令和5年2月定例会 第24回岩手県議会定例会会議録

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〇48番(飯澤匡君) いわて県民クラブの飯澤匡でございます。ただいま上程されております議案第5号令和5年度岩手県一般会計予算に対して、委員長報告に反対する立場で会派を代表して討論をいたします。
 私は、さきの予算特別委員会において、令和5年度岩手県一般会計予算案につき、撤回の上、編成がえを求める動議の提出者の一人でもあります。
 本論に入る前に、予算特別委員会の動議の質疑と討論において、修正動議ができないから組みかえ動議になったのだと断定的な発言がありました。
 そもそも組みかえ動議は、知事に対して、予算を組みかえて再提出されたいというものです。組みかえ動議の活用は、議員や会派が、知事に対抗して政策を提言し、実現させることが可能となるものです。組みかえ動議が可決された場合、知事は、これを無視するならば、予算は否決されるので、組みかえに応じざるを得ない。しかし、修正動議と異なり、組みかえ事項を当該会期中に全て実現させる義務はなく、議会と知事の話し合いで、会期中に修正する事項、年度内に実現する事項、翌年度に実現させる事項に分けることができます。この意味では、組みかえ動議は、予算修正の時期、内容について、政治的要素、弾力的要素を持っているものです。
 過去に、平成21年2月定例会で同様の組みかえ動議が提出され、その際も私は提出議員の一人でしたが、この案件は可決されました。その内容には、増額修正する内容も盛り込まれていることも申し添えておきます。動議案可決の結果、議会と当局との話し合いによって大方の項目は実現の運びとなったものです。よって、財源の裏づけがないから無責任であるとか、予算編成プロセスを無視しているとの指摘は、全く当たりません。
 さらに、もう一つ申し上げます。私たち動議案に賛同する会派議員は、岩手県議会基本条例に定められた第9条第2項、議会は、知事等と異なる立場及び権能を生かし、活動しなければならない。第10条、知事等の事務の執行が、適正かつ公平に、及び県民の意向を的確に把握しつつ能率的に行われているかどうかを監視するとともに、これが所期の効果及び成果をあげたかどうかを評価し、知事等に対し必要な是正措置又は対応を促すものとする。この条例の趣旨を酌んで、我々は行動したにすぎません。
 討論で激しく指摘された予算編成権を侵害している、議会の権能を逸脱している、議会の基本姿勢を忘れているとの発言内容は、別方面の立場を代弁されているのではとの印象を受けた委員も多かったのではないでしょうか。
 県は、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランを策定し、人口減少問題を最重要課題に位置づけ、令和5年度以降の施策を進めようとしています。実は、人口減少問題を重点課題に上げたのは昨年度からで、ふるさと振興創造戦略のもとで行われたのでありました。それも人口減少対策関係の施策であり、ダイレクトに響かせたものではありませんでした。
 令和5年度には217億円の予算が措置されていますが、本県独自の課題分析に至っていないことは、致命的欠陥として質疑の中で明らかになり、予算額にあらわれているほどの効果が期待できないと判断せざるを得ないものです。
 さらに、令和4年度に明示した部局横断で取り組んだ結果は、どのように令和5年度一般会計予算案に反映されたのか、今もって不明のままであります。
 本県の基幹産業である農林水産業が直面している課題は、深刻さを増しています。今後、調達コストの高どまりは中期的に継続していくという予測もあり、離農するかしないかの瀬戸際の大事なこの局面で、生産者が求めているものに十分に応えるものになっているのか、今こそ県の本気度が求められるこの局面だと私は思います。
 また、いわて県民クラブが提案した私立専修学校高等課程への支援拡充について、令和5年度岩手県一般会計予算案において要望にはほど遠い措置となったことは、誰ひとり取り残さないという理念に逆行したものと言わざるを得ません。不登校に悩む子供たちや保護者、それを懸命に支える学校を支援し、岩手県の未来を担う子供たちを育てていくためにも、私立専修学校高等課程に対し、全日の私立学校と同様の支援を行うべきと考えます。
 私は、県議会に籍を置いて24年となり、予算編成にかかわっている職員の御苦労は重々承知しているつもりです。予算編成は、単年度予算の制限された枠の中で、できる限りの工夫を凝らした汗の結晶とも言えるでしょう。
 しかし、この間、人口減少問題や産業振興において、目に見えた成果が出ていないのはなぜなのか。コロナ禍という事象は、全国各地でひとしく影響を受けて、全国の自治体が苦労されている中でも、たゆまぬ政策の持続性によって成果を出している自治体がある。
 本県はなぜそうならないのか。例を挙げれば、我が会派の佐々木努議員が提案し、実現したi−サポ事業も、年度のたびに予算は安定を欠き、そして、残念ながら先進県の成果の域に達していない。一応取り組んでみるもののという事例がいかに多いことか。もはや、馬なりでさっと流してばかりでは、強力なものは生まれないということは明らかではないでしょうか。
 そういう意味において、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランの策定時における予算編成は、局面を変えるいい機会だと私は思うのですが、指標の見直しなど御努力された跡は認めつつも、戦略的な事業の構築には至っていないと言わざるを得ません。
 職員に問題意識はあるのに、なぜそうならない原因を私なりにつらつら思考してみますと、既存事業の効果の検証や反省を次の展開に活用しない手法が続いていること、そして、それを最も顕著に誘導しているメタボ指標の存在などが思い浮かびます。
 さらに、人口の社会減は下げどまったなどと瞬間風速的数値をもとに知事が発言したことも、人口減対策に着手するに遅きになった要因でもあり、以前、私の一般質問で、指標の多さは前副知事の負の遺産と言った職員を間違っていると一刀両断したことも、県庁内を萎縮させる十分な要因となったと同時に、いみじくも、知事自身が庁内事情を物語ったと言えるのだと思います。私もそうですが、大方の企業人は、その言葉こそ改善の糸口と間違いなく喜んで分析へと走るでしょう。現場の声を取り上げず、体制保持に執着している流れが、思い切った政策軸を立てることができない県政になっているのではないでしょうか。問題意識を持った有能な職員を使い切れていないことは、まことに残念であります。
 組みかえ案が通らなかった以上、令和5年度岩手県一般会計予算案に反対する立場となりましたが、その真意は、前段に述べたとおり、知事に政策を提言し、実現してもらうことが目的です。組みかえ動議に示された編成がえの概要に五つの項目は必要不可欠なものです。今こそ、この局面で敢然とブレークスルーした事業を展開することが求められると私たちは考えるものであります。
 以上理由を述べて反対討論といたします。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
〇議長(五日市王君) 次に、斉藤信君。
   〔37番斉藤信君登壇〕

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