出せるのではないかと述べており、早ければ2024年の導入を目指すと報道されております。
 昨年度、県が三陸鉄道株式会社、IGRいわて銀河鉄道、地域のバス、タクシー等の公共交通を担う事業者に対して行った財政的支援の総額と県民1人当たりの負担額をお示しください。
 また、滋賀県での動きに対する所感をお伺いするとともに、今後、県内の地域公共交通を維持するための費用をどのように試算され、その財源をどのように確保しようとしているのかお伺いいたします。
 次に、これからの県民医療についてお伺いいたします。
 昨年9月に発表された持続可能で希望ある岩手を実現するための行財政改革に関する報告書においては、本県の強みとして、県立病院を中心とした医療ネットワーク体制の存在が改めて強調される一方、中長期的な視点から、住民目線での医療圏のあり方、住民サービスの向上に必要となる施策を展開していく必要性が盛り込まれております。
 特に、県の医療提供体制に係るグランドデザインの検討については、県保健福祉部による全県的な医療提供体制と県立病院の医療提供体制は密接に関係することから、これらを一体的に検討する必要があるとも触れられております。
 県では現在、県内に九つの二次保健医療圏を設定し、県立病院を中心とした医療提供体制が整えられておりますが、人口減少や医療従事者の不足等の環境変化によって、二次保健医療圏内だけでは完結できない課題が増加しているとされております。
 県は、現計画の中間見直しにおいて、二次保健医療圏の現状を認識しつつも、流出患者の多くが盛岡医療圏に集中しており、圏域再編の効果が見込めないことなどを理由に見直しを先送りし、第8次医療計画に向けて検討を進めることとした経緯があります。
 次期岩手県保健医療計画は2029年度までの6年間の計画となることを考えると、その間に人口減少を含めた環境変化が進行していくことは確実であります。加えて、県立病院の経営計画も2025年度に開始されることを考えれば、一体的な計画見直しの時期が時間的に限られ、また、議論の先送りはできない状況にあります。
 県では、保健医療圏の見直しを含め、県内のこれからの医療提供体制のグランドデザインをどのように構築しようとしていくのか、知事にお伺いいたします。
 医師の働き方改革が2024年度から始まります。これにより、派遣元である大学病院等での勤務時間と通算して管理することが必要となり、時間外労働時間の上限に抵触する事例が今後出てくる可能性が示されるなど、多くの課題が見え始めております。
 岩手県議会県政調査会に講師として見えられました岩手医科大学附属病院の小笠原病院長によりますと、本県の地域医療、中でも県立病院では、外来診療、手術などを大学等の派遣医師で補っている状況にあり、月の応援延べ回数は2、350回、そのうち岩手医科大学や東北大学などの大学派遣が1、790回で76%を占め、これを常勤医師換算すると、応援医師の割合は19.4%とのことでありました。
 医師の働き方改革が実施された場合、医師少数県の本県では、医療機関によっては、診療体制の縮小や救急医療の提供が困難になるなど大きな影響が懸念され、特に医師少数地域である沿岸、県北地域への影響は多大です。
 県は、医師の働き方改革が地域医療に与える影響をどのように捉え、それに対してどのような対策を講じていくのかお伺いいたします。
 また、この働き方改革の推進によって、副業的な働き方を維持できなくなり、大学病院の勤務医師の収入に直接的に影響を与え、このことが長期的に大学病院への医師離れにつながるとの懸念もあります。
 県内の多くの医療分野を支えている岩手医科大学附属病院への影響は岩手県の医療のあり方に直結すると考えますが、県では、それをどのように捉え、対応していこうとしているのかお伺いいたします。
 県内自治体において、オンライン診療など遠隔診療の取り組み事例が出始めております。八幡平市では、市立病院と診療所を結んだ遠隔診療、遠隔見守りが進められているほか、北上市では、昨年度から、医師がオンライン診療を行うモバイルクリニックの実証実験を開始しております。
 ICT機器を活用した遠隔診療は、医療の地域偏在の解消、医師、患者側双方の移動時間等における負担の軽減などの面から、より積極的に進めていくべき施策と考えます。
 医療局では、県立宮古病院附属重茂診療所において、県立病院で初めてのオンライン診療に乗り出すとの報道がありました。県内隅々に医療ネットワークを構築している県立病院にこそ、遠隔診療の充実強化が必要と考えます。
 今後の全県立病院への導入に向けたスケジュールや具体的なオンライン診療の方法、さらには、医療分野におけるDX推進に係る今年度予算額と取り組み内容を医療局長にお伺いいたします。
 オンライン診療の施設基準を満たす医療機関は、県内で36施設と報道されております。全国都道府県別のオンライン診療に対応可能な医療機関の割合では、本県は16.4%と全国平均を上回ってはいるものの、全国順位は24位となっております。全国1位は山形県で41.8%であり、秋田県などの東北各県も全国割合から高い位置にあります。
 オンライン診療に対応可能な医療機関の拡充に向けて、積極的な予算の投入が必要であります。県では、現状をどのように分析し、推進しようとしているのでしょうか。また、医療分野におけるDX推進に係る今年度の予算額と取り組み内容を保健福祉部長にお伺いいたします。
 山形大学と東北公益文化大学、日本海総合病院と酒田市では、民間企業との連携によるリモート診療実証実験を開始し、遠隔診療システムの高度化による診療精度の向上に向けた取り組みを始めました。弘前大学病院では、県内外の専門医のいない病院、診療所等に対し、電子カルテの共有による治療方針の助言などを行う医療支援体制を広げております。
 本県においても、県立病院間だけにとどまらず、大学病院と県内の各地域の連携を深め、専門医不在の病院への医療支援や遠隔診療の推進に向けた先導的な技術革新への取り組みを始める必要もあると考えますが、県の考えをお伺いいたします。
 続きまして、GXの推進についてお伺いいたします。
 天皇皇后両陛下御臨席のもと、49年ぶりに陸前高田市で開催された第73回全国植樹祭いわて2023は、好天にも恵まれ成功裏に終わったものと思われます。東日本大震災津波から12年を経て、改めて全国に向けて震災復興への感謝の気持ちを伝えるとともに、森林県岩手としての多面的な発信ができたものと思います。
 その上で、この全国植樹祭のレガシーはしっかりと残していく必要があろうと考えますし、開催関連費用の大部分にいわての森林づくり県民税が充てられていることを考えると、その成果をしっかりと具体の関連施策の推進に結びつけていくべきであります。
 まさにGXの時代の幕あけの時期に全国植樹祭が開催できたことを絶好の好機と捉え、森林保全による地球温暖化対策への貢献と林業関連産業の成長化を両立する取り組みを計画的に実施していくことは、岩手県の可能性をさらに広げることにつながります。
 そこで、知事にお伺いいたしますが、全国植樹祭の開催をレガシーとして、林業分野におけるGX推進に向けた県の方策についてお示し願います。
 令和3年6月、国では新たな森林・林業基本計画を閣議決定いたしました。森林、林業、木材産業によるグリーン成長を新たな目標に掲げ、森林を適正に管理して林業、木材産業の持続性を高めながら成長、発展させることによる、2050年のカーボンニュートラルを見据えた豊かな社会経済の実現と2030年の国産材供給量の35%増加が明示されるなど、脱炭素の世界的流れの中で、森林、林業分野の果たす役割と林業成長化への期待が大きくなっております。
 また、公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律が、一部改正によって、いわゆる都市の木造化推進法(脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律)に生まれ変わり、豊かで持続可能な都市づくりと活気あふれる山村づくりへの道筋が示されました。
 県では、ことし3月、第2期岩手県県産木材等利用促進行動計画を策定いたしました。1期目の取り組みでは、公共建築物での木造率は、令和元年度、令和2年度と連続で全国1位、また、県内新築住宅の木造率も、令和4年は全国平均の55.6%を大きく上回る82.6%、県内の素材需要量に対する自県材の割合も、全国平均の60%台を上回る約80%の水準で推移しており、これまでの県当局の取り組みには敬意を表するものであります。
 新計画で県は、今後県が整備する低層の公共施設の木造化率100%を掲げ、具体的な4年間の木材利用量も指標化しておりますけれども、長期的に住宅着工数の減少が見込まれる中、今後は、公共施設から民間商業施設等への木造化、内装での活用により一層力を注いでいかなければなりません。
 県は、民間商業施設等での木材利用促進に向けて、長期的な目標をどのように設定し、今年度どのように取り組むのかお伺いいたします。
 また、中高層ビル等への木材利用の実現に向けて、CLT(直交集成板)の活用状況と課題をどう捉え、どのような取り組みを進めようとしているのかお示し願います。
 2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、国が認証したJ−クレジット制度の利用をさらに拡大していく必要があります。
 国は、昨年8月に森林吸収系の制度の見直しに着手し、森林吸収源の対策強化に乗り出しました。この動きに連動し、農林中央金庫は、全国森林組合連合会と連携し、この制度の利用拡大に向けて、クレジット販売者と購入者のマッチングに乗り出すとの報道もあります。
 森林クレジットの制度改正による創出拡大の動きは、人工林が成熟する中、切って、使って、植えるという循環システムを確立し、木材利用の拡大による林業成長化への流れと主伐後の再造林の流れが、CO2吸収量の旺盛な若い森林の拡大につながり、カーボンニュートラルへの貢献もより一層大きなものになります。
 岩手県地球温暖化対策実行計画におけるCO2削減目標に対し、森林吸収目標は全体の17%に当たる141万6、000トンと定められており、大きな貢献が期待されております。全国でも有数な森林県である岩手県としては、このJ−クレジットの利用拡大の流れをGX推進の面からもしっかりと捉えていくべきと考えます。
 今までのJ−クレジットの販売状況、販売額及びその活用策はどのようになっているのでしょうか。また、県では現在、新たなクレジットの発行に向けて国への申請準備を進めていると伺っておりますが、発行済みのJ−クレジット対象森林面積は、県所有の森林面積5、500ヘクタールのうちのわずか1.9%程度と理解しております。今後、温暖化対策への貢献度合いをふやしていくためには、対象森林面積を拡大する必要があると考えますが、県の今後の取り組みをお伺いいたします。あわせて、民間でのJ−クレジット活用の状況と課題、小規模事業体に拡大するための支援策の必要性についてもお伺いいたします。
 続きまして、中小企業政策についてお伺いいたします。
 新型コロナウイルス感染症の類型が変わり、社会経済活動に明るさが増す一方、原油高、物価高による中小企業経営への影響が続いております。
 そのような中、生産年齢人口が減少し続け、人材獲得競争はますます激しくなると予想され、人材確保に向けた労働環境の改善、賃上げなどを実現できるかどうかが企業存続の鍵となりつつあります。県内の73%の企業が人手不足感を感じており、全国平均を7ポイント上回っているとの報道もあります。
 東京商工リサーチが2月に実施した賃上げに関するアンケート調査では、2023年度に賃上げを実施する予定とした中小企業が77.8%に上っておりますが、県では、県内中小企業の賃上げの実態について、現状をどのように把握しているのでしょうか。
 県は、今定例会の補正予算案において2億円の中小企業者等賃上げ環境整備支援事業費補助を設け、県内の中小企業の賃上げを下支えすることとしており、その判断に敬意を表し、また、大いに期待するものであります。
 一方、その要件は、経営革新計画の承認を得て、パートナーシップ構築宣言の登録企業となった上で、新事業活動に該当する設備投資などを行い、年間給与支給総額を2%以上上げることが条件となっております。
 今回の県の制度も各種国の助成制度も、生産性向上や新分野展開への投資等がセットとなっており、ハードルが高いものとなっております。
 東京商工会議所の調査によると、2023年度に賃上げを実施予定とした中小企業のうち、業績の改善が見られないが、人材の確保や流出を防ぐためのいわゆる防衛的な賃上げを余儀なくされる企業が62.2%に上ると分析されております。令和2年度の県内の赤字法人率は64.55%と増加傾向であることも考慮すると、今回の賃上げの一定割合は、防衛的賃上げに踏み切らざるを得ない状況下で行われたものと推測されます。
 盛岡市では、人材獲得のため、赤字経営の中で賃上げを実施したバス会社に独自の補助を設けており、他の県内自治体でも、賃上げに踏み切った中小企業等に対し、賃上げ分の2分の1を補助するなど、企業に対する直接支援に踏み切ると聞いております。
 今回の新しい賃上げ支援策の執行状況なども見きわめた上で、今後、県としても一歩踏み込んで、県内市町村との連携を図り、この流れを全県に広める必要もあると考えますが、お考えをお伺いいたします。
 岩手県の社長の平均年齢は64.38歳と高齢化が目立ちます。同様に、県内における開業率は、令和3年度2.7%で全国44位、新法人設立数は、昨年度は501件と、前年比マイナス14.5%で、減少幅は全国最大となっております。
 このような状況にあって、起業しやすい環境づくりと起業後の息の長い支援により、県内経済環境の若返りと活性化を目指すことが必要です。
 県では、令和5年度当初予算に起業・スタートアップ推進事業費や若者・女性創業支援資金貸付金などを盛り込み、一歩踏み込んだ対策を講じております。
 起業・スタートアップ推進事業費においては、プラットホームを設置し、起業ステージに合わせた伴走型支援を行うとしておりますが、開業目標をどのように設定し、現在の取り組み状況はどのようになっているのでしょうか。
 首都圏の若者の間では、地方の企業を引き継ぐ形での起業を目指す動きも出ていると聞いております。移住、定住とセットで事業承継や起業を進めることは、人口減少への取り組みにもつながり、理想であるとも考えます。
 首都圏若者層に向けた事業承継や起業に係る情報提供、地域課題解決や地方創生への意識が高いとされる地域おこし協力隊や協力隊OBなどへのマッチングも有効と考えますが、県の考えをお伺いいたします。
 中高生を対象とした起業家教育が各地で活発になっており、高校生の事業案を競うコンテストの出場に熱心な地域ほど、若い世代の創業が盛んとなる傾向が顕著であると伺っております。以前に、現役高校生たちが企画した事業に対し、若手経営者が論評を加えた上で、実現性の高いものには直接投資をするというテレビ番組を拝見し、高校生たちの柔軟な発想に舌を巻いた覚えがあります。
 文部科学省では、スタートアップ育成5か年計画を受けて、小中高生への起業家教育を拡大するなどの取り組みを進めておりますが、小中学校の段階から経営や起業への教育を進めることも必要と考えますが、県の取り組み方策について、教育長にお伺いいたします。
 最後に、いわて県民計画(2019〜2028)の推進についてお伺いいたします。
 10の政策分野ごとに幸福に関する客観的な幸福関連指標を設定し、県民の主体的幸福度の向上を目指すことを政策推進の中心に定めたいわて県民計画(2019〜2028)は、全国的にも大きな注目を集めました。
 ただ、第2期アクションプラン策定に当たっては、新しい時代を切り拓くプロジェクトとして掲げた11のプロジェクトの位置づけ、また、今後の進捗管理等がどのようにして行われようとしているのか、不透明であるのが現状であります。
 一般的な意味でプロジェクトとは、目標達成や新しいものを考える上で行う計画や組織、業務を指すと説明されます。つまり、そこには明確な目標とともに、プロジェクトを動かすメンバー、成果を得るまでの期限の存在などが必要となります。
 この11のプロジェクトのいわて県民計画(2019〜2028)における位置づけや推進体制について、改めて知事にお聞きいたします。また、それぞれのプロジェクトには工程表がつくられ、短、中、長期的な取り組み内容が定められてはいるものの、明確な数値目標や期限が定められておりませんが、目標設定や進捗管理はどのようにして行っていくのか、あわせてお聞きいたします。
 11のプロジェクトのうち、特に県全体をより広域的に俯瞰し地域の将来像をイメージした三つのゾーンプロジェクトは、魅力的であります。その意味で、大きな期待も込め、プロジェクトの目指す姿を単なるイメージとして終わらせることなく、より見える形にした上でしっかり取り組んでいただきたいと思うものであります。
 県央広域振興圏と県南広域振興圏にまたがる北上川バレープロジェクトの狙いには、両圏域の広域的連携を促進し、第4次産業革命技術をあらゆる産業分野、生活分野に導入することを通じて、働きやすく、暮らしやすい先行モデルとなるゾーンの創造を目指すとされ、このプロジェクトの成果を速やかに他圏域に波及させることで、県民全体の暮らしが豊かになることを目指すと記されております。
 北上川流域への産業集積や革新的情報産業技術の発展が、具体的な働きやすさと暮らしやすさに結びついていくことは、結果的に有効な人口減少対策につながります。
 プロジェクトの推進体制の構築については、多様な主体との連携、協働が重要と考えますが、現状はどのようになっているのでしょうか。また、働きやすく、暮らしやすいというゾーンプロジェクトの具体的な目標と成果について、他圏域との比較においてどのような状況にあると捉え、県全体に普及させるためにどのような取り組みを進めようとしているのかお伺いいたします。
 以上をもちまして私の一般質問を終了させていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 関根敏伸議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、地域公共交通に関し、今後の再構築協議会への対応等についてでありますが、地方ローカル線は、地域住民の移動手段としてのみならず、災害時における代替性、補完性を有するとともに、観光、物流など地域経済を支える重要な社会基盤であると認識しております。
 また、昨年11月には、JRローカル線維持確保連絡会議を開催し、国鉄改革からの経緯を踏まえ、国やJR東日本が当事者として鉄道を維持していくべきこと、県及び沿線市町が連携を強化して、さらなる利用促進に向けた取り組みを実施していくことについて、沿線市町と認識を共有したところであります。
 これを踏まえ、昨年12月には、県と沿線市町と合同で、国の責任において地方路線の維持に向けた経営支援を行うこと、交通事業者の使命として、ローカル線を維持し、安定的な運行を行うことを国やJR東日本に対し要望したところであります。
 今回の法改正により、自治体または鉄道事業者の要請により、国が特に必要と認める場合に再構築協議会が設置されることとなりましたが、県としては、JRローカル線維持確保連絡会議で合意した方針に基づき、国やJR東日本に対して要望していくとともに、まずは、利用促進の取り組みを推進することが重要と認識しております。
 今後とも、沿線自治体会議などを通じ、沿線市町と連携しながら、鉄道の維持に向けて取り組んでまいります。
 次に、これからの医療提供体制についてでありますが、本県医療を取り巻く環境は、議員御指摘のとおり、現行計画策定時と比べ、少子高齢化や人口減少の加速に伴う患者数の減少、医療の高度、専門化や交通アクセスの向上による盛岡圏域への患者の流入の増加のほか、医師不足、偏在の中で、令和6年度から医師の時間外労働時間の上限規制が開始されるなど、大きく変化してきております。
 このような環境の変化を踏まえ、県では、現在策定を進めている次期保健医療計画において、がんや循環器疾患、その他疾病等において、高度、専門的な治療を要する医療に係る広域的な医療圏のあり方について、疾病、事業の各専門家から意見を伺い検討を進めています。
 一方、一般的な診療、検査や初期救急などの医療については、県民が身近な地域で安心して医療を受けられる体制を引き続き確保していくことが必要であり、二次保健医療圏のあり方とあわせて検討することとしています。
 これらの検討に当たっては、各圏域において、初期医療から高度、専門的医療まで県立病院が幅広く担っている本県の医療提供体制を踏まえ、医療局と連携し、各県立病院の関係者等と意見交換を進めてきており、引き続き、県民や地域の医療関係者の意見を伺いながら、急性期医療から在宅医療に至るまで、切れ目のない持続可能な医療提供体制の構築を進めてまいります。
 次に、全国植樹祭を契機としたGXの推進についてでありますが、今年度からスタートしたいわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおいては、カーボンニュートラルと持続可能な新しい成長を目指すGXの推進を重点事項に位置づけ、関係機関、団体と一体となって、森林整備や県産木材の利用促進など、森林資源の循環利用を進めることとしています。
 本県において49年ぶりの開催となった第73回全国植樹祭では、岩手県の豊かで多様な森林、林業のすばらしさや復興支援に対する感謝の気持ち、緑豊かな森林を引き継いでいく決意を力強く発信するなど、本県ならではの特色ある有意義な大会となるとともに、豊かな森林を守り、育み、次の世代を担う子供たちへと確実につないでいく契機となったところであります。
 また、全国植樹祭の開催に当たっては、商工、観光、教育、環境など、さまざまな分野から参画を得て実行委員会を組織するなど、オール岩手で準備を進めてきたところであり、こうした多様な主体とのつながりや全国植樹祭の開催を契機とした森林、林業への関心の高まりをレガシーとして、担い手の確保、育成や森林整備の促進、県産木材の利用促進を図るいわて木づかい運動の展開など、県民総参加による森林づくりと森林資源の循環利用等による森林の公益的機能の増進、林業の持続的で健全な発展に向けた取り組みを強力に推進してまいります。
 次に、11のプロジェクトの位置づけ等についてでありますが、プロジェクトは、いわて県民計画(2019〜2028)の基本目標に掲げる、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現をより確かなものとするため、東日本大震災津波からの復興と10の政策分野の推進に加え、長期的な視点に立って、岩手県の新しい時代を切り開いていく分野横断的、先導的な施策を推進するものであり、関連する科学技術の進展等に応じて、タイムスパンやゴールを柔軟に設定する必要があります。
 このため、アクションプランに基づき、毎年度、政策評価を通じて進捗管理を行う10の政策分野とは、対象期間や進め方のマネジメントサイクルが異なっているところであります。
 プロジェクトの推進に当たっては、いわて県民計画(2019〜2028)に掲げた具体的な取り組み内容や工程表、目指す姿に沿って、DXなどの科学技術に関する国の動向も見据え、大学や市町村、企業等、多様な主体と連携しながら施策を進めることが重要であります。
 こうしたことから、プロジェクトごとの部局横断のワーキンググループのもとで、幅広い知見を得ながら、関連する事業の進捗状況を確認し、プロジェクトの今の姿と今後の展開を明らかにするとともに、具体化が進むプロジェクトの関連施策については、アクションプランに盛り込み、岩手らしさを生かした新たな価値、サービスの創造につなげていく考えであります。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部局長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔企画理事兼保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) まず、医師の働き方改革についてでありますが、大学病院から多くの医師派遣をいただいている本県のような医師不足地域において、医師の偏在是正が図られないまま働き方改革のみが進められると、地域医療提供体制にさまざまな影響が生じることが懸念されます。
 このため県としては、奨学金医師を養成するとともに、医師の勤務環境改善に向けたアドバイザーの派遣、研修会の開催、宿日直許可の取得に向けた助言などを岩手県医療勤務環境改善支援センターにおいて行っています。
 また、令和元年に設置した医師の働き方改革の推進と地域医療を守るネットワークいわての活動により、医師の負担軽減を図るため、適正受診に向けた県民への情報発信や医療機関におけるタスクシフト、シェアなどの優良事例の共有を進めてまいりました。
 さらに、政府予算提言・要望や地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会の活動により、医師の働き方改革と一体的な医師確保、偏在対策の推進について、国に対して提言等を行っているところであり、今後においても、地域の実情に応じた医師の働き方改革を進め、地域医療を守る取り組みを進めてまいります。
 次に、岩手医科大学附属病院における働き方改革の影響についてでありますが、岩手医科大学附属病院においては、勤務管理システムの導入、宿日直許可の取得、労働時間短縮計画を作成するなど、必要な取り組みを進めていると伺っております。
 また、岩手医科大学附属病院からの医師の派遣につては、派遣先の医療機関において、宿日直許可を取得するなど働き方改革に向けた必要な対応を進めている場合は、引き続き派遣を継続する方針であると伺っております。
 県内の医療機関における働き方改革への対応については、例えば、全ての県立病院で宿日直許可を取得済みであること、多くの医療機関で勤務環境改善計画を作成するなど、医師の働き方改革に向けた対応が行われてきており、岩手医科大学附属病院からの派遣が継続されないなどの課題が生じないように、取り組みを進めていると承知しております。
 岩手医科大学は、本県の地域医療を支える中核的医療機関、医師の養成、派遣機関として重要な機能を担っており、県としては、これまで、国に対してスタッフの充実等の財政支援を要望してきたところであり、今後の働き方改革の動向を見きわめながら、必要な要望を行ってまいります。
 次に、県内医療機関へのオンライン診療の導入促進についてでありますが、オンライン診療の施設基準を満たす県内医療機関は、令和5年5月1日時点で44施設となっており、コロナ禍を契機にオンライン診療の活用が広がってきております。
 具体例としては、岩手医科大学附属病院において、医療的ケア児や新型コロナウイルス感染症に感染した子供たちを対象としたオンライン診療などを実施しているほか、市町村においては、議員御紹介のとおり、北上市で、モバイルクリニック事業の実証実験を行い、患者の通院負担軽減を図るための遠隔診療の取り組みが進められているところであります。
 県では、医療機関のオンライン診療の導入を加速するため、今年度、新たに遠隔医療設備整備費補助金を創設し、令和5年度当初予算に1、680万円余を計上しているほか、ICTを活用した取り組みとして、岩手医科大学附属病院と地域中核病院間の遠隔診断支援システムの経費6、140万円余、周産期医療情報ネットワークいーはとーぶの経費946万円余を計上しているところであります。
 次に、病院間のオンラインを活用した医療支援についてでありますが、県では、これまでに遠隔病理画像診断システムや小児周産期医療遠隔支援システムなど、岩手医科大学附属病院と地域中核病院間の遠隔診断支援システムを整備し、運用してきたほか、全国でも先進的な取り組みとして、医療機関や市町村の間での妊産婦等の情報を共有するいーはとーぶを運用し、周産期医療に活用しているところであります。
 現在、国において、医療に加え、保健や介護分野も含めた全国医療情報プラットフォームの構築や電子カルテの標準化、母子保健情報のデジタル化など、DXの推進に向け検討が進められているところであります。
 県としては、こうした国の動向等を注視しつつ、先進活用事例について情報収集を行い、国の補助金等の財源を有効に活用しながら、遠隔医療の導入や医療分野におけるDX推進に向けた取り組みを進めてまいります。
   〔ふるさと振興部長熊谷泰樹君登壇〕
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) 地域公共交通における共創の取り組みについてでありますが、人口減少や新型コロナウイルス感染症の影響による利用者の大幅な減少、運転士不足などにより、公共交通事業者は厳しい経営が続いており、さまざまな事業者、業種の関係者と共創の取り組みを進め生産性の向上を図っていくことは、地域公共交通の維持、確保につながる先進的な取り組みと認識しております。
 地域公共交通利便増進計画事業の拡充により創設されるエリア一括協定運行事業は、複数の交通事業者が存在し交通手段が重複している地域において、市町村と交通事業者が、複数年かつエリア単位で黒字路線や赤字路線を一括して運行する協定を締結し、ネットワークを統合しようとする事業でございますが、本県では、限られた交通手段しかない地域における住民の足の確保が最重要課題となっておりますことから、その導入効果を確認していく必要があると考えております。
 また、共創モデル実証プロジェクトは、地域の多様な関係者との共創で地域公共交通の維持、活性化に取り組む事業で、過疎地域など交通事業者が限られている地域において、乗り合いバスとスクールバスとの混乗やバス事業者等による貨客混載といった取り組みを進めることができるものでございます。
 県といたしましては、今後、本プロジェクトの活用について広く周知を図るとともに、公共交通事業者や市町村などの関係者と意見交換をしながら、今年度策定する次期岩手県地域公共交通網形成計画に盛り込み、積極的な導入を図ってまいります。
 次に、人材確保についてでありますが、県内の一部のバス事業者は、運転士不足を要因に大幅な減便を実施したほか、一部の路線については、撤退を沿線市町村に申し入れ、調整を進めていると承知しております。
 また、乗り合いバス事業者3社の運転士の新規確保人数は、令和5年3月末現在で182人と、今年度までの岩手県地域公共交通網形成計画の目標の87.5%となっておりますが、新型コロナウイルス感染症などの影響により、離職者数が計画策定当時の予想より多く、バス事業者は、待遇改善など必要な人員の確保に努力されていると聞いております。
 県はこれまで運輸事業振興費補助により、岩手県バス協会を通じて、大型二種免許の取得助成やバスの普及啓発イベント開催等の支援を行ってきたところでございます。
 また、運転士不足は全国的な課題でありますことから、国に対して、バス運転士の待遇改善を進めるための具体的な支援策を講じるとともに、地方自治体が行うバス運転士の確保策に対する財政支援の実施を要望したところであります。
 今後におきましても、引き続き、バス事業者や岩手県バス協会などの関係機関との連携を図りながら、運転士確保の取り組みを実施していくとともに、県と市町村で構成する地域内公共交通構築検討会におきまして、運転士不足への対応を検討してまいります。
 次に、昨年度の財政的支援についてでありますが、県内の代表的な公共交通事業者に対する県の負担額は、IGRいわて銀河鉄道及び三陸鉄道に対して8億3、800万円余、乗り合いバス事業者に対して5億1、300万円余、タクシー事業者に対して9、000万円余と、総額が14億4、300万円余となったところでございます。
 お尋ねの県民1人当たりの負担額についてでありますが、この金額を令和4年10月1日時点の岩手県の人口総数で単純に割り返した数字でございますが、1、223円となるものであります。
 次に、今後の財源の確保についてでありますが、滋賀県の交通税導入に向けた取り組みについては、滋賀県税制審議会の令和4年の答申によりますと、県と市町の役割分担を踏まえた税負担の考え方や税収の使途、課税方式など、さまざまな検討事項が示され、現在、滋賀県において検討が行われていると伺っており、その動向を注視しているところでございます。
 今後、地域公共交通を維持していくためには、交通事業者の収支改善を図る必要があり、新型コロナウイルス感染症の5類への移行を契機とした公共交通利用者数の回復に向け、公共交通事業者や市町村と連携した利用促進に取り組んでまいります。
 また、持続的な公共交通の維持、確保には財源の確保が必要でありますことから、国庫補助を最大限活用するとともに、国庫補助の補助上限額の拡大や補助要件の緩和、対象の拡大など、引き続き、国に対して必要な支援の強化を求めてまいります。
 次に、北上川バレープロジェクトについてでありますが、北上川流域は、令和元年度からの3カ年で、半導体、自動車関連産業を中心に70社が新規立地するなど、産業集積が進行するとともに、農業生産基盤や文化、スポーツ施設、豊富な観光資源など、産業集積と生活環境、豊かな自然が調和している全国でも例を見ない地域と認識しております。
 プロジェクトの推進に当たっては、半導体やAIなどの専門家から成るアドバイザリーボードから御指導をいただきながら、県央、県南広域振興圏の16市町で構成する展開研究会を組織し、有識者、民間企業、支援機関、市町村等と連携し、産業分野のDXの推進やAI人材の育成などに取り組んでおります。
 これまでの成果としては、工場のスマート化による生産の効率化など、産業分野のDXの導入促進、デマンド型乗り合いバスやモバイルクリニックの取り組みなど、生活分野へのDXの活用、学術機関と地元の高等教育機関との連携によるAI人材の育成などが挙げられます。
 加えて、これらの成果について、北上川バレーエリアガイドブック電子版やSNSいわてのわなどの活用による情報発信にも、市町村と連携し取り組んでいるところでございます。
 引き続き、集積産業の裾野の拡大や先進事例の横展開、地域の魅力の情報発信などの取り組みを着実に進めることで、成果を県内の他圏域へ波及させ、働きやすく、暮らしやすい岩手県の実現を目指してまいります。
   〔医療局長小原重幸君登壇〕
〇医療局長(小原重幸君) 県立病院におけるオンライン診療及びDXの推進についてでありますが、オンライン診療につきましては、患者の通院負担の軽減等を図るため、在宅患者や訪問診療先の看護師と病院側の医師が、電子カルテと連携したビデオ通話を行える環境を整備し、ことし3月から、県立宮古病院附属重茂診療所で試験的に運用を開始したところであります。
 県立病院への導入に当たっては、オンライン診療に適した診療科や疾患の選定、受診患者のネットワーク環境の確保、操作にふなれな患者等への支援などの課題が想定されますことから、重茂診療所の実績を踏まえ、対応を検討し、体制の整った病院から順次導入を進めてまいります。
 また、DXの推進につきましては、電子カルテの安定的な運用を初めとして、さまざまな取り組みを進めており、今年度は、新たにオンライン診療のほか、電子処方箋の導入、サイバー攻撃対策等のセキュリティー強化などの事業に対し1億5、200万円余の予算を措置しているところであります。
   〔農林水産部長藤代克彦君登壇〕
〇農林水産部長(藤代克彦君) まず、民間商業施設等での木材利用についてでありますが、県では、県産木材等利用促進条例に基づき、県産木材等利用促進基本計画や行動計画を策定し、公共建築物における県産木材の率先利用とともに、民間での県産木材の利用を促進しています。
 特に、民間商業施設等での利用促進に当たっては、県産木材の積極的な利用を宣言する木づかい宣言事業者の登録制度や県単独事業であるいわての木があふれる空間づくり事業を創設し、民間商業施設等の木造化や木質化などを支援してきたところです。
 また、本年3月に策定した第2期行動計画では、令和8年度の木づかい宣言事業者の登録目標を60事業者とし、民間商業施設等での木材利用をさらに促進していくこととしています。
 木づかい宣言事業者は、本年6月末現在23事業者を登録しているほか、いわての木があふれる空間づくり事業による木質化等への支援については、今年度8件を計画しており、今後とも、民間商業施設等での県産木材の利用がさらに拡大するよう積極的に取り組んでまいります。
 次に、CLT(直行集成板)の活用についてでありますが、県内においては、県立福岡工業高校や県立伊保内高校の校舎、民間事業者の事務所などにCLTが活用されており、その活用は増加傾向にあるものの、現時点で中高層ビルへの活用の動きはないところです。
 CLTは、コンクリートを使用する場合に比べ工期の短縮が可能となる一方、CLTを活用するための知識や技術の習得が必要なことなどが課題となっております。
 このため県では、学校の校舎など県施設において率先利用するとともに、CLT建築物の施工事例の紹介や県内の建築士等を対象とした研修会を開催するほか、CLTを活用した木造建築の専門家派遣などを行っており、引き続き、県内においてCLTの活用が進むよう取り組んでまいります。
 次に、県有林J−クレジットについてでありますが、県では、県有林の間伐による二酸化炭素吸収量をクレジットとして販売する県有林J−クレジットについて、県内の金融機関と連携しながら、これまで県内外の企業等約230者への販売を行い、発行したクレジット約5、600トン全ての販売を完了しているところです。
 また、クレジットの販売収入約9、000万円については、間伐など県有林の整備やクレジットの販売促進に向けたPR等に活用しています。
 新たなクレジットの発行に向けては、現在、対象とする県有林の区域等を定めた計画書を国に提出し、現地確認を進めており、今回対象としている区域は、これまでにクレジット発行した区域を超えると見込んでいるところです。
 今後は、森林資源の調査などを行っていくこととしており、こうした新たな県有林J−クレジットの発行に向けた取り組みを着実に進めてまいります。
 次に、民間でのJ−クレジットの活用についてでありますが、県内では、一部の民間企業において、所有する森林の二酸化炭素吸収量をクレジットとして販売する取り組みが行われており、さらに、今般の制度見直しにより算定対象が拡大されたことから、林業関係者等の活用機運が高まっております。
 一方、制度への理解が十分に進んでいないことやクレジット発行に必要な手続が難しいことなどが課題となっており、県では、制度の概要や県内の取り組み事例を紹介するセミナーを開催するとともに、市町村や事業者等の相談に対応してきたところです。
 今年度にあっては、こうした取り組みに加え、制度の活用に向けたマニュアルの配布や地域での説明会、クレジット発行に必要な具体的な手続を学ぶ研修会などを行うこととしています。
 特に、小規模事業者にあっては、クレジット発行等に必要となる一定規模の森林面積の確保が課題となっていることから、県では、クレジットの活用に関心を持つ事業者の個別指導などを実施しており、引き続き、クレジット制度が活用されるよう取り組んでまいります。
   〔商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) まず、中小企業の賃上げの実態についてでありますが、連合岩手が4月14日時点で集計した2023春季生活闘争の中間報告では、賃上げの要求を行った従業員300人未満の地場、中小企業の労働組合55組合のうち、28組合が有額回答を得ており、前年は、要求組合が13組合、有額回答が13組合であったことから、要求組合数が42組合の増加、有額回答が15組合の増加となっております。
 また、ことしの春闘では、有額回答を得た28組合の正規労働者1人当たりの平均賃上げ額は7、934円、賃上げ率は3.11%となっており、前年同期の平均賃上げ額2、774円、賃上げ率1.16%と比較して5、160円、1.95ポイントの大幅な増加となっております。
 こうした状況から、今回の春闘では、従業員のモチベーション向上や人手不足を背景に賃上げに踏み切った中小企業がふえた一方で、27組合が有額回答を得ることができておらず、また、5月末の事業者影響調査の結果におきましても、現在の経営課題として賃上げへの対応を挙げる事業者が多かったところであり、多くの中小企業が、エネルギー価格や原材料価格高騰の影響を受け、賃上げの原資を確保するのが難しい状況にあると受けとめており、経済団体等からも同様の声を聞いているところでございます。
 次に、賃上げ原資への直接支援についてでありますが、多くの中小事業者において、人口減少の進展に伴う人材確保が大きな経営課題となっている中、賃上げを含めて、若者や女性に魅力ある労働環境を構築していくことが重要であると考えております。
 また、先ほど答弁申し上げましたとおり、県内の中小事業者は、エネルギー価格や原材料価格の高騰などの影響を受け、賃上げ原資を確保することが難しい状況にあると受けとめております。
 一方で、賃上げ原資そのものを直接支援するためには、多額の財源を必要とするほか、短期間の支援が持続的な賃上げ状況の維持に結びついていくのかといったことを十分に検討する必要があると考えているところでございます。
 このため、まずは、6月定例会に補正予算案で提案している中小企業者等賃上げ環境整備支援事業や国の業務改善助成金などを活用いただき、経営革新による賃上げや適切かつ円滑な価格転嫁を実現していただきたいと考えております。
 その上で、今後の国や市町村の支援の動きを注視し、必要に応じて財源確保に向けた国への働きかけなども行いながら、適時適切な対応に努めてまいります。
 次に、起業、スタートアップにおける開業目標等についてでありますが、県では、いわて県民計画(2019〜2028)において開業率を幸福関連指標に位置づけており、第2期政策推進プランでは、令和3年度の3.2%から年0.1ポイント上昇させ、計画最終年度の令和8年度に3.6%とする目標を掲げているところでございます。
 なお、開業率は、雇用保険新規成立事業者数をもとに算出されているため、起業、スタートアップ支援に当たっては、単に起業やスタートアップをふやすだけではなく、その後の支援を継続し、法人化、さらには成長企業として育成していくことが重要であることから、本県では、起業のステージやパターンに応じた支援を展開しているところであり、具体的には、初期のステージである起業を志す方や起業後間もない方々に対しては、実践的な起業家教育プログラムの提供や、地域課題の解決につながる事業に取り組む起業者への補助、若者、女性の起業促進を目的とした県の融資制度、若者・女性創業支援資金貸付金の創設、実行などによる支援を行っております。
 また、事業拡大を目指すステージでは、官民連携の起業支援拠点岩手イノベーションベースを核とした若手経営者らと全国の起業者との交流による人的ネットワークの構築支援にも取り組んでおります。
 さらに、市町村や商工団体、金融機関等の支援機関が一体となって、ニーズや状況に応じた重層的な支援を展開していくこととしており、現在、いわてスタートアップ推進プラットフォームの設置に向けた準備を進めているところでございます。
 次に、首都圏の若年層に向けた事業承継の情報発信等についてでありますが、首都圏からのU・Iターンを促進するため、現在、岩手県東京事務所及び有楽町のふるさと回帰支援センターの2カ所に移住相談窓口を設置しており、この窓口において、移住希望者が移住先に求めるニーズに対するきめ細かな対応を行っているところでございます。
 岩手県で新しい事業等を始めたい、あるいは岩手県で自分の夢を実現させたいといった方々にとっては、起業、スタートアップに対する支援内容、事業承継や地域おこし協力隊に関する情報提供が重要であり、これらに総合的に対応する仕組みづくりに取り組んでいるところでございます。
 具体的には、それぞれの相談員に対する情報共有の徹底を図るとともに、起業、スタートアップに対する支援内容をまとめたパンフレットの配架、金融機関と連携した事業承継に係る情報提供、さらには、地域おこし協力隊OB、OGを核としたネットワークと連携した起業を計画している方々を対象としたセミナーの開催などを行っております。
 今後、こうした連携体制や取り組みをさらに強化しながら、U・Iターン者の増加に結びつけていきたいと考えております。
   〔教育長佐藤一男君登壇〕
〇教育長(佐藤一男君) 起業家教育についてでありますが、変化の激しい社会の中で、児童生徒一人一人が、主体的に自己の進路を選択、決定できる能力を高め、社会的、職業的自立を促すキャリア教育の重要性が増しております。
 小中学校、高等学校においては、令和2年改定のいわてキャリア教育指針を活用しながら、家庭、地域、産業界等との連携、協働による一体となった取り組みを進め、社会人、職業人として自立するための能力を育む体験活動等を行ってきております。
 例えば、販売実習を通した体験的な学習、職場体験活動、事業家や夢を実現した先輩による講演など、学校ごとに創意工夫を凝らしたキャリア教育が展開されております。こうした体験活動等は、みずから企画し、多様な他者と協働しながら、新しい価値を生み出す主体性や創造性、情報収集、分析力、判断力、実行力等の起業家的資質、能力の育成にもつながっていると捉えております。
 今後も、勤労観、職業観を育成しながら、小中学校、高等学校の児童生徒が、将来の目標に向かって努力することの意義を実感できるよう、各学校におけるキャリア教育に係る体験活動等の取り組みを支援してまいります。
   
〇議長(五日市王君) この際、暫時休憩いたします。
   午後2時15分 休 憩
   
出席議員(44名)
1  番 千 田 美津子 君
2  番 小 林 正 信 君
3  番 千 葉   盛 君
4  番 千 葉 秀 幸 君
5  番 岩 城   元 君
6  番 上 原 康 樹 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 高 橋 穏 至 君
10  番 山 下 正 勝 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 佐々木 朋 和 君
15  番 菅野 ひろのり 君
16  番 柳 村   一 君
17  番 佐 藤 ケイ子 君
18  番 岩 渕   誠 君
19  番 名須川   晋 君
20  番 佐々木 宣 和 君
21  番 臼 澤   勉 君
22  番 川 村 伸 浩 君
23  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(1名)
43  番 伊 藤 勢 至 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後2時37分再開
〇議長(五日市王君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。臼澤勉君。
   〔21番臼澤勉君登壇〕(拍手)

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